【解説】 トラス英首相の後任、どんな人たちが有力視されているのか

【解説】 トラス英首相の後任、どんな人たちが有力視されているのか
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-63340060

 ※ 今日は、こんなところで…。

リシ・スーナク元財務相

ペニー・モーダント下院院内総務兼枢密院議長

ボリス・ジョンソン前首相

ベン・ウォレス国防相

ケミ・ベイドノック国際貿易相

スウェラ・ブラヴァマン前内相

『イギリスのリズ・トラス首相が20日、辞任を表明した。これにより、与党・保守党では党首選が行われ、勝者がイギリスの次期首相となる。

今回の党首選は来週末までに完了する見込み。

立候補するには、保守党下院議員100人以上の推薦が必要。保守党議員は現在357人のため、候補は多くても3人となる。

実際には候補者は2人か1人になるとみられている。候補者が1人だった場合、その人物が投票を経ずに党首に決まる。

現時点で出馬を表明した議員はいないが、有力な人物を紹介する。

リシ・スーナク元財務相
Rishi Sunak
画像提供,REUTERS

スーナク氏はボリス・ジョンソン前首相の辞任を受けた党首選に立候補し、トラス氏と決選投票を戦った。保守党下院議員からの支持では1位だった。

この選挙活動中、スーナク氏はトラス氏の主張する減税策は経済を傷つけると警告したものの、保守党員からの支持を集められず、2万1000票差で敗北した。

2015年にノース・ヨークシャー州リッチモンドから初当選。その後、わずか5年弱でジョンソン政権における財務相へとのぼりつめた。

新型ウイルスのパンデミックに際しては、経済の停滞を防ぐため財政支出を大幅に拡大した。

低税率・高消費を掲げるサッチャー派の保守党員であるスーナク氏にとって、これは簡単なことではなかったが、その人気を高めるきっかけになった。

しかし、妻の脱税疑惑に加え、新型コロナウイルス流行を受けたロックダウン中に首相官邸などでパーティーが行われていた問題で罰金を課せられ、評判が落ちた。

保守党のアンジェラ・リチャードソン議員は、すでにスーナク氏への支持を表明しており、「この夏、リシ・スーナク氏の党首選を支援したが、彼の適性についての私の見解は変わっていない。むしろこの6週間で、その考えがより鮮明になった」と述べている。

ペニー・モーダント下院院内総務兼枢密院議長
Penny Mordaunt
画像提供,REUTERS

モーダント氏は今週初め、議会での緊急質問でトラス首相の代理を務め、首相になった気分を味わうことができた。

その自信に満ちた振る舞いは高く評価されており、再びリーダーを狙えるかもしれない。
前回党首選にも出馬したモーダント氏だったが、保守党議員から強い支持を得ていたにもかかわらず、決選投票前に敗退した。

その後はトラス氏を支持すると表明。トラス政権では下院院内総務兼枢密院議長となり、新国王チャールズ3世の即位を取り仕切った。

モーダント氏は2019年、テリーザ・メイ政権でイギリス初の女性国防相に任命された。海軍予備役であり、その前のデイヴィッド・キャメロン政権では国防省の軍担当閣外相も務めた。

ジョン・ラモント議員、マリア・ミラー議員、ボブ・シーリー議員、デイミアン・コリンズ議員が、モーダント氏への支持を表明している。

ボリス・ジョンソン前首相
Boris Johnson
画像提供,GETTY IMAGES

新たな党首を選ぶのに1週間しかないため、候補者の多くは見慣れた顔になりそうだが、つい数週間前まで首相だったこの人ほどよく顔が知られている人はいないだろう。

アックスブリッジ選出のジョンソン氏は、閣僚など政府要人が一斉辞任したのを受けて、今年7月に党首を辞任したばかり。

ジョンソン氏をめぐっては、昨年12月以降、新型コロナウイルスのロックダウン中に首相官邸などでパーティーを複数回行ったことが発覚。

また、「問題行動」(※ 『英保守党のクリス・ピンチャー院内副幹事長が6月30日、同職を辞任した。英タブロイド紙サンなどが、会員制クラブで男性2人に痴漢したと報じたため。』というもの)が指摘されていたクリス・ピンチャー議員を院内副幹事長に任命するなど、相次ぐ不祥事で数カ月にわたって進退が議論されていた。

下院の特別委員会は現在、ロックダウン中のパーティーについてジョンソン氏が「首相官邸ではロックダウンのルールが守られていた」と発言したことが、議会を欺く行為だったかを調査している。パーティーについては、ジョンソン氏も罰金を科せられている。

しかし、ジョンソン氏はなお議員と一般党員の双方に支持者がいる。長年の支持者であるナディン・ドリス議員は、2019年の選挙で国民から信任を得たジョンソン氏が復帰すべきだと主張している。

ベン・ウォレス国防相
Ben Wallace
画像提供,PA MEDIA

党内でも意見が分かれる有力者が多い中、ウォレス国防相は同僚議員から広く、安全な人物と見られている。

ロシアのウクライナ侵攻を受け、イギリスが早くからウクライナへの兵器や訓練の供与を決定したことから、ウォレス氏は注目を浴びている。

ウォレス氏はブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)には反対だったものの、離脱派だったジョンソン氏の主要な支持者であり続け、2019年の総選挙後に内閣入りを果たした。
政界入りする前は軍人としてドイツやキプロス、ベリーズ、北アイルランドなどで従軍。北アイルランドでは、アイルランド共和軍(IRA)によるイギリス兵への爆弾攻撃を阻止した。

保守党のウェブサイトでの支持率調査でトップだったこともあり、ジョンソン氏の辞任後にも出馬がささやかれたものの、ウォレス氏はトラス氏支持を表明し、同氏を「本物」だと評価していた。

ケミ・ベイドノック国際貿易相
Kemi Badenoch
画像提供,PA MEDIA

ベイドノック氏は前回党首選で驚異のブレイクスルーを果たした。勝利こそしなかったものの、大きく評判を上げることとなった。

経歴は政務官などを歴任した程度だが、閣僚経験者のマイケル・ゴーヴ議員の支持を得ている。また、人種的偏見や差別問題を意識する「ウォーク」カルチャーへの攻撃で注目を浴びた。

