メタバース不振で株暴落の米メタ、5つの疑問を直撃

メタバース不振で株暴落の米メタ、5つの疑問を直撃
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC104OF0Q2A111C2000000/

『米メタがフェイスブックから社名を変えて1年が過ぎた。新社名が表す通り、同社はメタバース(仮想空間)に力を注ぎ、多額の投資を継続してきた。その間、同社の株価は軟調に推移。社名変更した米国時間2021年10月29日の323.57ドルから丸1年で99.20ドルまで下落し、その価値は3分の1以下になった。

もちろんメタバースが先行投資フェーズであることは明らかだ。しかし、投資家は巨額投資にしびれを切らし始めている。

22年10月26日に同社が発表した22年7~9月期決算では、メタバース事業部門であるリアリティーラボが36億7200万ドル(約5366億円)の営業損失を計上。セグメント売上高は2億8500万ドル(約416億円)で、前年同期比から半減した。さらに23年度は同部門の営業損失が大幅に増加する見通しを示し、同社の株価は発表後の時間外取引で約20%急落した。

「一人負け」「期待はずれ」──。市場からこんな批判が漏れるなか、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は決算会見で、メタバースへの巨額投資を継続する方針を示した。

もっとも、この数カ月は業績や株価ばかりに注目が集まり、肝心のメタバースの可能性について議論される機会は少なくなった。同社は10月25日に仮想現実(VR)端末のハイエンドモデル「Meta Quest Pro(メタクエストプロ)」を発売したばかり。米マイクロソフトとの提携も合わせて発表した。

足元の数字を見るだけでは、メタバースの真価を見逃す恐れがある。この新技術は私たちにどんな便益をもたらすのか。また、本当にメタの次代の主力事業になり得るのか。同社でメタバースにおける働き方やコラボレーションなどを統括するマイカ・コリンズ・ディレクターに「5つの疑問」をぶつけた。

◇   ◇   ◇

疑問(1)「セカンドライフ」のようにブームで終わらない?

――仮想空間の一種だった「セカンドライフ」のブームが数年で終わったことを理由に、メタバースも一過性のブームで終わるのではないかという指摘があります。どう考えていますか?

「当時はセカンドライフをVRで体験する方法を研究する機関がいくつかあっただけでした。でも、今は違います。バーチャルな3次元空間に人々が集まり、物をつくり、体験をし、参加し、共有する。こうした経験を通じて社会的なつながりが持てるプラットフォームが数多く出現しています」

Micah Collins(マイカ・コリンズ)氏 Meta Director of Product Management for the Home & Work team。米グーグルでグーグルネストのディレクターを務めた後、2019年に米メタ(当時はフェイスブック)入社。Meta Horizon Workplaceなどワークツールの戦略立案を担当する。オンライン取材の様子を撮影

「(セカンドライフが一過性のブームで終わったのは)セカンドライフの問題でしょう。(メタバースの)3次元空間は携帯電話やパソコン(PC)、ウェブインターフェースなどの2次元のデバイスからでも接続でき、ヘッドマウントデバイスで完全に没入できます。業務用のアプリを通じて、次第に真の価値や社会的なつながり、娯楽などを提供する多くの成功例が見えてくるでしょう」

「既に市場では多くの成功例が出てきていますし、業界は多くのことを学んでいます。セカンドライフ初期の基礎的なアイデアを基に、新しいサービスを構築している例もあります」

疑問(2)マイクロソフトとの提携で何が変わる?

――10月11日にマイクロソフトとの提携を発表しました。コラボレーションプラットフォーム「Microsoft Teams(マイクロソフトチームズ)」をクエストから接続できるようにするなど、アプリ連携に向けて動き出しています。同社との提携はどんな意味を持ちますか。

「Horizon Workrooms(ホライズンワークルーム、メタが提供しているバーチャル会議室)では、人々が集まって映像や音声などを共有することで、社会的な存在を実感できるような空間をつくりたいと考えています。私たちはこの空間をより多くの人に体験してもらいたい」

「VRで共同作業できる空間をつくり、バーチャルな世界にも戻って来られる場所がある。ここでポジティブな経験をしてほしいのです。そして、仮想と現実の境界をなるべく意識せずに空間を接続できるようにしたい。それが(この提携の)狙いの1つです」

