[FT]中国、芸能人の広告起用を制限 教育・健康関連など

[FT]中国、芸能人の広告起用を制限 教育・健康関連など
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB023YP0S2A101C2000000/

『中国で、教育・健康サービスの宣伝に著名人が関わることができなくなった。中国の企業と社会のあり方を改革しようとする習近平(シー・ジンピン)国家主席の取り組みが、新たな段階に入ったことを物語る。

個別学習指導や健康食品、たばこ、健康・美容器具などが制限対象となる=ロイター

ソーシャルメディアやテレビCM、ライブ配信、インタビューなどで商品の推奨をすることを禁じる新たな規定により、芸能人やインフルエンサーは稼げる活動を制限される。

社会的価値感と若者文化を改革

規制当局の国家市場監督管理総局など7つの政府機関が連名で発表した指導方針によると、個別学習指導や健康食品、たばこ、健康・美容器具などが対象となる。

指導方針は、「著名人は推奨広告活動において、社会主義の核心的価値観を実践すべきである」としている。「社会道徳と伝統的美徳に従う活動であらねばならない」

習氏は2020年末から、IT(情報技術)や娯楽産業を含む企業と富裕層の実業家に対する広範な締め付けを推進している。

今回の規制の背景には、世界最多の人口を抱える中国で習氏が「(ともに豊かになる)共同富裕」の旗印の下、社会的価値観と若者文化を改革する取り組みを強めていることがある。

「愚公移山」の精神

10月に北京で開かれた5年に1度の中国共産党大会で、習氏は最高指導者として異例の3期目に入り、権力基盤を固めた。

アナリストや投資家は、習氏が「新時代」に踏み出し、党が社会と経済の統制を強めるのではないかと懸念している。

習氏は先週、大きな象徴的意味を持つ河南省中部の水路「紅旗渠(きょ)」を視察した際、若い世代は「好みにこだわる生活様式と現状に甘んじる態度」を捨てなければならないと警告を発した。

「中国の社会主義は大きな努力と闘争、さらには人命の犠牲によって勝ち取られたものであるという紅旗渠の精神を国民、特に若者に教え込む必要がある。これは過去のみならず新時代にも当てはまる」。中国国営メディアは習氏の発言をこう伝えている。

「今日、我々の物質的生活は大きく向上したが、『愚公移山』(努力を続ければ、どんな困難も成し遂げられるという意味の故事成語)の忍耐の精神と勤勉の姿勢は変わってはならない」

仏投資銀行ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・ヘレロ氏は、習指導部は過剰な蓄財に対する規制を強め、若者を習氏が思い描く中国の未来像に沿わせようとしているようだと指摘する。

「『共同富裕』の意味がますますその方向に変わってきている」とヘレロ氏は付け加える。
スキャンダルに対応

商品の推奨活動に新たなルールが定められた背景には、ここ数年、国内でスキャンダルが続発したことや、健康・投資関連の商品、個人間融資の仲介サイトなど、著名人による推奨広告が誤解を招いたとして人々の怒りを呼ぶ事態が相次いだことがある。

地元メディアは以前から規制当局の監督が行き届いていないことを批判し、特に国家市場監督管理総局傘下の薬事当局である食品薬品監督管理総局に矛先が向けられていた。

10月の共産党大会の後、中国株式は売られ、人民元も対ドルで下落した。習氏が側近や腹心で固めた指導体制に対し、投資家は懐疑的な見方を示した。

指導部の交代に加え、低調な経済指標が予定より遅れて発表されたことで、世界第2の経済大国に対する信頼感は揺らいだ。

By William Langley & Edward White

(2022年11月1日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
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ひとこと解説

第20回党大会の演説において、習近平は若者を共産党の理論で武装させると述べた。

これは、今後若者世代への思想教育を強化していくことを意味していた。

この記事が伝えているのはその一環としての政策だと見ていいだろうが、同時に中国共産党以外の「権威」として芸能界のスターが存在することへの警戒心を示したものと言える。

芸能人も、これまで以上に当局の立場を擁護し、それを伝える存在にならねばその活動を維持できなくなる。

だが、習近平政権は芸能人の活動を縮小させようとているのではなく、「核心的価値観」を伝える存在になれと言っており、芸能人を通じて固定ファンの心に浸透することも視野に入れていると考えられる。

2022年11月2日 18:40

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今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
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分析・考察

こんな取り組みを重ねるのなら、中国経済の成長の鈍化は止まらないと思います。

「好みにこだわる生活様式」を捨てれば、中国を高所得国に導く新たな成長産業や企業の誕生と育成のチャンスも失われるでしょう。

それは現在の高所得国を支える産業、企業をみれば自明のはず。

しかし今の習氏と指導部は米国など現在の高所得国は退廃し、経済運営にも失敗した国々、学ぶことなどないと考えているのかもしれません。

統制と管理が強まる体制下では、建設的な苦言や批判も指導部の耳に入らず、今後の経済運営の柔軟な軌道修正も難しそうです。

中国の成長鈍化が続き、高所得国に加われない未来を考える必要が高まってきたように思います。

2022年11月2日 20:00』