米韓の術中にはまりミサイルを撃たされている北朝鮮 怖くて核実験もできない理由

米韓の術中にはまりミサイルを撃たされている北朝鮮 怖くて核実験もできない理由
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/11081700/?all=1

 ※ 耳新しい話しだ…。

 ※ しかし、相当に「説得力」がある…、と思って読んだ…。

『北朝鮮はミサイルを連日飛ばし、メディアは「軍事衝突の危機」の主張や見出しで煽るが、真相は伝えない。無責任だ。真実は、北朝鮮は日本を攻めきれず、核実験は崩壊につながり、石油は枯渇状態だ。核とミサイル技術不足の危機に直面し、食糧難だ。著名なウォルター・リップマンは、世論の80%以上が同じ方向に向くと社会は危うく、少数意見でも真実を言うのはジャーナリストと学者の使命と述べる。

【写真】追い詰められていたのは北朝鮮だった

米韓の「北朝鮮崩壊作戦」挑発

 国際政治判断の基本は、相手についての情報を入手し、相手の弱点をできるかぎり正確に判断することだ。北朝鮮を強大な軍事大国のように話すのは意図的で、情報力と分析力で落第だ。例えば、中国問題では指導部の勢力争いや経済情報が明らかにされ、分析する。朝鮮問題では、なぜそれができないのか。

 まず、北朝鮮は今回のミサイル連射を、演習中は国内では報道しなかった。この真実を誰も指摘しない。米韓の合同軍事演習終了後に、国内に報じた。北朝鮮外務省は、外向けの声明で「『韓』米合同演習」を非難した。その際に、韓国を「韓」と初めて表現したのに、誰も「おかしい」と言わない。南朝鮮が公式の表現だ。

 なぜ連日ミサイルを連射したのか、ミサイルしか対抗手段がないからだ。通常兵器は古すぎで、役に立たない。当初はウクライナ戦争側面支援のために、ミサイルを発射した。今は米韓の「北朝鮮崩壊作戦」挑発にまんまと乗せられている。

 年初から核実験が近いと言われたのに、年末に来ても、実験できない。なぜか。誰も説明しない。これでは、日本外交と情報収集の危機だ。私は当初から「核実験はしない」と述べたが、誰も聞かなかった。

 核実験問題では、学者や在日コメンテーターの予測は当たらず、専門家というにはやや恥ずかしいのに、テレビは繰り返し登場させた。

 例えば、2月から3月にかけ、米政府高官は「北朝鮮が核実験の準備を終えた」と述べた。慶應大学教授や在日コメンテーターが「核実験は近い」と言い始めた。

 在日のコメンテーターは、金日成主席誕生日(4月15日)までに核実験をすると断言した。それが外れると、「米国の裏をかいた」と言い訳した。「4月核実験」が外れると、「朝鮮戦争勃発の6月25日まで」と言った。それも外すと、「朝鮮戦争休戦の7月27日まで」とのご宣託。

 これも間違えると「金正恩氏が決断すればいつでも可能」と、恥ずかしげもなく語った。「中国の共産党大会(10月)から米国の中間選挙(11月8日)までの間に、核実験する」と語る元平壌特派員もいた。いずれも間違えた。

 なぜ当たらないのか。専門家が予想屋になってはいけない。たとえ外れても、根拠を語らないといけないのに、その意識がない。

 国際政治分析の基本は、紛争について、まず国際法上違法か違法でないかを、問題にする。北朝鮮のミサイル発射は、明らかに国連安保理決議違反の違法であるから、政府も専門家も「国連安保理決議違反で、国際法違反」と指摘しなければいけない。核実験も、国連安保理決議とNPT(核拡散防止条約)違反で国際法違反だ。国連安保理決議は、国際法である。

 外れた予想を、「アメリカの裏をかいた」と言う、根拠のない北朝鮮擁護論だ。さらに「核実験すると思う」と発言した専門家もいた。「思う」は、専門家が絶対に使ってはいけない言葉だ。「思う」は根拠のない、主観的な願望でしかない。専門家は客観的な根拠を話すべきだ。

