揺れるベラルーシのウクライナ戦争での立ち位置

揺れるベラルーシのウクライナ戦争での立ち位置
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28381

『ベラルーシはプーチンがウクライナ戦争に参加するように求める中、揺れている。ベラルーシでは過去20年間、ルカシェンコの選挙での勝利、その後の抗議デモ、ロシアが支持する弾圧というサイクルが続いてきたので、ロシアに対し恩義がある。他方、ウクライナ戦争に参加すればルカシェンコへの国民の反発を抑えられなくなるというジレンマがある。
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 ニューヨークタイムズ紙のAndrew Higgins中東欧支局長は、10月15日付け同紙解説記事‘Belarus Wavers as Putin Presses It to Join Ukraine War’において、「ルカシェンコは窮地にいる。彼はロシアの支持で生き残っているが、戦闘参加は”政治的自殺”になりうる」との見方を示している。記事の主要点は次の通りである。

・ロシアのウクライナ侵攻後8カ月経ち、クレムリンがウクライナでの軍事作戦にもっと関与せよと圧力をかける中、ルカシェンコの政権掌握はリスクにさらされている。

・ロシアは2月、ウクライナ侵攻をキーウに向けてベラルーシ領から始めたが、失敗した。プーチンは軍が進軍停止、または退却するなか、ルカシェンコに支援を求めている。10月7日、ルカシェンコはサンクトペテルブルグでプーチンと会った後、ウクライナ、ポーランド、北大西洋条約機構(NATO)が「われわれを戦闘に引き込もうとしている。彼らにそうさせてはならない」と述べた。彼の発言はNATOに向けられているが、ベラルーシの兵力を戦闘に派遣せよとのロシアの圧力への不安を示している。

・チハノフスカヤ(亡命中の野党指導者、2020年大統領選の候補者)は、ベラルーシの直接の参戦はルカシェンコにとり「政治的自殺」になると述べた。

・ベラルーシの活動家たちが、ロシアと戦うためにウクライナに行き国際部隊に参加している。カバンチュク(約500人からなるカリノウスキ連隊の副隊長)によれば、彼らの目標は、(1)ウクライナをロシアから守ること、(2)ルカシェンコからベラルーシが解放される日を早めること、である

・ベラルーシ軍がキーウの注意と部隊を南部と東部での戦争からそらすために使われれば、ルカシェンコはますます西側からプーチンの共謀者とみなされ、ロシアに課されたと同じ制裁の対象にされ、代償を払わされかねない。この状況は彼の政敵を元気づけている。

・野党の運動は平和的抗議にコミットしているが、その一部は武器を取っている。チハノフスカヤは非暴力的変革を望んでいるが、ウクライナでのベラルーシ戦闘員への支持を表明している。チハノフスカヤの補佐官は「ウクライナが負ければウクライナもベラルーシもなくなるだろう」と言っている。

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 最近、ロシア軍はミサイルとドローンでキーウを含むウクライナ各地でインフラ施設を含む民間施設を攻撃している。これは、ウクライナ人を怖がらせ、戦意を削ぐのが目的と思われるが、ゼレンスキー大統領はロシアの非道を訴え、徹底抗戦を呼びかけている。

 ウクライナ側の士気は高いままであるように見える。空爆で民間施設を壊しても、陸上での戦闘にはあまり影響はなく、ウクライナ軍が東部と南部で主導権を握っている状況は変わらないだろう。』

『ただ、ロシア軍がキーウをミサイルなどで攻撃し、ベラルーシ領内に9000人ものロシア軍を派遣していることは懸念材料ではある。兵員不足の中、何をしようとしているのかよくわからない。装備については、ベラルーシから戦車などがロシア領に運ばれているということであり、キーウを再度攻める動きが出てきているとも思われないが、今後の動きに注意を払う必要がある。

ベラルーシ国内の情勢にも影響

 ルカシェンコは、ウクライナ戦争に参戦するのはプーチンの部分動員がロシア国民の反発を呼んだように、ベラルーシの国内の不安定化につながると思っていると見られる。そういうわけで、上記の解説記事にもあるように、ベラルーシの兵力を戦闘に派遣せよとのロシアの圧力への不安を示している。10月21日には、もっと踏み込んだ表現で「われわれには戦争は必要ない」と述べた他、ウクライナ人は同胞であるとも言っている。

 ベラルーシ軍は空軍と陸軍よりなる5万人足らずの軍でしかない。装備も旧式である。仮にウクライナ戦争に参戦しても、戦況がそれで大きく変わることはないと思われる。

 ベラルーシの国内情勢については、今はリトアニアに亡命中のチハノフスカヤ周辺が、ウクライナ戦争の帰趨によってはルカシェンコ政権が終わるとの期待を持ち、元気づいているというこの記事の指摘は正しいと思われる。チハノフスカヤを首班とするベラルーシ亡命政権は将来の軍事組織の萌芽のようなものを持っているが、これへの志願者の登録数は20万人を超えたとの報道もある。』