イスラエルで右派政権発足へ 周辺アラブ諸国も警戒

イスラエルで右派政権発足へ 周辺アラブ諸国も警戒
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR133HG0T11C22A1000000/

『【カイロ=久門武史】イスラエルのネタニヤフ元首相は13日、ヘルツォグ大統領の組閣指示を受け、連立協議を始めた。すでに国会(一院制、定数120)の過半数を固めており、近くネタニヤフ氏を首相とする政権が発足する見通しだ。人口の2割を占めるアラブ系(パレスチナ人)の「追放」を訴える極右の宗教(ユダヤ教)政党が発言力を強めるとみられる。周辺のアラブ諸国も警戒する。

最近の約3年半で5度目となった1日投開票の総選挙は、ネタニヤフ氏が率いる右派リクードが第1党となった。右派・宗教政党を合わせて64議席を確保。このうち第3党に急浮上した極右の「宗教シオニズム」は、対パレスチナ強硬策を唱える。中心人物のイタマル・ベングビール議員の入閣が有力視される。

ベングビール氏はアラブ系住民について「イスラエル国家に忠誠を誓わなければ追放すべきだ」と主張。警察を統括する公共治安相への就任を求めているとされる。実現すれば、イスラエル国内のユダヤ系とアラブ系の対立が強まるだけでなく、隣接するパレスチナ自治区(自治政府)との摩擦も激しくなる可能性がある。

イスラエルとパレスチナの2国家共存で中東和平を目指すバイデン米政権との関係はぎくしゃくするとみられている。

ヘルツォグ氏は1日の総選挙で議席を得た各党から聴取し、ネタニヤフ氏による組閣の可能性が最も高いと判断した。原則として4週間以内の組閣が求められるが、2週間の延長が可能だ。ネタニヤフ氏は13日「すべてのイスラエル人のために仕事をする政府をつくる」と述べ、極右の影響を受けているとの印象の払拭に努めた。

パレスチナ自治政府を支援する周辺のアラブ諸国は警戒する。

イスラエルのメディアによると、総選挙の前にアラブ首長国連邦(UAE)のアブドラ外相がネタニヤフ氏と会い、極右勢力との連携に懸念を伝えた。ネタニヤフ氏は首相在任中の2020年にUAEと国交を結んだ。新政権の樹立後もアラブ諸国との融和を探るとみられ、連立与党内の極右の主張との調整が課題になる。

ネタニヤフ氏は21年6月の8党連立政権の発足で下野するまで通算15年間、首相を務めた。在任期間は同国最長だが、収賄などの罪で19年に起訴された。ヘルツォグ氏は組閣指示に際し、ネタニヤフ氏の裁判が進行中だとの事実を「矮小(わいしょう)化はしない」とクギを刺したが、同氏の首相就任に問題はないとの認識を示した。

総選挙ではラピド首相が党首を務める中道政党イェシュアティドを軸とする反ネタニヤフ勢力は計51議席にとどまった。ラピド氏の8党連立政権は、左右両派にアラブ系政党も加わる「寄り合い所帯」だった。1年ほどで行き詰まり、国会の解散と総選挙につながった。』