仮想通貨、ステーブルじゃなかった 価値ほぼゼロに

仮想通貨、ステーブルじゃなかった 価値ほぼゼロに
試される個人マネー(3)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB285OW0Y2A720C2000000/

『「ステーブル(安定している)と信じてしまった」

都内に住む40代の女性は力なく話す。価値が米ドルと連動し安定すると言われた暗号資産(仮想通貨)「テラ」。400万円相当を購入していたが、米国の金融引き締めで仮想通貨の市場からマネーが逃げるとテラの価格も急落し、数日でほぼ価値がゼロになった。

仮想通貨は新型コロナウイルス下の緩和マネーの受け皿の一つだった。交流サイト(SNS)には仮想通貨で資産を増やし、経済的な余裕ができたという成功体験が並んだ。賃金が増えずにこのままでは豊かになれないと悩む若い世代などがマネーを投じた。世界の仮想通貨の時価総額は一時、3兆ドル(約450兆円)を超えた。

「不動産には手が出ないが、少ない額で始めて資産を築くことができる」。学歴や企業によって経済格差が大きい韓国でも仮想通貨はもてはやされ、昨年末の政府統計では全人口の1割が取引に参加した。5月には世界の時価総額が月間で4000億ドル以上減る暴落が起き、SNSに悲嘆の声があふれた。損失を出した30代夫婦が一家心中した事件も起きた。

仮想通貨に逆転の夢を託そうとする個人は絶えない。2009年の取引開始以来、大きく分けると3度大きなブームがあった。毎回ピーク時から大きく下げるが、過去2度は下落前の高値を突き抜けてきたからだ。

仮想通貨のウォレット(電子財布)サービスを提供する英ブロックチェーン・ドット・コムによると、同社の利用者数は約8500万人いる。今年に入り仮想通貨が大きく下落しても、利用者は増え続けている。中長期では個人マネーが流れ込むとの見方は少なくない。

仮想通貨は、前の世代よりも豊かになれないと不満を抱く若者や個人の共感を得やすい。都内の20代学生は「国家が管理する通貨や伝統的な金融に一矢報いる存在になる」と強調する。ビットコインだけでなく非代替性トークン(NFT)を購入したり、取引所や銀行を経由しない分散型金融(DeFi)を利用したりしている。

14年から仮想通貨に投資している30代の加藤宏幸は、今年の下落局面でも追加購入を続けている。インフレで現金の価値が目減りし、仮想通貨は「再びインフレヘッジ資産として脚光が当たる」とみる。加藤は諦めていない。(敬称略)

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大槻奈那
名古屋商科大学大学院教授/ピクテ・ジャパン シニア・フェロー
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別の視点

この記事は3つの論点に分けて考えられるでしょう。

第一に、金融詐欺の問題。テラは現在シンガポールで詐欺罪で訴えられています。かのポンジ氏のスキームもマドフ事件も、今回同様金融ブームを機に発生しましたので十分注意が必要です。(余談ですが、私も、昨日銀行系クレカの不正利用の被害に遭いました。)
第二に、世代や学歴格差の問題。

第三に、金融リテラシーの問題。そもそも冒頭の「ステーブル」と信じて資産増を狙うというのは自己矛盾しています。

第一、第二は構造的で対処は容易ではありませんが、第三の問題は、こうした記事等で広くリスクを周知することで改善を図ることができるかもしれません。

2022年11月9日 8:33』