「チームズとの連携で、バーチャルな会議室が現実の会議室と接続できるようになります。誰もが常にVRヘッドセットで参加できるわけではありません。2次元のビデオ会議で参加する人や電話で参加する人、オフィスに戻って会議室から参加する人もいる。私たちは誰にでも公平に会議室を提供したいと考えています」

マイクロソフトチームズとクエストのコラボレーションの例。写真奥にチームズのオンライン会議の場面が見える(資料:メタ)

「今後、どのような展開になるかは『お楽しみに』と答えておきましょう。私たちはまだ初期段階にいて、ユーザーが抱えている問題点を洗い出しているところですから」

「私たちはマイクロソフトとの提携に興奮しています。同社は多くの企業が採用する生産性向上ソリューションを幅広く取りそろえています。グーグルも米アップルも自社のハードウエアやソフトウエアで生産性アプリを持っていますが、(マイクロソフトが)競合する企業はそれほど多くありません」

疑問(3)メタバースと実際の空間はどう融合する?

――今の話題に関連して、メタはバーチャルな空間とリアルな空間の融合をどう考えていますか? いわゆるOMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)はメタバースでどう実現されるでしょうか?

「私たちの目標は、VRをその場に適合させることです。邪魔されることなく、空間を超えて誰もが同じように接続できる技術を実現する必要があります」

「私たちは既に、メッセージやチャット、それらへの返信などの非同期型ツールで世界の反対側にいる同僚とも仕事をしています。例えば、食事に向かう途中でテキストメッセージを送ったりするでしょう。タイムゾーンが合っていれば同期型のコミュニケーションも取れる。夜中に帰宅するとき、ちょうど朝起きたばかりのロンドンの同僚と話すことができますから。非同期型でも同期型でも、人がつながることに価値があるんです」

「その価値をさらに高めたい。例えば聞き流すだけでいいなら、ビデオ会議で十分な場合もあるかもしれません。しかし、夢中になって(共同作業として)何かしたい場合には、ヘッドセットを手に取れば数秒後には同じ仮想空間で息を合わせた作業ができるんです。自分に合った方法を選んで参加できる。この点が重要なのです。そのためには、誰もが摩擦なくリアルとバーチャルの間を移動できる技術が欠かせません」

「ヘッドセットの価値を既存の仕事の流れに組み込んで、(仕事の仕方を)アップグレードする。既存の空間や既存の仕事の流れと融合する必要があります」

「マイクロソフトだけでなく、米アドビ、米オートデスクなどのアプリケーション開発会社がこのプラットフォームに参入してくるでしょう。アドビのツールを使っているデザイナーのワークフローにVRを組み込むことなどが今後、出てくると思います」
疑問(4)そもそもメタバースの中で経済活動は生まれる?

――これまで仕事の仕方をどう変えるかという視点でお話を伺いましたが、次にメタバースの市場について聞かせてください。メタバースの中で経済活動は生まれると思いますか? つまり、現実世界とは別の新たな市場が生まれるかどうか、どうお考えですか?

「それは、時間が教えてくれるでしょう」

――コリンズさんのお考えは?

「多数のユーザーがVRに集えば、実際に会議場に行ったり高価なホテルに泊まったりする必要はなくなります。企業にとって実質的な経費削減につながることで、サービスプロバイダーはさまざまな(新しいサービスの)検討をするはずです。投資が集まり、開発会社は事業化を繰り返し、メタバースはどんどん発展していくに違いありません」

「私たちは通常では困難な人々の結び付きを支援しようとしています。この技術はあらゆる業種に役立つと信じています」

疑問(5)メタバースでビジネスを展開するための鍵は?

――では、そのためのキーポイントは? どうすれば多くの消費者がメタバースの中で消費などの活動をするとお考えですか?

「さまざまな要素があると思いますが、まず明確なビジョンと長期的な投資が重要だと思います。進化には時間がかかります。一朝一夕にできるものではありません。開発会社との協力も必要です。ソフトウエアの開発キットやアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)の成熟も必要でしょう」

「投資をして一緒に学ぶパートナーを見つけ、多様なニーズを持つユーザーが増える。このプラットフォームでさまざまな問題解決ができることを示せば普及が進み、そうなればより多様な体験ができるようになると考えています」

(日経BPシリコンバレー支局 島津翔)

[日経ビジネス電子版 2022年11月9日の記事を再構成]
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