[FT]中国脱出を急ぐ富裕層 習近平氏の続投を嫌気

[FT]中国脱出を急ぐ富裕層 習近平氏の続投を嫌気
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『習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)と中国共産党が支配する世界第2の経済大国の先行きを悲観して、中国の富裕層が国外脱出計画を実行に移し始めている。

中国政府が統制を強化した香港の魅力が薄れ、シンガポールを移転先に選ぶ富裕層が増えている=ロイター

習氏は先週末、党総書記と中央軍事委員会主席としてさらに5年間の続投を決め、毛沢東以来最も強力な指導者としての地位を固めた。69歳の習氏は5年に1度の党大会を経て揺るぎない権力を手に入れ、終身政権への道を開いた。

欧州を拠点とする弁護士で香港や中国の資産家の法務を手掛けるデービッド・レスペランス氏は、中国の経済発展に乗じて長年繁栄を享受してきた国内の経済エリートにとって、習氏の3期目入りが人生の岐路になりそうだと話す。

「習主席が不動の地位を固めたのを受けて、超富裕層の事業家からすでに3件、緊急避難計画を『実行に移す』よう指示を受けた」

習氏は「ゼロコロナ」政策やロシアのプーチン大統領への支持、経済界に対する統制強化など議論を呼ぶ政策を打ち出してきたが、9700万人の党員を抱える中国共産党内では、同氏がそうした政策を転換するのではないかとの観測が党大会の数カ月前から出ていた。

だが、中国で6000人を雇用する国際法律事務所デントンズ・ロダイクのシンガポール在勤シニアパートナー、キアメン・ロー氏は、富裕層の資産を管理運用する「ファミリーオフィス」の設立に関する問い合わせや指示も同様に「数カ月前」から増えていたと述べた。

「私の顧客は党大会よりもずっと前から(習氏の)3期目を既定路線とみていた」
シンガポールが人気移住先に

これまで長い間、中国の資産家やエリート一族が香港を移住先に選んできたが、中国政府が統制を強化したため魅力が薄れたとロー氏は付け加えた。

シティ・プライベートバンクによると、シンガポールにあるファミリーオフィスの数は2017?19年の間に5倍に増え、さらに20年末からの1年間で400から700へとほぼ倍増した。

シンガポールの法律事務所ベイフロント・ローのディレクター、ライアン・リン氏は先週の中国共産党大会の期間中、シンガポールでのファミリーオフィス設立について5人の資産家から相談を受け、うち3件は正式な手続きに入ったと明かした。

リン氏はこの1年間で約30件のファミリーオフィス設立を手掛けたが、ほとんどの中国人がシンガポールに資産を移すだけでなく移住も望んだという。

レスペランス氏によると、顧客の多くは国外の安全な避難先への合法的な資産移転や新たな住まいの確保、家族の市民権取得など脱出準備に数年かけている。

中国の富裕層は格差是正を促す「共同富裕(共に豊かになる)」の実現に向けた私的な寄付に代わり、正式な富裕税が導入されるという噂におびえると同時に、脱出後の身の安全についても不安を募らせているという。

著名人の相次ぐ失踪が不安に拍車

ここ数年、アリババ集団創業者のジャック・マー(馬雲)氏や女子テニス選手の彭帥さん、富豪投資家の肖建華氏、不動産王の段偉紅氏などの著名人が公の場から一時的または長期的に相次いで姿を消し、富裕層の不安を高めている。

「資産家の間には『高速で逃げられる帆船に金の延べ棒と予備の帳簿を積んで港に隠しておけ』という言い伝えがある。現代風に言えばプライベートジェットにパスポートと外国の銀行口座だ」とレスペランス氏は言う。「現実の世界はそれくらい大変になっている」
だが、準備万端整ったとはいえない人も多いようだ。

中国の富裕層向けの米不動産サイトの創業者は、十分に準備しないまま国外脱出を急ぐ顧客から対応しきれないほど問い合わせが殺到していると話した。

一方、上海や北京の移民法律事務所では「卓越した能力」の保持者を対象とする米国永住権(グリーンカード)の申請が急増している。超富裕層がよく使う高額投資家向けビザよりも取得に時間がかからないからだ。

By Edward White & Mercedes Ruehl

(2022年10月25日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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