ロンドン南部ウィンブルドン生まれのベイドノック氏は、幼少時代をアメリカや、両親の母国であるナイジェリアで過ごした。

金融業界や英雑誌「スペクテイター」などで勤めたあと、ファフロン・ウォルデンから下院議員に当選。

トラス政権で国際貿易相に任命された。

スウェラ・ブラヴァマン前内相
Suella Braverman
画像提供,GETTY IMAGES

ブラヴァマン氏が19日に内相辞任を表明したことがトラス氏への圧力を高め、24時間後の首相辞任につながった。ブラヴァマン氏の辞任はデータ保護規定違反が原因だったが、辞表にはトラス政権の移民対策に対する怒りが表れていた。

ブラヴァマン氏は社会問題をめぐり、保守党内の右派にアピールしている。不法移民のルワンダ移送計画を自身の「夢」だと語り、「豆腐ばかり食べるウォークの連中」を批判した。

元弁護士で、ジョンソン政権では法務長官に任命された。前回党首選にも出馬したものの、第2回投票で敗退している。

1960年代にケニアとモーリシャス諸島からイギリスへと移住した両親は、共に地域政治に関わっていた。母親は16年間、市議会員だったという。

閣僚が有給の育児休暇を取れるよう法改正がされてから、初めてこの制度を利用した閣僚でもある。

党首選の流れ

(英語記事 Who could replace Liz Truss as prime minister?)』

ペニー・モーダント

ペニー・モーダント
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%B3%E3%83%88

『ペネロペ・メアリー・モーダント(英語:Penelope Mary Mordaunt、[ˈmɔːrdənt]、1973年3月4日 – )は[1][2]、イギリスの政治家。ポーツマス・ノース選挙区(英語版)選出庶民院議員を務めている。2022年9月6日から庶民院院内総務・枢密院議長を務める。国防大臣、女性・平等担当大臣、国際開発大臣(英語版)を歴任した。

生い立ちとキャリア

1973年3月4日にデボン州トーキーで誕生した。彼女の名前はアレトゥサ級巡洋艦のHMSペネロペの名に因んでいる[3]。

ヒルシー兵舎で生まれた彼女の父親はパラシュート連隊を離れ、教師として従事した。モーダントには2人の兄弟がおり、その名はジェームズと弟のエドワードである[4]。

彼女の母親であるジェニファー[5]はフィッシャー・スノーデンの最初の労働大臣である。アンジェラ・ランズベリーは彼女の祖母のいとこである[6][7]。

モーダントはハンプシャー州ウォータールービルのオークランドローマンカトリックスクールアカデミーで教育を受け、ビクトリーランドシアタースクールで演劇を学んだ[8]。

議会における経歴(2010年から)

2003年11月に2005年の総選挙のポーツマス・ノース選挙区で闘う保守派候補に選ばれた。
彼女は保守派に[4]向かって5.5パーセントのスイングを達成したが、1139票で労働党候補のサラ・マッカーシー・フライに敗北した[9]。

女性のみの候補者を批判する[10][11] モーダントは、2005年の選挙後にデイヴィッド・ウィレッツのリーダーシップキャンペーンを中止するための参謀長として働いた[12]。

国際開発長官(2017年から2019年まで)

バングラデシュのクトゥパロン難民キャンプにて(2017年11月25日)

2017年11月9日に国際開発担当国務長官に任命されたモーダントは、一連の明らかに秘密で不正な会議をプリティ・パテルが辞任した後、休暇中にイスラエルの政治家と行った[13]。

国防大臣(2019年)

2019年5月1日にイギリスの5Gネットワークに関連したファーウェイの制限付きアクセスを許可する計画に関するリークの調査でギャビン・ウィリアムソンの解任後、史上初の女性の国防大臣に任命された[14]。

2019年7月24日に国防省を辞任し、女性・平等担当大臣としてツイッターを介して発表した[15]。

保守党党首選挙 (2022年)

2022年7月、ボリス・ジョンソン首相が辞任を表明し、モーダントは党首選挙に出馬した。

序盤の情勢は、ブックメーカーや世論調査によると、保守党党員からの支持率が1位と高く[16]、最有力候補とされていた。

保守党下院議員による第4回投票まで2位を維持し続けたが[17]、最終の 第5回目議員投票ではリズ・トラス外相に僅差で逆転され最下位となり、落選した[18]。

人物・私生活

「英国で最もセクシーな国会議員」と称されたこともあり[19]、リアリティ番組「スプラッシュ!」では水着を披露して話題となった[20][21]。

彼女は1999年にリーディング大学で成熟した学生であったポール・マーレーと出会って結婚したが、翌年には離婚した[22]。彼女は後にクラシック歌手であるイアン・リヨンと長期的な関係にあった[23]。

他のアクティビティー

モーダントはイギリス海軍予備役であり、クジラ島のHMSで副中イギリス海軍予備員を務めている[24] [25]』

【記者解説】英トラス首相 党首辞任表明 後任はどうなる?

【記者解説】英トラス首相 党首辞任表明 後任はどうなる?
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221021/k10013865931000.html

『イギリスのトラス首相は20日、与党・保守党の党首を辞任する考えを明らかにしました。そのうえで来週、党首選挙を行い、次の党首が決まり次第、首相も辞任することを明らかにしました。

イギリス国内での受け止めや、後任はどうなるのか、ロンドン支局の松崎浩子記者の解説です。
Q.イギリス国内の受け止めは?
ロンドンの町で話を聞いたところ「驚きはない」とか「辞めるのは必然だった」といった冷めた声が多く聞かれました。

イギリスではインフレ率が10%を超える記録的な水準となっていて、国民の多くが生活必需品の値上がりなどによって家計を圧迫されています。

そうした状況にトラス政権が具体的な対策をほとんど打つことができず、退陣する形となったことを受け、政治に対する憤りや不信感が広がっていると感じます。

Q.後任を決める保守党の党首選挙はどうなる?

