[FT]英首相退任のジョンソン氏、トラス新政権に介入も

[FT]英首相退任のジョンソン氏、トラス新政権に介入も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB062L00W2A900C2000000/

 ※ 2022年9月6日の記事だ…。

 ※ 参考になるんで、貼っておく…。

『ボリス・ジョンソン英首相は3年間にわたる波乱とスキャンダル、そして長期の暫定首相期間を経てついに6日、幼少の頃から憧れ続けてきた首相の座を降りる。しかし、ジョンソン氏がこのまま静かに政治舞台から消えていくと予想する声は少ない。
ジョンソン氏がこのまま静かに政治舞台から消えていくと予想する声は少ない=ロイター

ジョンソン氏は首相退任1年目で数百万ポンド稼ぐことができると友人らに話している。そしてジョンソン氏の友人らは同氏の盟友ジョナサン・マーランド卿の言葉を借りれば「屋根裏部屋に干し草を蓄えた」後にカムバックすることができると信じている。

平議員に戻っても大きな影響力を保持

ジョンソン氏の支持者らは同氏が議会で保守党の平議員にとどまっても、多数のメディア媒体に執筆し、保守党内で党員の強力な支持を受けて今後も英国政治に多大な影響力を保ち続けるとみている。

保守党上層部のある下院議員はジョンソン氏について「実際には首相としてはいまいちで、権力の重責を担ぐことを常に楽しんでいたわけではなかったのは周知の事実だ」と述べた上で「(首相の)座から解放されれば、本音を語るだろう」と期待する。

後任の首相となるリズ・トラス氏の陣営も、前首相をどう対処するかは極めてデリケートな問題であることを承知している。

トラス陣営が危惧するのは、1990年、首相の座を追われたマーガレット・サッチャー氏の後任のジョン・メージャー氏のような事態に陥ることだ。

メージャー氏の首相としての権力基盤は、同氏自ら「後部座席からの運転がうまい」と表現したサッチャー氏による介入によって弱体化した。サッチャー氏の発言が注目を集めたこともあり、メージャー氏は後に、サッチャー氏の行動は「耐えられない(ほどひどかった)」と語っている。

トラス氏の盟友の1人は「(ジョンソン氏による)介入の心配があるかと聞かれれば、答えはイエスだ。我々が集中すべきことは政権をしっかりと運営することだ。そうすればジョンソン時代から脱却し始めるだろう。少なくとも我々はそう願っている」と打ち明ける。

あるトラス陣営関係者は、トラス氏がジェイコブ・リースモグ氏とナディーン・ドリス氏に(新内閣の)上級閣僚ポストを提示するのは、退陣する首相に最も近い側近を「しっかり把握しておく」ための戦略の一環であると説明する。「彼らが内閣に入っていればトラス氏を追い出すことは難しくなる」

ジョンソン氏の友人らは、同氏は権力を失ったことを完全に受け入れておらず、政治的なカムバックを狙っているとみている。同氏に対して断固とした批判的立場を取り続けてきた元閣僚のローリー・スチュワート氏は、ジョンソン氏が「イタリアのベルルスコーニ元首相や米国のトランプ前大統領のような存在になるだろう」と予想する。

ジョンソン氏自身は、自らが目標として仰ぐチャーチル元首相と歴史的な類似点があるとの見方を好むだろう。チャーチルは1945年の総選挙で敗れながらも6年後に首相として見事に返り咲いている。
リコール請求でカムバックできない可能性も

しかし、これには1つ大きな問題がある。ジョンソン氏は下院の特別委員会の調査を受けているためだ。新型コロナウイルス対策の行動規制中に首相官邸などでパーティーが開かれて同氏らが参加した「パーティーゲート」問題で、虚偽発言などで意図的に議会を誤解させなかったかなどが調査の対象となっている。故意に議会を誤解させた事例にあたるという調査結果が出れば、議会への登院停止などの処分を受ける可能性がある。

ジョンソン氏が10日以上の議会への登院停止処分を受けた場合、リコール請求が可能となる。選出されたロンドン北西部のアックスブリッジとサウスライスリップ選挙区の有権者の10%以上が署名すれば、補欠選挙が実施される。ここでジョンソン氏が負ければ、2024年に予定されている次回総選挙まで同氏のカムバックの望みは絶たれることになる。

