英新政権、海峡渡る密入国急増に苦慮 収容所に数千人

英新政権、海峡渡る密入国急増に苦慮 収容所に数千人
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR02C5Q0S2A101C2000000/

『【ロンドン=中島裕介】英仏海峡を渡って英国に入る密入国者の数が急増している。英BBCによると、2022年は現時点で約4万人に達し、21年通年の約2万8000人を上回った。衛生環境がよくない一時的な収容所に数千人が滞留し、批判された担当閣僚が密入国を「侵略」と失言するなど、スナク新政権は試練に直面している。

ゴムボートや小型船を使ってフランス北岸から英国を目指す人の数は、18年ごろから問題視され始めた。多くが英国への亡命を望んでおり、当初年間数千人だった規模が21年に急増した。新型コロナウイルスに伴う移動規制が緩和されたうえに、英仏海峡トンネルの警備の強化でトラックなどでの入国が難しくなったのが理由だ。

以前の密入国者はアフガニスタンやイラクなど中東の出身者が多く、内戦を逃れるのが目的だった。今年に入ってからは、英国での就業目的でアルバニア人の流入が増え、出身国別では首位になった。

英政府は密入国者の急増を受けて2月に英南東部ケント州に亡命申請者の手続きセンターを新設した。身元の確認や英国の安全に危害を与える可能性がないかをチェックする間に短期滞在させるのが本来の目的だ。

BBCによると、密入国者らが数週間センターに留置される例が相次ぎ、一時、定員の倍以上の4000人ほどが施設内に滞留した。施設は大人数の宿泊を想定しておらず、人々は床での睡眠を強いられているほか、感染症も発生しているもようだ。

通常は手続きセンターでの滞在が終わると、亡命希望者は英内務省が用意した宿泊施設や民間のホテルへ移送される。ところが英紙タイムズは、移民に厳しいとされる右派のブレーバーマン内相がホテルへの移送を拒み、センターの衛生環境を悪化させたと報じた。

批判にさらされたブレーバーマン氏は10月31日の議会で、宿泊先の確保に努力していると反論した。だがその場で密入国者の漂着を「海岸への『侵略』」と表現し、国内外から批判を浴びた。野党は内相の辞任を求めている。

英仏海峡を渡る密入国者の問題はここ数年、フランスなど一部の欧州連合(EU)の国との対立の原因にもなっていた。

英政府はジョンソン政権下の4月に東アフリカのルワンダと合意し、密入国した男性を経済的支援と合わせて同国に移送することを決めた。強制移送に近い対策により、英国への密入国を考える人の数や密航を支援する犯罪集団の活動を抑える狙いだった。

これに対し、難民の支援団体などが「非人道的だ」として英国の裁判所に提訴し、欧州人権裁判所も移送差し止めを命じたため、この計画も止まっている。』