立候補には下院議員100人の推薦を得る必要がありますが、前回は20人だったためハードルが大幅に高くなりました。

これは候補者の乱立を防ぎ政治的な空白の期間を極力短くする狙いもあると見られます。

保守党の下院議員は357人のため、立候補できるのは最大3人までということになります。
地元メディアでは、有力候補として前回の党首選挙にも立候補したスナク元財務相と下院のモーダント院内総務の名前が取り沙汰されているほか、いわば「台風の目」としてジョンソン前首相の動向が注目されています。

ジョンソン氏は国民の間でも支持する声が根強くあり、早くも複数の議員が支持を表明しています。

保守党にとっては支持率調査で野党・労働党に大きく引き離されているなか、窮地から抜け出すための起死回生の一手になるという期待があります。

その一方で、相次ぐ不祥事を受けて先月辞任したばかりのジョンソン氏に対して、議員の間では抵抗感があるのも事実で、100人の推薦人を集められるかどうかが焦点となります。

イギリスの新しい首相は、事実上、1週間後には決まる見通しです。

ただ、国民の多くは「誰がなるか」よりも「何をしてくれるのか」と、冷静に党首選挙の行方を注視しています。』

東京五輪汚職が起きた根源的な要因

東京五輪汚職が起きた根源的な要因
『黒い輪』に見る近代スポーツ大会の病巣

中島章隆 (元毎日新聞運動部長・論説委員)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28256

『東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の理事だった高橋浩之氏が受託収賄罪で3度目の起訴をされた。東京地検特捜部は高橋氏の4度目の逮捕に踏み切り、新たに広告会社「ADKホールディングス」の社長ら3人も逮捕し、真相究明が進められている。

 こうして詳らかになりつつある汚職構造に、「汚れた東京五輪」とも言われているが、五輪がカネと利権にまみれてしまったのは、今に始まったことではない。「スポンサー偏重主義」とも言える現代の五輪の構造を変えない限りは問題は解決されない。

 世界的なスポーツの祭典がどのように汚れてしまったのかを歴史的な経緯から紐解いた2021年8月19日に本サイトで掲載した記事を再掲する。

 まさに「異形」のまま東京五輪が幕を閉じた。日本選手が金27個、銀14個、銅17個と過去最多のメダルを獲得するなど活躍は目を見張るものがあったが、新型コロナウイルス感染拡大のため予定を1年延期して開催し、ほとんどの競技会場を無観客とするなど、従来の五輪大会とは様相を異にした17日間だった。

国内では開幕直前まで「中止または再延期」を求める声が高まり、「五輪好き」と思われてきた日本人の分断を印象付けた大会でもあった。

(Mawardibahar/gettyimages)

 日本人の「五輪好き」は、半世紀前の東京大会の経験が影響しているのかもしれない。
戦争で廃墟と化した東京の復興を世界に強くアピールしたのが1964年の東京五輪だった。
平和国家として再出発し、律儀で几帳面、約束を守る日本人の特性が大会運営にも色濃く投影された。閉会式で当時の国際オリンピック委員会(IOC)会長、アベリー・ブランデージ(1887-1975年)は「東京大会の運営に金メダルを贈りたい」と日本を絶賛した。

 終わってみれば、「五輪優等生」として認められた日本。だが、酷暑の中、大会を開催するのは、五輪の最大のスポンサーであるアメリカテレビ局の都合だ。アメリカにおいて夏は、ナショナルフットボールリーグ(NFL)のシーズン開幕や野球の大リーグ(MLB)プレイオフ、プロバスケットボール(NBA)といった人気スポーツイベントがない季節。巨額な放映権料を払う米テレビネットワークNBCテレビ局がより多くの視聴者を獲得しようと、夏を選ぶのだ。

 そうした〝大人の事情〟で開会式や閉会式の時間や、陸上短距離をはじめとする決勝戦を深夜時間帯の午後11時前後の時間に設定している。

NBCは、次回の2024年パリ大会、28年ロサンゼルス大会の放映権を獲得している。さらに、32年のブリスベンが決まる前から獲得していた。

『黒い輪』(1992年、ヴィヴ・シムソン、アンドリュー・ジェニングズ著、光文社)

 こうした「選手ファースト」でも「観客ファースト」でもないオリンピックの病巣を知ることができるのが今回紹介する『黒い輪』(1992年、ヴィヴ・シムソン、アンドリュー・ジェニングズ著、光文社)だ。

 五輪とスポーツ界にまつわる様々な不祥事やスキャンダルを2人の英国人ジャーナリストが掘り起こし、世界中の「五輪神話」を打ち砕いた記念碑的一冊だ。92年のバルセロナ五輪の開幕直前に発表され、「平和の祭典」の美名の陰で暗躍する五輪ビジネスの醜悪な内幕を容赦なく告発した。出版から約30年が過ぎたが、残念ながら同書で指摘された五輪を取り巻く病巣はほとんど残されたままで、今読み返してもその価値は減じていない。

五輪が「儲かる大会」に変貌していく

 「本書は金メダルをめざす選手たちの話ではない。背広に身を包み、自分たちの意のままにスポーツを操る男たちの、隠された世界の話である」(同書10頁)。2人の著者は初めにこう宣言する。

 俎上に載せられたのはIOC会長や理事会メンバー、国際陸連(IAAF、現世界陸連)や国際サッカー連盟(FIFA)のトップに加え、夏冬の五輪招致を目指す各国の責任者やスポーツ関係者、スポーツ用品メーカー、広告代理店など顔ぶれは実に多彩だ。

 告発の最大の標的となったのは1980年から30年間にわたりIOCのトップに君臨したフアン・アントニオ・サマランチ(1920―2010年)だ。純粋なスポーツと平和のシンボルとして考えられてきた五輪を、カネと陰謀が飛び交う大会に生まれ変わることを容認した中心人物である。この告発本も、出身地のバルセロナで開幕する夏季五輪に合わせて出版された。

