コスタリカ貿易相、TPP加盟26年までに「供給網に貢献」

コスタリカ貿易相、TPP加盟26年までに「供給網に貢献」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB105Y50Q2A111C2000000/

 ※ 今日は、こんなところで…。

『中米コスタリカのトバル貿易相は8月に加盟を申請した環太平洋経済連携協定(TPP)について「2026年5月までの合意と批准を目指す」と表明した。医療機器などのアジア向けの輸出拡大に意欲を示し「サプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化に貢献できる」と強調した。

都内で12日までに日本経済新聞の取材に応じた。コスタリカは貿易額の約4割を米国が占める。米企業は生産地を消費地に近づける「ニアショアリング」を進め、インテルはコスタリカの半導体拠点への投資を増やしている。

トバル氏は友好国で供給網を再構築する「フレンドショアリング」推進にむけた米政府の動きを「注視している」と述べた。米政府が半導体分野に投じる補助金について、コスタリカに関連拠点を誘致しやすくするため、米国と協議しているとも明らかにした。

背景にある米中対立に巻き込まれることへの警戒もにじませた。コスタリカは07年に台湾と断交して中国と国交を結んだ。トバル氏とともに取材に応じたアンドレ外相は中国の影響力拡大への懸念は「ない」と言い切り、対中政策の見直しは不要だとの立場を強調した。

中国が国連安全保障理事会の常任理事国であることを理由に挙げ、中南米が中国と経済関係を深めようとするのは「自然な動きだ」とも主張した。

TPPには英国や中国、台湾が21年に加盟を申請した。中南米でもエクアドルが続き、ウルグアイも近く申請する方針を示している。トバル氏は「関税撤廃などの条件を満たす用意がある」と話し、現政権下での加盟実現を目標に日本などに働きかけていると説明した。

トバル氏とアンドレ氏は7日に西村康稔経済産業相と会談し、アジア太平洋地域の自由貿易の推進に取り組むことで一致した。林芳正外相とも8日に会談した。』

「ASEAN式握手」復活せず 東アジア首脳会議

「ASEAN式握手」復活せず 東アジア首脳会議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGS122QP0S2A111C2000000/

『【プノンペン=井上航介】東アジア首脳会議など東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議が13日、閉幕した。3年ぶりの対面での首脳会議となったが、ある光景がみられなかった。首脳が両腕を交差させる独特な握手だ。

一体性や連帯を意味するこの握手は「ASEAN式握手」などと呼ばれ、壇上の各国首脳が横一列になり、ひとつにつながる。新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)前で会議がオンラインになる前は、ASEAN関連の会議の写真撮影でほぼ毎回行われてきた。

東アジア首脳会議では各国首脳がASEAN式握手をするのが恒例となっていた(2019年11月4日、バンコク)=ロイター

ASEAN関連の首脳会議ではこれまで、加盟国以外の首脳もこの方式で握手していた。2017年にマニラで開かれた会議に途中まで参加したトランプ米大統領(当時)は、握手の仕方がわからず困惑する様子がカメラに捉えられた。

トランプ前米大統領は在任中、独特な握手に戸惑った様子を見せた(2017年11月、マニラで開かれたASEAN関連首脳会議の開会式)=ロイター

新型コロナウイルスの流行で感染対策が必要になると、ASEAN式握手も一時とりやめとなっていた。今年8月にプノンペンで開いたASEAN外相会議では復活したが、11日に始まったASEAN首脳会議など一連の会議では首脳が並んで手を振っただけだった。

13日の東アジア首脳会議は各国首脳がステージに上がることなく始まった。冒頭で記念撮影すらしないのは異例だ。議長国カンボジアのフン・セン首相は記者会見で「最初から予定されていなかったからだ」と述べるにとどめ、詳細な説明を避けた。

米国とロシア、中国などの対立関係が影響しているとの臆測もある。仏メディアの記者は「米国などの西側諸国が(ロシアの)ラブロフ外相と並んで撮影されるのを嫌がったのでは」と推測する。

ASEAN加盟国では21年2月のクーデターで全権を掌握したミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官も招待されなかった。各国の関係が複雑さを増すなかで、友好的な雰囲気を演出するのは難しいとの判断が働いた可能性がある。

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ミャンマー問題で「全会一致」逸脱 』

ロシア軍事会社、「裏切り」で戦闘員処刑か 捕虜交換後

ロシア軍事会社、「裏切り」で戦闘員処刑か 捕虜交換後
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB132QJ0T11C22A1000000/

 ※ 一(イチ)「民間企業」が、そういうことやっても、許されるのか…。

『ロシアのプーチン大統領に近い民間軍事会社「ワグネル」が、ウクライナで捕虜になった後にロシアに帰還した戦闘員を処刑した疑いが浮上した。独立系メディアが13日伝えた。戦闘員は捕虜として拘束された際、ウクライナ人記者に「(ロシアと)戦うため投降した」と話したといい、ワグネルから「裏切り者」と見なされた可能性がある。

戦闘員は50代の元受刑者。「処刑」に関する動画がワグネル系の通信アプリに12日に掲載されており、投降を防ぐ「見せしめ」効果を狙ったもようだ。

ウクライナ人記者によるインタビューが公開されたのは9月4日。今月11日に捕虜交換が行われ、ワグネル戦闘員が帰還したと指摘されていた。ただ、ゼレンスキー政権は、ロシア兵に投降を呼び掛ける際、身の安全は保証し、意に反してロシアに戻すことはないと約束している。

ワグネル創設者で「プーチンのシェフ」の異名を取る実業家エブゲニー・プリゴジン氏は13日、動画について「素晴らしい演出だ」と表明。「彼はウクライナで幸せを見つけられなかった後、善良ではないが公正な人々に出会った」と述べ、ワグネルの処刑であることを示唆した。プリゴジン氏はかねて脱走時の射殺を警告している。(時事)

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中国共産党の「出先機関」が日本国内に存在した…!

中国共産党の「出先機関」が日本国内に存在した…!国際法「完全無視」のヤバい実態
https://news.yahoo.co.jp/articles/f2f9ca8300e0d908f2a6f4181ffeca57d9e3213c?page=1

『中国共産党の出先機関が世界中に

Photo by gettyimages

 中国共産党の「悪辣さ」がまた1つ、明らかになった。国際法や他国の主権を無視して、米国や欧州、アフリカ、南米、日本などに「海外警察サービスセンター」と呼ばれる独自の警察拠点を築いていたのだ。犯罪者だけでなく、反体制派の摘発が狙いであるのは確実だ。

【写真】習近平が、ついに「禁じ手」…! 中国の「人工雨」と「環境破壊」がヤバすぎ

 この問題は、スペインの非政府組織(NGO)「セーフガード・デフェンダーズ」が9月12日、中国の海外警察サービスセンターの活動を詳細に調査した報告書を公表して、るみに出た。

 オランダのメディアが10月25日、最初に報じ、その後、英BBCなども追随して、世界に波紋を広げた。オランダ外務省の報道官は「中国警察の非公式出先機関が存在するのは違法」と語り、当局が調査に乗り出した。中国側は「海外在住の中国人のための行政サービス・ステーション」と否定している。

 「110 overseas(海外の110番)~常軌を逸した中国の国境を超えた取り締まり」と題された報告書によれば、中国福州市と青田市の2つの公安当局が、5大陸21カ国で計54の警察拠点を築いていた。アイルランドのダブリン、オランダのロッテルダムとアムステルダム、英国のロンドンとグラスゴー、スペインはバレンシアとマドリードに3カ所、米国、カナダ、ナイジェリアといった具合である。

 なかには、日本の拠点もある。報告書には「東京都千代田区神田和泉町〇〇」と所番地まで記され、電話番号も付記されていた。ちなみに、この番地を検索すると、中国福州市の関連団体と思われる一般社団法人がヒットした。ただし、この団体と警察拠点の関係は不明だ。
何を目的とした組織なのか?

 いったい、この警察拠点はどんな活動をしているのか。

 報告書によれば、最初は公安当局が海外で不法な活動をしたり、逃亡した詐欺犯などを摘発する活動が発端だった。やがて直接、海外に拠点を設けて、容疑者に接触し、中国に帰国するよう「説得」する活動に発展した。説得といっても、実態は脅迫に近い。

 たとえば「中国に帰らなければ、両親や親族が大変な目に遭うぞ」と脅す。応じなければ、実家に「ここは詐欺の巣窟だ」などと記した看板を立てられ、警察の捜査対象であることを付近の住人に知らせる、あるいは子供を学校に行かせない、といった手段が使われた。

 親族は警察に協力する義務を負っており、協力しなければ、彼ら自身が処罰の対象になる。親族が住む家の電力や水道が遮断される場合もある。犯罪に関連する不動産や資産は当然のように、没収された。

 その結果、中国当局によれば、2021年4月から22年7月までの間に23万人の中国人が「自発的に帰国」し、司法処分を受けたという。

 中国は「中国人が居住してはならない9カ国」を指定している。トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、ミャンマー、タイ、マレーシア、ラオス、カンボジア、フィリピン、インドネシアだ。実際には、これらの国にも中国人はいるが、彼らは「特別な理由」で例外扱いされているようだ。』

『もはやただの「警察拠点」ではない

 問題の海外警察サービスセンターは、カンボジアを除く8カ国以外の取り締まりに従事している。センターは福州市や青田市の警察だけでなく、中国共産党中央統一戦線工作部(United Front Work)とも連携している。

 中央統一戦線工作部は、中国共産党と党外のざまざまな組織の連携を司る党中央委員会の直属組織だ。たとえば、新型コロナの発生直後、華僑などを通じて、世界中のマスクや防護服を買い占める作戦の司令塔を担っていたのも、この組織である。

 この1点を見ても、警察拠点が単なる犯罪者の摘発や行政サービスを担う組織ではない、と分かる。汚職官僚や反体制活動家の摘発にも関与しているのだ。

 統一戦線工作部はそれぞれの国の協力者を通じて、情報収集したり、捜査摘発活動の便宜を図ってもらう一方、協力者には党幹部との会合設営や表彰などの形で報奨を与えていた。

