韓国、米国に砲弾売却へ ウクライナ支援で秘密協定

韓国、米国に砲弾売却へ ウクライナ支援で秘密協定
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB114JO0R11C22A1000000/

 ※ 今日は、こんなところで…。

『【ワシントン、ソウル=共同】米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は10日、韓国がウクライナ支援のための砲弾を米国に初めて売却すると報じた。米韓両政府の秘密協定を通じた措置。米国を経由させることで、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が殺傷能力がある武器をウクライナに供与しないとの公約を維持できるとしている。

米国は155ミリ砲弾を10万発購入する。ウクライナ軍が少なくとも数週間の激しい戦闘を続けるのに十分な量だという。オースティン国防長官と李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防相が今月3日のワシントン近郊での会談で基本合意していた。米国にとっては急速に減っている米軍の砲弾を温存できる利点がある。

韓国は防弾ベストやヘルメット、医療用品をウクライナに供与している。韓国国防省は11日、米国で不足している弾薬の在庫を補充するための輸出協議が進行中だとし「米国をエンドユーザーとする前提だ。ウクライナに殺傷兵器を提供しないという政府方針に変わりはない」と説明した。

米国は、ロシアが北朝鮮からロケット弾や砲弾計数百万発を調達する手続きを取っていると分析。同紙は、北朝鮮と韓国からの武器が欧州での紛争で使われる異例の展開になっていると指摘した。』

ミャンマー合意履行遅れ「深い失望」 ASEAN声明案

ミャンマー合意履行遅れ「深い失望」 ASEAN声明案
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGS10BLJ0Q2A111C2000000/

『【プノンペン=井上航介】11日にカンボジアの首都プノンペンで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の議長声明案が10日、判明した。2021年2月のクーデターで国軍が全権を掌握したミャンマーに対し、暴力停止など5項目の合意の履行遅れに「深い失望」を表明。弾道ミサイルなどの発射を繰り返す北朝鮮を非難した。

日本経済新聞が入手した声明案はA4の41ページで100項目を列挙する。

5項目の合意については「履行の進捗が不十分だ」と指摘。そのうえで「地域の平和と安定に向け、ASEANはミャンマーを支援する用意がある」と記し、国軍に改善を迫った。

5項目の合意とは①ミャンマーでの暴力停止②関係者間の建設的な対話③特使が対話プロセスを仲介④人道支援⑤特使がすべての関係者と面会――という内容だ。実現したのは不十分な形でのASEANの特使派遣くらいだ。21年4月にジャカルタで開いた首脳会議でまとめた。国軍トップのミンアウンフライン総司令官も出席していた。

北朝鮮の挑発行動は「憂慮すべき事態」と批判。「朝鮮半島の緊張の高まりは地域の平和と安定を脅かす」と記載した。北朝鮮は核実験を準備しているとされる。声明案の文言は、核実験への強い警戒も含んでいるもようだ。

声明案は、中国の海洋進出を巡る憂慮も表明。ベトナム、フィリピンなど一部のASEAN加盟国と中国が領有権を争う南シナ海については、中国による人工島造成などに触れ、地域の安定を損なうとの「懸念」を明記した。

ロシアが侵攻を続けるウクライナ情勢についても一部の意見として記述がある。食料、エネルギーの価格上昇という形で東南アジア諸国にも大きな打撃を与えており、最終的に声明に盛り込まれる可能性はある。』

バングラデシュ、IMFと45億ドル支援で実務者合意

バングラデシュ、IMFと45億ドル支援で実務者合意
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM09CIS0Z01C22A1000000/

『【ニューデリー=花田亮輔】国際通貨基金(IMF)は9日、バングラデシュと45億㌦(約6500億円)の金融支援で実務者による暫定合意に達したと発表した。南アジア各国はロシアによるウクライナ侵攻などを受け、足元で物価上昇に苦しむ。低地の広がるバングラデシュは気候変動による自然災害リスクも大きく、IMFからの支援によって経済の安定を図る。

IMFの代表団は10月から現地に入り、同国政府との協議を続けてきた。国際収支上の問題を抱える国を対象とした「拡大クレジットファシリティ」(ECF)や拡大信用供与(EFF)と呼ばれる複数の融資制度を活用し、3年半の期間で支援する。暫定合意を受けて、今後は理事会での承認をめざす。

IMFは9日の声明で「バングラデシュのパンデミック(世界的大流行)からの経済回復は、ロシアのウクライナ戦争によって妨げられた」と指摘した。バングラデシュでは新型コロナの発生で外貨獲得源である出稼ぎ労働者の送金が停滞し、2022年に入ってからはウクライナ危機に端を発したエネルギー高に直面している。9月の外貨準備高は364億ドルで、前月から約7%減った。直近のピークである21年8月と比べると24%減少した。

バングラデシュは現在、途上国のなかでも特に開発が遅れた後発発展途上国(LDC)と位置づけられている。IMFは今後の発展に向けて、民間投資の呼び込みや気候変動への耐性を向上させる構造改革などが重要だとも主張した。

南アジアではスリランカも足元で経済危機に陥り、9月にIMFと29億ドルの支援で実務者合意に達したと発表している。パキスタンでも物価上昇などが顕著で、洪水などによる深刻な被害に見舞われるなか、IMFなどからの支援で合意している。』

インドの大気汚染、政治問題に 国と地域政府が批判合戦

インドの大気汚染、政治問題に 国と地域政府が批判合戦
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM09E310Z01C22A1000000/

『【ニューデリー=キラン・シャルマ】インドの首都ニューデリーの大気汚染を巡り、国と地域政府が互いに責任を押しつけ合い、批判合戦を繰り広げている。市民生活や健康への影響が続くなか、政治対立をしても問題解決につながらないと専門家は指摘している。

ニューデリーでは10月下旬から有害なスモッグが厚く垂れ込め、喉の痛みや呼吸困難などの健康被害が報告されている。例年、同国北部のパンジャブ州やハリヤナ州の農家が収穫を終えて来シーズンの作付けに向けて畑を燃やす10~11月は空気が悪くなる。工場や自動車からの排出など他の原因も重なり、汚れた空気が滞留する。

大気汚染は今に始まったことではない。問題は、その責任の所在を巡って国政与党のインド人民党(BJP)と、デリー首都圏とパンジャブ州で行政権を握る国政野党、庶民党(AAP)の間で論争が過熱していることだ。

中央政府は大気汚染について庶民党を非難している。ヤダフ環境相は11月初旬、ツイッターで「今日現在、AAPが行政を担うパンジャブ州では、2021年に比べて農場火災が19%以上増えた」と指摘。「誰がデリーをガス室にしてしまったのか疑う余地もない」と批判した。

これに対し、庶民党を率いるデリー首都圏政府のケジリワル首相は、大気汚染は北インド全体の問題だと主張。「中央政府も北インド全体を大気汚染から救うために具体的な手段を講じるべきだ」と記者団に話した。

専門家はどちらの主張にも冷ややかだ。大気汚染調査機関のアナリスト、スニル・ダヒヤ氏は、中央政府と地元政府の両方が「公衆衛生を守ることに失敗した」と指摘。政治的な批判合戦は解決策にならないと話す。交通や電力など他の原因による汚染を抑制するなど、年間を通じた対策が必要だと主張する。
収穫後に燃やされる稲田(インド北部、2018年10月)=ロイター