 サマランチはIOC委員として国際スポーツ界に登場する前、スペインで何をしていたのか。同書はスペインでの経歴を詳述した。

注目されるのはファシスト、独裁者として国際的に批判されたフランコ総統のもとで政治的な出世を果たしてきたことだ。「サマランチはモビミエント(スペインにおけるファシズム団体)の制服である青シャツと白いミリタリージャケットを着こみ、右腕を上に挙げ、自分自身と運動に成功をもたらすために、スポーツを利用し始めた」(同書98~99頁)
 フランコ総統が75年に死亡し、反ファシストの市民運動が燃え盛ると、サマランチは77年、スペインを逃れるようにソ連(現ロシア)の大使に就任する。

当時、ソ連は3年後の80年にモスクワで共産圏初の五輪開催を控えていた。すでにIOC副会長の職にあったサマランチにとって、組織委員会や東側陣営のIOC委員に顔を売る絶好の機会となり、五輪開幕前にモスクワで開かれたIOC総会で、サマランチはIOCの第7代会長に選任された。』

『サマランチは、従来のアマチュアリズムのため疎外されていたスポーツ関連ビジネスマンとも深いつながりを築いた。とりわけ重要なのはドイツのスポーツ用品メーカー、アディダス社の総帥、ホルスト・ダスラー(1936-1987年)との親交だった。スポーツ選手にアディダス製の靴を履かせることに情熱を燃やし、世界中を飛び回ったダスラーは、世界中のスポーツ界に人脈を広げていった。IOCの権力拡大に意欲を燃やすサマランチと、ダスラーのビジネス戦略が合致した。

 「それまで伝統的に非常勤の名誉職だったオリンピック指導者を、常勤の最高行政官に作り変えた。もともとの事務局長を解雇し、側近と官僚からなる社会を作り上げ(略)、IOC会長の座を、超然とした神同然の地位まで押し上げた」(同書99頁)と著者は指摘する。自らを皇帝とする「サマランチ王朝」の誕生だ。

 これが今回の東京大会でも進められたスポンサー偏重主義を生み出した。日本国内ほとんどの大手企業がスポンサーに募られ、スポンサーになっていなければ、大会中にブランドロゴなどを出すことができない。

実際にスポンサーに配慮して、卓球の選手がブランドロゴを隠してプレーしたり、テレビ中継に映らないようにしていたりする様子が印象に残っている。これはオリンピックに限られた話ではないが、スポーツによるスポンサー主義をすべてのスポーツと国際大会に浸透させていったのは、この「サマランチ王朝」体制と言える。

 五輪が商業化に大きく舵を切ったのは84年のロサンゼルス大会からだ。76年のモントリオール五輪は地元市長の放漫運営がたたり、10億㌦もの負債を抱えた。ロサンゼルスは市や州からの公金を一切使わない民営五輪を掲げた。

 テレビ放映権を入札制にして米国3大ネットに競り合わせ、高額な放送権料を獲得したほか、1業種1社のオフィシャルスポンサーを募り、スポンサー企業に五輪マークを使った独占的な宣伝活動を認めるなど、独創的なアイデアで五輪を「儲かる大会」にした。これらの手法はサマランチ王朝がそっくり受け継いだ。

 著者は、サマランチ路線を痛烈に批判する。「ブランデージ会長は、選手や連盟が衣服に商業ロゴをつける権利を拒み続けた。ところが会長がサマランチに替わるとともに、市場が出せる最高の価格で五輪のエンブレムを売る仕事に精を出すことになった」(同書153頁、一部略)。「儲かる五輪」に世界中の都市が群がり、投票権を持つIOC委員に賄賂が横行。結果的にIOCの腐敗につながっていった。

ドーピングの魔の手も選手を襲う

 同書にはサマランチと並ぶもう一人の主役が登場する。81年に五輪のメーン競技である陸上競技のトップに就任したイタリア人、プリモ・ネビオロ(1923-1999年)だ。

 モスクワ五輪が米国はじめ西側陣営のボイコットで、五輪が「片肺大会」になると、83年に東西両陣営から陸上のトップ選手をヘルシンキに集めて第1回世界陸上選手権を開催した。サッカーのワールドカップと同じように、陸上競技の最高の大会は「五輪ではなく世界選手権である」とアピールし、テレビマネーを呼び込む仕掛けを作った。

 ヘルシンキの大会では、カール・ルイス(米国)というスーパースターが表舞台に登場し、予想を上回る成果を上げた。人類最速の記録への挑戦を映し出すテレビ映像は世界中の関心を集め、それまで「アマチュア」として金銭的な報酬に無縁だった陸上選手は、テレビ局が支払う放映権と大会スポンサーが支払う協賛金を通じて巨額な報酬を手にするようになった。

 スーパースターを目指す選手には禁止薬物の誘いが忍び寄る。ステロイドは筋肉質の体を作り上げ、記録を向上させる効果があるが、悲惨な副作用ももたらす。選手たちはなぜ危険性を承知の上でドーピングに手を染めるのか。ソウル五輪男子100㍍で世界新記録をマークしながら禁止薬物の使用が発覚、メダルをはく奪されたベン・ジョンソンと同僚のカナダの短距離選手は、著者らにこう説明した。「栄光はあまりに甘く、ドルがふんだんに手に入るからだ」(同書289頁)』

『選手だけではない。競技団体もスター選手が稼ぎ出す潤沢な資金の恩恵にあずかるようになると、選手の記録がなぜ伸びたのか、といった詮索は二の次になる。極論すれば、薬物の手を借りていようがいまいが、金を稼ぐ選手は宝だ。

 「ヘルシンキ大会では、ドーピング検査の陽性は一例もなかった」とネビオロが自信満々に発表した1年後、米国の短距離選手が衝撃的な告白をした。「(ヘルシンキ大会で、)少なくとも38人の選手が検査で陽性で、そのうち17人はアメリカの選手だった。でも、あまりに有力選手ばかりだったので、大会運営委員会はあえて名指しするのをやめた」(同書291~292頁)。もちろんネビオロは発言を無視する。

 東京大会でも、ロシアの選手たちが組織的ドーピング問題の処分により「ロシア・オリンピック委員会(ROC)」として参加した。今でもスポーツにまつわるドーピング問題ははびこり続ける。

いったい誰のための五輪なのか

 五輪運動は1984年のロス大会で商業化にかじを切った結果、世界のスポーツビジネスが飛躍的に潤う一方、禁止薬物使用をはじめとする様々な不正がスポーツ界に流れ込んできた。IOCや各競技団体のトップに利権が生まれ、そこから腐臭が漂うようになった。

 サマランチが進めた五輪の商業化のマイナス面ばかりを取り上げた同書への批判の声もある。日本版の出版にあたり監訳者となった広瀬隆も同書の解説の中で、「イギリス人が良い子になりすぎている」と批判している。だが、同書で取り上げた様々な批判は、きちんと処理されなければならない問題ばかりだった。

 本来、五輪とはどうあるべきなのか。今回紹介した「黒い輪」が暴露したスポーツ界の病巣を、いま一度しっかりと検証することから始める必要がある。』

軍事基地化したクリミアへウクライナは武力侵攻するのか?