 政治犯や詐欺、横領などをして海外に逃亡した容疑者の摘発活動は「フォックス・ハント(狐狩り)作戦」と呼ばれている。人民公安ニュースという中国メディアは2019年3月23日、次のような記事を掲載した。


〈海外サービスセンターの創設によって、青田市警察は海外に逃げた逃亡犯の確保にめざましい突破口を開いた。2018年以来、警察は海外在住の中国人に関係した6件の犯罪を摘発し、解決した。指名手配された逃亡者は逮捕され、2人の容疑者は海外センターの協力を受けて説得され、投降した〉

 これで明らかなように、海外センターは警察活動の一翼を担っている。彼らがターゲットにする狐のなかには、単なる犯罪者や汚職官僚だけでなく、政治犯もいたはずだ。
主権侵害の可能性が高い

国家安全法に反対するデモを取り締まる香港の警察[Photo by gettyimages]

 最大の問題は、こうした活動が当該国の同意や合意なしに、一方的な中国の裁量によって実行されている点である。主権侵害や当該国の法律に違反している恐れが、かなり高い。その一端は、中国が2022年9月2日、全国人民代表大会常務委員会で可決した「反テレコム・オンライン詐欺法」にうかがえる。同法の第3条は、次のように定めている。

〈この法律は、中国領土におけるテレコム・オンライン詐欺に適用されるとともに、海外で実行された中国市民によるテレコム・オンライン詐欺にも適用される。また、中国領土の人々に対するテレコム・オンライン詐欺に関わった海外の組織、個人も責任を負う〉

 つまり、中国は、自国の法律を海外の組織や個人に対して適用するのである。たとえば、日本人が日本にいながら、いつなんどき、中国の法律を適用されて、罪に問われるか分からない、という話になる。法の域外適用が国際的に許されないのは、当然だ。

 こうした中国のデタラメさには、実は前例がある。2020年に香港に導入した国家安全法だ。同法38条は「香港特別行政区の永住民の身分を備えない人が香港特別行政区外で香港特別行政区に対し、本法に規定する犯罪を実施した場合は、本法を適用する」と定めていた。

 自分が勝手に作った法律を、外国にいる外国人にも適用する。正当な弁護を受ける権利も保証されない。あたかも、中国は「世界はオレの言うことを聞け」と言わんばかりなのだ。これでは、友好協力もへったくれもない。こんなことを許してはならない。

 岸田文雄政権は、日本の警察拠点と指摘された施設について、そこで何が行われているのか、徹底的に調べるべきだ。それとも、親中派で固めた政権に、それを要求するのは無理な話なのだろうか。この問題への対応は、岸田政権の地金を試すリトマス試験紙になる。

長谷川 幸洋(ジャーナリスト)』

国境を越えた「暴走」? 中国が海外54カ所に設置している“警察署”とは

国境を越えた「暴走」? 中国が海外54カ所に設置している“警察署”とは
海外居住の中国人を取り締まる出先機関の実態
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72119

『2022.10.6(木)北村 淳

北村 淳のプロフィール

軍事社会学者。東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。警視庁公安部勤務後、平成元年に北米に渡る。ハワイ大学ならびにブリティッシュ・コロンビア大学で助手・講師等を務め、戦争発生メカニズムの研究によってブリティッシュ・コロンビア大学でPh.D.(政治社会学博士)取得。専攻は軍事社会学・海軍戦略論・国家論。米シンクタンクで海軍アドバイザーなどを務める。現在安全保障戦略コンサルタントとしてシアトル在住。日本語著書に『アメリカ海兵隊のドクトリン』(芙蓉書房)、『米軍の見た自衛隊の実力』(宝島社)、『写真で見るトモダチ作戦』(並木書房)、『海兵隊とオスプレイ』(並木書房)、『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』(講談社)『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』(講談社)『シミュレーション日本降伏:中国から南西諸島を守る「島嶼防衛の鉄則」』(PHP研究所)、『米軍幹部が学ぶ最強の地政学』(宝島社)などがある。』

『カナダは、香港の中国への返還(1997年7月1日)に伴って、その前後数年間に香港から大量の移民を受け入れた。その際、経済的要件(一定額以上の投資をカナダで行う、一定額以上の資産を保有する、など)による移民受け入れ枠を拡大したため、香港からだけでなく中国からも多数の移民がカナダに殺到した。

 香港をはじめとする中国系移民で溢れかえったカナダ西海岸の商都バンクーバーは“ホンクーバー”と称されたこともあったくらいである。

 ただし、いわゆるかつての移民やチャイナタウンの一般的イメージと違い、それら多くの中国系移民は富裕層であり、中国系移民の多くが高級住宅に居住し高級車を乗り回していた。そのため、一般の白人たちから“やっかみ”に基づく反発を受ける状況も見受けられた(それまでもバンクーバー周辺に中国系移民は少なくなかったが、白人優位社会であったことには疑いの余地はなかった)。

 その後も、教育熱心な家庭の中国系移民が続々と優秀な大学へ進学するため中国系以外の人々が入学するのが難しくなってしまった、などという軋轢も生じることになった。

 だが、香港返還から時間が経過するにつれ、企業経営者や地主が中国系という状況が普通になってしまい、表面だった反感は低調になっていった。』

(※ 無料は、ここまで。)

中国、警察の出先機関を外国で設置か オランダが「違法」と非難

中国、警察の出先機関を外国で設置か オランダが「違法」と非難
https://www.bbc.com/japanese/63396068

『2022年10月27日
アナ・ホリガン、BBCニュース、オランダ・ハーグ

中国政府が「警察の出先機関」を少なくとも2カ所、オランダで無申告で設置しているとして非難されている。

オランダのメディアは25日、中国がヨーロッパにいる反体制派を黙らせるため、外交サービスの提供を役割とする「海外サービスステーション」を利用している証拠を見つけたと報じた。

オランダ外務省の報道官は、中国警察の非公式の出先機関が存在するのは違法だと述べた。

オランダの中国大使館は、そうした存在を認識していないとしている。

オランダ当局は調査に乗り出している。発端となったのは、スペインに本拠を置くNGO「セーフガード・ディフェンダーズ」が発表した「Chinese Transnational Policing Gone Wild」(中国の国境を越えた取り締まりが常軌を逸する)と題した報告書だった。

同NGOによると、中国の2つの省の公安局が、5大陸21カ国で計54の「海外警察サービスセンター」を設立していた。大半はヨーロッパにあり、スペインには9カ所、イタリアには4カ所ある。イギリスでは、ロンドンに2カ所とグラスゴーに1カ所あるという。

表向きには、国際犯罪への対処と、中国の運転免許証の更新などの行政事務をするために作られた。しかし、セーフガード・ディフェンダーズによると、実際には、反中国政府の発言をした疑いのある人々を強制的に帰国させるための「説得作戦」を実施しているという。

オランダの報道機関RTLニュースと調査報道プラットフォーム「フォロー・ザ・マネー」は、同国で中国警察に追われているという中国の反体制派、ワン・ジンギュ氏の話を伝えた。

それによると、同氏は今年、「海外警察サービスセンター」の関係者を名乗る人物から電話を受けた。

その際、「自らの問題を整理する」ために中国に戻るよう強く求められた。「そして両親のことを考える」よう言われたという。

それ以来、同氏は組織的な嫌がらせと脅迫を受けるようになった。中国政府の代理人が画策していると、同氏は考えているという。
オランダは調査と保護の意向

オランダの中国大使館はRTLニュースに対し、そうした警察の出先機関の存在は知らなかったとした。

オランダ外務省のマキシム・ホヴェンカンプ報道官は、「オランダ政府は、そうした取り組みについて、中国政府から外交チャンネルを通しては聞いていない。それ(中国の行為)は違法だ」と述べた。

また、政府として調査し、適切な対応を判断する必要があると説明。「中国国民がここオランダで脅しや嫌がらせを受けているとされるのは、非常に心配なことだ。警察が当該男性に保護を提供するため、どういう方法があるか検討している」とした。

パスポートの更新やビザの申請などの業務は通常、大使館や領事館が担当する。そうした場所では、ウィーン条約に定められた外交ルールが適用される。オランダも中国も同条約の締約国だ。

中国が批判を浴びているような警察の出先機関は、ホスト国の司法権や法律の下で与えられる保護を届かなくし、その国の領土保全を侵害する可能性がある。

中国外交部の汪文斌報道官は26日、警察の出先機関と外国で呼ばれているものは、「実際は国外にいる中国人のためのサービスステーション」だと説明。中国は他国の司法権を全面的に尊重していると述べた。

また、新型コロナウイルスの影響で多くの中国人が帰国できていないとしたうえで、「それらの人々が困難を乗り越えるのを支援するため、関係する地方政府がオンラインサービスのプラットフォームを開設している。こうしたサービスは主に健康診断や運転免許証の書き換えを対象としている」と話した。
脅迫して帰国を強要か

セーフガード・ディフェンダーズは、中国の取り締まり戦術について、犯罪との関連をしっかりと立証することや、ホスト国の適正手続きに従うことなしに容疑者を標的にしている点で「問題がある」としている。

取り締まりの主な手法は強要や脅迫で、逃亡者とされる家族を「説得」して帰国させるために実行されていると、同NGOは述べている。

中国では9月2日、「反電信・オンライン詐欺法」が成立した。これにより、その種の詐欺の疑いがある世界中の中国国民について域外管轄権が確立された。

理屈の上では、この新しい法律と、外国にいる中国の警察部隊によって、反体制派は逃げ場を失うことになる。

オランダへの亡命が認められた中国の反体制派に保護を保証し、オランダではオランダの法律が優先されることを示すよう、オランダ政府に圧力がかかっている。

(英語記事 China accused of illegal police stations abroad)』

[FT]中国富裕層、国外脱出加速 習近平氏続投に警戒強く

[FT]中国富裕層、国外脱出加速 習近平氏続投に警戒強く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB1411U0U2A111C2000000/

『20代後半の中国人ビジネスコンサルタントのアイザックさんにとって、中国の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)が10月の共産党大会で驚くほど権力を自身に集中させたことは、最後の決定的な一撃になった。

