北朝鮮、核実験へ段階挑発か 船舶侵入で南北が射撃応酬

北朝鮮、核実験へ段階挑発か 船舶侵入で南北が射撃応酬
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『【ソウル=甲原潤之介】北朝鮮の商船が24日未明、南北境界である北方限界線(NLL)の南側に侵入した。北朝鮮は韓国軍の警告射撃への対抗を理由に砲弾を撃ち込み、射撃の応酬となった。核実験の断行をにらみ、段階的に挑発の度合いを高める意図がうかがえる。

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韓国軍合同参謀本部によると北朝鮮船は同日午前3時42分ごろ、黄海に浮かぶ韓国領・白翎島(ペンニョンド)の北西およそ27キロメートルでNLLの南側に入った。

韓国軍は複数回にわたり通信で警告し、北朝鮮船が航路を変えないため機関銃で20発の警告射撃をした。北朝鮮船は午前4時20分ごろ、航路を変更してNLLの北側に戻り、中国の方向へと向かった。北朝鮮は午前5時14分ごろ、西岸から黄海に向かい10発の砲弾を発射した。

世宗研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)北朝鮮研究センター長は「軍の承認なしに商船がNLLを侵犯することは想像できない。北朝鮮が意図的に企画した可能性が高い」との見方を示す。

韓国政府は北朝鮮が後ろ盾である中国の共産党大会の閉幕を待ったうえで、7回目の核実験を断行する可能性があると警戒してきた。共産党大会が22日に終わり、核実験の口実をつくるために韓国への挑発の段階を上げ始めたとの見方がある。

北朝鮮の朝鮮中央通信は24日、朝鮮人民軍総参謀部の報道官の談話を伝えた。北朝鮮船の南側への侵入には触れず「韓国軍が船舶の取り締まりを口実に軍事境界線を侵犯した」と主張した。韓国側の射撃に対抗するため放射砲弾を撃ったと明らかにした。

北朝鮮は14日と18~19日、日本海と黄海に向けて相次ぎ砲弾を射撃した。この際も朝鮮中央通信を通じ、韓国軍が先に前線で射撃を強行し、北朝鮮が対応措置を講じたとする主張を発信した。南北緊張の原因が韓国側にあると内外に訴えて自らの軍事活動の正当化を狙っているとみられる。

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は米国との同盟を強化し、北朝鮮への圧力を強める方針だ。韓国海軍は24日、黄海上でイージス駆逐艦や護衛艦など20隻あまりを展開し機動訓練を始めた。米軍も参加し、27日まで北朝鮮の特殊部隊の侵入時を想定した共同対処を確かめる。

31日からは米韓の空軍が戦闘機など240機あまりを投入した共同訓練を予定する。戦闘機訓練として5年ぶりの規模となる。

こうした米韓の動きを新たな口実にすることで、北朝鮮が挑発の段階をさらに高める可能性がある。2010年に韓国の延坪島(ヨンピョンド)が北朝鮮の砲撃を受け、韓国側に死者が出るなど南北の緊張が一触即発の危機に発展したケースがある。

朝鮮人民軍は24日の談話で、韓国軍が陸上や海上での射撃に加えて「拡声器による挑発」を行っていると訴えた。韓国側は17年ごろまで北朝鮮の住民向けに拡声器で宣伝放送を流していたが、韓国軍によると現在は「運用はしていない」という。

韓国の民間シンクタンク、21世紀軍事研究所の柳成燁(リュ・ソンヨプ)情報分析官は「『拡声器』は過去にも北朝鮮が威嚇のレベルを上げる時、理由として挙げていた」と指摘する。北朝鮮が今後の軍事活動の新たな口実にしようと、あえて触れたとの見方が出ている。

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