北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:軍事基地化したクリミアへウクライナは武力侵攻するのか?
https://nappi11.livedoor.blog/archives/5380991.html

『ロシアが戒厳令を実行するウクライナ南部ヘルソン州ヘルソン市周辺からは、市民のクリミアCrimea側への避難が起きており、半島北部のアルミヤンスク検問所Armiansk(アルムヤンスク、Armyanskアルミャンシク)border checkpointは市民の車で溢れかえっていると言う。

恐らくその多くは、ロシア系住民だろうと想像できる。参照記事

2014年にロシアに強制併合されたクリミア自治共和国では、圧倒的にロシア系の多いクリミア住民のいくらかは、ロシアの到来から、給料や年金の増加だけでなく、クリミア半島が人気な観光リゾートとなることを期待していた。

しかし実際には、ロシアの観光客とともに、ロシア軍人もやってくることになった。

併合後の4年間で、クリミアは、巨大な軍事基地のようになっている。「グリーンメン」と呼ばれたロシア兵の数は、約3万2000名にまで増加、航空機は122機、軍艦は71隻、地対空ミサイル・システムは16基、潜水艦は7台となっている。さらに、クリミアには、もしかしたら、核兵器が格納されているかもしれない。参照記事 図の英文記事
2014年から2018年にかけての急激なクリミアの軍事基地化を視覚的な図にしたのが右で、ここにロシア軍の陸海空全てが集結しているのが分かる。ウクライナ戦争後は、さらに兵員、兵器、装備が増強されている可能性もある。

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もともとこの半島には、ロシア海軍の軍港が在り、造船所もあって、ロシア軍にとっては黒海艦隊維持、メンテナンス、燃料補給の上でも最重要地域なのは間違いなく、クリミア大橋Crimea Bridgeが損壊した際のプーチンの怒りも、この事に起因しているのだろう。

ロシア軍部はすでに、ヘルソン州域からの撤退に言及しているが、その勢いでウクライナ軍がクリミア半島奪還にまで武力で突き進むのかは不明で、ウクライナ側もこの事で明確な発言はしていないが、クリミア全域を2014年以前の状況に戻すとは再三述べている。

クリミア大橋(総延長19キロ)での10月8日に大爆発に関し、ロシア政府は10月12日、クリミア大橋の全面復旧は2023年7月になるだろうと発表している。過去ブログ:2022年10月ウクライナ女性兵士解放と今後の見通しと南部に戒厳令発令』

冬を前に中国製品が一人勝ち、しかし不良品が、、、

北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:冬を前に中国製品が一人勝ち、しかし不良品が、、、
https://nappi11.livedoor.blog/archives/5381016.html

『ロシアの全国経済紙Kommersantによると、中国からロシアに出荷された半導体の故障率がここ数ヶ月で1,900%増加したという。The Registerが伝えている。

Kommersantは匿名の情報源を引用して、ロシアによるウクライナへの不法侵攻以前は、輸入シリコンの欠陥率は2%だったと述べている。

この戦争が始まって以来、ロシアのメーカーは40%の不良率に直面しているらしい。

多くの部品で構成される製品では、品質上の問題が発生する可能性があるため、不良率が2%でも最適とは言えない。

しかし、40%という数字が示すように、このままでは製品として成り立たなくなる可能性がある。、、

この新聞は、多くの大手企業がロシアから撤退した経済制裁の責任を追及しています。

グレーマーケットの流通業者やその他の日和見主義的な事業者が、ロシア企業との取引に応じる唯一の存在として残されているのだ。おそらく、ロシアのバイヤーが簡単に代替品を手に入れられないことを知りながら、不当な製品をばらまいているのだろう。英文記事 、、、、、、

ロシアが中国企業のごみ捨て場扱いのようだ。何とか製品はできても、中国には高性能な検査機器が無いのだろう。記事の不良品は、輸入された半導体ではなく、どうやら中国製半導体を使った中国製品のようだが。

FireShot Webpage Screenshot #2173 – ‘欧州で中国製電気

「中国のアナリスト兼コンサルタント会社である JW Insights (Ijiwei) は、売上高が「前年の約 30,000 件と比較して、70,000 件から 80,000 件に急増した」と報告し、。半導体は輸出用電気毛布にも使用され、温度を監視および/または調整するために地元で作られたチップ(半導体)が含まれています.

Ijiwei 氏は、高級モデルには Bluetooth やその他の技術が含まれている可能性もあり、中国のチップメーカーにさらなる機会をもたらす可能性があると述べた。

コンサルティング会社によると、1 月から 7 月までの中国からの電気毛布の輸出額は 3,340 万ドル(約50億円)に達し、前年比 97% 増となり、他のクラスの家電製品を大幅に上回りました。英文記事 」

ロシアからの天然ガス供給が不安定になったことにより、欧州ではここ数十年で最大のエネルギー危機に陥っている。

欧州の人々は冬を乗り切るために、大急ぎで暖房器具の準備に取りかかっているが、欧州製の電気毛布やヒーターは割高で、選択肢も限られている。

そのような背景のもと、中国製電気ヒーターや電気毛布、空気熱源ヒートポンプなど暖房器具の輸出が、今年に入ってから爆発的に増加している。参照記事、、、、

どうやら問題は、ロシアだけにとどまらないようだ。ロシアにガスを止められ、ならばと中国製電気毛布を使えば焼き殺されるのでは、たまったものではない。参考:暖房器具生産を加速、欧州市場の新たなニーズに対応―広東省』