農家に対しては、収穫後に残る部分が少なく耕作期間が短い果物や野菜の栽培にインセンティブを与えて奨励するといった対策が考えられるという。「来年の(収穫後に残る根元部分の)焼却を減らすために、今から農家と協力し始める必要がある」と同氏は話す。

ダヒヤ氏は問題解決に向けた「政治的意志が欠如している」との見方を示す。「有権者は大気汚染などの問題ではなく、カースト制度や信条、宗教に基づいて投票する。だから政治家たちはいまだにこの問題から逃げ続けている」と語る。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Spotlight/Environment/Toxic-smog-in-India-s-capital-fuels-political-blame-game/?n_cid=DSBNNAR 』

イラン大統領「関係レベル上げる」 プーチン氏側近に

イラン大統領「関係レベル上げる」 プーチン氏側近に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR09EJ90Z01C22A1000000/

『【ドバイ=福冨隼太郎】イランのライシ大統領は9日、ロシアのプーチン大統領側近のパトルシェフ安全保障会議書記とテヘランで会談した。イランメディアによると、ライシ師は会談で「イランとロシアは様々な分野で戦略的関係のレベルを上げる」と述べた。

ライシ師は「米国やその同盟国の制裁に対する最も決定的な対応は、独立した国同士の協力だ」とも指摘した。パトルシェフ氏は同日、イラン最高安全保障委員会のシャムハニ事務局長とも会談した。

米戦争研究所は8日、パトルシェフ氏が訪問でイランの弾道ミサイルのロシアへの売却を協議している可能性があるとの分析を公表した。ウクライナや欧米は、ロシアがイラン製のドローンをウクライナへの攻撃に使っているとみている。プーチン氏側近のイラン訪問によって、両国が軍事協力を加速させるとの懸念が高まっている。

イラン政府は5日、ロシアに無人機(ドローン)を供与したことを認めている。一方でミサイル供与については「完全に間違っている」(アブドラヒアン外相)と否定した。』

村田兆治さんが死亡 元プロ野球投手、自宅で火災

村田兆治さんが死亡 元プロ野球投手、自宅で火災
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE110AG0R11C22A1000000/

『11日午前3時10分ごろ、東京都世田谷区成城にある元プロ野球投手、村田兆治さん(72)宅から出火し、2階建て住宅の2階約40平方メートルが焼けた。2階から村田さんが意識不明の状態で見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された。警視庁は出火原因を調べている。

元プロ野球選手の村田兆治さん(2011年) 

東京消防庁によると、火は約3時間半後に消し止められた。村田さんは出火時、2階に一人でいたとみられる。警視庁によると、目立った外傷などはなく、死因は一酸化炭素中毒の可能性が高い。

現場は小田急線成城学園前駅から北へ約1キロの住宅街。2階の窓ガラスが割れ、室内の柱などが黒く焦げていた。

近所の主婦(84)は焦げたような臭いで火災に気付き、外に出ると赤い火柱が上がっていたという。道ですれ違った際にあいさつを交わすこともあったといい「亡くなったとは信じられない」と話した。

村田さんは広島県出身で、1967年のドラフト1位で東京オリオンズ(現ロッテ)に入団。ダイナミックな投球フォーム「マサカリ投法」で知られ、通算215勝を挙げるなどロッテのエースとして活躍した。3度の最優秀防御率をはじめ、多くのタイトルも獲得した。引退後の2005年に野球殿堂入りした。名球会のメンバーにも名を連ねる。

村田さんは9月、羽田空港の保安検査場で女性検査員の肩を押したとする暴行容疑で警視庁に現行犯逮捕された。釈放後、報道陣に「たくさんのファンや子どもたちに深くおわびしたい」と話していた。

【関連記事】

  ・「サンデー兆治」支えた不屈の力 手術後も先発完投貫く
・村田兆治、「まさかり投法」で完投の美学貫く

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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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貴重な体験談

Bクラス常連のロッテ一筋、しかも閑古鳥の鳴く川崎球場で黙々と重いストレートと切れ味抜群のフォークを投げ込み続ける姿は「人間くさっちゃいけない」「男の美学」など目に見えない大事なものをたくさん私を含めた野球少年に教えてくれました。引退後も野球教室で少年少女の育成に励み、還暦になっても140㌔の速球を保つストイックさに大人になったかつての野球少年たちは再び憧れを抱きました。それだけに先日の逮捕を聞いたときは「あの村田に限って」と信じられず大きなショックでした。今回の火災も真相はわかりません。晩年のマサカリ兆治に何があったのだろうかと悲しい思いです。ご冥福をお祈りします。

2022年11月11日 12:20

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菅野幹雄
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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貴重な体験談

なんとも言葉の出ない悲報です。公園と川に近い火災現場は自宅からそう遠くない距離にあり、朝に立ち寄りました。警察と消防の検証が続く閑静な住宅街には焦げた臭いが漂い、近所の人々が、取材にきた報道陣に当時の様子などを話していました。野球に目覚めた自分の小学校時代、類を見ない「マサカリ投法」で速球を投げ込む雄姿は、いまも鮮明に記憶に残っています。ご冥福をお祈りします。
2022年11月11日 11:40』

ロシア軍、南部ヘルソン州で撤退開始 ウクライナは進軍

ロシア軍、南部ヘルソン州で撤退開始 ウクライナは進軍
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR10CI50Q2A111C2000000/

『(2022年11月10日 21:53)

【ウィーン=田中孝幸】ロシア国防省は10日、ウクライナ南部ヘルソン州のドニエプル川西岸から部隊を東岸に移動させていると発表した。インタファクス通信が伝えた。同川にかかる主要な橋は戦闘で損傷しており、撤退の完了には時間がかかる可能性がある。

同川西岸では各地でロシア軍の撤退の動きが進んでいるようだ。

ウクライナ軍は10日、南部で7キロメートル進軍し、12の居住区を奪回したと発表した。

ウクライナメディアはヘルソン市の北方に位置するミコライウ州のスニフリフカをウクライナ軍が奪還したと伝えた。』

ウクライナ国防相「ロシア軍のヘルソン撤退に1週間」

ウクライナ国防相「ロシア軍のヘルソン撤退に1週間」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR10EFQ0Q2A111C2000000/

『【ドバイ=福冨隼太郎】ウクライナのレズニコフ国防相は10日、同国南部ヘルソン市からのロシア軍の撤退について「最低でも1週間はかかる」との見通しを示した。ロイター通信が報じた。ウクライナ軍は進軍を続けているが、奪還を慎重に進める姿勢も崩していない。

レズニコフ氏がロイター通信のインタビューに答えた。同氏はロシア軍がヘルソン周辺に4万人の部隊を展開していると指摘。「これらの部隊を1日や2日で撤退させるのは簡単ではない。最低でも1週間はかかるだろう」と語った。

ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は同日、ヘルソン市についてツイッターに「ロシアが死の街に変えたいと望んでいる」と投稿した。「(ロシア軍が)地雷など爆発物をアパートなどあらゆる場所に設置している」と指摘。撤退後も「ドニエプル川東岸から砲撃で街を破壊するつもりだ」とも警告した。

