半導体サイクル暗転 景気変調で需要減の品目拡大

半導体サイクル暗転 景気変調で需要減の品目拡大
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『【この記事のポイント】
・半導体市況が急速に悪化、米インテルなどが大幅減益
・景気変調「顧客の在庫調整は前例のない水準」
・米国による対中規制強化で逆風強まるリスクも

旺盛な需要に支えられてきた半導体の好況サイクルが暗転している。パソコン(PC)やスマートフォンなどの需要失速で市況が急速に悪化し、米インテルや韓国のサムスン電子など大手各社で大幅減益が相次いでいる。米国の対中規制なども冷や水を浴びせており、半導体市場が直面する谷はこれまでより深くなりかねない。

インテルが27日発表した2022年7~9月期決算は売上高が前年同期比20%減の153億3800万ドル(約2兆2300億円)、純利益は85%減だった。同社が得意とするCPU(中央演算処理装置)などロジック(演算)半導体は、PCやサーバーの販売が鈍り、採算が悪化している。パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は「需要減の影響は想定を上回り、(電子機器の)供給網全体に広がっている」と話す。

インテルは「マクロ経済の先行きは見通せず、市場の見通しも厳しい。良いニュースを見いだすのは難しい状況にある」(ゲルシンガーCEO)と、谷の深さに身構える。25年までに最大で年間100億ドルのコスト削減に取り組む計画も明らかにした。

PCはリモートワーク関連特需からの反動に加え、世界的なインフレ、中国景気の急速な悪化で出荷が一気に落ち込んだ。米調査会社によるとスマホも世界出荷台数が22年7~9月期に前年同期から10%減った。足元では比較的底堅いと見られていた高価格帯スマホやデータセンターも弱含みはじめた。

最終需要の鈍化は幅広い品目の半導体に響く。記憶用のメモリーは1台の機器に搭載される量も多く、デバイスの需要減で受ける影響はロジック半導体より大きいためだ。27日に決算を発表したメモリー大手の米ウエスタンデジタルは96%の最終減益。サムスン電子の半導体部門は49%の営業減益だった。

これまで旺盛な需要を見込んで半導体を供給してきただけに、顧客や市場が抱える在庫も大きく膨らむ。最終製品の失速をうけ「顧客の在庫調整は前例のない水準」(米マイクロン・テクノロジーのサンジェイ・メロートラCEO)との声も聞こえてきた。

民生エレクトロニクスやテクノロジー関連企業による半導体在庫の絞り込みで、価格の下落圧力は強くなっている。台湾調査会社のトレンドフォースによると22年7~9月期の価格は、長期記憶を担うフラッシュメモリーで前四半期比13~18%減、短期記憶用のDRAMで10~15%下落した。10~12月期はさらに15~20%、13~18%落ち込むと推計する。

一方で、半導体の製造受託企業の台湾積体電路製造(TSMC)は22年7~9月期の純利益が80%増と堅調さが際立つ。「5ナノ品」と呼ばれる先端ロジック半導体は同社の寡占状態で、広い需要家を持つ収益構造が支えになっている。そのTSMCでも1世代前の「7ナノ品」は需要が下振れ、工場の稼働率は「(フル稼働だった)過去3年間と比べ、それほど高い水準ではなくなっている」(同社)。

世界半導体市場統計(WSTS)によると、世界の半導体売上高は7月に2%減と32カ月ぶりに前年同月を割り込み、8月は4%減と減少率が拡大した。車載向けや産業向けに使われる成熟品の一部で逼迫感は残りながらも、全体を見渡せば供給過剰に傾いている。「顧客の在庫調整は23年前半まで続きそう」(TSMCの魏哲家CEO)というのが業界の共通した見方になっている。

WSTSは8月に半導体市場の見通しを下方修正した。22年の成長率を従来予想から2.4ポイント低い13.9%増に、23年は0.5ポイント下げ4.6%増とした。ただ市場環境は急速に悪化している。英調査会社オムディアは22年の市場を5.8%増、23年は0.2%減のマイナス成長に転じると予想する。

冷や水を浴びせるのが、米国による対中規制だ。10月に明らかにした規制では先端半導体や、先端半導体の製造に用いる装置の輸出について、事前許可を求めている。従来の規制から「先端」の範囲も広げており、影響は企業業績にも広がり始めた。

中国の半導体企業に装置を販売する米アプライドマテリアルズは、規制の強化で22年8~10月期の売上高が2億5000万~5億5000万ドル押し下げられると予想する。半導体各社もこれまで拡大基調を続けてきた設備投資を絞り込んでおり、装置や素材産業への逆風が強まるリスクもある。

半導体は製造に数カ月を要するため、世界景気の先行きを占う「体温計」でもある。それだけに半導体産業の急速なブレーキは、世界的な景気後退のサインが色濃くなってきていることを示している。

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