アイザックさんは北京の一流大学出身で、中東で仕事を探している。当局による報復を恐れ、それ以上の情報を明かさないよう求めた。同世代の大半の人たちと同じく一人っ子だ。両親は同伴するには「年齢的に厳しい」が、アイザックさんが夏の終わりに国を離れたことに満足しているという。

アイザックさんは「(習氏の任期後に)変化の望みがあるなら、帰国を検討する」と語った。「それまでは他の国でチャンスを探す」

アイザックさんは習氏が共産党総書記として異例の3期目入りをしたのと相前後して、国外に移住した多くの富裕層の一人だ。ビジネス環境の厳しさを理由に挙げる者もいれば、政府の政策の方向性を懸念したとする者もいた。

家族や資産の安全な行き先を探している中国人富裕層の間では、シンガポールの人気が高まっている。

国外に脱出する中国人富裕層を顧客に抱える弁護士や移住専門家、コンサルタントへのインタビューによると、10月の共産党大会を機に中国のエリート層の国の将来に対する見方が変わった。
移住先でも中国当局による監視の目

だが中国政府は出入国と資本流出を厳しく規制しており、国外脱出には個人的にも金銭的にも非常に大きなリスクがある。海外暮らしにこぎ着けても、習政権が違法に設けた警察の出先機関の監視にさらされる。

欧州に拠点を置く弁護士で、中国を脱出する富裕層を支援するデービッド・レスペランス氏は「中国では、海外移住はいちかばちかの勝負だ。実行に移して失敗すれば、一巻の終わりとなる。出国を禁止され、財産を没収され、資金は消えうせる」と話す。

中国のネット通販最大手アリババ集団の創業者、馬雲(ジャック・マー)氏など多くが香港で家を購入しているように、香港は何世代にもわたって中国人富裕層の活動拠点になってきた。だが中国政府の弾圧により、うわべだけの安全も崩れた。

中国内陸部の四川省成都市に住む美術品収集家で投資家のワン・ジュエさん(35)は、一族の資産管理を担うプライベートバンク「ファミリーオフィス」を通じて資産の一部を香港からシンガポールに移している。

中国と香港はここ3年、新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う厳しい規制が足かせになってきたが、シンガポールは政治と経済が安定し、資金移動も容易なため「アジアに出て行く上で最適な拠点」だという。

シンガポールには「街頭の暴動」もないとも述べ、2019年の香港での反政府デモに言及した。
シンガポールに資産管理のファミリーオフィス

シンガポールの資産運用会社プライムアジア・アセット・マネジメントでディレクターを務めるカミラ・ジャン氏は、この1年ですでに中国人のファミリーオフィスを7つ設立したと話す。シンガポールは人口の約4分の3を中国系が占めており、文化的な魅力も人気の一因だと指摘する。

ジャン氏は「ある顧客は1年で3カ所に住んだ末、人口構成からシンガポールを選んだ。社会の一員になれると思ったようだ」と話す。

多くの富裕層は共産党大会の前からすでに、習氏による独裁体制の強化と中国のビジネス環境を一変させる広範な取り締まりに備えていた。

弁護士や移住専門家は、脱出計画をすでに実行に移している富裕層もいると話す。自らや家族のために新たな市民権を手配したり、資金や資産を他の国・地域に移したりしているという。

最富裕層は一部の国で提供されている超富裕層向けの投資移民制度も利用できる。ただし、このプロセスには数年かかる。

習政権下での環境変化の速さを見誤った者にとって、今や何より重要なのはスピードだ。
英国での不動産購入も話題に

シンガポールの移住コンサルティング会社ECホールディングスのフィリップ・メイ最高経営責任者(CEO)は、中国からの要望で最も多いのは「2つ目のパスポートを早急に手配して欲しい」というものだと話す。

メイ氏は「早急といっても2~3カ月かかる。心理的な問題だ」と説明する。

こうした顧客にはセントクリストファー・ネビスやドミニカ、アンティグア・バーブーダなどカリブ海諸国でのパスポート取得を紹介することが多い。

中国の富裕層は長年にわたり海外の優良資産を買いあさってきたが、英不動産仲介大手ストラット・パーカーのロンドン新築住宅販売部門を統括するキール・ワデル氏は、中国人の買い手が英国に押し寄せていると「市場で話題になっている」と話す。

「中国人の関心が高いのは(500万ポンド=約8億円=以上の)高級市場と(1000万ポンド以上)の超高級市場だ」と述べ、「ポンド安」も海外の買い手を引き付けている一因だと説明する。

もっとも、中国国外への資金持ち出しも政府の資本逃避規制に直面している。

9月に米国に移住したある中国人テック起業家は「今は中国からなかなか資金を持ち出せないとみんな言っている。銀行が多額の海外送金に慎重だからだ」と話す。

「私も中国の銀行口座に資金があるが、送金の審査に時間がかかっている」とも述べた。この人物も安全上の懸念から身元を明らかにしないよう求めた。

海外脱出は在外中国人の法的保護という暗部もあぶり出している。習政権下で中国の監視機関や治安機関は海外にも手を伸ばすようになり、米国など各国はこうした出先機関が異国の地で中国人を抑圧、強制送還、拉致していると主張する。

中国の状況に詳しい米シートンホール大学のマーガレット・ルイス教授(法学)は、中国政府による中国人や資産を戻すようにとの圧力は外国政府にとって「厄介な問題だ」との見方を示す。

「これには大きな疑問がある。(中国で)法と呼ばれる文書に文言があるというだけで、誰が送還しなくてはならないのか。誰かを送還する必要があるのか」

By Edward White, Mercedes Ruehl and Arjun Neil Alim

(2022年11月12日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』

和平交渉はウクライナ次第 米国務長官、外相に伝達

和平交渉はウクライナ次第 米国務長官、外相に伝達
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB130D20T11C22A1000000/

『【プノンペン=共同】ブリンケン米国務長官は12日、カンボジア首都プノンペンでウクライナのクレバ外相と会談し、同国への侵攻を続けるロシアとの和平交渉を始める時期や交渉内容はウクライナの決定次第だと伝えた。国務省が発表した。

米紙ワシントン・ポストは、米政権がウクライナにロシアとの和平交渉を一切拒否する態度を改め、前向きな姿勢を示すよう勧めていたと報道したが、ブリンケン氏は交渉を強いる意図はないとし、ウクライナ支援を続けると改めて強調した。

両外相は東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合出席のためカンボジア入りした。』

「米国民が共和トランプ派拒否」 民主上院トップ

「米国民が共和トランプ派拒否」 民主上院トップ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN131FJ0T11C22A1000000/

『【ワシントン=坂口幸裕】米民主党上院トップのシューマー院内総務は13日、連邦議会上院選で民主の多数派維持が確実になったことを受け「米国民にとって大きな勝利だ」と述べた。民主が「MAGA(マガ)」と呼ぶトランプ前大統領や支持勢力を念頭に「米国民が反民主主義で過激なMAGA共和党を拒否した」と訴えた。

ニューヨークで記者団に語った。バイデン大統領らはトランプ氏のスローガン「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」の頭文字から同氏や信奉者をMAGAと呼び、民主主義を脅かす存在だと非難してきた。

シューマー氏は「民主は上院で多数派を占めることになり、私は再び上院多数派のリーダーになる。この選挙は民主と米国の勝利と正当性の証明だ」と強調。「米国民はMAGA共和がめざした反民主主義、権威主義、分断を拒んだ」と話した。

【関連記事】

・米中間選挙、民主が上院多数派を維持 ネバダ州制す
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・トランプ氏、復権戦略に狂い 激戦州で推薦候補苦戦

米中間選挙2022 https://www.nikkei.com/special/us-election?n_cid=DSREA_2022usmidterm 』

第3次世界大戦 起きるリスクは?

第3次世界大戦 起きるリスクは?
本社コメンテーター 秋田浩之 ~「日本の論点2023」から
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD0731B0X01C22A1000000/

『2023年はどんな年になるのか。日本経済新聞のコメンテーターや編集委員がさまざまな分野から2023年を展望し、分析するための視座をこのほど出版した「これからの日本の論点2023 日経大予測」(日本経済新聞出版)から紹介する。

国際社会はまもなく、第3次世界大戦に向かってしまうのだろうか。想像したくないことだが、そのようなシナリオは完全には拭いきれない。少なくとも、そう思わざるを得ない3つのリスクがある。

第1に、ロシアによるウクライナ侵攻によって、1945年以降、大戦の再発を防いできた「核のタブー」が揺らいでいる。

第2に、台湾海峡で戦争が起きる危険が高まりつつある。

第3に、長年の平和を支えてきた米国主導の秩序が、名実ともに崩れ去ってしまった。世界はいま、「西側陣営」「中立パワー」「中ロ陣営」の3つに割れている。

この3つのリスクについて、個別にみてみよう。

「核のタブー」が崩れ去る日

1945年以降、第3次世界大戦が起きるのを防いできた最大の歯止めは、核兵器の恐怖である。米国とソ連は冷戦中、世界を破滅させかねないほどの核兵器をため込んだ。良くも悪くも、この核の恐怖が米ソに自制を促し、直接戦争を避けることができた。

ところが、ウクライナでの侵攻がこのまま長引けば、ロシアが「核のタブー」を破り、小型核を使う危険が高まる。ロシアは軍事ドクトリンで、一定の条件にもとづく核使用を定めている。ロシア軍にくわしい専門家によれば、ロシア側の戦況がいちじるしく不利になった場合がそのひとつだ。核使用によって相手を強く威嚇し、戦闘がさらにエスカレートするのを防ぐ――。そんな発想が軍事ドクトリンには盛り込まれているという。同専門家はこう指摘する。

「このまま戦争が長引けば、ロシア軍は体力を消耗し、侵略地域を広げられない膠着状態に陥るだろう。米欧から供与された兵器でウクライナ軍が反攻を強めており、さらにロシア軍を押し返す展開も考えられる。そうなれば、プーチン・ロシア大統領はウクライナを威嚇し、戦況を好転させるため、小型核を使いかねない。ロシアの支配下にあるクリミアがウクライナの攻撃にさらされた場合にも、プーチン氏は核使用に踏み切る可能性がある」

