資産を増やすという事は、どういう事か? : 机上空間
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/30121463.html
『「資産家になりたい」という人は、たくさんいます。その言葉を口にした時、どういうイメージが頭にあるかというと、豪邸だったり、高級車だったり、高級腕時計だったり、ブランド物のバッグだったり、高級服だったり、つまり、物を所有する事とセットだったりします。しかし、考えてみて下さい。これらは、お金を使った結果として取得した物であって、資産を形勢する事は関係がありません。つまり、「資産家になりたい」という言葉の中に、具体的に実現する方法は含まれておらず、資産家になった結果だけで言っているケースが大部分という事です。
しかし、高級品に囲まれる、そういう物が身の回りに増えるという事は、資産から継続的に支出をしているわけで、穴の空いたバケツに水を注いでも水が溜まらないように、資産を形勢する行為とは、真逆の事をやっている事が判ります。つまり、多くの人が言う「資産家」とは、自分の資産が可視化できるように、高級な物に囲まれて、高級なサービスを受けて暮らしたいという事です。その暮らしを継続しつつ、バケツに水を貯めるには、穴から漏れる水を上回る水量で注ぎ続けないといけません。こう考えると、浪費というのが、資産形成に何の役にも立っていない事が判ります。最終的に到達するべき資産家のイメージと、実際にそうなる為に必要な行動は、「資産家になりたい」という言葉には、同居していません。
つまり、「手取り20万円のサラリーマンだけど、今すぐフェラーリが買いたい」と、ほぼ同じ事を言っています。さて、多くの人が投資において、無謀な冒険をする原因が、まさしくここにあります。資産家を目指す時に、資産を可視化して、自分が満足したり、他人に見せる為に、大金を使いたいという事と同義なのです。その為には、保有している資産に高いレバレッジをかけて、極めてリスクの高い金融商品に手を出す必要があります。そういうリスクを背負う事は、資産家になるどころか、普通の生活を続ける事すら危うくさせる危険があるのですが、大金を使って物を買うを事を前提に資産家を目指しているので、そういう事をせざるを得ないのです。世の中の大半の人が、高利回りの投資詐欺にひっかかったり、無謀な金融商品に投資を始めて、財産をスッテしまう原因がここにあります。本当に資産家を目指すなら、やってはいけない事を、やってしまうからです。「資産家になりたい」を、実行動に正確に意訳すると、「大金を使いたい」だったりします。なので、その手段について、実に雑な行動や手段に出てしまいます。
多くの人に人生における幸福について調査を進めると、人間が最も幸福を感じるのは、自分の行動や選択について、主導権を常に持っている事という結果が出ています。資産形勢は、それをしても、生活が困窮せず、選択肢が狭くならない為に必要な補助的な行為という位置づけです。勤めや社会的な責任を負っていると、自分に意志に反する行為を取らざるを得ない場面が数多くあります。それを、現実的に避けるには、十分に暮らしを支える資産を持ち、周りから自分の意思決定について、影響を受けない事が大きなファクターになります。
つまり、資産形勢で幸せを掴むには、得た資産を物に替えて可視化する事で、所有欲や自己承認欲求を満足させるのではなく、自立した生活を営むのに十分な環境を得る事ができるからという事になります。高級服でクローゼットをいっぱいにしたり、下駄箱に入り切らないほど靴を買ったり、高級車を何台も保有する事でも、満足感は得られるでしょうが、資産を物に変えて可視化する事で、得られる満足感というのは、上限がありません。そして、もちろん、資産を片端から物やサービスに替えているのですから、資産形勢とは真逆の行動です。つまり、人生が逆境に見舞われた時、全てを失う可能性が高いリスキーな行動という事になります。周りからは、資産持ちで優雅な生活に見えても、現金を殆ど持っていないので、あっという間に破産して没落する有名人がいるのは、そういう事です。