インタファクス通信によるとロシア軍は10日、ヘルソン州のドニエプル川西岸から部隊を東岸に移動させていると発表した。ウクライナ軍はヘルソン市に向けて進軍を続けているとみられ、ウクライナメディアは同日、同市北方に位置するミコライウ州のスニフリフカを奪還したと伝えた。同国のゼレンスキー大統領は同日夜のビデオ演説で「南部で41集落が解放された」と明らかにした。

ヘルソンの地元メディアは10日、ロシア軍がヘルソン市のテレビ局や電力施設を破壊していると報じた。通信障害も発生しているという。ロシア軍が撤退にあたってインフラの破壊を進めている可能性がある。

一方、英国のスナク首相は10日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議した。英政府によると地対空ミサイル1千発などの軍事支援を伝達した。ロイター通信によるとスペインのロブレス国防相も同日、ウクライナに防空システム2基を提供すると明らかにした。

ロシア軍は10月以降にミサイルや無人機を使ってウクライナの電力インフラへの攻撃を続けている。米国も地対空ミサイルシステムを提供しており、ウクライナは欧米の支援を得て防空能力の強化を急ぐ。英国は軍隊用の防寒キット2万5千着以上も提供する。

【関連記事】ロシア軍、南部ヘルソン州で撤退開始 プーチン政権痛手 』

ハンヴィー

ハンヴィー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%BC#%E4%B8%BB%E8%A6%81%E5%9E%8B

 ※ 「ハマー」(HUMMER)が、これの「民間仕様」とは、知らんかった…。

『ハンヴィー(HMMWV: High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle=高機動多用途装輪車両, Humvee)は、アメリカ軍向けにAMゼネラルが製造した汎用四輪駆動車・M998、及びその発展型軍用車両の総称。ジープ系四輪駆動車の更新用車両として1985年から配備が始まった。 』

『概要

M151に代わる軍用の汎用輸送車両として1970年代より検討が開始された。1979年に発注仕様が固まり、AMゼネラル(アメリカン・モーターズの軍用車部門。ルノーとの合弁に際し1982年分離独立)が試作車を製造する事となった。これが採用され、1985年より量産が開始された。

初の実戦投入は1989年のパナマ侵攻においてである。1991年の湾岸戦争では大量に投入され、国際的に認知されるようになった[1]。なお、1995年からは能力向上型 (Expanded capacity) の生産も開始されている。

追加装備にM2重機関銃、荷物牽引用ウインチ、追加用の装甲板が存在し、改良型のM1025、M1043/M1044では追加武装として、M2重機関銃に加えMk.19 グレネードランチャー、M240汎用機関銃、M249軽機関銃が追加された。また、M134 ミニガンを装備した車両も存在する。

アメリカ軍の部隊、特に独自の要求を持った特殊部隊では、用途に合わせた改造を施している。そのため、海兵隊や海軍特殊部隊が戦線に配備されると、まずは陸軍が置いて行ったハンヴィーの改造から始める事もあるとされる。隊員たちは溶接や加工まで含めた大掛かりな作業も行い、純正車両には載らないはずの武器を搭載したり、座席の配置を変更することも多々ある。非公式な仕様は何通りにもなり、中には、急ぎの改造で座席に事務用椅子が使われているものまであり、それぞれ隊員達が好きな名前を付けて呼んでいる。

仕様の異なる榴弾砲の牽引車両や救急車、BGM-71 TOW対戦車ミサイル搭載車両なども存在し、特にTOWについては、M151では弾薬や人員を2台に分乗させる必要があり、非効率だったのを受けて、ハンヴィーの設計要求に1台でTOW運用機材・人員を全て収めることが含まれていた。

ソマリア内戦などでは市街戦において装甲の脆弱性が問題となり、新たに装甲追加キットや強化改良仕様車が開発された。さらに、イラク戦争では地雷やIEDに対する脆弱性も問題となり、装甲強化型(M1114、M1151など)への更新や機関銃手の防護キット(OGPK)、あるいは遠隔式銃塔(M153 CROWS II)の追加装着などが行われたが、これでも防御力は充分とはならず、こういった低強度紛争(LIC)に対応したMRAP(耐地雷待ち伏せ防護)車両への置き換えが進められている。

イスラエル国防軍では独自に改造を施した多種類の車両を運用しており、装甲強化改造を施したタイプは角張った形状のキャビンが特徴的である。

1992年、自家用のハンヴィーを求めていた俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーの働きかけにより、ハンヴィーの民間仕様となる「ハマー」(HUMMER)がAMゼネラルから発売[2]。1999年にハマーブランドがゼネラルモーターズに売却された後もAMゼネラルが製造を担当し、「ハマー・H1」として2006年まで販売された[3][4]。アメリカ軍では不要となったハンヴィーを民間に払い下げており、ナンバーを取得し公道を走行することも可能である[5]。

アメリカ軍は、2000年代中旬頃からハンヴィーの後継となるJLTVの選定計画を進めており、2015年8月に、オシュコシュ社のL-ATVがJLTVの車種に選定された。L-ATVは2018年から2030年代にかけてアメリカ陸軍、海兵隊に総計53,582両が調達される予定である[6][7]。しかし当初のJLTV計画では全てのハンヴィーを更新する予定であったが、その後、装甲型ハンヴィーを中心に更新する方針に変更されている[8][9]。

2014年、ISILがイラクへ侵攻した際には、士気が低かったイラク治安部隊側が武器を放棄して撤退する事例が続出。モースルをめぐる攻防だけでも2,300台のハンヴィーがISIL側に鹵獲された(全て稼働可能状態であったかは不明)[10]。2015年、ISILがイラクから流出した相当数のハンヴィーやM1117装甲警備車を所有していることが確認されている[11]。さらにアフガニスタンでは2021年ターリバーン攻勢が本格化すると、士気が低下していた政府軍が次々と投降。ターリバーンは大量のハンヴィーなどの車両を鹵獲した[12]。

性能類似車両との比較 日本の旗軽装甲機動車 オーストラリアの旗ハーケイ イタリアの旗LMV フランスの旗VBL スイスの旗イーグル ドイツの旗エノク トルコの旗コブラ ロシアの旗GAZ-2330 アメリカ合衆国の旗M1151
画像 Komatsu LAV – 1.jpg Hawkei DSC02320.JPG LinceVM.jpg Panhard VBL (Vèhicule Blindé Legér), French army licence registration ‘6924 0051’ pic1.JPG Mowag Eagle IV.jpg Light Armoured Patrol Vehicle ENOK.jpg Paradbaku98.jpg GAZ 2975 Tigr.JPG M1151.jpg
全長 4.4 m 5.78 m 5.50 m 3.87 m 5.37 m 4.82 m 5.23 m 5.70 m 4.93 m
全幅 2.04 m 2.39 m 2.05 m 2.02 m 2.16 m 1.90 m 2.22 m 2.30 m 2.31 m
全高 1.85 m 2.30 m 1.95 m 1.70 m 2.0 m 1.90 m 2.1 m 2.3 m 1.99 m
重量 約4.5 t 約7.0 t 約6.5 t 約3.59 t 約8.5 t 約5.4 t 約6.2 t 約7.6 t 約6.1 t
最高速度 100 km/h 130 km/h 130 km/h 95 km/h 110 km/h 96 km/h 115 km/h 140 km/h 113 km/h
乗員数 1+3 – 4名 1+4 – 5名 1+3 – 6名 2 – 3名 1+4名 2-6名 1+8名 2+10名 1+3 – 4名
各型
主要型

