「宮崎正弘の国際情勢解題」令和四年(2022)10月25日(火曜日)通巻第7501号

「宮崎正弘の国際情勢解題」令和四年(2022)10月25日(火曜日)通巻第7501号

 ※ メールが配信されていたので、紹介する。

 ※ ご高説(分析)を、拝聴しよう…。

 ※ 王戸寧氏は、『諜報畑を牛耳る影の演出者』なのか…。

 ※ それで、『不気味な存在として習近平三期目の影の参謀役を継続する。』のか…。

 ※ そして、「四期目」までの「道筋」をつける役割を、担うのか…。

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 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和四年(2022)10月25日(火曜日)
         通巻第7501号  
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  意表を突いた党大会人事劇の演出はやはり「あの男」だったのか
   陽動作戦で改革派躍進を印象づけ、裏では側近人事を固めていた
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 10月23日に開催された中国共産党第二十期第一回中央委員会総会(一中全会)で習近平総書記は獅子吼した。

 「強い歴史主義精神でマルクス主義の中国化、現代化を推進する。中国的社会主義の新チャプターを書き続けて中華民族の偉大なる復興を成し遂げ、『中国の夢』の実現に邁進する」。

 そして「新しい旅路は栄光と夢に満ちている」(まさか「お先真っ暗です」とは言えないだろうから)。

 同日、党と軍のトップ人事が発表された。

政治局常務委員に四人の新人、これを含む政治局はほぼ全員が習近平に従う臣下(あるいは何時の日か佞臣になる)。中国語的に言えば「習派全面掌握、中委、軍委、紀委、政治局」。そしてNYタイムズは「誰が習近平にNOを言えるのか」と論評し、インドの『ザ・タイムズ・オブ・インディア』は「習の信奉者だけ(Acolytes)だ」と批判した。

意表を突いた党大会人事劇の演出はやはり「あの男」だったのだろう。事前の情報は改革派とのバランスをとる開明的人事とさかんに香港から発信されたが、これらは陽動作戦で改革派の躍進を印象づけて強硬路線の印象を避けつつ、裏では側近人事を固めていたことになる。

 チャイナウォッチャーを驚かせたのは李強(上海市書記)の二段階躍進だった。

ヒラの政治局員から、いきなり政治局常務委員ナンバー2となり、しかも次期首相候補だという。上海ロックダウンの不評で失脚説が流れたのに、この大飛躍は習への尋常ならざる胡麻擂りの結果である。「お友達政権」等と日本のメディアが書いているが、そんな甘いことではなく、これは皇帝と臣下の関係が形成されたということである。

 ▲大躍進はふたり、李強には経済政策が期待されているのだ

 李強の大躍進を予測していたのは『アジア・タイムズ』だった。そして李強を高く評価して次のように報じた。

 「李強は香港で李嘉誠が設立した大學でMBAを取得した、経営管理に通暁した政治家である。上海市党委員会書記としてアリババを支援し、テスラの工場誘致に辣腕を振るい、新工場を短時日で稼働させた」

 つまり李克強に変わってナンバーツーという地位は首相であって、今後の経済政策を主導することを期待されての人事だと分析した。

 もう一人、「大躍進」は軍事委員会副主任から抜擢された何衛東だろう。

委員ですらなかったのに、太子党軍人の張又侠とならぶナンバー2。二階級特進だ。福建省出身、第三十一集団軍で台湾への軍事作戦に明るい。

何衛東とは名前からしても、東方面の軍事担当。何衛東・陸軍上将は台湾にそなえる東部戦区の司令員ゆえに、台湾侵攻のスケジュールは早まったと見るべきだろう。ともかく何衛東は東部戦区司令員、陸軍上将は直前まで軍事委メンバーでさえなかった。

下馬評で副主任確実といわれた苗華は軍事委員のヒラ委員にとどまった。陸軍なのに海軍司令に横滑りしたとき、海軍から猛反発が起きた。

苗華(軍政治工作部主任=海軍大将)は福建省時代から習近平の部下で福州市出身。2001年に陸軍少将。2010年に蘭州軍区政治部主任、2012年に陸軍中将に昇格。2015年7月、陸から突然、海軍上将となり、五年前の第19期1中全会において党中央軍事委員会委員に選出されたベテランゆえに「なぜ俺でなく、何衛東なのか」という悔しいおもいだろう。

 軍事委メンバーに残った李尚福は装備発展部長(以前の総装備部主任)で新兵器開発、装備品などの予算を握る中心人物である。

劉振立・陸軍司令員は河北省出身で武警畑を歩いてきた。

 軍人の人事で注目しておくべきはハイテク将官達の出世である。

中国軍のハイテク化加速を背景に宇宙航空、ハイテク技術の方面から政治起用がめだつ。たとえば中国軍民融合発展委員会弁公室副主任だった金壮竜は工業情報化相に、航天科技の馬興瑞はウィグル自治区書記に、航空天科技総経理だった張慶偉は湖南省書記に、中国電子科技集団総経理だった王志剛は科学技術相に。

