米、台湾武器提供「安保に不可欠」 中国は核戦力増強へ

米、台湾武器提供「安保に不可欠」 中国は核戦力増強へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM189HC0Y2A011C2000000/

『【ワシントン=中村亮、北京=羽田野主】バイデン米政権が台湾への武器提供を加速する。米国務省のパテル副報道官は19日の記者会見で迅速な提供が「台湾の安全保障に不可欠だ」と語った。中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は台湾統一をにらみ核戦力の強化に乗り出す構えで、対立が深まっている。

日本経済新聞(電子版)は19日、関係者3人の話としてバイデン政権が台湾への武器提供を前倒しするために米国製の武器を台湾と共同生産する案を検討していると報じた。

パテル氏は「報道について具体的なコメントをしない」と断ったが、「防衛戦力の引き渡しを可能な限り早く実行するために全ての選択肢を検討している」と強調した。米国家安全保障会議(NSC)の報道担当者は「台湾が十分な自衛力を維持するために必要な武器やサービスを提供していく」とコメントした。

中国では共産党幹部の人事を決める5年に1度の党大会が開催中だ。習近平総書記(国家主席)は16日の活動報告で、中台統一について「必ず実現しなければならないし、実現できる」と言明した。「武力行使の放棄も決して約束しない」と威嚇した。

バイデン政権は「中国が以前に比べてかなり早い時間軸で(統一を)目指すと決意している」(ブリンケン国務長官)と警戒する。

習氏は今後5年間で「強力な戦略的抑止力体系を構築する」との方針を示した。核の抑止力で米軍の介入を阻む狙いがある。

10月中旬に報道陣らに公開した指導部の実績をアピールする北京市内での展覧会でも、核戦力の強化ぶりを誇示した。小型の核弾頭を搭載できる極超音速ミサイル「DF17」を筆頭に、米本土を射程に収め10個の核弾頭を搭載できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)「DF41」を展示した。

習指導部は2012年に発足後、核弾頭を搭載できる弾道ミサイルの量産にカジを切った。防衛白書などによると、核弾頭を搭載できる弾道ミサイルの保有数は12年は196基だったが、22年に456基まで増やした。

そのうち力を入れているのが中距離・準中距離弾道ミサイルの配備で、22年は合計278基と12年の128基の2倍以上に増やした。米空母を標的にする空母キラー「DF21」と米グアムを狙える「DF26」で大半を占める。

中距離・準中距離弾道ミサイルは米原子力空母ロナルド・レーガンが拠点とする米海軍横須賀基地や米軍嘉手納基地を抱える沖縄県も射程に収めている。台湾侵攻時に救援に駆けつける米空母やその基地への攻撃を想定しているとみられている。

米国はロシアと19年まで中距離核戦力(INF)廃棄条約を結んでいた影響で、保有はゼロ。台湾情勢に直結するだけに習指導部はさらに保有数を上積みするとみられる。

潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)も22年で72基と12年の6倍に増えた。最大射程8000キロメートルの「JL2」にグレードアップし、弾道ミサイルを搭載できる6隻の原子力潜水艦で運用する。原潜は水深の深い南シナ海などで隠密行動する。有事に米本土を奇襲できる体制を整え抑止力とする戦略だ。

中国が保有する核弾頭は現時点で約350発。米国防総省は中国は27年までに最大700発に増やし、30年までに少なくとも1000発の核弾頭を保有すると分析している。
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川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
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分析・考察

習近平政権は元来2049年の「中華民族の偉大なる復興の夢」の実現の時に、台湾統一することを目標とし、中間地点として2035年を設定していた。

アメリカは、この目標より早く中国が台湾統一を行おうとすると見ているのだろう。

ただ、核弾頭増加や弾道ミサイルなどの増強は単に台湾統一だけを目指してのことではない。

中国は、軍事、安全保障面も含めて2049年にアメリカを追い越すことを目標としている。
世界的な核兵器のバランスを見れば、依然として米露が突出しているが、それを打破すべく中国が名乗りをあげ、米中が中心となるよう舵を切ったということだ。それに伴って「先制不使用」政策も調整することが予想される。

2022年10月21日 6:43 』