金正恩

窮地に立つ金正恩氏(他の写真を見る)

ロシアが拒否権発動すれば、世界は核拡散に

 北朝鮮は7回目の核実験をすれば、崩壊に向かう可能性がある。石油を一滴も輸入できなくなるからだ。石油がなくなれば、北朝鮮軍は維持できない。北朝鮮は軍と工作機関・秘密警察が体制を支えている国家だから、体制崩壊の危機に直面する。

 なぜ北朝鮮は核実験できないのか、米国は核実験への国連制裁として、(1)石油の全面禁輸、(2)密輸タンカーの臨検、(3)北朝鮮貨物船の入港禁止、(4)北朝鮮への輸出入禁止――などを準備し、中露両国に通告している。

 この制裁の中で、一番効果があるのは「石油全面禁輸」だ。北朝鮮は国連制裁で、現在は70万トンの石油しか輸入できない。原油50万トンと製品20万トンだ。原油50万から軍用石油は20万トンしか精製できない。つまり、北朝鮮は年間最大40万トンしか輸入できない状態にある。

 これでは、軍は維持できないし、戦争の準備にはとても足りない。産業用にも使えない。戦争しない自衛隊でさえ、年間150万トンの石油を消費する。韓国でさえ1億トンを超える石油を輸入する。戦争を予定する北朝鮮が40万トンでは、軍の維持は厳しい。だから、海上瀬取りの密輸を重ねているのだ。

 日本の専門家はこの数字を頭に入れていないから、北朝鮮の「危機的状況」がわからない。北朝鮮の宣伝に乗せられてしまう。北朝鮮の報道は工作と宣伝が目的で、真実が隠されている。テレビの北朝鮮報道は、まるで北朝鮮の宣伝機関化している。

 北朝鮮が核実験すれば、国連安保理には少なくとも「石油全面禁輸」が提案される。中露が拒否権を発動しないと、制裁は実行される。中露の「拒否権行使」が確実でないと、核実験には踏み切れないのだ。

 こんな情報も流された。ロシアはウクライナ戦争で苦境に陥り、北朝鮮に核実験を要請している。また、国連安保理の制裁案にロシアは、拒否権を発動すると約束している。この情報は、フェイクではないかと疑う。

 ロシアが拒否権を発動すれば、5大国(米英仏露中)だけが核爆弾を保有できるNPT体制が、崩壊する。ロシアの拒否権は、北朝鮮が核兵器を保有してもいい、と認めることになる。NPT条約の崩壊を意味する。日本や韓国、台湾も核保有が可能になる。

 これを認めるとロシアは大国の地位と発言力を失い、三流国に転落する。だから、中国は北朝鮮の核実験に強力に反対している。

 でも、なぜ米政府は今年の春から、「北朝鮮の核実験は近い」と言い続けたのか。いつもの心理戦だ。米政府は11月8日の中間選挙までは、核実験をさせたくなかった。だから、核実験阻止のために「実験は近い」と言い続けた。北朝鮮はこの作戦に引っかかり、米国の偵察衛星が通過する時間を狙い、核実験場の作業を展開してわざと実験が近いとの脅しをかけた。

 米国は、北朝鮮の対応を利用して、中露に「絶対に核実験させるな」と要請した。もしも核実験した場合に、中露が国連安保理で拒否権を発動できないように、との作戦だ。米国があれほど注意したのに、核実験させたのは中露の責任と主張するためだ。』

『「ミサイル連射」以外に選択肢がない

 年初からのミサイル発射は、明らかにウクライナ戦争の支援だったが、そう解説した専門家はいなかった。「米国を交渉に引き出すため」と、的外れな分析だった。当初は二週間でウクライナは陥落すると期待した。そうなれば、ロシアからの食糧支援と石油密輸が期待できた。北朝鮮は、ウクライナ戦争に期待した。

 その計算が狂ったところに、米韓の合同軍事演習が始まった。米韓合同軍事演習を北朝鮮軍は、「戦争の導火線」と警戒するから、同じ規模の演習を行う。すると、たちまち軍用石油が枯渇する。

