「米英豪で潜水艦共同作戦」 インド太平洋戦略、英海軍トップに聞く

「米英豪で潜水艦共同作戦」 インド太平洋戦略、英海軍トップに聞く
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『英海軍の制服組トップ、ベン・キー第1海軍卿は、インド太平洋地域の秩序維持に向けて、米英豪による潜水艦の共同作戦の実施など、同盟国が分担していく必要があると述べた。横浜に停泊していた哨戒艦テイマーで日本経済新聞との取材に答えた。

インド太平洋シフトを進める英国の戦略は「国益と合致するものだ」と語った。さらに「米国だけで世界警察の役割は果たせない。自由で開かれた海洋はみんなで守る義務がある」と同盟国での緊密な連携と協力の必要性を強調した。

英哨戒艦テイマーと姉妹艦スペイは昨年来、インド太平洋に5年間の長期にわたり配備されている。この間、両艦は一度も英国に戻らず、3班に分かれた乗組員がローテーションを組んで船を運用している。

両艦はそれぞれ2020年、21年に配備されたばかりの最新艦。前方展開を維持するには膨大なコストがかかるが、キー氏は「この地域で発信したいシグナルを考えれば十分に支払う価値のあるコストだ。アジアは世界経済のエンジンであり、国益にかなう」と語った。

米英豪が昨年9月に創設した安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」については「近年で最も重要な安全保障面での変化だ」とし、英潜水艦がインド太平洋で共同作戦に参加するケースが増えていくと述べた。

ハワイ停泊時の英哨戒艦テイマー(英海軍提供)

AUKUSでは米英がオーストラリアに機密性の高い原子力潜水艦建造ノウハウを提供する。当初は豪州の造船所で建造する計画だったが、完成するまでには何年もかかると予想される。この間、豪州の既存の通常型潜水艦は耐用年数が満期を迎え、潜水艦の「空白期」が生じるとの不安が浮上している。このため、豪州側は最初の1、2隻は米英の造船所での建造を打診している。

一方、米国は冷戦終了後に国営の造船所を次々と閉鎖している。最近では人手不足も重なって、既存の造船所では新設やメンテナンスの需要に対応しきれていない。米海軍幹部は豪州向けに潜水艦の建造を請け負う余裕はないと発言している。

キー氏は「豪州が原潜を保持し運用するにはどのルートが最適なのか、非常に多くの選択肢を検討中だ。米大統領と英豪首相が合意に達すれば詳細が見えてくる」と述べ、豪州向けの原潜をどこで建造するかは、最後は各国トップの決断で決まるとの見方を示した。

英国は21年3月、100ページにわたる外交・安全保障方針「統合レビュー」を発表した。インド太平洋地域への傾斜を打ち出すと同時に、中国に関しては「Systemic Competitor(体制上の競争相手)」と位置づけた。米軍内では中国が27年までに台湾侵攻の態勢を整えるのではないかとの懸念が強まっている。

台湾有事への備えについてキー氏は「すべての軍は(政策決定者に)選択肢を提供する義務がある。詳細は語れないが、米、豪、日などとそのような選択肢について協議している。あらゆる事態を想定し、政府に助言するのが軍人の務めだ」と語った。

日本との協力に関しては「海軍同士の関係は100年以上に遡る。日本はより外への関与を拡大し、我々も真剣な決意でインド太平洋に回帰している。コミュニケーションを深められていることをうれしく思う」と語った。酒井良・海上幕僚長と今後5年、10年のスパンでの連携を協議しているとし、英艦船の日本寄港も今後、「まちがいなく増えていく」と述べた。

(森安健)』