もし、ロシアがウクライナへの核攻撃に踏み切れば、1945年以降、大戦勃発を封じ込めてきた「核のタブー」は崩れてしまう。米国および北大西洋条約機構(NATO)としても座視することは難しいだろう。バイデン政権がウクライナへの介入を避けているのは、核戦争を避けるためだ。ロシアが一方的に核攻撃に出れば、米欧の世論が強く反発し、ロシアへの報復を求める声も強まるに違いない。その結果、ウクライナでNATOとロシアがぶつかり、第3次世界大戦が始まる――。こうしたシナリオは絵空事とは言い切れない。

台湾海峡、高まる米中の戦争リスク

さらに、第3次世界大戦の危険を帯びているのが、台湾海峡の情勢だ。民主党のペロシ米下院議長が2022年8月2~3日に台湾を訪れたことに中国が激しく怒り、緊張は新しい段階に入った。中国軍は、台湾を包囲するように周辺の6カ所で大がかりな軍事演習に踏み切った。

2022年に入り、米国からは超党派の議員団やポンペオ前国務長官、エスパー前国防長官らの訪台が相次いでいる。同年9月までに7回、バイデン政権は台湾への武器の供与を決めた。さらに、バイデン政権は同年2月に初となるインド太平洋戦略を発表し、台湾の自衛力の向上を助けるとともに、台湾海峡での侵攻を防ぐとも約束した。

米国による台湾へのてこ入れは決して一過性ではなく、2023年以降も加速していくとみられる。内政では激しく敵対する共和党と民主党だが、台湾支援では一致している。台湾への関与を急ぐ立場では、米政府、米軍も一枚岩である。仮に、2024年秋の米大統領選で共和党候補が勝ったとしても、米台の接近は続くに違いない。

米国が一丸となって、台湾てこ入れに躍起になるのはなぜか。中国による香港弾圧をきっかけに、台湾の民主主義を守ろうという熱意が強まっている。中国の圧力に台湾の民主主義が屈したら、東南アジアや南太平洋でも似たような強権ドミノが起きかねないという危機感がワシントンにはある。

世界で半導体の不足が深刻になるなか、ハイテク拠点としての台湾の価値も増している。台湾は半導体の受託生産で、世界の半分以上(売上高ベース)のシェアを誇っている。

しかし、米国が台湾に関与を深めるいちばんの理由は、もっと切実なものだ。ここで台湾を支えなければ、中国による台湾侵攻が現実になり、米国などを巻き込んだ大戦に発展しかねない。こんな切迫感が、ワシントンでは高まっているのである。

世界秩序、危ない3極体制に

米国の影響力が衰え、中国の国力が急速に強まるにつれ、米国主導の世界は終わった。

代わりに表れてきたのは、第2次世界大戦前の1930年代のような危ない秩序だ。それは一部識者が予測したような「Gゼロ(無極化)」ではなく、3極化された秩序だ。3つの異なる勢力がせめぎ合う世界である。

第1の勢力は、米国や欧州連合(EU)、日本、韓国、オーストラリア、英国、カナダといった民主主義を中心とする「西側陣営」だ。

第2は、中国とロシアを中心とする「強権勢力」である。イランや北朝鮮、キューバなどが加わる。

そして第3は、どちらにもくみしないインドや南アフリカ、インドネシア、トルコ、ブラジルといった「中立パワー」だ。

今後、3極の分断がさらに深まり、世界の緊張が高まっていくとみられる。

▼発売中の「これからの日本の論点2023 日経大予測」の一部を抜粋、加筆・再構成した。同書の詳しい内容はこちらから。https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/22/09/20/00396/

【関連記事】長引くインフレ退治 世界同時不況の恐れも

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福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
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分析・考察

『第三次世界大戦はもう始まっている』という本が売れるくらいです。記事の懸念は多くの人が共有していますね。
歴史家カーは第二次世界大戦中に、「相手(この場合は日独伊)が愚かで邪悪なために正しい原理に従えないのではなく、原理(当時の世界秩序)そのものが適用の難しいものだった」という趣旨のことを述べています。これは契約交渉から国際政治に至るまで、常に念頭に置いておくべきことでしょう。
もちろん軍事侵攻のような蛮行には断固とした対処が必要です。しかし同時に、なぜ世界は分極化してしまうのか、これまでの西側の原理のどこが制度疲労を起こしているのか。軽信せずに考え続けることもまた、平和への努力ですね。
2022年11月14日 8:06 (2022年11月14日 8:11更新)

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

局所的な戦争が起きるが、世界大戦が起きる可能性は高くない。目下、一番心配されている台湾有事についてリスクに備える必要があろうが、実際に戦争になる可能性はそれほど高くない。人を咬む犬は吠えない。逆に吠える犬は人を咬まない、威嚇するだけ。中国は台湾に侵攻するとすれば、武力行使を辞さないなどといわない。いきなり攻撃して取ってしまう。しかし、台湾海峡を渡る難しさ、台湾軍が反撃してくるため、台湾を攻略できる勝算が高くない。だからいつも言葉で警告するだけ。それは国際社会に向けたメッセージというよりも、中国国内に向けたメッセージとみるべきである

2022年11月14日 7:45

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

米国とソ連の冷戦構造が崩壊した後、「平和の配当」ということがよく言われた。冷戦が実際の戦争に転じるリスクを警戒して投じてきた多額の軍事費が、不要になる。軍隊の規模が縮小されれば、より多くの若者が経済活動に従事するようになり、経済成長に貢献する。軍事利用を前提に生み出されてきたさまざまなテクノロジーが国民生活に身近な分野へと転用されるようになり、経済の成長力が高まる。「平和の配当」は、政治・軍事面やイデオロギーの対立から世界が分断されていないこと、地域紛争はあっても多くの地域では平和が保たれていることが前提だった。だが2022年には、そうした前提が決定的に崩れた。流れは反対の方向に向いている。
2022年11月14日 7:30 』

イスラエル大統領、ネタニヤフ元首相に組閣を指示

イスラエル大統領、ネタニヤフ元首相に組閣を指示
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB132QH0T11C22A1000000/

『2022年11月13日 21:59

【エルサレム=共同】イスラエルのヘルツォグ大統領は13日、国会(定数120)総選挙で第1党になった右派「リクード」党首のネタニヤフ元首相に組閣を指示した。連立協議が本格化する。ネタニヤフ氏の支持勢力は過半数を確保しており、同氏の首相返り咲きが確実視されているが、閣僚人事などを巡り協議が難航する可能性もある。

ネタニヤフ氏支持勢力はリクードのほか、対パレスチナ強硬派の極右政党連合「宗教シオニズム」など計3党で、計64議席。同氏が政権樹立に成功すれば、イスラエル史上最も右寄りの政権になるとみられ、国内外に懸念が広がっている。

組閣期限は原則4週間で、2週間の延長が可能。ヘルツォグ氏は各政党から誰を首相に推薦するかを聴取、組閣できる可能性が最も高いのはネタニヤフ氏だと判断した。

地元メディアによると、ネタニヤフ氏は「全てのイスラエル人のために仕事をする新政府をつくる」と強調した。

ネタニヤフ氏は通算15年以上首相を務める一方、収賄や背任の罪で起訴され公判中。昨年3月の総選挙を機に下野した。』

イスタンブールで爆発、6人死亡 容疑者拘束と現地報道

イスタンブールで爆発、6人死亡 容疑者拘束と現地報道
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB132YE0T11C22A1000000/

『2022年11月13日 23:16 (2022年11月14日 12:31更新)

【イスタンブール=木寺もも子】トルコ最大都市イスタンブールの中心部で現地時間の13日午後4時20分(日本時間同午後10時20分)ごろ、爆発が起きた。オクタイ副大統領は6人が死亡、81人が負傷したと明らかにした。トルコ国営アナトリア通信は14日、ソイル内相の話として爆発現場のイスティクラル通りに爆発物を置いたとみられる容疑者が拘束されたと報じた。

エルドアン大統領やオクタイ氏によると、爆弾を起爆した実行犯は女で現場から逃走したとみられる。中東の衛星放送局アルジャズィーラは捜査関係者の話として、女が少数民族のクルド系だと伝えた。ソイル内相は14日、記者団に対し、爆発には「(非合法武装組織である)クルド労働者党(PKK)の関連組織が関与しているとみられる」と述べた。

爆発の現場は新市街の中心地タクシム広場に近いイスタンブール随一の繁華街で、地元市民のほか、観光客で混み合う。在イスタンブール日本総領事館によると、13日午後6時半時点で日本人が巻き込まれたとの情報は入っていない。
トルコ・イスタンブール中心部で起きた爆発の現場を調べる警察官ら(13日)=ロイター

当局はSNS(交流サイト)などで「恐怖や混乱をあおってテロ組織を利しかねない情報」の発信を禁止し、メディアにも公的機関が発表する以外の情報を報道しないよう要請した。電話やインターネットはつながりにくくなっている。

トルコでは2015~17年ごろに過激派組織「イスラム国」(IS)などによるテロが相次ぎ、タクシム広場付近でも死者が出た。近年はシリア国境に近い南東部などを除き、大都市部の治安は比較的安定していた。

トルコでは23年半ばに大統領選・議会選が予定されており、テロで社会不安が高まれば影響を与えかねない。トルコはスウェーデン、フィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟を巡って両国のテロ対策などに不満を示している。加盟を認めるべきかどうかでトルコの世論が硬化する可能性もある。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
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日米韓、異例の連続首脳会談 東アジア安保の基盤構築

日米韓、異例の連続首脳会談 東アジア安保の基盤構築
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1312O0T11C22A1000000/

『【プノンペン=重田俊介】岸田文雄首相が3年ぶりの日韓首脳会談に踏み切ったのは日米韓の協調が東アジアの安全保障の基盤になるとみるためだ。東アジアには北大西洋条約機構(NATO)のような集団安全保障の枠組みはない。関係悪化が続いた日韓の傷の修復が急務となる。

【関連記事】

・日韓首脳3年ぶり会談 元徴用工問題、早期解決で一致
・北朝鮮核実験なら「強力に対応」 日米韓首脳が共同声明

プノンペンで催した13日の日米韓首脳の会談は異例の開催形式だった。まず日米、米韓の2カ国間の会談、日米韓3カ国の首脳会談を連続して開いた。そのうえで最後に岸田首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が顔を合わせた。