 米韓両国は、これを狙って軍事演習で北朝鮮を挑発している。米韓両国は、北朝鮮が同じように演習を行った場合の石油の使用量を計算している。地上での戦車や軍事車両の動き、空軍戦闘機の飛行状況などから、石油使用量を細かく分析している。

 特に米韓空軍演習は、北朝鮮にとって脅威だ。対抗できる最新の戦闘機がないうえ、戦闘機用のジェット燃料の保有量は少ない。なけなしの軍用ジェット燃料で対抗するしかない、これを知っているから米韓は空軍演習を延長した。

 米韓は、通年での軍事演習を行う予定で、北朝鮮軍の疲弊を狙っている。これまでは、北朝鮮を追い込むと戦争に走るとの懸念から、北朝鮮軍崩壊を狙う作戦は避けてきた。しかし、北朝朝鮮は決して核兵器を放棄しないとの判断から、北朝鮮軍崩壊作戦に、方針を変えたのだ。

 北朝鮮は、米韓合同軍事演習に何らかの対抗をしないと、軍内部の不満が高まる。指導者の威信が崩れる。だから対抗しなければならないが、通常兵器演習では戦車も戦闘機も、艦艇も太刀打ちできない。できるのは、ミサイル発射しかないという訳だ。

 米国はまた、北朝朝鮮がロシアに武器を売却することを警戒し、米韓合同軍事演習を重ねている。米軍による軍事演習が続けば、北朝鮮は武器をロシアに渡せない、と計算した。
通常兵器で軍事衝突すれば勝てないとの教訓
プーチン

ロシアの思惑とは(他の写真を見る)

 ところが最近になって、ロシアの軍当局は北朝鮮の武器は使えない、と言い出した。なぜなら、不良な砲弾や銃弾が多く、事故が起きるという。品質の歩留まりが悪いのだ。さらに、ロシアの現有武器よりも古いものばかりだ。

 また、北朝鮮のミサイルには誘導装置がない。軍事衛星を持たないから、軍用GPSが使えないのだ。ロシアとしては造り直さないと使えない。

 ここにきて、北朝鮮はミサイルの重要部品の購入に苦慮している。北朝鮮の核とミサイルの開発は、ウクライナの技術者と技術に密かに頼っていた。ところが、ウクライナ戦争で、ウクライナは北朝鮮と断交し、ウクライナ技術者は北朝鮮を離れ、重要部品も購入できなくなった。

 このため、核とミサイルの技術革新が中断状態に。米韓両国は、北朝鮮軍苦境の情報を入手しており、ミサイルを連発させ、在庫を減らす戦略に出た。アメリカは、北朝鮮のミサイル在庫数を把握しており、発射させて減少させる作戦だ。この挑発に、北朝鮮はまんまと乗せられた。

 軍事衝突の危険が高いとの主張も、間違いだ。北朝鮮は米韓軍の演習時間と場所を外してミサイルを発射している。また、米韓両国は、東南アジアで秘密接触を続けてきた。ウクライナ戦争で、北朝鮮は通常兵器で軍事衝突すれば勝てないとの教訓を得た。

 だが、核兵器をミサイルに搭載できる技術と小型化が、完成していない。アメリカに届く核ミサイルは、まだ開発段階だ。何より、誘導装置がない。命中精度は落ちる。北朝鮮の悩みは深い。

重村智計(しげむら・としみつ)
1945年生まれ。早稲田大学卒、毎日新聞社にてソウル特派員、ワシントン特派員、論説委員を歴任。拓殖大学、早稲田大学教授を経て、現在、東京通信大学教授。早稲田大学名誉教授。朝鮮報道と研究の第一人者で、日本の朝鮮半島報道を変えた。著書に『外交敗北』(講談社)、『日朝韓、「虚言と幻想の帝国の解放」』(秀和 システム)、『絶望の文在寅、孤独の金正恩』(ワニブックPLUS)など多数。

デイリー新潮編集部 』