水上をふつうに航走する、いっけん商船だがじつは爆薬が満載された「自爆船」…。

水上をふつうに航走する、いっけん商船だがじつは爆薬が満載された「自爆船」…。
https://st2019.site/?p=20492

『Scott Savitz 記者による2022-10-20記事「Beware the Explosive Vessels」。

   水上をふつうに航走する、いっけん商船だがじつは爆薬が満載された「自爆船」を突っ込ませることにより、敵軍の港湾修船施設を破壊しようという試みは、WWII中に、英軍が仏海岸に向けて何度か実行している。もちろん操船員は爆発の前に離脱するのだが、離脱に失敗して戦死してしまうことはちょくちょくあった。

 水上を走らせる自爆船のメリットは、潜航艇タイプの自爆兵器よりもはるかに簡単に、大量の爆薬を運び得、且つ、作戦距離に事実上、制限がないことである。

 ケルチ橋は、この手で破壊したのだろう。

 1917年のハリファクス港(カナダ海岸はNYCよりも英国との距離が近いので、米国の援助物資はそこから発送されることが多かった)における、貨物船に満載された砲弾の自爆事故は、直径1マイルの陸上の建物を壊滅させ、60フィート高の津波を沿岸住宅地まで襲来させた。しかもこの貨物船のサイズは、今日最大の貨物船の2%くらいのちっぽけなものだった。

 ※1隻の弾薬運搬船の「爆破工作」で港湾施設が壊滅してしまうと知られたのは南北戦争中のはず。詳しくは拙著『封鎖戦』を読み直して欲しい。』

https://af.moshimo.com/af/c/click?a_id=1637377&p_id=170&pc_id=185&pl_id=4062&url=https%3A%2F%2Fwww.amazon.co.jp%2Fdp%2F4198651418

5人のロシア人と2人のヴェネズエラ人がFBIにより訴追された。

5人のロシア人と2人のヴェネズエラ人がFBIにより訴追された。
https://st2019.site/?p=20492

『Daniel Flatley 記者による2022-10-20記事「US Charges Seven in Plot to Buy Chips for Putin’s War Machine」。

   5人のロシア人と2人のヴェネズエラ人がFBIにより訴追された。うち2名は欧州にて逮捕されたことがわかっている。

 一味は、大量の半導体をロシアへ密輸しようとした。

 また一味は、数億バレルのベネズエラ産原油を、ロシアと中国へ密輸出しようとした。買い手はロシアのアルミニウム精錬会社だが、その会社は北京の石油系大企業の支配下にあるものだという。』

NSCのジョン・カービィが定例記者会見で木曜に指摘。

NSCのジョン・カービィが定例記者会見で木曜に指摘。
https://st2019.site/?p=20492

『AAMER MADHANI 記者による2022-10-20記事「Iranian troops are in Crimea backing Russian drone strikes, US says」。

    NSCのジョン・カービィが定例記者会見で木曜に指摘。

 少人数のイラン人部隊がクリミアに入っている。そしてロシア人につきっきりで、国産の特攻ドローンの操縦法を指南しているところだと。

 ※雑報によると、IRGC(イラン革命防衛隊)が、国産の「Meraj-521」という、「スイッチブレード300」の類似品を、訓練に使い始めた。

弾頭重量は500グラム~1kg、滞空5分~15分可能、最大特攻レンジは5kmだそうだ。』

スウェーデンの各地で、路傍に設置されているスピード違反取締り用の無人撮影機が100基以上も破壊される事件が…。

スウェーデンの各地で、路傍に設置されているスピード違反取締り用の無人撮影機が100基以上も破壊される事件が…。
https://st2019.site/?p=20492

『2022-10-20記事「Swedish speed cameras increasingly stolen, possibly for Russian drones」。

    ことしの8月末からこのかた、スウェーデンの各地で、路傍に設置されているスピード違反取締り用の無人撮影機が100基以上も破壊される事件が相次いでいる。
 どうやら、ロシア人がそこから赤外線カメラを回収して、無人偵察機「オルラン-10」に組み込んでいるらしいと分かってきた。

 このスピード取締り装置は、1基が25万クロネ(2万2700ユーロ)もするのである。』

プーチンが北朝鮮からストック弾薬を大量調達する方法は簡単だ。

プーチンが北朝鮮からストック弾薬を大量調達する方法は簡単だ。「オファーを断るなら、韓国へ闇ルートでロシア産の核物質を売り渡す」と脅すだけでいい。
https://st2019.site/?p=20492

『韓国も核武装をしたくてたまらない国だ。もし、個人ルート/闇法人ルートで濃縮ウランや精製プルトニウムをロシアから取得できるものなら、必ずそれを取得し、しかも米政府に対しては、韓国政府は、その行方について、しらばっくれ続けるだろう。

 このようにして中東と極東に核兵器が拡散すれば、米国はそれが惹き起こす混乱への対処に外交資源を割くしかなくなり、「対露」には集中が不可能になる。

 いまさら韓国が核武装したところでロシアにはどうでもいい話。それよりむしろ、米国を疲れさせ、中共を牽制し、北鮮には弾薬在庫を吐き出させしめ、プーチン権力が時間稼ぎできるメリットがまさる。これによって、プーチンには、得することしかない。
 だったら、これをやらない理由はないよね?』

米軍の「中央コマンド」の司令官は、2022-4-1に変わっている。

米軍の「中央コマンド」の司令官は、2022-4-1に変わっている。
https://st2019.site/?p=20486

『Lolita C. Baldor 記者による2022-10-20記事「Top US general in Middle East on rare visit to nuclear-armed sub」。

