[FT]中国の工場「希望が持てない」 国内外で受注急減

[FT]中国の工場「希望が持てない」 国内外で受注急減
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『ジミーさんは広東省にある自らの工場のほこりっぽい床に座り込んで、残りの借金を返済するためのカネを何とか工面しようとしていた。従業員への支払いは終わり、機械は売った。10月に工場を閉鎖した後、オフィスの家具も取り払われた。

中国の国内需要がロックダウンの影響で落ち込む一方、欧米の需要も減退していることが中国の製造業にとって痛手となっている=ロイター

ジミーさんはフィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、「受注が減り、ロックダウン(都市封鎖)が幾度となく実施されたことが工場を閉鎖した理由だ」と語った。「しかし何よりも、希望が持てなくなった。回復の兆しがまったくみえなかった」

中国南部の工場からの報告によると、欧米で在庫が満杯になっていることを背景に、10月の受注が50%も減ったという。このため、世界第2の経済大国の先行きは一層悲観的になっている。

10月は通常、製造業にとっては最大の書き入れ時だ。そんな月に受注が激減したため、工場労働者は仕事探しに苦労している。

「誰も何も買わない」

悪循環が止まらない不動産危機、散発的なロックダウン、消費者心理の冷え込みと、中国政府はすでに四苦八苦している状況だが、製造業の受注減がそれらに重なる新たな悩みのタネとなっている。中国は10月、7-9月期の国内総生産(GDP)が前年同期比3.9%増にとどまったと発表した。年間目標値の5.5%増を下回っている。

広東省の家具製造工場を経営するクリスチャン・ガスナー氏は「繁忙期であるはずなのに、過去2カ月は最悪だ。誰もソファを買わないだけでなく、誰も何も買わない。欧州ではカネのある人が誰もいなくなった」と述べた。

「皆が同じ事でなげいている。ある業種では、注文が30~50%も落ちている。工場閉鎖が相次いでいる」

中国南部に外注している香港企業の幹部、アラン・スカンラン氏によると、バイヤーが2022年向けに過剰に在庫を増やした後、電子商取引ブームが終わったため、この減速は必然的だという。

例えば、世界最大のスポーツ用品メーカー、米ナイキは9月、6-8月期末の北米の在庫が前年同期に比べ、65%増えたと報告している。

中国国家統計局によると、製造業の購買担当者景気指数は10月、49.2となり、9月の50.1から低下した。低下幅は予想を上回った。

7日に発表された貿易統計によると、10月の輸出は前年同月比で0.3%減った。予想は4.5%増だった。エコノミストは受注減に加え、中国の「ゼロコロナ」政策の下での無計画なロックダウンが原因だとみている。

エレクトロニクス・再生エネは影響軽微

欧州系運用会社ナティクシス香港支社のエコノミスト、ギャリー・ウン氏は「中国の国内需要が、ロックダウンの影響で落ちている一方、世界的な高金利のために欧米の需要も減っている」と指摘した。

「中国南部にとって、この状況はかなり厄介だ。そして、南部の各省は中国経済にとって重要な地域だ」

広東省の製造業の中心である東莞市のある高官は、工場支援のための補助金を出し続けることに苦労していると話す。地方政府は新型コロナ検査費用も支払わなければならないからだ。

匿名希望のこの高官は「どうしろと言うのか。工場や地域経済を見殺しにして、市民からの税金をすべて、きりのないPCRテストにつぎ込めというのか」と疑問を投げかけた。

ガスナー氏は、製造業でも品目によって影響の受け方は異なると指摘する。エレクトロニクスや再生可能エネルギー関連の製造業者は、修羅場を踏まずに済んでいる。

工場長らによると、今回の低迷は労働市場に波及しており、緊急に人手が要る場合にも簡単に人の手当てができるという。

東莞市でアルミニウム工場を運営する香港中小企業協会の名誉会長、ダニー・ラウ氏は「受注が落ちれば、コスト削減をせざるを得ない。最大の支出の一つは人件費だ」と話す。
「我々の工場には昨年前半、200人を超える従業員がいたが、今年は100人前後だ。主に受注減が原因だ」。

米中対立で生産移行が加速

広東省に拠点を置き、世界のスーパーマーケットに物資を供給する企業に働く陳さんは、労働時間の減少で、昨年8万元(約161万円)あった収入が、今年は5万元に減った。

24歳の陳さんは「以前は、タピオカティーを悩まずに正規の値段で買っていた」と話す。「今は割引券のあるカフェにしか行かない」。陳さんはFTに対し、勤めている会社の受注は、4月以来、前年に比べて40%ほども落ちているとみていると述べた。

そして「顧客は中国を信用しなくなっている。もはや中国に全面的に入れ込むことはしなくなっている」と述べた。

中国本土での人件費の値上がりを受け、すでに、東南アジアへの生産移行が進んでいる。米中関係の悪化も中国の製造業からのシフトを加速させている。

香港に本拠を置くエバスター・マーチャンダイズの取締役、スキ・ソー氏は「もはや、中国にいてもいいことは何もない。米国人がメイド・イン・チャイナをほしがらなくなったからには、中国本土での事業はたたんだ方がいい」と述べ、広東省にある自社工場を閉鎖する考えを明らかにした。

ソー氏は残りの工場を東南アジアに移転させており、そこではクリスマス向けの電飾を作っている。

「米国人が以前より貧しくなっているため、家具のような必需品でない製品の需要が落ち込んでいる。今年は出来上がった製品を保管する倉庫を借りなければならなかった」

By Primrose Riordan, Chan Ho-him, Qianer Liu and Gloria Li

(2022年11月9日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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