中国への半導体規制 米国の照準、まず日本とオランダ

中国への半導体規制 米国の照準、まず日本とオランダ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN050I10V01C22A1000000/

『【ワシントン=飛田臨太郎】米国が同盟国に導入を求める先端半導体の対中輸出規制について、レモンド米商務長官は「日本とオランダが私たちに追随するだろう」と明言した。両国に照準を合わせ、早期に同調するよう圧力をかけた。

3日の米CNBCのインタビューで語った。具体的な中身は触れなかった。米政府高官が対中輸出規制で個別の国を名指しして連携を求めるのは初めてとみられる。

バイデン米政権は10月から半導体の先端技術や製造装置、関連人材について、中国との取引を事実上、禁じた。この規制には、外国企業でも米国の技術を使っていれば半導体の輸出を認めない措置が入った。

米国企業は先端半導体を作るためのソフトウエアや設計ソフトに強い。韓国や台湾の企業はこうした米技術を使った製品を扱うケースが多く、すでに規制の網が一定程度、かかっている。

矛先が日本とオランダに向かったのは、米の規制が及ばない半導体製造装置で強みを持つためだ。両国の企業は米技術に頼らず造れる製品があるとみられる。

世界の半導体製造装置市場は、首位の米アプライドマテリアルズ、2位のオランダ・ASML、3位の東京エレクトロンなどが競り合う。

東京エレクトロンは半導体ウエハーに特殊な薬剤を塗って回路を形成する機器で世界シェアの9割、ウエハー表面に薄い膜をつくる機器でも4割近いシェアがある。2022年3月期の連結売上高約2兆円のうち、中国向けは4分の1(5135億円)と、韓台を上回る最大の顧客だ。

米国半導体工業会(SIA)のグッドリッチ副会長は4日「米国企業が海外の競争相手に市場シェアを奪われないように、同盟国にはすぐに賛成してほしい」と訴えた。日本とオランダの2社が念頭にあるとみられる。

レモンド氏は「ホワイトハウスは同盟国を取り込むために懸命に動いている」と強調した。欧州連合(EU)や韓国も含め幅広く協力を求めていく構えだが、日本とオランダが最優先となる。

米紙報道によると商務省の高官が今月中にオランダを訪問する。近く日本とも本格的な協議に入る可能性が高い。

半導体製造装置の対中輸出を制限すれば日本経済への影響は大きい。半導体製造装置の輸出額は1~9月におよそ3兆円となり、前年同期比3割近く増えた。10年前からは3倍に急拡大した。

自動車部品(約2.8兆円)を上回り、鉄鋼(約3.5兆円)に次ぐ規模に成長した。輸出全体の4%超を占める。そのうち中国向けは9700億円ほどで10年前の7倍超に増えている。

米国の半導体規制の目的は安全保障だ。先端半導体の優劣は「極超音速ミサイル」や精密誘導兵器など最新軍事品の開発競争に直結する。レモンド氏は「我々は中国に先んじる必要がある。彼らの軍事的進歩に必要なこの技術を与えてはならない」と説明した。

「これまでにおこなった中で最も戦略的で大胆な行動だ。完全な遮断だ」と強調した。日本は米国と同盟関係にあり、安全保障上の中国の脅威の認識を共有する。台湾で有事があれば共同で対処する可能性がある。

経済産業省は米国の規制の影響などに関して日本企業へのヒアリングを進めるとともに、今後とりうる選択肢を協議している。同省関係者はレモンド氏の発言を受け「米国とは日常的に意見交換している」と述べた。

米国からの打診の有無については「外交上のやりとりなのでコメントできない」と述べるにとどめた。西村康稔経済産業相は4日の記者会見で今後の対応を問われ「適切に対応していきたい」と語っていた。
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

「バイデン米政権は10月から半導体の先端技術や製造装置、関連人材について、中国との取引を事実上、禁じた」とはあるが、これは原則米国市民や米国企業を対象としたものであり、日本の企業に直接影響する規制ではない。ゆえに米国は日本にも同様の措置を求めているわけだが、それは対中半導体輸出規制を徹底するだけでなく、米国企業と同じ競争条件で中国に関わるようにする、という話でもある。
2022年11月5日 21:57 』