中国兵器工業集団の幹部だった張国生は遼寧省書記に就いた。

 すでに黒竜江省書記の許勤、江蘇省書記の呉政隆、四川省省長の黄強らは何れもハイテク担当軍人だった。
 
 ▲習近平は四期目を狙う露骨な人事を断行したのだ

それにしても事前に漏れてきた人事情報は殆どが陽動作戦だった。団派、改革派を油断させる目的があったのだ。

結果は習近平の独裁化、そして後継者を曖昧にして、各幹部の年齢バランスを巧妙に熟慮し、ずばり四期目も狙っていることになる。

「権力は強化され全体主義へ向かう中国」(英紙『タイムズ』)

「習は上海忠誠男を選んだ」(ロイター)

「権力上層部に上海書記」(ファイナンシャル・タイムズ)

「総ての選択基準は忠誠度だったのだ」(ブルームバーグ)

 等と西側のメディアの評価は低い。

 となると、このシナリオを書いたのは誰か?

 暗い陰謀家の顔がちらつく。いうまでもないだろうが序列五位から四位に目立たないよう、沈黙裡に駒を進めたあの闇的存在、王戸寧である。諜報畑を牛耳る影の演出者は不気味な存在として習近平三期目の影の参謀役を継続する。

 さて三期目の習近平政権にはおおまかに次の三つの特徴がある。
 第一に「習近平の皇帝化」と他の幹部は「皇帝臣下」という関係が確立されたことだ。中国史を紐解けば皇帝の威厳が薄まったり、失われたりすれば佞臣の裏切り、軍のクーデターが起こり、政権の簒奪あるいは無力化が起きる。

前漢は王莽が皇位を簒奪して「新」という王朝を拓いた。隋の煬帝は身内に誣られ、唐は玄宗皇帝時代に安史の乱、やがて黄巣の乱がおきて無力化、死に体となった。元朝は国家経営に失敗すると中原から去った。清朝は末期になると群雄割拠、地方軍閥が匪賊化し、紫禁城の権威など雲散し、気がつけば権力は空になっていた。

 党大会直後に公表を控えていたGDP速報が10月24日に発表され、3・9%とかの誰も信用しない数字だった。第三四半期はロックダウンが解かれてもサプライチェーンは機能していなかったし不動産は未曾有の危機だからマイナスのはずである。
 ブラックスワン、灰色のサイという議論は出尽くした。中国の経済発展はおわったのである。習近平は不動産ローンの不払い、銀行倒産の取り付け騒ぎなど、「現代版・安史の乱」状況にすでに襲われている。いずれ佞臣の裏切り、軍のクーデターが起こるだろうから、野心の薄い、習への忠誠組だけで周りを固めたのだ。

▲台湾侵攻は早まったとみるべきだろう

第二に「台湾独立反対」を党規約にのせ、台湾侵攻の正当化を図った。一方で経済改革を志向する幹部等を一斉してしまったから中国経済はゾンビ状態が続くだろう。
外交方面の人事を眺めると、王毅外相が習近平の覚えめでたく「戦狼外交」で世界に名を売ってひときわ目立ち、政治局員に出世した。
中国政治では外交部は軽い存在でしかなく、外交畑の人間にすれば異例の躍進といえる。
しかし全世界から中国外交は嫌われていて、くわえて「一帯一路は借金の罠」と、評判は芳しくない。習近平も「一帯一路」には言及しなくなった。

種々の現象をみていても、中国経済のさらなる悪化は不可避的である。
どん底に転落する可能性は日々高まり、この国内矛盾を対外矛盾とすり替えるためにも台湾侵略をやらかす危険性は高まった。
また「祖国統一」という宿命的な体質的な呪縛があり、これは、中華思想の根源的な強迫観念だから誰も皇帝には反対できない。したがって習近平の権力の集中化に利用できるのである。

 第三が「ゼロコロナ」。次いで「ゼロ改革」「ゼロ長老」である。
 経済は悪化している。それなのに改革派が不在となったことは述べた。李克強と王洋がともに引退を強いられ(中央委員にも残らなかった)、胡春華は政治局から排除されてただのヒラ中央委員に転落させられた。見せしめの意味がある。

金融面でも経済改革を主張していた易鋼(人民銀行総裁)と郭樹清(同政治委員)はともに中央委員にも残れず、引退に追い込まれた。
要するに習近平はインテリや欧米留学帰りが嫌いなのだ。演説送稿で難しい熟語は間違えるか、読み飛ばす。教養は無いが政治本能がある。
経済政策を無名の何立嶺が担当することとなった。
 習近平はゼロ改革とは言わず、これを「中国的現代化」だと獅子吼した。

 くわえて「ゼロ長老」である。
江沢民、朱容基、王岐山が党大会を欠席し、ほかのOB幹部がひな壇に雁首を並べたが、飾りでしかなく、怒り心頭の胡錦濤は途中退席で抗議を示した。場内がざわついただけで、政治的効果はなかった。つまりゼロ長老である。来年の北戴河会議は、もし開かれても習近平は欠席するだろう。
     □☆◎☆み□☆☆□や☆□☆□ざ☆□☆□き☆□☆□    』