M966
TOW対戦車ミサイル搭載型。
M996
野戦救急車型、装甲付き。担架2台または負傷者6名を収容可。
M997
野戦救急車型、装甲付き。担架4台または負傷者8名を収容可。
M998
貨物・兵員輸送型。
M998 HMMWV Avenger
対空型。アベンジャーシステム搭載。
M1025
武装型、装甲付き。機銃をルーフに搭載。
M1026
武装型、装甲付き。機銃をルーフに搭載。ウインチ増備。
M1035
野戦救急車型、非装甲。
M1036 HMMWV
TOW対戦車ミサイル搭載型。ウインチ増備。
M1037
S-250電子器材輸送型。
M1038
貨物・兵員輸送型。ウインチ増備。
M1042
S-250電子器材輸送型。ウインチ増備。
M1043
武装型、装甲強化。機銃をルーフに搭載。
M1044
武装型、装甲強化。機銃をルーフに搭載。ウインチ増備。
M1045
TOW対戦車ミサイル搭載型。装甲強化。
M1046
TOW対戦車ミサイル搭載型。装甲強化。ウインチ増備。
M1069
M119 105mm榴弾砲牽引型。
M1097
重量型。車体が大型化し、積載量が増加。
M1097 HMMWV Avenger
対空型。アベンジャーシステム搭載。
M1109
重装甲型。

能力向上型

M1113
M1097A2をベースにした拡張型シャーシの基本モデル。
M1114
ポリカーボネート製フロントウィンドウ、ケブラー装甲を備えた、7.62mm徹甲弾・155mm榴弾弾片・5kg級対車輌地雷に耐える防護仕様車。
旧モデルに比べ自重が倍増した代わりに、エンジンもターボ付き190馬力に強化されている。M1113の防盾付き機銃または擲弾発射器をリングマウントに搭載。
M1116
M1114のアメリカ空軍統合末端攻撃統制官向け。
M1123
重量型。
M1121
TOW対戦車ミサイル搭載型。
M1145
アメリカ空軍の統合末端攻撃統制官向け。装甲付き。
M1151
キャビン上部に銃座を備えた車両。増加装甲を取り付け可能[13]。
M1152
2人乗りの輸送型。荷台には8人が搭乗可能[14]。
M1165
指揮や警備向けの4人乗り車両[15]。
M1167
キャビン上部にTOWミサイルを装備した車両[16]。

派生型

M707 Knight
M1025A2の偵察型[17]。

M966
救急車型のM997
後部スペースを装甲板で補強したM998カーゴ
アメリカ海兵隊のM1151
運用国

アフガニスタンの旗 アフガニスタン
アルバニアの旗 アルバニア
アルジェリアの旗 アルジェリア
アルゼンチンの旗 アルゼンチン
バーレーンの旗 バーレーン
ボスニア・ヘルツェゴビナの旗 ボスニア・ヘルツェゴビナ
ボリビアの旗 ボリビア
ボツワナの旗 ボツワナ
 ブルガリア
カナダの旗 カナダ
チャドの旗 チャド
 チリ
 コロンビア
クロアチアの旗 クロアチア
 チェコ
 デンマーク
ジブチの旗 ジブチ
ドミニカ国の旗 ドミニカ国
エルサルバドルの旗 エルサルバドル
エクアドルの旗 エクアドル
 エジプト
エチオピアの旗 エチオピア

ジョージア (国)の旗 ジョージア
ギリシャの旗 ギリシャ
ホンジュラスの旗 ホンジュラス
 ハンガリー
イラクの旗 イラク
イスラエルの旗 イスラエル
カザフスタンの旗 カザフスタン
クウェートの旗 クウェート
ヨルダンの旗 ヨルダン
 ケニア
レバノンの旗 レバノン
リビアの旗 リビア
 リトアニア
ルクセンブルクの旗 ルクセンブルク
北マケドニア共和国の旗 北マケドニア
メキシコの旗 メキシコ
モナコの旗 モナコ
モンゴルの旗 モンゴル
モンテネグロの旗 モンテネグロ
モロッコの旗 モロッコ
ニュージーランドの旗 ニュージーランド
 ノルウェー

パナマの旗 パナマ
オマーンの旗 オマーン
ポーランドの旗 ポーランド
ペルーの旗 ペルー
ポルトガルの旗 ポルトガル
中華民国の旗 中華民国(台湾)
 ルーマニア
サウジアラビアの旗 サウジアラビア
セルビアの旗 セルビア
スロバキアの旗 スロバキア
スロベニアの旗 スロベニア
スペインの旗 スペイン
スーダンの旗 スーダン
タンザニアの旗 タンザニア
タイ王国の旗 タイ
チュニジアの旗 チュニジア
 ウクライナ
アラブ首長国連邦の旗 UAE
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ウガンダの旗 ウガンダ
ベネズエラの旗 ベネズエラ
イエメンの旗 イエメン

ハンヴィー運用国

ポーランド陸軍の車両。キャビン上に搭載されているのはWKM-B RWS。

ポーランド陸軍の車両。キャビン上に搭載されているのはWKM-B RWS。
サウジアラビア陸軍の車両。M2重機関銃が搭載されている。

サウジアラビア陸軍の車両。M2重機関銃が搭載されている。
台湾憲兵の車両。Mk19 自動擲弾銃が搭載されている。(2011年)

台湾憲兵の車両。Mk19 自動擲弾銃が搭載されている。(2011年)
イラク治安部隊の車両。キャビン上のターレットリンクは装甲板で覆われ、PKM機関銃が搭載されている。

イラク治安部隊の車両。キャビン上のターレットリンクは装甲板で覆われ、PKM機関銃が搭載されている。
ギリシャ陸軍の車両。ミラン対戦車ミサイルを搭載している。

ギリシャ陸軍の車両。ミラン対戦車ミサイルを搭載している。
デジタル迷彩を施されたレバノン軍の車両。

デジタル迷彩を施されたレバノン軍の車両。
銃塔に偽装を施したアフガニスタン政府軍のM1151。2010年、カブールとジャララバード間の移動中。

銃塔に偽装を施したアフガニスタン政府軍のM1151。2010年、カブールとジャララバード間の移動中。
イスラエル国防軍の装甲強化型車両。

イスラエル国防軍の装甲強化型車両。
ラファエル製のサムソンRWCSを装着したイスラエル国防軍のM1114。

ラファエル製のサムソンRWCSを装着したイスラエル国防軍のM1114。
観測機材を搭載したイスラエル陸軍戦闘情報収集科の車両"ラクーン"。

観測機材を搭載したイスラエル陸軍戦闘情報収集科の車両"ラクーン"。
ISAF部隊としてアフガニスタンで活動するリトアニア軍のM1151。OGPKにFN-MAGを装備している。