ジョンソン氏の支持者らは、特別委を「不当なつるし上げだ」とあざ笑い、おとしめようとしている。ジョンソン氏は法廷弁護士で無所属のパニック上院議員に法的助言を求めている。同卿は特別委による調査について「根本的な欠陥がある」と述べている。

ジョンソン氏の側近2人は内々に同氏に対してすぐに議員を辞めるよう求めている。特別委からの調査を避け、議員として後日議会に戻る可能性を残すためだ。

そのうちの1人は「ボリスが今議員を辞めたとしても、好きな時に簡単に議会に戻ることができる。次回総選挙までに戻ってきたいと思えば、彼に席を譲る議員はいくらでもいる」と説明する。

ジョンソン氏が議員を今辞めれば、保守党候補の当選がより確実な選挙区から出馬することも可能になる。複数の保守党戦略担当者は次回総選挙でジョンソン氏の地元選挙区が労働党候補者を選出する区になるかもしれないと予想している。
下野したほうが楽に暮らせるか

一方、ジョンソン氏は首相経験者の特権の定番である、高額な講演料や多額に上る本の前払金を受け取ることが予想される。

ジョンソン氏個人の首相在任中の資産状況は良く言ってまちまちだった。しかし講演を扱う複数の代理人によると、ジョンソン氏の首相退任後の講演料は、特に米国やアジアでは1回あたり最高で25万ドル(約3500万円)になる見通しだ。ジョンソン氏の旧友らは食後のスピーチは同氏の「支払い能力」を高める手っ取り早い方法だと言い切る。

新聞コラムニストや作家としての収入を手元資金に政治的地位を築いたジョンソン氏にとって、より大きな決断は作家として自らをどう売り込むかだろう。

ジョンソン氏は友人らに、英国の新聞・出版業界が同氏の寄稿を求めて入札合戦をしており、古巣の保守的な論調の英紙テレグラフと同紙の宿敵である英大衆紙デイリーメール、さらにルパート・マードック氏率いるメディア帝国を競わせていると語っている。デイリーメールの編集者らはジョンソン氏を熱心に支持してきた。

デイリーメールのニュース編集局で働くジャーナリストらは最近どこの「かわいそうな誰か」がジョンソン氏のコラムのために遅くまで待たなければならないかという冗談を言い合っている。ジョンソン氏は締め切りギリギリまで待たせることで知られるからだ。

一方、あるベテランのメディア幹部は、ジョンソン氏は首相退任後すぐは、書き続けなければならないコラム執筆の仕事に戻るのを嫌がり、もっと大きな目標を抱いているかもしれないと考えている。「編集長になれるのにコラムニストになるのを選ぶだろうか?」

ジョンソン氏はかつて英誌スペクテーターの編集長を務めていたとはいえ、首相を辞めた直後に編集長の椅子に座るというのは前代未聞だ。元閣僚のリチャード・クロスマン氏やジョージ・オズボーン氏は、政治家を辞めた後に雑誌や新聞の編集長に転身したが、元首相が編集長になった例はこれまでにない。

ジョンソン氏は、長期的なキャリアを選択する前に、収入面における最も大きな決断を下さなければならない。(首相時代の)回顧録をどこから出版するかである。複数の出版社幹部はジョンソン氏の回顧録について、米国のオバマ夫妻やクリントン夫妻あるいはブレア元英首相に匹敵するほどではないが、出版権を巡って熾烈(しれつ)な競争が繰り広げられ、前払い金は7桁(百万ポンド以上)に達すると予想する。

ジョンソン氏の本を長年出版してきたホダー社は、7年前にジョンソン氏に未完成の本「シェイクスピア 天才の謎解き」の前払い金として少なくとも8万8000ポンド支払っており、すでに同氏への請求権を保有している。マードック氏傘下の出版社ハーパーコリンズもジョンソン氏の回想録の出版権獲得レースに加わっている。こうした競争はこれから始まろうとしている。

ジョンソン氏の長年の支持者の一人は「(経済面などで)この先非常に悪い出来事が待ち受ける中で、公職を去ったほうがずっと楽で、報酬も高い生活を送れると感じるかもしれない」と述べた上で「しかしボリスは心の中では首相であることに完全に終止符が打たれたとは絶対に思わないだろう」と語った。

英首相官邸はコメントを控えた。

By Sebastian Payne and Alex Barker

(2022年9月5日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』