中国半導体、米規制で自立に逆風 先端品欠き成算見えず

中国半導体、米規制で自立に逆風 先端品欠き成算見えず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM01AW50R01C22A1000000/

『【上海=多部田俊輔】中国の半導体関連メーカーが、技術開発の加速や増産対応を相次ぎ表明している。米国による輸出規制の強化を受け、習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)は「ハイテクの戦いで勝利せよ」と強調。半導体自給率の引き上げに力を入れる。ただ規制対象は人にも及び、足元では米国籍の企業幹部の流出が始まった。習氏が目指す「科学技術の自立自強」への道のりは容易ではない。

「スマートフォンに使う半導体でシェアを拡大し、次世代の超高速通信規格『6G』の核心技術でも世界の先進レベルを持続していく」。中国のスマホ向け半導体大手、紫光展鋭の呉勝武・董事長は1日、今後の成長に強い意欲を示した。

紫光展鋭によると、スマホ向け半導体のシェアは約11%。台湾の聯発科技(メディアテック)、米クアルコム、米アップルに次ぐ4位。設計に関して、半導体の回路線幅が6ナノ(ナノは10億分の1)メートルの先進技術も保有し、米国が警戒する。

半導体業界の国際団体「SEMI」の中国組織が上海で1~2日に開いた国際会議。例年は3月に展示会を開くが、新型コロナウイルス禍で、今年は会議だけが開かれた。会場には、呉董事長をはじめ中国半導体関連企業の幹部が参加し、熱弁を振るった。

習指導部が、ハイテク産業の振興策「中国製造2025」を発表し、10%にとどまっていた半導体自給率の向上を掲げたのは15年のこと。米調査会社インターナショナル・ビジネス・ストラテジーズ(IBS)が6月にまとめた報告書によると、半導体自給率は21年に24%まで向上。その後も上昇を続け、30年には50%を突破すると予測されていた。

だが米政権が打ち出した半導体の対中規制の強化により、そのシナリオには強い逆風が吹く。設計分野では、紫光展鋭など回路線幅が10ナノ以下の最先端商品の開発に成功していたが、米政権は中国国内での製造を食い止める方針だ。

製造分野では半導体受託製造最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)は14ナノ程度まで実用化し、半導体製造設備大手の中微半導体設備も5ナノに対応した設備の納入を実現。拓荊科技も10ナノ以下の技術開発を進めており、米政権の危機感は募っていた。

そんななか、インパクトのある規制が課された。米政権は10月、先端半導体を生産する中国企業に製造装置や部品、技術を提供することを制限したのだ。中国の半導体関連企業で、米国民と米国の永住権保持者が働くことも審査の対象とした。

実は、中国の半導体分野の企業では米国籍や永住権を持つ中国人の存在感が大きい。一部メディアによると、SMICの創業メンバーで現在は半導体大手の幹部を務める張汝京氏は米国籍として知られる。半導体業界に詳しい政府幹部は「半導体人材は米国の大学院、米国企業を経て中国に帰国する例が多かった」と存在感の大きさを語る。

すでにSMICをはじめ中国の半導体企業では、米国籍や台湾籍などの幹部の退任が相次ぐ。米中対立の先鋭化を受けて「中国の半導体企業から米国籍など海外の優秀な人材が離れてしまう恐れがある」(同)との懸念が現実のものになり始めた。

中国国内の有力半導体工場が調達する設備での国産比率は2割にとどまる。半導体の増産や先端技術開発は、海外の装置や技術、人材に依存してきたのが実態だ。今後、半導体製造装置の調達に支障が出れば、半導体の増産そのものがおぼつかなくなる事態に陥る。
多くの中国企業が半導体製造装置を手掛けている(10月28日、江蘇省無錫)

米国側の戦略は、軍事などへの転用が可能な最先端半導体の現地生産を許さないことを最重視する。この領域で覇権を握る限り、米国は中国よりも優越的な地位を堅持できるからだ。ヒト・モノを抑えられた中国が短期的に巻き返すことは現実的ではない。

「半導体は米国との科学技術の戦いの最前線だ」。中国の半導体業界団体幹部の葉甜春・秘書長は10月下旬のイベントでこう強調した。現時点で中国が米国に打ち勝つシナリオは想定しにくいが、産業・軍事の核となる半導体でしのぐことなしに、米中逆転は成し遂げられない。「自立自強」に近道はなく、長い時間をかけて技術に磨きをかける必要がありそうだ。

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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/US-China-tensions/U.S.-tech-curbs-threaten-China-s-quest-for-chip-independence?n_cid=DSBNNAR 

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

確かに中国が人もモノも新しく獲得できなければ、半導体分野の飛躍的な進展というのは期待出来ないだろう。しかし、それは中国がジワジワと技術力を身につける機会を胎教することにもなる。短期的には中国の成長を抑え、その間に西側諸国の技術を進歩させることで格差を開くことは出来るが、長期的には中国の研究開発能力を一層強化させるという可能性もある。まあ、半導体の世界は栄枯盛衰と言うところもあるので、そうした循環の中でいずれ中国も台頭してくるだろうけど。
2022年11月4日 1:40 』