ウクライナで「汚い爆弾」投入懸念 偽旗作戦の恐れ

ウクライナで「汚い爆弾」投入懸念 偽旗作戦の恐れ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR233GH0T21C22A0000000/

『【ワシントン=坂口幸裕、ウィーン=田中孝幸】ロシアが侵攻を続けるウクライナで、放射性物質をまき散らすことを目的とした「汚い爆弾」が使用される懸念が広がっている。ウクライナが使おうとしていると主張するロシアの対応を巡り、米欧はロシアが危機をあおる戦術の一環として自ら投入するおそれがあると警戒を強める。

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きっかけはロシアのショイグ国防相が23日に英国、フランス、トルコの国防相と立て続けに開いた電話協議だった。ショイグ氏はそれぞれウクライナが「汚い爆弾」を爆発させる恐れがあると主張した。裏付けとなる証拠は示さなかったという。

米英仏の外相は23日の共同声明で「ロシアの見え透いた虚偽の主張を我々全員が拒否すると明確にした」と述べた。ブリンケン米国務長官は23日、ウクライナのクレバ外相との電話協議で「ロシアが(紛争を)エスカレートさせる口実に使用しようとするいかなる試みも世界は見抜くだろう」と断じた。

汚い爆弾とは放射線物質を混入させた兵器で、爆発によって周辺地域を広く汚染させるのを主目的としている。核兵器と比べると爆発力は小さいものの、長期にわたる放射性汚染がもたらす心理的な効果は大きい。過去にイスラム原理主義のテロリストが入手を試みたこともある。

投入に至れば危機のレベルがさらに上がるうえ、ウクライナの戦後復興も大きく阻害しかねない。西側各国はロシアが自作自演で爆発させ、攻撃されたと偽る「偽旗作戦」に身構えている。ロシアが苦しい戦局の打開に向け、ウクライナに対する大量破壊兵器の投入の口実を必要としているとみられるためだ。

ショイグ氏は21日に電話で話したばかりのオースティン米国防長官と再び電話協議した。米国防総省の声明によると、23日の協議はショイグ氏が要請した。

オースティン氏はウクライナ紛争をエスカレートさせようとするロシアのいかなる主張も拒否すると強調した。その姿勢からはウクライナ侵攻を正当化するために繰り返してきたロシアの偽旗作戦の前兆だとの疑心が浮かび上がる。意図的にデマを拡散させる偽装工作はロシアの常とう手段だからだ。

オースティン氏は23日、英国のウォレス国防相とも電話した。国防総省の声明によると、ウクライナを含む優先課題について幅広く議論した。ショイグ氏との電話内容を踏まえた対応をすり合わせた可能性がある。

ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、ショイグ氏の主張に真っ向から反論した。「想像しうるあらゆる汚いことの源が誰なのか、みんなわかっている」と述べ、ロシアこそが攻撃を仕掛けようとしているとの見方を示した。

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