ISAF部隊としてアフガニスタンで活動するリトアニア軍のM1151。OGPKにFN-MAGを装備している。
アフガニスタンに派遣されたデンマーク軍の装甲ハンヴィー "Jülkat"。

アフガニスタンに派遣されたデンマーク軍の装甲ハンヴィー "Jülkat"。
アフガニスタンに派遣されたルーマニア軍の装甲ハンヴィー。OGPKにDShK38重機関銃を装備している。

アフガニスタンに派遣されたルーマニア軍の装甲ハンヴィー。OGPKにDShK38重機関銃を装備している。
BGM-71 TOW対戦車ミサイルとMG3を装備したスペイン海兵隊(英語版、スペイン語版)の車両。

BGM-71 TOW対戦車ミサイルとMG3を装備したスペイン海兵隊(英語版、スペイン語版)の車両。
T-75M 20mm砲を搭載した中華民国海軍陸戦隊の車両。

T-75M 20mm砲を搭載した中華民国海軍陸戦隊の車両。

登場作品

詳細は「ハンヴィーに関連する作品の一覧」を参照

類似する車両

日本の旗 日本

高機動車 - 1993年から陸上自衛隊への配備が始まった日本版ハンヴィー。民生仕様車もトヨタ・メガクルーザーとして発売された。
軽装甲機動車

ドイツの旗 ドイツ

AGF サーバル

イスラエルの旗 イスラエル

M325 ヌンヌン - ハンヴィー導入以前に、イスラエル軍で使用されていた非装甲/四輪駆動の中型軍用車両。
M462 Abir - ハンヴィーと同時期に、イスラエル軍で使用されている非装甲/四輪駆動の中型軍用車両。
AIL ストーム -ハンヴィーと同時期に、イスラエル軍で使用されている非装甲/四輪駆動の小型軍用車両。
MDT ダビデ - ハンヴィーと同時期に、イスラエル軍で使用されている軽装甲/四輪駆動の小型軍用車両。

イタリアの旗 イタリア

イヴェコ LMV

スペインの旗 スペイン

VAMTAC - 車体デザインも類似する。

フランスの旗 フランス

PVP(フランス語版) - 2008年~2012年に配備された新型の軽装甲車。
シェルパ(フランス語版) - 2006年にルノーが開発した装甲車。車体デザインも類似している。

ロシアの旗 ロシア

GAZ-2330 ティーグル - "ロシア版ハンヴィー"とも呼ばれる装輪式軍用車両/軽装甲装輪装甲車。

中華人民共和国の旗 中華人民共和国
バングラデシュ軍の東風EQ2050

東風EQ2050「猛士」(英語版) - 東風汽車製。ハマー・H1をコピーして製造されたとされる中国版ハンヴィー[18]。輸出もされている。

大韓民国の旗 大韓民国

KLTV(k151)

ベネズエラの旗 ベネズエラ

Tiuna - ハンヴィーのシャーシをベースに設計された軽装甲車。

スイスの旗 スイス

イーグル - ハンヴィーのシャーシをベースに設計された軽装甲車。

トルコの旗 トルコ

コブラ - ハンヴィーと同じシャーシをベースに設計された軽装甲車。』

アベンジャーシステム

アベンジャーシステム
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%99%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0

『AN/TWQ-1 アベンジャー防空システム(AN/TWQ-1 Avenger Air Defense System)は、アメリカ合衆国の近距離防空ミサイル・システム。軽車両からスティンガー 地対空ミサイルを発射できるようにしたもので、従来の自走式対空ミサイルより軽便で機動性に優れている。 』

『概要

アメリカ陸軍・海兵隊の近距離防空用地対空ミサイルシステムとして開発・配備された。主契約社はボーイング社。

M998 ハンヴィー系列の荷台に搭載されて運用されているため、対空ミサイル車両それ自体と誤解されることが多いが、システムとしては独立しており、単独あるいはほかの車種での運用も可能なシステムとして設計されている。四輪駆動車に搭載したことで機動性に優れたシステムとなっている。

ハンヴィー搭載時の運用人員は2名。スティンガー地対空ミサイル4連装ポッド2基に加え、右側のポッドの下部にFN M3P 12.7mm重機関銃を装備している。短射程ではあるが撃ち放し式のミサイルを使用するため、即応性に優れたシステムとなっている。車体内から操作できるだけでなく、車体から離れた場所から遠隔操作することも可能。

類似したシステムとして、ホワイトハウスの対空防衛装置がある。日本も高機動車に91式携帯地対空誘導弾を8基搭載した93式近距離地対空誘導弾を開発し、配備している。

登場作品

映画

『地球が静止する日』
セントラルパークに舞い降りた巨大な球体を包囲する。

アニメ

『ストライク・ザ・ブラッド』
2015年制作のOVA版『ヴァルキュリアの王国篇 後編 Kingdom of The Valkyria II』において絃神島アイランドガードの装備として登場。

小説

『WORLD WAR Z』
アメリカ陸軍の車両が登場。ヨンカーズの戦いに投入されているが、見栄え優先の配備だったことと、相手が地上を歩くゾンビだったことから、使用されることはなかった。
ゲーム

『ARMA 2』
プレイヤーとAIが操作可能。
『Project Reality(BF2)』
アメリカ軍、アメリカ海兵隊、カナダ軍、イスラエル国防軍の対空兵器としてハンヴィーに搭載した物が登場。
『Wargame Red Dragon』
NATO陣営のアメリカ軍デッキで使用可能な対空兵器として迷彩を施して登場する。
『WarRock』
一部マップに配置されている。
『新戦闘国家』
『大戦略シリーズ』
『マーセナリーズ』
国連軍の対空車両として「M1027」の名称で登場する。

『マーセナリーズ2 ワールド イン フレームス』
    連合軍の対空車両として「メッセンジャーSAM」の名称で登場する。

『エースコンバット7』
オーシア国防陸軍がハンヴィーに似た車両に搭載し運用している。』

米、移動式の防空装備供与 「アベンジャー」4基

米、移動式の防空装備供与 「アベンジャー」4基
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB110XV0R11C22A1000000/

『【ワシントン=共同】米国防総省は10日、ロシアから巡航ミサイルや無人機を使った攻撃を受けているウクライナに対し、4億ドル(約567億円)規模の追加支援を発表した。機動性が高い移動式防空システム「アベンジャー」4基を供与する。

地対空ミサイル「ホーク」や高機動ロケット砲システム「ハイマース」用の砲弾なども送る。

米国の軍事支援は、ロシアによる2月24日の侵攻開始後、計186億ドルを超えた。

オースティン長官が16日にウクライナ防衛のための関係国会合をオンラインで開くことも明らかにした。関係国会合は7回目となる。』

豪、元軍人の中国軍への訓練提供を調査へ

豪、元軍人の中国軍への訓練提供を調査へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM090NI0Z01C22A1000000/

『【シドニー=松本史】オーストラリアのマールス副首相兼国防相は9日、豪軍の元軍人が中国軍に訓練を提供するよう持ちかけられた可能性があるとの情報を受け、正式な調査を行うと発表した。同氏は「国防に関する活動や人材が外国情報機関の標的になっているのは周知の事実だ」と警戒感を示した。

