米、アジア安保に関与強化 日韓修復・対中衝突回避狙う

米、アジア安保に関与強化 日韓修復・対中衝突回避狙う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN142940U2A111C2000000/

『2022年11月15日 2:00 (2022年11月15日 5:09更新)

米国は東南アジアを舞台とする一連の外交機会を利用し、アジアの安全保障への関与強化に動いた。バイデン米大統領は日米韓の異例の連続首脳会談を演出したうえで、14日の中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との直接会談に臨んだ。米中間選挙で議会上院の多数派を保った追い風を受け、同盟国の連携をテコに中国抑止をめざす。

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「違いを管理し、競争が衝突になるのを防ぐ」。バイデン氏は習氏との会談冒頭、こう発言した。互いに譲れない一線の再確認が出発点となる。バイデン氏は会談後の記者会見で、中国本土と台湾は不可分という中国側の立場に異を唱えない一方、台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策に変化はないと説明したと述べた。

米国は中国を「国際秩序を再構築する意図を持つ唯一の競争相手」とみなし、今後10年を決定的に重要な期間と位置づけている。だが紛争は望まない。トップ会談を突破口に、妥協のない競争が不測の事態を生まぬよう対話継続の道を探った。

中国に優位に立つため「会談の細かな進め方も周到に準備した」(米政府高官)。

外交ショーは前日に幕を開けた。バイデン氏は習氏と会談するインドネシアのバリ島に向かう直前の13日、カンボジアのプノンペンで岸田文雄首相、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領、オーストラリアのアルバニージー首相と会談した。

「米中首脳会談の後ではなく前に、立ち話ではなく写真撮影機会のある会談に」。米国や日本の外交当局はこだわった。米国が中国に勝る強みの一つは同盟国の存在だ。習氏の盟友であるロシアのプーチン大統領はバリ島での20カ国・地域(G20)首脳会議を欠席する。米国は日韓豪との連携を中国にみせつけることを重視した。

特に日米韓首脳の会談は異例の開催形式をとった。まず日米、米韓の2カ国間の会談、日米韓3カ国の首脳会談を連続して開き、最後に岸田首相と韓国の尹大統領が会った。

日本と韓国はそれぞれ米国の同盟国でともに米軍が基地を置く。米国が自国を起点に日韓とつながり、3カ国の安保上の結びつきを描く三角形の構図を際立たせた。

米欧30カ国でつくる北大西洋条約機構(NATO)は加盟国のどこかが武力攻撃を受ければすべての締約国への攻撃とみなし、ともに反撃する。東アジアには同様の仕組みがなく、地域の抑止力を高めるには米国を中心に各国が密接に連携する必要がある。

「弱い鎖」は悪化した日韓関係だ。日米韓の枠組みは日韓関係の悪化を理由に2017年9月から22年6月まで5年ほど途絶えた。米国は急速に軍備を増強する中国に向き合うためには韓国が欠かせないとみて、日韓の関係改善へ橋渡しを進めてきた。

バイデン氏は日米韓首脳会談の冒頭で「台湾海峡の平和と安定をいかに維持するかを議論する」と発言。共同声明に「インド太平洋での一方的な現状変更の試みに強く反対する」と明記し、対北朝鮮に傾いていた日米韓の協働に対中の色彩を強く加えた。

「いい気分だ」。13日、8日投開票の中間選挙で与党・民主党が議会上院の多数派を維持する結果が伝わり、バイデン氏はこう語った。民主党惨敗の事前予想を覆し、大統領として死に体になることが避けられたこともアジア外交の追い風になった。

中国共産党の総書記として異例の3期目に入った習氏は自由民主主義陣営と一線を画し、習氏一人に権力を集中する。その中国との対峙に「最も重要」(サリバン米大統領補佐官)となる首脳同士の関係は、自国での政治基盤の強さを色濃く反映する。

8月のペロシ下院議長の台湾訪問以降、反発する中国は軍当局の対話や気候変動対策などの協議を停止し、対話の窓口がほぼ閉ざされてきた。「新冷戦」の様相を強める米中の競争の暴走を防ぐことができるか。演出から実行へと局面は移る。

(ワシントン支局長=大越匡洋)

米中Round Trip

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木村幹
神戸大学大学院国際協力研究科 教授
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別の視点

政権発足後、当初は見せていた中国への強硬な姿勢が次第に緩むようにも見えた中、今回、尹錫悦政権は、アメリカの要求に応じて再びその強硬姿勢へと波長を合わせた形になっています。

背景にあるのは、この所、低いながらも支持率が下げ止まっている事。世論が左右に大きく分裂する中、保守世論はそれなりの固さで尹錫悦政権を支えており、この状況下、尹錫悦は中道的な施策を取って追加的な支持層を狙うよりも、まず足元の保守層の支持を固めようとしている様に見えます。

であれば、その期待に応えて、対中強硬路線へと回帰した方が合理的。国内政治と外交の複雑な関係を見る思いです。

2022年11月15日 19:01

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

国際政治のパワーゲームの典型例といえる。

欧州では、米欧連携、アジアでは、日米韓連携、主な相手はそれぞれロシア、中国。見方によっては、新冷戦ともみることができる。

問題は日韓はどこまで連携を強化できるかにある。アジアの不幸は戦後から抜け出せていないことである。過去をきちんと清算できないまま、未来志向を目指すといわれても、不安定な展開になる。選挙あるたびに、韓国は揺れる。

日韓の相互信頼を醸成できなければ、このゲームはプレーできない。同時に、中国との対話も続けなければならない。追い込んで孤立させると、逆効果になる

2022年11月15日 7:37

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高橋徹
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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ひとこと解説

トランプ前大統領が在任中に参加したASEANとの首脳会議は、2017年のマニラでの米ASEANサミットが最後でした。

同じ日の東アジアサミットには出席せずにマニラを後にし、ASEAN側の不信を買いました。

前任者との違いを強調するバイデン大統領にとって最悪のシナリオは、アジア歴訪の直前の中間選挙で大敗してインド太平洋戦略への求心力を失うこと、特に来月から本格的に始まるインド太平洋経済枠組み(IPEF)交渉が早々に形骸化することでした。

予想外(?)の上院での民主党勝利、下院での善戦で、少なくとも次期大統領選までの2年間はアジア新興国の関心をつなぎ留めておけそうです。

2022年11月15日 7:27』