日本と韓国はそれぞれ米国の同盟国で、ともに米軍が基地を置く。今回の会談の流れからは米国が自国を起点に日韓とつながり、3カ国の安保上の結びつきを描く三角形の構図が浮かぶ。

背景には安保枠組みの特徴がある。米欧30カ国で構成するNATOは加盟国のどこかが武力攻撃を受ければ、すべての締約国への攻撃とみなしてともに反撃する。ウクライナが加盟を求める理由もここにある。

一方で東アジアには同様の仕組みがない。地域の抑止力を高めるには普段からそれぞれの国が密接な関係を築いておく必要がある。

その構図にも関わらず日米韓の枠組みは日韓関係の悪化を理由に2017年9月から22年6月まで5年ほど途絶えた。韓国海軍が18年に自衛隊機に火器管制レーダーを照射する事件が起き、自衛隊と韓国軍の部隊間の関係も冷え込んだ。

日本はオーストラリアなどと「準同盟」と位置付ける関係を構築する。それと比べて日韓の安保協力は周回遅れだ。

外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)もなく、演習時に燃料や弾薬を融通しあう「物品役務相互提供協定(ACSA)」も結んでいない。

韓国には長期滞在と永住者で4万人規模の日本人がいる。有事となった際、帰国を支援する自衛隊派遣を韓国側が受け入れるかの調整もついていない。

かろうじて締結しているのは韓国が一時、破棄を決定した軍事情報包括保護協定(GSOMIA)くらいだ。日米韓の枠組みを土台にして安保面の協力水準を引き上げる必要がある。

日米が韓国の抱き込みを急ぐのは他の狙いもある。

軍備を拡張する中国に向き合うのに韓国が必要だとみるためだ。バイデン氏は13日の日米韓首脳会談の冒頭で「台湾海峡の平和と安定を維持するための方策も議論する」と言及した。

会談後に発表した共同声明で海洋進出を強める中国を念頭に「一方的な現状変更の試みに強く反対する」と指摘した。これまで対北朝鮮の色彩が色濃かった日米韓の枠組みに対中の性格が帯びてきた。

10月の中国共産党大会で総書記として3期目に入った習近平(シー・ジンピン)国家主席は台湾統一に重ねて意欲を示した。

27年と言われた台湾有事には早期シナリオがささやかれる。日韓にとってアジアの安保基盤をともに担う態勢づくりの時間は限られている。

【関連記事】

・日米首脳、対中国政策擦り合わせ 防衛費増を「歓迎」
・北朝鮮の核に「圧倒的な力で対応」 米韓首脳が会談
・岸田首相、中国を名指し批判 東シナ海で「主権侵害」
・バイデン大統領「中国と衝突回避」 東アジア首脳会議で

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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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ひとこと解説

日韓関係にとって前進なのは確かです。ただ、まだ米国の力を借りている点が大きく、本格的な関係修復には徴用工問題の解決をはじめ首脳間の相互往来やシャトル外交の復活が待たれます。尹錫悦大統領の対日重視は一貫して揺らいでいませんが、心配なのは国内の逆風で、人事への批判に物価高や梨泰院事故などが重なって不人気から脱せないでいます。外交成果が切実な局面です。
2022年11月14日 8:55 (2022年11月14日 8:58更新) 』

米中間選挙、政敵たたきに賭けたバイデン氏 再選に望み

米中間選挙、政敵たたきに賭けたバイデン氏 再選に望み
編集委員 永沢 毅
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD095G80Z01C22A1000000/

『バイデン米大統領の命運を左右する中間選挙は与党・民主党が事前の予想を上回る善戦を演じた。大敗を免れたバイデン氏は2024年大統領選の再選に望みをつなぎ、復権に影が差す共和党のトランプ前大統領と明暗を分けた。

「米国、そして民主主義にとって良い日だった」。投開票から一夜明けた9日、バイデン氏は記者会見で笑顔をみせながらこう語った。事実上の勝利宣言のような光景だった。

バイデン氏が高揚するのもムリはない。連邦議会の下院は野党の共和党が多数派の奪還に向けてリードするが、民主党の議席減は限定的にとどまる公算が大きい。上院は多数派を維持し、12月の南部ジョージア州の決選投票しだいでは議席を増やす可能性すらある。

【関連記事】米中間選挙2022開票速報

赤い波押し返したバイデン氏の方針転換

世論調査にあった共和党が大勝する「赤い波」はおきなかった。赤は共和党のシンボルカラーで、民主党の青と対比される。

米ライス大の歴史家、ダグラス・ブリンクリー氏は中間選挙について「下院だけでなく、上院まで失えば『バイデンおろし』がおきかねない。上院で多数派を維持できれば、再選への足場を固めることができる」とみていた。

4年に1度の大統領選の合間の年にある中間選挙は現職の大統領の実績を問う信任投票になりやすい。政権への批判票が集まり、与党にとって厳しい結果になるのが通例だ。1934年以降の平均でみると、下院(任期2年、全435議席が改選)はおおむね28議席、上院(任期6年、全100議席の3分の1が改選)では4議席ほどを失っている。

下院は就任後に初の中間選挙に臨んだ民主党のクリントン、オバマ両大統領の52議席減、63議席減と比べると打撃は小さい。

善戦となった一因にはバイデン氏の方針転換がある。「この選挙は根本的に異なる2つの米国のビジョンを巡る選択だ」。選挙戦で同氏はこう訴え、自らの信任投票ではなく民主党と共和党のどちらが望ましいかを有権者に問う選挙に位置づけようとした。

この一環で、大統領に就任後は封印に努めてきたトランプ氏への名指しの批判を繰り広げた。「トランプ氏やその支持者の考え方は半ばファシズムのようだ」。こんな表現でトランプ氏らを断じたこともある。20年大統領選の結果を否定し、民主主義に危機をもたらしかねない存在とみなした。

中間選挙でバイデン氏は事前の民主党の劣勢をはねのけた(10日、ワシントンDC)=AP

高インフレなどで支持率低迷にあえいでいたバイデン氏にとってこの戦略は賭けといえる。というのも、同氏は米国の分断の解消を掲げて大統領に就いた経緯があるためだ。実際、共和党からは分断をあおっているとの批判が噴出し、民主党内にも「大ざっぱに言いすぎている」(ハッサン上院議員)と懸念する声があった。

9日の会見では「共和党とも協力する用意がある」と語った。バイデン氏は36年に及ぶ上院議員の任期で超党派で政策を実現してきた経験を持つが、就任後の2年弱で分断の深さを痛感したフシもある。

「この国を結束させると言ってきたし、かつてはできたはずだった。もはやあらゆることがすっかり変わってしまった」。9月中旬の党会合では、共和党がトランプ氏に支配されて協力の余地がほとんどなくなっていると嘆いてみせた。

バイデン、トランプ両氏に待つ難路

バイデン氏が公約違反ともいえる政敵たたきを解禁したのは、中間選挙対策からだけではない。

「残念ながら彼は(政策の実現に)大胆ではないし、人々を鼓舞する存在でもない」――。民主党の急進左派グループ「ルーツ・アクション」はバイデン氏の24年大統領選への出馬阻止に向けた運動を始めた。穏健派のバイデン氏では学生ローンの帳消しなど左派が求める政策の実現に壁があるとみているためだ。

米メディアの出口調査によると、3分の2以上の有権者がバイデン氏の再選出馬を望んでいない。トランプ氏との対決構図を打ち出したのは、党内にある「バイデン離れ」の動きに危機感を強めたバイデン氏が24年を視野に求心力を維持しようとする苦肉の策でもある。
民主党には連邦最高裁が妊娠中絶の権利を認めた過去の判決を覆したのも結果的には追い風となった。出口調査によると、有権者が選ぶ「最も重要な政策」は妊娠中絶(27%)がインフレ(31%)とほぼ同水準の2位だった。

40年ぶりの高インフレは政権への逆風となっていたが、妊娠中絶を巡る問題は女性の権利保護を優先する民主党支持層の票の掘り起こしにつながったとみられる。

バイデン氏の側近、クレイン大統領首席補佐官は善戦の理由を米CNNのインタビューでこう自賛した。「大統領は今回の選挙を信任投票ではなく、選択と位置づけた。民主党が支持している政策と、経済を破壊し中絶の権利を撤回しようとする共和党を比べたら、有権者は民主党の候補に票を投じるだろう」

民主党の善戦はバイデンおろしの広がりを封じる効果を生み、「バイデン氏はひとまず賭けに勝った」(民主党の議会スタッフ)といえる。ただ、下院を失えば政権運営は厳しくなる。

共和党の低調な戦いぶりで割を食ったのはトランプ氏だ。推薦した候補の8割ほどを当選させ、影響力を示した。しかし、大統領選でカギを握る東部ペンシルベニア州で敗北するなど穏健派の取り込みに課題が浮き彫りになった。

共和党の予想外の低調な選挙結果は、トランプ氏の次期大統領選への出馬に影を落とす(8日、米フロリダ州のトランプ氏の邸宅マールアラーゴ)=AP

トランプ氏は15日にも再選出馬を表明すると示唆していたが、米メディアによると側近が12月のジョージア州の決選投票まで延期するよう助言しているという。民主党内ではトランプ氏が大統領選に出馬する場合、対抗馬はバイデン氏しかいないとの見方が支配的だ。2年後に向けてはバイデン、トランプ両氏ともに難路が待つ。

【関連記事】バイデン大統領が挑む歴史の呪縛 異例ずくめの中間選挙

[日経ヴェリタス2022年11月13日号より抜粋]

日経ヴェリタス https://www.nikkei.com/theme/?dw=20062208 

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日経ヴェリタス https://www.nikkei.com/theme/?dw=20062208 』

メタバース不振で株暴落の米メタ、5つの疑問を直撃

メタバース不振で株暴落の米メタ、5つの疑問を直撃
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC104OF0Q2A111C2000000/

『米メタがフェイスブックから社名を変えて1年が過ぎた。新社名が表す通り、同社はメタバース(仮想空間)に力を注ぎ、多額の投資を継続してきた。その間、同社の株価は軟調に推移。社名変更した米国時間2021年10月29日の323.57ドルから丸1年で99.20ドルまで下落し、その価値は3分の1以下になった。

もちろんメタバースが先行投資フェーズであることは明らかだ。しかし、投資家は巨額投資にしびれを切らし始めている。

22年10月26日に同社が発表した22年7~9月期決算では、メタバース事業部門であるリアリティーラボが36億7200万ドル(約5366億円)の営業損失を計上。セグメント売上高は2億8500万ドル(約416億円)で、前年同期比から半減した。さらに23年度は同部門の営業損失が大幅に増加する見通しを示し、同社の株価は発表後の時間外取引で約20%急落した。

「一人負け」「期待はずれ」──。市場からこんな批判が漏れるなか、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は決算会見で、メタバースへの巨額投資を継続する方針を示した。

もっとも、この数カ月は業績や株価ばかりに注目が集まり、肝心のメタバースの可能性について議論される機会は少なくなった。同社は10月25日に仮想現実(VR)端末のハイエンドモデル「Meta Quest Pro(メタクエストプロ)」を発売したばかり。米マイクロソフトとの提携も合わせて発表した。

足元の数字を見るだけでは、メタバースの真価を見逃す恐れがある。この新技術は私たちにどんな便益をもたらすのか。また、本当にメタの次代の主力事業になり得るのか。同社でメタバースにおける働き方やコラボレーションなどを統括するマイカ・コリンズ・ディレクターに「5つの疑問」をぶつけた。

◇   ◇   ◇

疑問(1)「セカンドライフ」のようにブームで終わらない?