9日に記者会見したマールス氏は、実際に豪軍の元軍人が中国軍に対して訓練を行ったかについては明言を避けた。一方で豪連邦警察と情報機関が豪軍の協力を得て複数の事案を捜査していると明らかにした。

同氏は「国防関係者、特に国家機密を保持する人員についてどのような政策や手続きを適用すべきか詳細な調査を行うよう国防省に指示した」と述べた。そのうえでたとえ退役後であっても機密を漏洩すれば「重大な犯罪になる」と強調した。

英BBCは10月、最大30人の元英軍パイロットが中国人民解放軍の人員に訓練を行うため渡航したと報じた。約23万8000ポンド(約4000万円)の報酬が示されたケースもあったという。』

IPEF発足メンバーから台湾を外したアメリカの「事情」

IPEF発足メンバーから台湾を外したアメリカの「事情」
https://news.yahoo.co.jp/articles/95c47478cb58c33e3410aa4905d9989c720016ad

『数量政策学者の高橋洋一が5月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の発足メンバーについて解説した。

IPEF発足メンバーに台湾入らず

2022年5月23日、IPEF(インド太平洋経済枠組み)関連行事~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202205/23usa.html

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は5月22日、記者団に、米国がアジアでの存在感回復を目指して提唱する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の発足メンバーに台湾が加わらないことを明らかにした。

飯田)サリバン大統領補佐官が、「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」発足メンバーに台湾は入らないと述べたということです。どうご覧になりますか?

高橋)台湾も「遺憾」と言っていますが、私も「遺憾」だと思います。

飯田)遺憾であると。

発足の数を増やすために東南アジアの国を入れたい ~対中包囲網であることを避けたい東南アジアの国

高橋)理由はあるのです。アメリカが最初の発足数を確保したいということで、13ヵ国でスタートしましたけれども、数を確保するために、東南アジアの国を入れたいわけです。しかし、東南アジアの国は、中国のことを気にするのです。

対中包囲網を明確にしないために台湾をメンバーから外す

高橋)これが対中包囲網であることが明確になると、自分たちも困ってしまう。対中包囲網であることがはっきりするかどうかは、「台湾が入るか入らないか」ですから。

飯田)台湾が入るかどうか。

高橋)そのため、台湾はとりあえず発足メンバーから外れてもらった、という経緯のようです。

飯田)なるほど。

高橋)これが何のためにつくられたのかと言うと、IPEF自体にアメリカ議会は関与しないので、「フワッ」としたフレームワークなのです。

飯田)IPEF自体が。

高橋)だからTPPの代わりにはまずなりません。関税もないというフレームワークなので、その分を絞って、対中包囲網をはっきりさせればいいのです。

IPEFの目的の1つはサプライチェーンの強化 ~日米韓台の4ヵ国スタートというあり方も
高橋)IPEFの1つの目的として、サプライチェーンの強化があるではないですか。サプライチェーンといえば半導体でしょう。半導体であれば、日米と韓国と台湾がほとんどのシェアを占めます。台湾を入れないと成り立たないのです。ですので、4ヵ国でスタートしてもいいかなと私は思っていました。

飯田)4ヵ国で。

高橋)要するに、対中包囲網ということをはっきりさせればいいのです。韓国も巻き込んで、日本とアメリカと台湾の4ヵ国でもそういう方向になるでしょう。もちろん、インドが入るのはいいのですけれどもね。インドは他の理由で入れて、4~5ヵ国くらいのスタートでいいのかなと思っていました。だから台湾が入ると予想していたのですが、残念ですね。いずれ入るでしょうけれど。

東南アジアの国を入れて「数を増やす」ことを選択したアメリカ

飯田)いずれ入ってこないと、サプライチェーンについては……。

高橋)話にならない。関税がなく、自由貿易にはなかなかならないので、対象を絞ったやり方になります。いまのところ、デジタル、サプライチェーン、クリーンエネルギー、クライム(犯罪)という分野でやると言っているのだけれど、主な話はサプライチェーンです。

飯田)サプライチェーン。

高橋)サプライチェーンに関しては、台湾を入れないと話になりません。それでも今回、東南アジアの国を入れて「数を増やす」ことをアメリカは優先しました。』

米国と台湾、貿易枠組みで協議開始

米国と台湾、貿易枠組みで協議開始
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN095740Z01C22A1000000/

『【ワシントン=飛田臨太郎】バイデン米政権は8日から台湾との新しい貿易枠組みを巡り、協議を始めた。9日までニューヨークで開く。米通商代表部(USTR)と台湾当局が6月に立ち上げた「21世紀の貿易に関する米台イニシアチブ」の具体策を擦り合わせる。

貿易手続きを簡素にするほか、デジタル貿易や労働者の保護などで高い水準のルールをつくる。台湾は米国が日韓やインド、東南アジア諸国などと始動した新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に入っていない。IPEFとは別の枠組みをつくることで、台湾に配慮した。

台湾が期待する関税の引き下げ交渉は現時点で協議内容に入っていない。バイデン政権が米国内の反発を懸念しているためだ。今回の協議では具体案の合意まで至らない見通しだ。』

[FT]中国の工場「希望が持てない」 国内外で受注急減

[FT]中国の工場「希望が持てない」 国内外で受注急減
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB1013D0Q2A111C2000000/

『ジミーさんは広東省にある自らの工場のほこりっぽい床に座り込んで、残りの借金を返済するためのカネを何とか工面しようとしていた。従業員への支払いは終わり、機械は売った。10月に工場を閉鎖した後、オフィスの家具も取り払われた。

中国の国内需要がロックダウンの影響で落ち込む一方、欧米の需要も減退していることが中国の製造業にとって痛手となっている=ロイター

ジミーさんはフィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、「受注が減り、ロックダウン(都市封鎖)が幾度となく実施されたことが工場を閉鎖した理由だ」と語った。「しかし何よりも、希望が持てなくなった。回復の兆しがまったくみえなかった」

中国南部の工場からの報告によると、欧米で在庫が満杯になっていることを背景に、10月の受注が50%も減ったという。このため、世界第2の経済大国の先行きは一層悲観的になっている。

10月は通常、製造業にとっては最大の書き入れ時だ。そんな月に受注が激減したため、工場労働者は仕事探しに苦労している。

「誰も何も買わない」

悪循環が止まらない不動産危機、散発的なロックダウン、消費者心理の冷え込みと、中国政府はすでに四苦八苦している状況だが、製造業の受注減がそれらに重なる新たな悩みのタネとなっている。中国は10月、7-9月期の国内総生産(GDP)が前年同期比3.9%増にとどまったと発表した。年間目標値の5.5%増を下回っている。

広東省の家具製造工場を経営するクリスチャン・ガスナー氏は「繁忙期であるはずなのに、過去2カ月は最悪だ。誰もソファを買わないだけでなく、誰も何も買わない。欧州ではカネのある人が誰もいなくなった」と述べた。

「皆が同じ事でなげいている。ある業種では、注文が30~50%も落ちている。工場閉鎖が相次いでいる」

中国南部に外注している香港企業の幹部、アラン・スカンラン氏によると、バイヤーが2022年向けに過剰に在庫を増やした後、電子商取引ブームが終わったため、この減速は必然的だという。