   米軍の「中央コマンド」の司令官は、2022-4-1に変わっている。前は海兵隊のマケンジー大将だった。今は陸軍のクリラ大将である。

 その陸軍大将が、オハイオ級のSLBM発射原潜である『ウェストヴァジニア』を洋上に訪問し乗艦(それもなんと8時間)するという椿事。

 どの海面だったのかは秘密にされている。
 が、これがロシアとイランに対する核牽制のパフォーマンスであることは言うまでもない。

 時しもNATOは核演習をスタートしている。それにも〔おそらくインド洋で〕合わせた。

 ※予言しよう。プーチンに残されたオプションは、イランに「核武装」をさせることだ。

さすがに爆弾そのものを譲渡すれば、世界から非難囂々となるのは必至だから、高濃縮ウランや中性子ブースターといった「素材」「パーツ」をこっそりと渡すことになるのではないか。

さすれば《イランは独力で原爆をこしらえた》と強弁できる余地が、わずかばかり残される。

もしもこの闇プロットが動き始めたならば、イスラエルとしては、その物資移転を阻止するために、早目にプーチン個人を政界から除去するというオプションしか残るまいと思う。』

[FT]英首相退任のジョンソン氏、トラス新政権に介入も

[FT]英首相退任のジョンソン氏、トラス新政権に介入も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB062L00W2A900C2000000/

 ※ 2022年9月6日の記事だ…。

 ※ 参考になるんで、貼っておく…。

『ボリス・ジョンソン英首相は3年間にわたる波乱とスキャンダル、そして長期の暫定首相期間を経てついに6日、幼少の頃から憧れ続けてきた首相の座を降りる。しかし、ジョンソン氏がこのまま静かに政治舞台から消えていくと予想する声は少ない。
ジョンソン氏がこのまま静かに政治舞台から消えていくと予想する声は少ない=ロイター

ジョンソン氏は首相退任1年目で数百万ポンド稼ぐことができると友人らに話している。そしてジョンソン氏の友人らは同氏の盟友ジョナサン・マーランド卿の言葉を借りれば「屋根裏部屋に干し草を蓄えた」後にカムバックすることができると信じている。

平議員に戻っても大きな影響力を保持

ジョンソン氏の支持者らは同氏が議会で保守党の平議員にとどまっても、多数のメディア媒体に執筆し、保守党内で党員の強力な支持を受けて今後も英国政治に多大な影響力を保ち続けるとみている。

保守党上層部のある下院議員はジョンソン氏について「実際には首相としてはいまいちで、権力の重責を担ぐことを常に楽しんでいたわけではなかったのは周知の事実だ」と述べた上で「(首相の)座から解放されれば、本音を語るだろう」と期待する。

後任の首相となるリズ・トラス氏の陣営も、前首相をどう対処するかは極めてデリケートな問題であることを承知している。

トラス陣営が危惧するのは、1990年、首相の座を追われたマーガレット・サッチャー氏の後任のジョン・メージャー氏のような事態に陥ることだ。

メージャー氏の首相としての権力基盤は、同氏自ら「後部座席からの運転がうまい」と表現したサッチャー氏による介入によって弱体化した。サッチャー氏の発言が注目を集めたこともあり、メージャー氏は後に、サッチャー氏の行動は「耐えられない(ほどひどかった)」と語っている。

トラス氏の盟友の1人は「(ジョンソン氏による)介入の心配があるかと聞かれれば、答えはイエスだ。我々が集中すべきことは政権をしっかりと運営することだ。そうすればジョンソン時代から脱却し始めるだろう。少なくとも我々はそう願っている」と打ち明ける。

あるトラス陣営関係者は、トラス氏がジェイコブ・リースモグ氏とナディーン・ドリス氏に(新内閣の)上級閣僚ポストを提示するのは、退陣する首相に最も近い側近を「しっかり把握しておく」ための戦略の一環であると説明する。「彼らが内閣に入っていればトラス氏を追い出すことは難しくなる」

ジョンソン氏の友人らは、同氏は権力を失ったことを完全に受け入れておらず、政治的なカムバックを狙っているとみている。同氏に対して断固とした批判的立場を取り続けてきた元閣僚のローリー・スチュワート氏は、ジョンソン氏が「イタリアのベルルスコーニ元首相や米国のトランプ前大統領のような存在になるだろう」と予想する。

ジョンソン氏自身は、自らが目標として仰ぐチャーチル元首相と歴史的な類似点があるとの見方を好むだろう。チャーチルは1945年の総選挙で敗れながらも6年後に首相として見事に返り咲いている。
リコール請求でカムバックできない可能性も

しかし、これには1つ大きな問題がある。ジョンソン氏は下院の特別委員会の調査を受けているためだ。新型コロナウイルス対策の行動規制中に首相官邸などでパーティーが開かれて同氏らが参加した「パーティーゲート」問題で、虚偽発言などで意図的に議会を誤解させなかったかなどが調査の対象となっている。故意に議会を誤解させた事例にあたるという調査結果が出れば、議会への登院停止などの処分を受ける可能性がある。

ジョンソン氏が10日以上の議会への登院停止処分を受けた場合、リコール請求が可能となる。選出されたロンドン北西部のアックスブリッジとサウスライスリップ選挙区の有権者の10%以上が署名すれば、補欠選挙が実施される。ここでジョンソン氏が負ければ、2024年に予定されている次回総選挙まで同氏のカムバックの望みは絶たれることになる。

ジョンソン氏の支持者らは、特別委を「不当なつるし上げだ」とあざ笑い、おとしめようとしている。ジョンソン氏は法廷弁護士で無所属のパニック上院議員に法的助言を求めている。同卿は特別委による調査について「根本的な欠陥がある」と述べている。

ジョンソン氏の側近2人は内々に同氏に対してすぐに議員を辞めるよう求めている。特別委からの調査を避け、議員として後日議会に戻る可能性を残すためだ。

そのうちの1人は「ボリスが今議員を辞めたとしても、好きな時に簡単に議会に戻ることができる。次回総選挙までに戻ってきたいと思えば、彼に席を譲る議員はいくらでもいる」と説明する。

ジョンソン氏が議員を今辞めれば、保守党候補の当選がより確実な選挙区から出馬することも可能になる。複数の保守党戦略担当者は次回総選挙でジョンソン氏の地元選挙区が労働党候補者を選出する区になるかもしれないと予想している。
下野したほうが楽に暮らせるか

