韓国LGDに「市況の冬」 特需消え7~9月期営業赤字最大

韓国LGDに「市況の冬」 特需消え7~9月期営業赤字最大
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『パネル世界大手の韓国LGディスプレー(LGD)が再び苦境に陥っている。新型コロナウイルス禍に伴う特需で高騰したパネル価格が急落し、2022年7~9月期は過去最大の営業赤字に沈んだ。テレビ用液晶パネルの低迷に加え、頼みのiPhone向け有機ELパネルでも供給の遅れが発生。中国勢の技術面の追い上げも重なり、長期化しそうな「市況の冬」にLGDがあらがう余地は少ない。

LGDが26日に発表した連結業績は売上高が前年同期比6%減の6兆7710億ウォン(約7千億円)、営業損益は7590億ウォンの赤字(前年同期は5290億ウォンの黒字)だった。主力の液晶パネルと有機ELパネル双方の価格下落が響いた。

特にパソコンやタブレット、テレビ向け液晶パネルの価格下落が直撃した。新型コロナの拡大期に在宅勤務や遠隔授業が普及した際の「巣ごもり需要」が消失したためだ。物価高を受けた製品販売の鈍化も重なり、サプライチェーン(供給網)全体でパネル在庫が積み上がった。

決算発表後の電話会見で金成炫(キム・ソンヒョン)最高財務責任者(CFO)は「経営不振の長期化に備えて財務健全性を最優先として厳しいコスト削減や在庫管理に取り組む」とした。

パネル業界はコロナ禍前、中国勢による供給過剰を受けて苦境に陥った。そこへ世界的な新型コロナの感染拡大に伴う特需が起き、息を吹き返した。

LGグループの一角を占めるLGDはここ2年、コロナ禍の恩恵を受けつつ、振り回されもした。20年1月に採算が見込めないテレビ向け液晶パネルの韓国内生産から撤退すると発表。その後、液晶パネルの価格高騰が始まると、一転して生産続行に踏み切った。

だがコロナ禍の収束で需要が再び急減。液晶パネルの9月の大口取引価格は、テレビ向けで指標となる55型品が1枚82ドル前後と前年同月比55%安く、5カ月連続で最安値を更新した。ノートPC向けの15.6型品は1枚26ドル前後と同41%低下した。LGDは再び、23年中の生産撤退をサプライヤー各社に伝えている。

同社が成長事業と位置付ける有機ELパネルも振るわない。テレビ向けでは液晶パネルで十分という消費者も多く、供給網に余剰在庫が発生。7~9月期の大口取引価格は、55型で1枚425ドル前後と前年同期比15%低下した。65型でも18%低下した。

米調査会社DSCCの田村喜男アジア代表は「液晶、有機ELともに市中の在庫水準が適正化するのは23年1~3月期ごろ」とみる。

市況低迷はパネル産業全体に影を落とす。台湾大手の友達光電(AUO)が26日発表した22年7~9月期決算は、最終損益が104億台湾ドル(約480億円)の赤字(前年同期は193億台湾ドルの黒字)と2四半期連続の最終赤字となった。

売上高は前年同期比49.8%減の497億台湾ドルと大きく落ち込んだ。経営トップの彭双浪・董事長はオンライン形式の記者会見で「顧客の在庫調整が響いており、当社の工場稼働率は約50%にとどまった」と説明。7月に延期を発表した新たなパネル工場の着工時期については「まだ決まっていない」と述べるにとどめた。

積極投資で攻勢を強めてきた中国勢も、足元では減速している。中国大手の京東方科技集団(BOE)は22年1~6月期の売上高が前年同期比15.7%減の916億元(約1兆8千億円)、純利益は約5割減の65億元だった。

それでもBOEは中国内陸部の四川省や重慶市にある有機ELパネルの大型工場で量産体制を進め、米アップルへの供給も手掛ける。液晶パネルでも技術力を高めた結果、有機ELパネルとの性能差は縮まっている。有機ELパネルでは優位を保っていたLGDにとって、低価格で攻勢をかける中国勢は以前にも増して脅威となる。

LGDの不振は、市況悪化だけが原因ではない。複数のサプライヤーによると、LGDは今秋発売のiPhone14の高性能モデル向け有機ELパネルで、新たな技術方式のパネル量産が軌道に乗らずに納期遅れが発生した。代わりに競合のサムスン電子が供給したもようで、これもLGDの業績悪化につながった。
LGディスプレーは車載パネルなど新分野の開拓を急ぐ

ハイ投資証券の鄭元碩(チョン・ウォンソク)アナリストはLGDについて「短期的な黒字転換は不可能だ。早くても来年下半期になる」と分析。その必要条件として「テレビ向け液晶パネルは中国工場含めて完全撤退しなければ難しい」とし、さらなるリストラ策が不可欠と指摘する。

ただ、LGDはこれまで身を切る構造改革の経験が乏しい。中国勢が有機ELパネルでも台頭してきたいま、真っ向勝負をしていては、かつての日本のパネル産業のように立ちゆかなくなるのは時間の問題だ。

収益事業を見極めた上で不採算事業に大ナタを振るえるのか。それとも、LGグループなどからの支援で急場をしのぐのか。長い厳冬期を乗り切ることに加え、その先の収益構造を描く新たな戦略が求められている。

(ソウル=細川幸太郎、台北=龍元秀明、東京=桝田大暉)』