例えば、世界最大のスポーツ用品メーカー、米ナイキは9月、6-8月期末の北米の在庫が前年同期に比べ、65%増えたと報告している。

中国国家統計局によると、製造業の購買担当者景気指数は10月、49.2となり、9月の50.1から低下した。低下幅は予想を上回った。

7日に発表された貿易統計によると、10月の輸出は前年同月比で0.3%減った。予想は4.5%増だった。エコノミストは受注減に加え、中国の「ゼロコロナ」政策の下での無計画なロックダウンが原因だとみている。

エレクトロニクス・再生エネは影響軽微

欧州系運用会社ナティクシス香港支社のエコノミスト、ギャリー・ウン氏は「中国の国内需要が、ロックダウンの影響で落ちている一方、世界的な高金利のために欧米の需要も減っている」と指摘した。

「中国南部にとって、この状況はかなり厄介だ。そして、南部の各省は中国経済にとって重要な地域だ」

広東省の製造業の中心である東莞市のある高官は、工場支援のための補助金を出し続けることに苦労していると話す。地方政府は新型コロナ検査費用も支払わなければならないからだ。

匿名希望のこの高官は「どうしろと言うのか。工場や地域経済を見殺しにして、市民からの税金をすべて、きりのないPCRテストにつぎ込めというのか」と疑問を投げかけた。

ガスナー氏は、製造業でも品目によって影響の受け方は異なると指摘する。エレクトロニクスや再生可能エネルギー関連の製造業者は、修羅場を踏まずに済んでいる。

工場長らによると、今回の低迷は労働市場に波及しており、緊急に人手が要る場合にも簡単に人の手当てができるという。

東莞市でアルミニウム工場を運営する香港中小企業協会の名誉会長、ダニー・ラウ氏は「受注が落ちれば、コスト削減をせざるを得ない。最大の支出の一つは人件費だ」と話す。
「我々の工場には昨年前半、200人を超える従業員がいたが、今年は100人前後だ。主に受注減が原因だ」。

米中対立で生産移行が加速

広東省に拠点を置き、世界のスーパーマーケットに物資を供給する企業に働く陳さんは、労働時間の減少で、昨年8万元(約161万円)あった収入が、今年は5万元に減った。

24歳の陳さんは「以前は、タピオカティーを悩まずに正規の値段で買っていた」と話す。「今は割引券のあるカフェにしか行かない」。陳さんはFTに対し、勤めている会社の受注は、4月以来、前年に比べて40%ほども落ちているとみていると述べた。

そして「顧客は中国を信用しなくなっている。もはや中国に全面的に入れ込むことはしなくなっている」と述べた。

中国本土での人件費の値上がりを受け、すでに、東南アジアへの生産移行が進んでいる。米中関係の悪化も中国の製造業からのシフトを加速させている。

香港に本拠を置くエバスター・マーチャンダイズの取締役、スキ・ソー氏は「もはや、中国にいてもいいことは何もない。米国人がメイド・イン・チャイナをほしがらなくなったからには、中国本土での事業はたたんだ方がいい」と述べ、広東省にある自社工場を閉鎖する考えを明らかにした。

ソー氏は残りの工場を東南アジアに移転させており、そこではクリスマス向けの電飾を作っている。

「米国人が以前より貧しくなっているため、家具のような必需品でない製品の需要が落ち込んでいる。今年は出来上がった製品を保管する倉庫を借りなければならなかった」

By Primrose Riordan, Chan Ho-him, Qianer Liu and Gloria Li

(2022年11月9日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

G20での米中首脳会談を「重視」、中国外務省

G20での米中首脳会談を「重視」、中国外務省
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM10A6J0Q2A111C2000000/

『【北京=羽田野主】中国外務省の趙立堅副報道局長は10日の記者会見で、バイデン米大統領が意欲を表明した米中首脳会談について「米国が提案したインドネシア・バリ島での首脳会談を中国は重視している」と述べた。

11月中旬にバリ島で開く20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて米中首脳会談を調整していると事実上認めた。「中米首脳はいろんなやり方を通じて常に連絡をとっている」とも指摘した。

趙氏は「米国は中国とともに前に向かって進み、意見の違いをよくコントロールし、中米関係が健全で安定的な軌道に戻るように後押しすべきだ」と主張した。台湾問題を中国の「核心的利益の中の核心だ」とも強調し、バイデン政権が介入しないようにクギを刺した。』

北京自動車ショー、22年内の開催中止 コロナ拡大で

北京自動車ショー、22年内の開催中止 コロナ拡大で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM10A2H0Q2A111C2000000/

『【広州=川上尚志】世界最大級の自動車展示会、北京国際自動車ショーの主催団体は10日、2022年内の開催を中止すると発表した。当初は中国の北京市で4月に開催する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大などを理由に延期していた。感染が収まらないなか、年内開催の断念に追い込まれた。

主催団体は同日の発表文で「22年に開催する計画の停止を決めた」としている。同イベントは北京と上海市で毎年交互に開かれており、20年の北京自動車ショーには53万人が来場した。

中国では新型コロナの感染拡大を受け、南部の広東省広州市では18日に開幕予定だった広州国際汽車展覧会(広州モーターショー)の延期が決まり、新たな開催時期は未定だ。10日には天津市でモーターショーが開幕したが、参加者には24時間以内に受けたPCR検査の陰性証明書の提示を求めるなどの対策をしている。

各地のモーターショーでは自動車メーカーが最新の車両や技術をアピールしたり商談や販売を進めたりする。中止や延期が相次ぐことで「新しい製品などを、いつどこで発表するか大変難しくなっている」(日系自動車大手幹部)との声が上がる。』

中国「ゼロコロナ」継続 最高指導部会議が確認

中国「ゼロコロナ」継続 最高指導部会議が確認
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB10CS40Q2A111C2000000/

『【北京=共同】中国共産党の最高指導部は10日、習近平(シー・ジンピン)党総書記(国家主席)が主宰する会議を開き、新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を継続する方針を確認した。流行が今後拡大する恐れがあるとの見通しも示した。国営通信新華社が伝えた。既に移動制限が厳しくなっており、約1カ月帰宅できていない邦人もいる。北京ではPCR検査が毎日必要になった地区もあり、検査所に長い行列ができた。

最高指導部は会議で、コロナウイルスの変異に伴い、冬から来年春にかけて「感染の範囲や規模がさらに拡大する可能性がある」と危機感を示した。外国からのウイルス流入も防ぎながら、ゼロコロナ政策を「断固として貫徹する」と強調した。

在北京の日本大使館は10日、中国当局が移動制限を厳しくしているため、中国国内では不要不急の長距離移動を控えるよう、在留邦人に注意を呼びかけた。

特に感染者が出た地域から北京への移動は困難になっている。日本大使館には出張や旅行から自宅に戻れなくなったという邦人の相談が多数寄せられている。

北京市内でも24時間以内に受けたPCR検査の陰性証明がないと立ち入れないビルや居住区が増加。商業施設や観光地の営業停止も相次いでいる。今年春から延期されていた北京国際モーターショーの主催者も10日、今年の開催を断念すると発表した。』