――仮想空間の一種だった「セカンドライフ」のブームが数年で終わったことを理由に、メタバースも一過性のブームで終わるのではないかという指摘があります。どう考えていますか?

「当時はセカンドライフをVRで体験する方法を研究する機関がいくつかあっただけでした。でも、今は違います。バーチャルな3次元空間に人々が集まり、物をつくり、体験をし、参加し、共有する。こうした経験を通じて社会的なつながりが持てるプラットフォームが数多く出現しています」

Micah Collins(マイカ・コリンズ)氏 Meta Director of Product Management for the Home & Work team。米グーグルでグーグルネストのディレクターを務めた後、2019年に米メタ(当時はフェイスブック)入社。Meta Horizon Workplaceなどワークツールの戦略立案を担当する。オンライン取材の様子を撮影

「(セカンドライフが一過性のブームで終わったのは)セカンドライフの問題でしょう。(メタバースの)3次元空間は携帯電話やパソコン(PC)、ウェブインターフェースなどの2次元のデバイスからでも接続でき、ヘッドマウントデバイスで完全に没入できます。業務用のアプリを通じて、次第に真の価値や社会的なつながり、娯楽などを提供する多くの成功例が見えてくるでしょう」

「既に市場では多くの成功例が出てきていますし、業界は多くのことを学んでいます。セカンドライフ初期の基礎的なアイデアを基に、新しいサービスを構築している例もあります」

疑問(2)マイクロソフトとの提携で何が変わる?

――10月11日にマイクロソフトとの提携を発表しました。コラボレーションプラットフォーム「Microsoft Teams(マイクロソフトチームズ)」をクエストから接続できるようにするなど、アプリ連携に向けて動き出しています。同社との提携はどんな意味を持ちますか。

「Horizon Workrooms(ホライズンワークルーム、メタが提供しているバーチャル会議室)では、人々が集まって映像や音声などを共有することで、社会的な存在を実感できるような空間をつくりたいと考えています。私たちはこの空間をより多くの人に体験してもらいたい」

「VRで共同作業できる空間をつくり、バーチャルな世界にも戻って来られる場所がある。ここでポジティブな経験をしてほしいのです。そして、仮想と現実の境界をなるべく意識せずに空間を接続できるようにしたい。それが(この提携の)狙いの1つです」

「チームズとの連携で、バーチャルな会議室が現実の会議室と接続できるようになります。誰もが常にVRヘッドセットで参加できるわけではありません。2次元のビデオ会議で参加する人や電話で参加する人、オフィスに戻って会議室から参加する人もいる。私たちは誰にでも公平に会議室を提供したいと考えています」

マイクロソフトチームズとクエストのコラボレーションの例。写真奥にチームズのオンライン会議の場面が見える(資料:メタ)

「今後、どのような展開になるかは『お楽しみに』と答えておきましょう。私たちはまだ初期段階にいて、ユーザーが抱えている問題点を洗い出しているところですから」

「私たちはマイクロソフトとの提携に興奮しています。同社は多くの企業が採用する生産性向上ソリューションを幅広く取りそろえています。グーグルも米アップルも自社のハードウエアやソフトウエアで生産性アプリを持っていますが、(マイクロソフトが)競合する企業はそれほど多くありません」

疑問(3)メタバースと実際の空間はどう融合する?

――今の話題に関連して、メタはバーチャルな空間とリアルな空間の融合をどう考えていますか? いわゆるOMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)はメタバースでどう実現されるでしょうか?

「私たちの目標は、VRをその場に適合させることです。邪魔されることなく、空間を超えて誰もが同じように接続できる技術を実現する必要があります」

「私たちは既に、メッセージやチャット、それらへの返信などの非同期型ツールで世界の反対側にいる同僚とも仕事をしています。例えば、食事に向かう途中でテキストメッセージを送ったりするでしょう。タイムゾーンが合っていれば同期型のコミュニケーションも取れる。夜中に帰宅するとき、ちょうど朝起きたばかりのロンドンの同僚と話すことができますから。非同期型でも同期型でも、人がつながることに価値があるんです」

「その価値をさらに高めたい。例えば聞き流すだけでいいなら、ビデオ会議で十分な場合もあるかもしれません。しかし、夢中になって(共同作業として)何かしたい場合には、ヘッドセットを手に取れば数秒後には同じ仮想空間で息を合わせた作業ができるんです。自分に合った方法を選んで参加できる。この点が重要なのです。そのためには、誰もが摩擦なくリアルとバーチャルの間を移動できる技術が欠かせません」

「ヘッドセットの価値を既存の仕事の流れに組み込んで、(仕事の仕方を)アップグレードする。既存の空間や既存の仕事の流れと融合する必要があります」

「マイクロソフトだけでなく、米アドビ、米オートデスクなどのアプリケーション開発会社がこのプラットフォームに参入してくるでしょう。アドビのツールを使っているデザイナーのワークフローにVRを組み込むことなどが今後、出てくると思います」
疑問(4)そもそもメタバースの中で経済活動は生まれる?

――これまで仕事の仕方をどう変えるかという視点でお話を伺いましたが、次にメタバースの市場について聞かせてください。メタバースの中で経済活動は生まれると思いますか? つまり、現実世界とは別の新たな市場が生まれるかどうか、どうお考えですか?

「それは、時間が教えてくれるでしょう」

――コリンズさんのお考えは?

「多数のユーザーがVRに集えば、実際に会議場に行ったり高価なホテルに泊まったりする必要はなくなります。企業にとって実質的な経費削減につながることで、サービスプロバイダーはさまざまな(新しいサービスの)検討をするはずです。投資が集まり、開発会社は事業化を繰り返し、メタバースはどんどん発展していくに違いありません」

「私たちは通常では困難な人々の結び付きを支援しようとしています。この技術はあらゆる業種に役立つと信じています」

疑問(5)メタバースでビジネスを展開するための鍵は?

――では、そのためのキーポイントは? どうすれば多くの消費者がメタバースの中で消費などの活動をするとお考えですか?

「さまざまな要素があると思いますが、まず明確なビジョンと長期的な投資が重要だと思います。進化には時間がかかります。一朝一夕にできるものではありません。開発会社との協力も必要です。ソフトウエアの開発キットやアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)の成熟も必要でしょう」

「投資をして一緒に学ぶパートナーを見つけ、多様なニーズを持つユーザーが増える。このプラットフォームでさまざまな問題解決ができることを示せば普及が進み、そうなればより多様な体験ができるようになると考えています」

(日経BPシリコンバレー支局 島津翔)

[日経ビジネス電子版 2022年11月9日の記事を再構成]
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資産を増やすという事は、どういう事か?

資産を増やすという事は、どういう事か? : 机上空間
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/30121463.html

『「資産家になりたい」という人は、たくさんいます。その言葉を口にした時、どういうイメージが頭にあるかというと、豪邸だったり、高級車だったり、高級腕時計だったり、ブランド物のバッグだったり、高級服だったり、つまり、物を所有する事とセットだったりします。しかし、考えてみて下さい。これらは、お金を使った結果として取得した物であって、資産を形勢する事は関係がありません。つまり、「資産家になりたい」という言葉の中に、具体的に実現する方法は含まれておらず、資産家になった結果だけで言っているケースが大部分という事です。

しかし、高級品に囲まれる、そういう物が身の回りに増えるという事は、資産から継続的に支出をしているわけで、穴の空いたバケツに水を注いでも水が溜まらないように、資産を形勢する行為とは、真逆の事をやっている事が判ります。つまり、多くの人が言う「資産家」とは、自分の資産が可視化できるように、高級な物に囲まれて、高級なサービスを受けて暮らしたいという事です。その暮らしを継続しつつ、バケツに水を貯めるには、穴から漏れる水を上回る水量で注ぎ続けないといけません。こう考えると、浪費というのが、資産形成に何の役にも立っていない事が判ります。最終的に到達するべき資産家のイメージと、実際にそうなる為に必要な行動は、「資産家になりたい」という言葉には、同居していません。

つまり、「手取り20万円のサラリーマンだけど、今すぐフェラーリが買いたい」と、ほぼ同じ事を言っています。さて、多くの人が投資において、無謀な冒険をする原因が、まさしくここにあります。資産家を目指す時に、資産を可視化して、自分が満足したり、他人に見せる為に、大金を使いたいという事と同義なのです。その為には、保有している資産に高いレバレッジをかけて、極めてリスクの高い金融商品に手を出す必要があります。そういうリスクを背負う事は、資産家になるどころか、普通の生活を続ける事すら危うくさせる危険があるのですが、大金を使って物を買うを事を前提に資産家を目指しているので、そういう事をせざるを得ないのです。世の中の大半の人が、高利回りの投資詐欺にひっかかったり、無謀な金融商品に投資を始めて、財産をスッテしまう原因がここにあります。本当に資産家を目指すなら、やってはいけない事を、やってしまうからです。「資産家になりたい」を、実行動に正確に意訳すると、「大金を使いたい」だったりします。なので、その手段について、実に雑な行動や手段に出てしまいます。

