世界経済失速 中国成長3%台、米欧は後退予測広がる

世界経済失速 中国成長3%台、米欧は後退予測広がる
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『世界経済の失速が鮮明だ。中国は新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策などの影響で2022年の成長率見通しが年初の予測を2ポイント近く下回り、3%台に沈む。直近10月は消費が減少に転じた。米欧は歴史的な物価高で急速な利上げを迫られ、22~23年に景気後退に入るとの予測が広がる。日本は7~9月期に4四半期ぶりのマイナス成長に陥った。けん引役不在の世界は先行きの不透明感も強い。

QUICK・ファクトセットがまとめた民間予測で、22年の中国の実質成長率は3.3%だ。年初の予測から1.8ポイント下がった。上海市の封鎖などで春に景気が急激に悪化した後、夏場に出てきた持ち直しの兆しが足元で再びしぼむ。

中国国家統計局が15日発表した10月の小売売上高は前年同月比0.5%減った。マイナスは5月以来だ。全体の1割を占める飲食店収入が8%減ったほか、家電、衣類などが軒並み落ち込んだ。

消費は11月に入っても鈍い。象徴的なのは、11日に最終日を迎えた年間最大のインターネット通販セール「独身の日」だ。1~11日の全国宅配便取扱量は前年同期比11%減少した。最大手のアリババ集団などは期間中の売上高を公表しない異例の対応をとっている。

政府の規制強化で住宅不況も出口が見えない。10月の住宅販売面積は前年同月を2割超下回った。国内総生産(GDP)の3割を占める不動産関連の低迷で家電や家具の販売が伸びず、建材などの生産も勢いづかない。

世界銀行によると、世界の実質GDP(購買力平価ベース)は中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した01年から21年までに1.9倍に増えた。この間の中国の伸びは5.3倍で世界の経済成長の31%を占める計算になる。寄与度は米国の10%を大きく上回る。

成長エンジンの変調は世界経済に暗い影を落とす。日本工作機械工業会が集計する工作機械受注は10月に前年同月比5.4%減と、2年ぶりにマイナスとなった。ゼロコロナ政策下の中国の停滞が響いている。ファナックは中国での受注が7~9月期に前年同期比7%減った。23年3月期の連結で前期比8%の営業増益を見込んでいたのを10月末に一転、1%の減益見通しに下方修正した。

影響は生活用品にも及ぶ。中国の10月の化粧品輸入量は24%減と9年8カ月ぶりの減少率となった。資生堂は1~9月期の中国売上高が前年同期比11%の大幅減。横田貴之最高財務責任者(CFO)は「中国の競争環境は厳しい」と吐露する。

「世界の市場」の需要減は資源価格にも表れる。シンガポール取引所(SGX)で鉄鉱石の期近先物は1日、一時1トン80ドルを下回り、20年2月以来の安値をつけた。鉄鉱石価格は世界の貿易量の約7割を占める中国の景況を敏感に映す。

一時急騰が目立ったエネルギー相場も足元の値動きは低調だ。米国のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は1バレル85ドル前後と、ロシアのウクライナ侵攻直後のピーク比で4割弱安い。中国の原油輸入量は、WTIが下落基調となった6月から4カ月連続で前年の水準を下回った。

アジア向け液化天然ガス(LNG)のスポット価格も、足元は8月のピークより6割ほど安い。やはり中国の調達減が下押し圧力になっている。

中国は08年のリーマン危機後は巨額の経済対策を打って成長を続け、世界経済を下支えした。その役割を果たす存在が見当たらない状況になっている。米S&Pグローバルがまとめた総合購買担当者景気指数(PMI)は中国が9月から2カ月連続、米欧は7月から4カ月連続で、好不況の境目の50を下回る。

米欧は物価高でコロナ後の回復シナリオの見直しを迫られる。日本経済新聞が民間エコノミスト10人に聞いたところ米国は6人、ユーロ圏は10人全員が23年までに景気後退局面に入ると答えた。

ユーロ圏は2人が「すでに後退」とみる。後退局面入りは時間の問題で7人は22年中、1人は23年前半と予測する。米国も3人が22年内、2人が23年前半、1人が同年後半と答えた。

物価高を鎮めるための急ピッチの利上げの軟着陸は難しい。景気後退の確率の予測平均値は、米国では23年前半が濃厚で1~3月期が48%、4~6月期が46%となった。ユーロ圏は22年10~12月期が61%、23年1~3月期が67%、4~6月期が55%となっている。

日本は7~9月期のGDPが前期比年率で実質1.2%減り、4四半期ぶりに落ち込んだ。内需の柱である個人消費や設備投資の伸びが鈍化し、広告関連で海外への支払いが急増したマイナス要因が上回った。回復基調の設備投資もコロナ前の水準にはなお届いていない。外需が停滞すれば、腰折れしかねない弱さを抱える。

米欧中がそろって変調を来すのはコロナ禍当初の20年春以来。世界経済が再び反発力を発揮できるかは見通せない。

(北京=川手伊織、マクロ経済エディター 松尾洋平、コモディティーエディター 浜美佐、柘植康文、増田由貴、松本桃香)

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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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先週発表された米国CPIが市場予想を下回り、利上げが鈍化するとの予測から株価は上昇、為替も円高に進みました。

インフレはピークアウトの期待が高まっていますが、インフレの景気や企業業績への影響はこれから本格化するところ。

足元ではビックテック企業の業績や人員削減が注目されていますが、他の業種の業績悪化や人員削減はこれからより本格化すると予想されます。

昨晩発表されたウォルマート決算は良好で同社株価は上昇しました。電話会議で経営陣はインフレ・景気鈍化予想の中で高所得者層が同社での購買を増やしたことを強調しました。小売で値引き競争も始まっている中、ミクロで同社決算が良好であったことはマクロでは要注意です。

2022年11月16日 6:32

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

世界の景気が悪化しているのは最初から見通せたはずである。

FRBは利上げを急ぎすぎた。

中国はゼロコロナ政策の転換が遅れている。

ウクライナ戦争はまだ終わらない。

エネルギー価格が高止まりしている。サプライチェーンが修復されていない。景気を悪化させる原因は多岐にわたっている。簡単には対処できない。

こうしたなかで、岸田政権は企業に賃上げを求めているが、それに応じられる企業は何社ぐらいだろう。賃上げが遅れれば、インフレ率が上昇し、実質賃金がマイナスになり、個人消費が大きく落ち込む。大不況の入り口がみえてくるのでは。

2022年11月16日 8:26』