中国無人機とみられる1機、尖閣周辺を飛行 防衛省発表

中国無人機とみられる1機、尖閣周辺を飛行 防衛省発表
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA10CE10Q2A111C2000000/

『防衛省は10日、同日午前に中国の無人機と推定する1機が沖縄県・尖閣諸島の北方を飛行したと発表した。尖閣諸島方向へ南に進んだあとに反転し、その後中国大陸がある北西に飛んだ。類似の飛行事例がなく、特異な事象として分析を進める。

航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)して対応した。領空侵犯はなく、危険な行為もなかったという。防衛省が中国の無人機の飛来を公表するのは8月30日以来となる。』

ロシアが壊したG20 もはや国連の二の舞い

ロシアが壊したG20 もはや国連の二の舞い
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA014C20R01C22A1000000/

『主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が15日からインドネシア・バリ島で始まる。ロシアによるウクライナ侵攻以降では初のサミットだ。世界には物価高と景気停滞の足音が同時に迫る。かつての金融危機下で生まれた協調の枠組みにはほころびや溝ばかりが目立つ。

サミットを巡ってロシアのプーチン大統領は開催直前のいまも出席の可否を明言していない。オンラインでの参加が取り沙汰される。世界を混乱させた当事者に面と向かって注文ひとつできない。これが今回のG20にあたって最大の欠落といえる。

招待を受けたウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアのリーダーが出席するなら参加しない」との立場を示している。このためロシアとウクライナのどちらかが欠席する可能性が高くなる。

G20に協調や結束を示すことができた歴史はある。

2008年のリーマン・ショックを受けた金融危機の後、中国は4兆元の巨額財政出動を発表した。ギリシャをはじめ10年代のユーロ圏の信用危機の際には欧州中央銀行(ECB)が無制限の国債買い入れに動いた。

21年秋にローマで開いたG20サミットは首脳宣言を採択できた。世界経済の回復は「国ごとにばらつきがある」との認識を共有し、各中央銀行が物価動向を注意深く監視していくと確認した。

1年ほどが過ぎ、世界の安全保障環境と経済情勢はともに様変わりした。

ロシアは主権国への侵攻を8カ月以上続ける。世界経済に関しても各国で物価上昇が記録的な勢いで加速し、監視では済まない事態に陥った。米欧の中銀が大幅な金利引き上げを進める。

バイデン米大統領はそれでも「ドル高を懸念していない」と断言し、「問題は他国の成長と健全な政策が不足していることだ」とまで強調する。新興国はドル高の裏側で進む自国通貨安と金利上昇に悩み、さらにその先の債務危機へ不安を募らせる。

ウクライナ侵攻後の今年の4月、7月、10月と3回開いたG20財務相・中央銀行総裁会議はすべて共同声明の発出を見送った。肝の世界経済の現状認識で溝が埋まらない現実を前に、日本の外務省幹部は「今回は首脳宣言をまとめるのは困難だ」と話す。

もはや機能不全に近い状況は国連に似る。国連安全保障理事会は2月、ロシアのウクライナ侵攻を巡り「国連憲章違反であり、最も強い言葉で遺憾の意を表する」との決議案さえ採択できなかった。常任理事国のロシアが拒否権を発動したためだ。

弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮への対応も同様だ。安保理が緊急会合を開いても中ロが「緊張を高めているのは米国だ」と主張し、非難声明はいつも宙に浮く。G20サミットで首脳宣言が採択できなければ08年の立ち上げ以降で初めての事態だ。

議長国のインドネシアは議長声明をまとめて公表する姿勢を示す。「首脳宣言なきサミット」が現実味を帯びているからにほかならず、匿名でも各国の立場を並べるとかえって亀裂が目立つ状況になりかねない。

合意できそうな項目はないわけではない。少なくともインドネシアはエネルギーや食料問題で可能だとみる。

ロシアは首脳会議の場でどう主張するか。「G7主導の対ロ制裁が価格上昇を招いている」と繰り返すはずで、途上国にはその言い分に理解を示す所もある。一筋縄ではいかず、機能不全の汚名返上の題材にもなりにくい。

G20メンバーである中国には別の狙いがありそうだ。

米国が主導する国際秩序づくりに対抗する意味合いもあって、中国は経済協力や気候変動といった地球規模の課題について話し合うG20の場を重視してきた経緯がある。

中国からは習近平(シー・ジンピン)国家主席らが現地入りする見込みだ。

現状では米中首脳会談をはじめむしろG20の枠組みの「外」のほうが世界の関心度が高い。中間選挙を終えたバイデン氏が中国への圧力を一段と強めるのか。中国共産党の総書記として3期目入りしたばかりの習氏はどう対峙するか。ここでも協調より亀裂の深さがキーワードになる。

「G7の御用聞き」脱皮の時(大庭三枝・神奈川大教授)

神奈川大の大庭三枝教授(政治学)

ロシアによるウクライナ侵攻後、日米欧とロシアによって世界が2つの陣営に分断・分裂しつつあるという印象を持つ人がいる。現実は異なる。世界はもっと多様で複雑だ。

主要7カ国(G7)とロシアの中間に位置する新興国・途上国が多く存在し、彼らがどちらにも全面的に寄らない外交を展開しているからだ。

主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は国際的な緊張が高まるなかで先進国と途上国の代表が顔を合わせる。各国が公に発言できる場であることに意味がある。

今回の会談で首脳宣言が出せなくとも、それぞれの参加国が相互の意見に耳を傾けて互いを理解し、歩み寄る努力が今こそ欠かせない。

議長国を務めるインドネシアは、国内向けに外交的成果を示す意図はあるものの「ロシアを国際社会から排除することが外交の解ではない」と本気で考えているはずだ。

同国を含む東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国は米中を含む主要な域外国それぞれとの関係の維持に努めている。ASEANは中国への依存度も下げたいが米国への不信感も強い。外交的なリスクを回避して独自の地位を築いてきた。

新しい秩序、日本主導で探れるか

ASEANに限らず大国の狭間で地位を確保しようとする国、対ロシア制裁で経済的打撃を被る国など立場は様々だ。G7の主張に全面的に賛同しないのには相応の理由がある。

日本はこれまでアジア各国と対話を重ねてきた。途上国の考え方も理解できる。

もはや途上国との協力なしに、国際社会で外交力を発揮することなどできない。G20サミットの場で「G7の御用聞き」に徹するのではなく、途上国の利益も包含するような「新たな秩序像」を打ち出して存在感を示す時が来ている。

記者の目 外交は内政の延長線

「世界経済の課題解決に最も適した枠組みだ」。主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の準備会合を終えた2008年、議長国ブラジルのマンテガ財務相はこう話した。当時の麻生太郎首相も「後世、歴史的なものといわれる」と見通した。

リーマン・ショックで傷ついた世界は各国の協調で救われた面がある。少なくとも立場の異なる国・地域が同じテーブルにつき対応を練った。目下のロシア発の危機への打開策はすぐには見つからない。

物価高が家計を直撃し各国首脳の目は自国に向く。外交は内政の延長線上にあり、国内で支持が揺らげば外交力は低下する。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題に手間取る岸田文雄首相も同じだろう。政権基盤の品評会だとみれば今回のG20の捉え方も変わる。(今井秀和)

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