多くの人に人生における幸福について調査を進めると、人間が最も幸福を感じるのは、自分の行動や選択について、主導権を常に持っている事という結果が出ています。資産形勢は、それをしても、生活が困窮せず、選択肢が狭くならない為に必要な補助的な行為という位置づけです。勤めや社会的な責任を負っていると、自分に意志に反する行為を取らざるを得ない場面が数多くあります。それを、現実的に避けるには、十分に暮らしを支える資産を持ち、周りから自分の意思決定について、影響を受けない事が大きなファクターになります。

つまり、資産形勢で幸せを掴むには、得た資産を物に替えて可視化する事で、所有欲や自己承認欲求を満足させるのではなく、自立した生活を営むのに十分な環境を得る事ができるからという事になります。高級服でクローゼットをいっぱいにしたり、下駄箱に入り切らないほど靴を買ったり、高級車を何台も保有する事でも、満足感は得られるでしょうが、資産を物に変えて可視化する事で、得られる満足感というのは、上限がありません。そして、もちろん、資産を片端から物やサービスに替えているのですから、資産形勢とは真逆の行動です。つまり、人生が逆境に見舞われた時、全てを失う可能性が高いリスキーな行動という事になります。周りからは、資産持ちで優雅な生活に見えても、現金を殆ど持っていないので、あっという間に破産して没落する有名人がいるのは、そういう事です。
では、刹那的な満足感を得るのではなく、堅実に資産家になるのに必要な行動とは、どういう事でしょう。一言で言えば、時間を味方につける事です。私が敬愛する世界最高の投資家にして、長者番付に常連でランクされる資産家でもあるウォーレン・バフェット氏は、本格的な投資を始めたのが、なんと10歳からです。投資の才能があった彼は、30歳の時には10億円の資産を築いていました。現在の総資産は、1000億ドル(10兆8000億円)以上です。しかし、その資産の96%以上は、60歳を超えてから築いた資産です。彼は現在90歳ですが、晩年の30年間で、莫大な資産を築いた事になります。

その理由は、福利です。投資において、種銭が大きいほど、成功した時に得られる額も雪だるま式に増えていきます。バフエット氏は、親が裕福だったわけではないので、投資を始めた時点では、小遣い程度の現金しか持っていませんでした。しかし、彼は、もっている資産の使い方として、散財せずに市場に継続して投資を続けたのです。つまり、投資で利益が出ると、その利益分を再投資して、種銭を増やし続けたのです。

30歳で10億の資産を築いた時点で、一般的には十分な富豪ですから、ここで、豪邸を買ったり、世界旅行に出かけたり、様々な贅沢に支出する事は可能だったでしょう。そして、結構、散財しても、生活が破綻する事は無かったはずです。しかし、世界有数の大富豪になった今でも、バフェットの実家は、奥様と結婚した時に建てた郊外の普通の一軒家ですし、食べ物で好きなのは、マクドナルドのハンバーガーとチェリーコークです。彼は誰にも邪魔される事なく、自宅の書斎で投資戦略を練り、自身の率いる投資会社・バークシャ・ハサウェイに指示を出します。

つまり、バフェット氏の経済的な成功の秘密は、若い頃に強固な経済基盤を築いて、安定した暮らしの中で、投資し続けた事です。極めてシンプルで、堅実な投資技術を持つバフェット氏にとって、その資産を爆発的に増やすのに必要なのは、福利を生む時間だったのです。もし、若い時のバフェット氏が、そこいらの富豪がやりそうな贅沢に散財していたら、現時点の資産は1/100にも満たなかったかも知れません。

「若い時間は、二度と戻ってこないんだ。30歳で10億も持っていたなら、ガンガン遊んで、色々な体験をしなきゃ意味がないじゃないか」と言う人もいるでしょう。では、贅沢とは無縁な彼が、人生で不幸を感じたかと言えば、「誰からの干渉も受けず、自分判断で行動し、それを支える経済的基盤を築いた」時点で、まったく無いように見えます。人生における幸福とは、資産を物に替えて可視化する事ではなく、自分が人生の主導権を握り続ける環境を築く事だとする根拠は、ここにあります。

彼は、慈善家としても有名で、多額の寄付を毎年して、社会に利益を還元してもいます。もう、止めてしまいましたが、「彼と昼食を共にする権利」は、毎年オークションにかけられていて、毎回億超えの落札価格で競り落とされ、その全額が寄付されています。それとは、別に事業収益から、毎年、数百億円の寄付もしています。誰が彼の人生に「つまらない」とか「もったいない」などと、ケチをつける事ができるでしょうか。

ちなみに資産運用で、バフェット氏の実績を超える投資家は、何人かいます。年率66%という驚異的な複利運用を行っているヘッジファンドの「ルネッサンス・テクノロジー」を率いるジム・サイモンズ氏は、最高の投資家と言って良いでしょう。しかし、彼が投資家として才能を開花させたのは、50歳を超えてからで、現在の個人資産は、バフェット氏の1/4以下です。それでも、目の眩むような金額ですが、才能が時間を凌駕できない事を示す好例です。いくら投資の運用効率が良くても、福利運用で投資を続けた期間の長いバフェット氏に比べると、やはり実績で挽回できないのです。

話を解りやすくする為に、大富豪の投資家の例を出しましたが、私達が人生で十分な資産を得る為に必要な条件は何も変わりません。早い時期から、長期間、無理をせずに福利で運用して投資を継続する事です。資産の可視化による所有欲の暴走という罠にはまらなければ、十分に充実した人生がおくれます。宝くじが当たって、何十億も転がり込んだ当選者が、その後10年も経たないうちに破産するのは、結局、資産を解りやすく可視化しないと、金持ちになった実感を感じられないからです。そして、そういう満足感というのは、麻薬のように何度もリピートする事になります。言ってみれば、資産を溶かす事でしか、刺激を得られなくなるのです。そりゃ、そうそうに破産もするでしょう。

投資において、期間を端折るために不要なリスクを取る事は、最も愚かであると、納得できるのではないでしょうか。』

仮想通貨業者「FTX」破綻、リーマン型かエンロン型か

仮想通貨業者「FTX」破綻、リーマン型かエンロン型か
金融PLUS 金融部長 河浪武史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB121OZ0S2A111C2000000/

『世界的な暗号資産(仮想通貨)交換業者であるFTXトレーディングが経営破綻した。負債総額は数兆円規模とされ、急成長する仮想通貨ビジネス界で過去最大の破綻劇となった。連鎖的な経営悪化への警戒から「仮想通貨界のリーマン・ショック」と指摘されるが、2001年のエンロン事件のような巨額不正会計の色彩もある。

仮想通貨の市場規模は4分の1に

「暗号資産の最近の状況は08年の金融危機を思い起こす」。インドネシアで11日に開かれた金融イベント。司会者がバイナンス最高経営責任者(CEO)のチャンポン・ジャオ氏にそう問いかけると、同氏は「おそらくそれが正しい例え方だろう」と答えた。バイナンスは仮想通貨を取引する交換業者の世界最大手。FTXの救済買収を一時検討するなど、破綻劇の詳細を知る立場にある。

確かにビットコインなど仮想通貨の市況は総崩れだ。全体の時価総額は7日から11日までの5日間で150兆円弱から110兆円強まで25%も下落。21年11月の直近ピーク時と比べると市場規模は約4分の1に縮小した。それが「仮想通貨界のリーマン危機」とまで評されるのは、連鎖的な信用不安が発生しているからだろう。

FTXは独自の電子資産「FTT(FTXトークン)」を発行して投資家にばらまいており、一時は時価総額が1兆円を超えていた。FTXの破綻でFTTの価値は9割以上も下落。ほかの暗号資産の投げ売り懸念が一段の市況悪化につながる負の連鎖にある。シルバーゲート銀行(カリフォルニア州)のようにビットコインを担保に米ドルを融資する商業銀行もあり、金融システムにも影響がしみ出し始めている。

そもそものきっかけは22年5月、価格の安定が売り物だったステーブルコイン「テラUSD」の急落にある。テラの裏付け資産が不十分だとわかると投資家は資金を一気に引き揚げ、1ドル=1テラで固定していたはずの資産価値はゼロ近くまで暴落した。

7月にはテラの関連資産に投資していた仮想通貨ファンド、スリー・アローズ・キャピタル(3AC)が経営破綻する。3ACに融資していた仮想通貨融資会社のボイジャー・デジタルも破綻。そこを資金支援していたのが、FTX創業者のサム・バンクマン・フリード氏が持つ投資会社「アラメダ・リサーチ」だった。

FTXを率いたバンクマン・フリード氏は、政界への巨額献金やスポーツ界での広告宣伝で知られる米国の著名起業家だった。

バンクマン・フリード氏はアラメダの損失を埋めるため、160億ドル(約2兆2000億円)とされるFTXの顧客資産の一部を不正流用した疑惑がある。これがFTXの破綻の決定打となった。サマーズ元財務長官は11日の米テレビ番組で、FTXを金融詐欺だと指摘して「リーマン危機に例える人が多いようだが、どちらかと言えばエンロン事件に近いだろう」と話した。

エンロンは金融工学を武器に急成長した米エネルギー販売会社で、会計不正が発覚して01年に経営破綻した。02年には通信大手ワールドコムも同様の粉飾決算で経営破綻し、不正会計事件の連鎖はITバブル崩壊の一因となった。当時発覚したのはIT革命の旗手ともてはやされた裏での杜撰(ずさん)な統治体制。バンクマン・フリード氏は政界への巨額献金で知られる「仮想通貨界の期待の星」で、今回のFTXショックもエンロン事件と舞台裏が似る。

