Twitter対マスク氏、迷走の6兆円買収決着 公共性に責務

Twitter対マスク氏、迷走の6兆円買収決着 公共性に責務
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『【シリコンバレー=白石武志】総額440億ドル(約6兆4000億円)の買収をめぐる米ツイッターと米起業家イーロン・マスク氏の半年間に及ぶ攻防が決着した。月間約4億人が利用し、ネット空間の言論基盤にもなっている巨大SNS(交流サイト)は1人の富豪の所有物になる。言論の自由とネットの公共性をどう両立するか問われることになる。

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「私がツイッターを買収した理由は、暴力に訴えることなく健全な方法で様々な信条を議論できる共通のデジタルの広場を持つことが文明の未来にとって重要だからだ」。マスク氏は27日午前、自身のツイッターアカウントに投稿した声明のなかで買収の狙いを改めて説明した。

取引にかかわる関係者によると、マスク氏は27日夕までにツイッターの所有権を握り、パラグ・アグラワル最高経営責任者(CEO)ら複数の幹部を解任した。既存株主には1株あたり54ドル20セントが払われ、ツイッター株は上場廃止となる。

ツイッター買収に備えてマスク氏は4月以降、自ら保有する米テスラ株約154億ドル相当を複数回に分けて売却してきた。総額440億ドルの買収資金の大半は自己資金などでまかない、約130億ドル分については米モルガン・スタンレーをはじめとする金融機関から借り入れた。

「買収撤回」をさらに「撤回」

マスク氏はツイッター上のコンテンツモデレーション(不適切な投稿の監視・削除)が行き過ぎであるとの問題意識から4月に同社の買収に乗り出した。自らを「言論の自由の絶対主義者」と称し、買収後は投稿管理の取り組みを極力なくす方針を示してきた。

両者は4月下旬にいったん買収契約を結んだものの、マスク氏は直後からツイッター上の実態のない偽アカウントの多さに疑念を表し始め、7月上旬には買収契約を破棄すると表明した。米金利上昇に伴う株式市場の変調で買収価格が割高になり、意欲を失ったとの見方が広がった。

一方的な契約解除を不服とするツイッターは7月中旬、登記上の本社を置く米東部デラウェア州の裁判所にマスク氏を相手取った訴えを起こした。マスク氏側は10月3日、一転して和解に向けて歩み寄り、裁判所は両者が買収取引を進められるよう、28日まで裁判を中断していた。

トランプ氏の復帰が焦点

世界的な景気後退懸念に伴うネット広告市場の変調で、ツイッターの2022年4~6月期決算は2年ぶりの減収となった。マスク氏による買収取引が完了したことで、今後の焦点は同社の経営再建策に移る。

マスク氏は資金調達を支援した銀行団に約7500人いるツイッター従業員の75%近くを削減する方針を伝えたと報じられている。投稿管理部門を中心にリストラに踏み切る構えとみられるが、野放図な投稿を放置すれば広告主が離反するおそれもある。

21年1月の米連邦議会議事堂襲撃事件を扇動したとしてツイッターが永久追放したトランプ前米大統領の復帰をマスク氏が認めるかどうかにも注目が集まる。米共和党の一部でトランプ氏のアカウント復活を望む声がある一方、米民主党を中心とする左派は反発している。

米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院のバスカー・チャクラボルティ教授はSNS上の言論の自由の適切なバランスについて多くの企業経営者が「失敗を繰り返してきた」と指摘する。テクノロジーの力でテスラや米スペースXなどを成長に導いてきたマスク氏だが、巨大SNSを運営した実績はない。同教授は「火星に人類を送り込むことの方がはるかに楽観的だ」と突き放す。

マスク氏は27日付の声明のなかで「最善を尽くしても失敗する可能性が非常に高いことを認識し、謙虚な気持ちでいる」とも打ち明けた。半年間に及ぶ買収戦を通じて一段と大きな影響力を持つようになった希代の起業家は、かつてない難題を抱え込むことになった。
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