原発60年超運転へ経産省が2案 停止期間除外・上限撤廃

原発60年超運転へ経産省が2案 停止期間除外・上限撤廃
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『経済産業省は8日、原子力発電所の60年超の運転に向けた制度改正について2つの案を審議会で示した。原発の運転期間は現状、原子炉等規制法で原則40年、最長60年と定めている。東日本大震災後の安全審査で長く停止していた期間などを運転期間から除外する案と、期間の上限そのものを撤廃する案を提示した。与党とも調整し、年末までに結論を出す。

運転期間の上限は2011年の東京電力福島第1原発事故を受けて設けられた。今のルールでは国内の原発33基のうち50年代末に稼働できるのは5基に減る。原発は電力の安定供給や脱炭素の面で世界でも増やす動きが相次ぐ。国内でも新増設や建て替えを検討しているが、時間がかかるため期間を延ばす方向だ。

経産省は総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の原子力小委員会に見直し案を示した。一つは原則40年、最長60年の現行の規制を踏襲しつつ、原子力規制委員会の安全審査などに伴う停止期間や、裁判所の命令で運転を止めた期間を運転期間から除く。

実現すれば約70年間の運転が可能になるとみられている。東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原発(新潟県)や日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)などはこれまで10年ほど稼働できていない。審査が長引いている原発もある。既に5基を動かす関西電力は原発事故後、再稼働までの停止が5年程度の原発もあり、それほど延びない可能性がある。

もう一案は上限を撤廃する内容だが、政府・与党内には慎重な意見がある。上限を撤廃すれば各原発の運転期間は一律に延びやすい。

いずれの案の場合でも現在と同じように最終的な稼働の可否は原子力規制委が定期的に安全審査して判断する。期間延長に伴い、規制委は安全審査を強化する。現行は運転開始から40年を迎えた時点で1回だけ実施する審査を、今後は30年目から10年間隔で経年劣化や安全性を繰り返し確認する。

8日の原子力小委では委員から科学的に安全が確認できるのであれば運転期間の上限を撤廃すべきだといった意見が相次いだ。

一方、原発が多く立地する福井県の杉本達治知事は「古くなれば安全性が損なわれる可能性が高まるのが一般的だ。国が運転期間に責任を持つ形にする必要がある」と指摘。上限の撤廃に慎重な考えを示した。

規制と推進、制度見直しで責任の所在曖昧に

政府が検討する原発の長期運転に関する新制度は、経産省が40年超の運転に関与できるようになる内容だ。福島第1原発の事故で、経産省が原発の推進政策と規制の両方を担う仕組みが問題視された。環境省の外局に独立機関の原子力規制委員会をつくって規制部分を移した。再び経産省が運転判断に関与するため、事故前のように電力会社となれ合いの関係にならない運用が求められる。

今回の見直しが実現すれば原発を「使う」観点で経産省が延長を認定し、科学的に安全かを規制委が認める2段階の手続きになる。

原発事故を受け、新増設・建て替えも含め原発を動かすには、原子力規制委の安全審査が必要になった。原発の運転期間に関する記述は、原子炉等規制法で定めている。
経産省が示した新制度では、電気事業法など経産省が所管する法律に運転期間の規定を移す。23年の通常国会で関連法案の提出を目指す。

実現すれば経産省が電力会社から申請を受け、原発を利用する観点で40年超の運転が妥当かどうかを判断するようになる。認定する際の条件としては▽電力の安定供給▽電源の脱炭素化▽電力会社の安全性向上の取り組み状況や組織運営体制――といった点を挙げた。
事故を受け、原発政策は大きく見直された。原発の稼働や建設を決めた電力会社が規制委に申請したり、原発が立地する地元の自治体の同意を得たりする手続きが必要になった。
新制度に移行しても、規制委や地元が認めなければ原発を動かせない状況は続く。電力会社が規制委に再稼働を申請した原発は25基ある。安全審査を通過したのは17基で、岸田文雄首相は8月に再稼働を目指すと表明し「前面に立ってあらゆる対応を取っていく」と強調した。
ただ、これまでに一度でも再稼働した原発は10基だけだ。首相の方針表明後、九州電力の玄海原発の再稼働の時期が前倒しになるなどしたが、電力の供給不足が懸念される東日本の原発では大きな進展はない。

特に首都圏向けに供給する東電の柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働は見通せないままだ。安全審査は通ったものの相次ぐ不祥事で地元の信頼は失墜し、新潟県の同意を得られるメドは立っていない。政府は前面に立つとしながらも具体策を打ち出せていない。
ロシアのウクライナ侵攻を受け、世界のエネルギー事情はかわり、各国は安定供給と脱炭素を両立する電源構成への転換を急いでいる。国民の理解を得つつ、小手先の見直しではなく、エネルギーの自給や脱炭素を進める抜本改革が政府には求められている。』