では、刹那的な満足感を得るのではなく、堅実に資産家になるのに必要な行動とは、どういう事でしょう。一言で言えば、時間を味方につける事です。私が敬愛する世界最高の投資家にして、長者番付に常連でランクされる資産家でもあるウォーレン・バフェット氏は、本格的な投資を始めたのが、なんと10歳からです。投資の才能があった彼は、30歳の時には10億円の資産を築いていました。現在の総資産は、1000億ドル(10兆8000億円)以上です。しかし、その資産の96%以上は、60歳を超えてから築いた資産です。彼は現在90歳ですが、晩年の30年間で、莫大な資産を築いた事になります。
その理由は、福利です。投資において、種銭が大きいほど、成功した時に得られる額も雪だるま式に増えていきます。バフエット氏は、親が裕福だったわけではないので、投資を始めた時点では、小遣い程度の現金しか持っていませんでした。しかし、彼は、もっている資産の使い方として、散財せずに市場に継続して投資を続けたのです。つまり、投資で利益が出ると、その利益分を再投資して、種銭を増やし続けたのです。
30歳で10億の資産を築いた時点で、一般的には十分な富豪ですから、ここで、豪邸を買ったり、世界旅行に出かけたり、様々な贅沢に支出する事は可能だったでしょう。そして、結構、散財しても、生活が破綻する事は無かったはずです。しかし、世界有数の大富豪になった今でも、バフェットの実家は、奥様と結婚した時に建てた郊外の普通の一軒家ですし、食べ物で好きなのは、マクドナルドのハンバーガーとチェリーコークです。彼は誰にも邪魔される事なく、自宅の書斎で投資戦略を練り、自身の率いる投資会社・バークシャ・ハサウェイに指示を出します。
つまり、バフェット氏の経済的な成功の秘密は、若い頃に強固な経済基盤を築いて、安定した暮らしの中で、投資し続けた事です。極めてシンプルで、堅実な投資技術を持つバフェット氏にとって、その資産を爆発的に増やすのに必要なのは、福利を生む時間だったのです。もし、若い時のバフェット氏が、そこいらの富豪がやりそうな贅沢に散財していたら、現時点の資産は1/100にも満たなかったかも知れません。
「若い時間は、二度と戻ってこないんだ。30歳で10億も持っていたなら、ガンガン遊んで、色々な体験をしなきゃ意味がないじゃないか」と言う人もいるでしょう。では、贅沢とは無縁な彼が、人生で不幸を感じたかと言えば、「誰からの干渉も受けず、自分判断で行動し、それを支える経済的基盤を築いた」時点で、まったく無いように見えます。人生における幸福とは、資産を物に替えて可視化する事ではなく、自分が人生の主導権を握り続ける環境を築く事だとする根拠は、ここにあります。
彼は、慈善家としても有名で、多額の寄付を毎年して、社会に利益を還元してもいます。もう、止めてしまいましたが、「彼と昼食を共にする権利」は、毎年オークションにかけられていて、毎回億超えの落札価格で競り落とされ、その全額が寄付されています。それとは、別に事業収益から、毎年、数百億円の寄付もしています。誰が彼の人生に「つまらない」とか「もったいない」などと、ケチをつける事ができるでしょうか。
ちなみに資産運用で、バフェット氏の実績を超える投資家は、何人かいます。年率66%という驚異的な複利運用を行っているヘッジファンドの「ルネッサンス・テクノロジー」を率いるジム・サイモンズ氏は、最高の投資家と言って良いでしょう。しかし、彼が投資家として才能を開花させたのは、50歳を超えてからで、現在の個人資産は、バフェット氏の1/4以下です。それでも、目の眩むような金額ですが、才能が時間を凌駕できない事を示す好例です。いくら投資の運用効率が良くても、福利運用で投資を続けた期間の長いバフェット氏に比べると、やはり実績で挽回できないのです。
話を解りやすくする為に、大富豪の投資家の例を出しましたが、私達が人生で十分な資産を得る為に必要な条件は何も変わりません。早い時期から、長期間、無理をせずに福利で運用して投資を継続する事です。資産の可視化による所有欲の暴走という罠にはまらなければ、十分に充実した人生がおくれます。宝くじが当たって、何十億も転がり込んだ当選者が、その後10年も経たないうちに破産するのは、結局、資産を解りやすく可視化しないと、金持ちになった実感を感じられないからです。そして、そういう満足感というのは、麻薬のように何度もリピートする事になります。言ってみれば、資産を溶かす事でしか、刺激を得られなくなるのです。そりゃ、そうそうに破産もするでしょう。
投資において、期間を端折るために不要なリスクを取る事は、最も愚かであると、納得できるのではないでしょうか。』