利回り8%というサービスも

「320億ドルの企業価値がある」と極めて高く評価されたFTXには、セコイア・キャピタルなど大手ベンチャーキャピタル(VC)が相次いで出資してきた。にもかかわらずFTXは投資家側から取締役を受け入れず、密室での企業統治が顧客資産の不正流用を招いた可能性が高い。VCはFTXを売買手数料で安定収益を上げる「取引所」とみていたが、実際はそうではなかった。

例えば「FTX Earn」と呼ぶサービス。仮想通貨を預ければ年5~8%もの利回りが得られると宣伝して個人投資家を集めてきた。FTXは自己資金の100倍の金額まで売買できる高レバレッジ取引も提供していたことがある。こうした投機的な仕組みで集めた資金が実際にどう使われたか不透明で、160億ドルという巨額の顧客資産の多くが利用者に戻らない可能性がある。

混迷する仮想通貨ビジネスはどこに向かうのか。09年に誕生したビットコインは、リーマン危機を引き起こした金融行政への不信が根底にあった。中央銀行による統治は信頼できず、無機的なブロックチェーン(分散型台帳)に金融システムを委ねようという発想だ。国家を超越した基軸通貨の実現は、リバタリアン(自由至上主義者)の理想社会の一つでもあった。

それが仮想通貨の情報サイト、コインマーケットキャップによると、世界で発行される暗号資産は2万1000種類を超えるという。自由社会の基軸通貨という仮想通貨の理念は消えうせ、投機目的のコインの乱立という現実だけが透けてみえる。

当局はリーマン危機やエンロン事件と同じように規制強化に傾くだろう。ただ、必要なのはむしろ金融当局と民間技術の融合にあるのではないか。現在の金融システムは資金決済にコストと時間がかかりすぎ、その不満が民間事業者による仮想通貨の急膨張を呼んでいる面もある。未来の通貨の秩序を形作るには、ブロックチェーンを使った中銀デジタル通貨(CBDC)のような取り組みの加速が必要だろう。

【関連記事】

・FTXショック、破綻連鎖に警戒感 資金繰り難拡大も
・仮想通貨FTXの売却可能資産、負債の約1割か 破綻前
・破綻のFTX、数億ドル規模の不正引き出しか 米報道
・FTX日本法人、現預金196億円 顧客資産は分別管理

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田中良和
グリー 代表取締役会長兼社長
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別の視点

FTXのような事件があると、当然、他の取引所なりコインなりの運営についても、適切なのかと信用不安の連鎖になる。誰もが、明日、自分の預けている資産が引き出せないかもしれない。

ただ、それでも今日も、取引は行われている。全ての暗号資産が現金化されているわけでもない。最大のポイントはこれだろう。

仮想通貨、暗号資産、NFTなどのブロックチェーン技術には、既存の金融にはない価値があることを、この事件以降の出来事は逆説的に証明している。

特に、先進国の金融システムに簡単にアクセスできない新興国では、そもそも24時間取引されている時点で、圧倒的価値があるのだと思う。

2022年11月14日 12:34

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村上臣
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部客員教員
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ひとこと解説

不正に顧客資産を流用したという点ではエンロン型、ないしは簿外債務(飛ばし)により破綻した山一證券事件を思い出します。非中央集権・分散型を夢見た暗号資産基盤が、結局のところ少数の取引所による中央集権になっていたという意味で非常に皮肉な事件です。FTXの破綻によりBinance1強という市場になり、より中央集権が進んだという印象です。今後さらに各国の規制が強化されることは間違いなく、ブロックチェーンの社会実装実験は次の段階に向かうのだろうと思います。

2022年11月14日 9:48

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中空麻奈
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長
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別の視点

クレジットの見方では、不正会計に端を発しデフォルトしたエンロンは、個別リスクであり、金融システム不安にはなり難いが、リーマン型は同様のリスクを取って連鎖するため金融システム不安をもたらす、ことになる、という分類に落とし込む。だから、FTXがエンロン型デフォルトなら、仮想通貨リスクから金融システム不安をもたらさない、と読めるわけだ。FTXのトークンを担保に融資していた銀行がどれくらいの損失になるか次第だが、まだコントロール可能ではないか。

とはいえ、流動性は今どこに行っているのだろう。仮想通貨も一つだが、ファンドの資産凍結リスクが近付いているのではないか。

2022年11月14日 9:55

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河合祐子
Japan Digital Design 代表取締役CEO
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別の視点

日本法では、「仮想通貨」ではなく「暗号資産」と呼ぶ。中央銀行≒国の信用で発行され、広く決済・価値の基準として使われる信頼ある「通貨」との混同を避け、デジタル「資産」としての側面を強調した言葉であり、今回のイベントを契機に、「通貨」と「資産」の違いが認識されるようになるといいと思う。

ブロックチェーン技術を利用する(しなくてもいいが)デジタル・トークンは、何等かの権利を表象するもので、各国法による位置づけは不透明ながら、徐々に社会的な役割が認知されている。通貨(CBDCもその一つ)とは異なるもので、混ぜても意味はない。

「資産」は、権利関係の明確化と消費者保護が鍵となり、ここでは更なる議論が必要。
2022年11月14日 9:05

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楠木建
一橋大学 教授
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分析・考察

限りなくエンロン型に近いという印象。ブロックチェーンは「トラストレス」(そもそも信用が不要)を謳うのですが、実際のところ、信用しかねる人々がトラストレスを逆手にとって蝟集する(本件に限らず、マネーロンダリングなど)という皮肉な成り行き。

技術は変わっても、投機がそのうちにズルに傾くという一部の人間の本性は変わらないというのが僕の結論でありまして、ブロックチェーン技術を使って真に分散的な金融システムを構築するというのは、世界政府の実現と同じぐらい難しいことだと考えます。

2022年11月14日 8:14 (2022年11月14日 8:24更新)

浅川直輝のアバター
浅川直輝
日経BP 「日経コンピュータ」編集長
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別の視点

暗号資産の基盤であるブロックチェーンによる取引は透明性が高いといわれていますが、現実にはいくつかの理由で透明性が確保できない場合があります。(1)ブロックチェーンの外での取引や賃借契約、(2)暗号資産の価値の裏付けとされる法定通貨やステーブルコインの量、(3)複雑なプログラムや仕組みに基づく取引は、いずれも投資家やアナリストによる捕捉が難しく、ブラックボックスになりがちです。

(1)と(2)はエンロン型、(3)はリーマン型の金融危機を招く恐れがあり、これらの透明性を高める法的枠組みは不可欠でしょう。国家権力から独立した金融システムの構築は、人類にとっていまだに遠い夢という印象です。

2022年11月14日 7:41 』

オランダ船籍の5000トン積みの貨物船が装甲トラックなどを満載してリビアへ向かっていたのだが、EUはその船を拿捕した…。

オランダ船籍の5000トン積みの貨物船が装甲トラックなどを満載してリビアへ向かっていたのだが、EUはその船を拿捕した…。
https://st2019.site/?p=20621

『The Maritime Executive の2022-11-10記事「EUNAVFOR Seizes Dozens of Armored Trucks Bound for Libya」。

   オランダ船籍の5000トン積みの貨物船が装甲トラックなどを満載してリビアへ向かっていたのだが、EUはその船を拿捕し、積荷を押収した。今年に入って二度目。

 上甲板に15台の装甲トラック(UAEがフォード・トラックを改造したもの)を載せ、まっぴるまにシートカバーもかけず、AISも切らずに航行していた。隠す気がなかったようだ。しかしリビアの交戦団体に武器を輸出することは国連が禁止しているのである。
 いちおうオランダ政府には、臨検していいかと事前に打診。そして公海上で拿捕。同船はマルセイユ港まで連行されつつある。

 UAEは、リビアのハリファ・ハフター軍閥側を後援している。

 この拿捕によって船長が逮捕されることはなく、また船会社が罰金を払うこともない。
 ことしの7月にはイタリア海軍のフリゲートが、1隻の自動車運搬船を拿捕した。これもリビアへ軍用車を届けようとする途中であった。

 ※福岡と釜山の間に就航させる最新鋭の三胴型の高速フェリーについての報道がやはり『Maritime Executive』に出ている。新コロのために完成が2年も遅れていたという。

よくわからないのが、それが日本でも韓国でもなく、豪州の造船所製だということ。日本や韓国には三胴船を造るノウハウが無いってことかい?』

https://af.moshimo.com/af/c/click?a_id=1637377&p_id=170&pc_id=185&pl_id=4062&url=https%3A%2F%2Fwww.amazon.co.jp%2Fdp%2FB09WK4HMLG 

https://af.moshimo.com/af/c/click?a_id=1637377&p_id=170&pc_id=185&pl_id=4062&url=https%3A%2F%2Fwww.amazon.co.jp%2Fdp%2F4198655405

ケルチ橋の下をくぐって黒海からアゾフ海へ入ろうとする貨物船を、11-12からロシアが急に規制するようになった。

ケルチ橋の下をくぐって黒海からアゾフ海へ入ろうとする貨物船を、11-12からロシアが急に規制するようになった。
https://st2019.site/?p=20621

『Defense Express の2022-11-13記事「Russians Are Afraid That the Crimean Bridge May Be Struck by a Brander ? the Ministry of Transport And Infrastructure of Turkey」。

   ケルチ橋の下をくぐって黒海からアゾフ海へ入ろうとする貨物船を、11-12からロシアが急に規制するようになった。二度目の爆破工作があると警戒しているらしい。

 10-8に爆破されたケルチ橋の損壊は思ったより酷く、修繕は2023-9までかかるだろうという。』

ワグネルを脱走して反露に寝返った55歳の男。

ワグネルを脱走して反露に寝返った55歳の男。
https://st2019.site/?p=20621

『Guy Faulconbridge 記者による2022-11-14記事「Sledgehammer execution of Russian mercenary who defected to Ukraine shown in video」。

 ワグネルを脱走して反露に寝返った55歳の男。10-11にキエフでワグネルに拉致され、大ハンマーで頭を叩きつぶされて処刑されるありさまがSNSの「テレグラム」のチャンネルである「Grey Zone」に投稿されていた。

 この男についてワグネル総帥のプリゴジンは日曜日、「反逆者だ」と語った。

 プリゴジンはまた、私有ジェット機に乗って第三国へ逃亡した金持ち階級のロシア人たちについても「同じく反逆者だ」と警告している。』