一方、ジョンソン氏は首相経験者の特権の定番である、高額な講演料や多額に上る本の前払金を受け取ることが予想される。

ジョンソン氏個人の首相在任中の資産状況は良く言ってまちまちだった。しかし講演を扱う複数の代理人によると、ジョンソン氏の首相退任後の講演料は、特に米国やアジアでは1回あたり最高で25万ドル(約3500万円)になる見通しだ。ジョンソン氏の旧友らは食後のスピーチは同氏の「支払い能力」を高める手っ取り早い方法だと言い切る。

新聞コラムニストや作家としての収入を手元資金に政治的地位を築いたジョンソン氏にとって、より大きな決断は作家として自らをどう売り込むかだろう。

ジョンソン氏は友人らに、英国の新聞・出版業界が同氏の寄稿を求めて入札合戦をしており、古巣の保守的な論調の英紙テレグラフと同紙の宿敵である英大衆紙デイリーメール、さらにルパート・マードック氏率いるメディア帝国を競わせていると語っている。デイリーメールの編集者らはジョンソン氏を熱心に支持してきた。

デイリーメールのニュース編集局で働くジャーナリストらは最近どこの「かわいそうな誰か」がジョンソン氏のコラムのために遅くまで待たなければならないかという冗談を言い合っている。ジョンソン氏は締め切りギリギリまで待たせることで知られるからだ。

一方、あるベテランのメディア幹部は、ジョンソン氏は首相退任後すぐは、書き続けなければならないコラム執筆の仕事に戻るのを嫌がり、もっと大きな目標を抱いているかもしれないと考えている。「編集長になれるのにコラムニストになるのを選ぶだろうか?」

ジョンソン氏はかつて英誌スペクテーターの編集長を務めていたとはいえ、首相を辞めた直後に編集長の椅子に座るというのは前代未聞だ。元閣僚のリチャード・クロスマン氏やジョージ・オズボーン氏は、政治家を辞めた後に雑誌や新聞の編集長に転身したが、元首相が編集長になった例はこれまでにない。

ジョンソン氏は、長期的なキャリアを選択する前に、収入面における最も大きな決断を下さなければならない。(首相時代の)回顧録をどこから出版するかである。複数の出版社幹部はジョンソン氏の回顧録について、米国のオバマ夫妻やクリントン夫妻あるいはブレア元英首相に匹敵するほどではないが、出版権を巡って熾烈(しれつ)な競争が繰り広げられ、前払い金は7桁(百万ポンド以上)に達すると予想する。

ジョンソン氏の本を長年出版してきたホダー社は、7年前にジョンソン氏に未完成の本「シェイクスピア 天才の謎解き」の前払い金として少なくとも8万8000ポンド支払っており、すでに同氏への請求権を保有している。マードック氏傘下の出版社ハーパーコリンズもジョンソン氏の回想録の出版権獲得レースに加わっている。こうした競争はこれから始まろうとしている。

ジョンソン氏の長年の支持者の一人は「(経済面などで)この先非常に悪い出来事が待ち受ける中で、公職を去ったほうがずっと楽で、報酬も高い生活を送れると感じるかもしれない」と述べた上で「しかしボリスは心の中では首相であることに完全に終止符が打たれたとは絶対に思わないだろう」と語った。

英首相官邸はコメントを控えた。

By Sebastian Payne and Alex Barker

(2022年9月5日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』

ジョンソン前首相、保守党党首選に立候補か トラス氏辞任受け=報道

ジョンソン前首相、保守党党首選に立候補か トラス氏辞任受け=報道
https://news.yahoo.co.jp/articles/6937eff879062696b85ba94e2add5dfc84730c84

『[ロンドン 20日 ロイター] – 英国のボリス・ジョンソン前首相が、20日辞任を表明したトラス首相の後任として保守党の党首選に立候補する見通しと、英紙タイムズが報じた。

タイムズ紙の政治担当エディター、スティーブン・スウィンフォード氏はツイッターで、ジョンソン氏が「国益に関わる問題について、状況を探っていると言われている」と述べた。

その後、英紙デイリー・テレグラフは、ジョンソン氏が今週末の航空便で英国に帰国すると報じた。』

中国がロシアに不発弾を投げつけると、モスクワのメディアはうめき声を上げる

中国がロシアに不発弾を投げつけると、モスクワのメディアはうめき声を上げる
https://7nines.com/china-dumps-dud-chips-on-russia-moscow-media-moans/

『(※ 原文は、英文。翻訳は、Google翻訳。)

ロシアの国営経済紙コメルサントによると、中国からロシアに出荷された半導体の故障率は、ここ数か月で 1,900% 増加しています。The Register のレポート:

匿名の情報源を引用して、コメルサントは、ロシアがウクライナに不法に侵攻する前は、輸入されたシリコンの不良率は 2% であったと述べています。

戦争が始まって以来、ロシアのメーカーは明らかに 40% の失敗率に直面しています。

不良率が 2% であっても最適とは言えません。なぜなら、多くのコンポーネントで作られた製品は、かなりの品質問題を経験する可能性があるからです。

失敗率が 40% であることは、消耗品が危険なほど目的に適さないことを意味します。

Kommersant 氏によると、ロシアの電子機器メーカーはまったく生活を楽しんでいないという。

その理由は、故障率が高いことに加えて、グレー マーケットの機器が合法的なキットと同じ速度で流れておらず、サプライ チェーンが現在ロシア国内で非常にねじれているためである.

同紙は、多くの大企業がロシアから撤退した経済制裁のせいだとしている。

グレーマーケットの流通業者やその他の日和見主義的な事業者は、ロシア企業との取引を希望する唯一の団体として残されています。

グレーマーケットの人々は、最高の顧客サービスや品質への取り組みで有名ではありません. 彼らは、当局に不平を言うと、型にはまらない出所の製品の購入者が自責の念を抱くため、それを回避します。

おそらく彼らは、代替品に簡単にアクセスできないことを知って、ロシアのバイヤーに不合格の製品を投げつけている.』

中国、政策金融でインフラ融資拡大 10月金利据え置き

中国、政策金融でインフラ融資拡大 10月金利据え置き
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM201OE0Q2A021C2000000/

『【北京=川手伊織】中国政府が政策金融機関による金融支援に乗りだした。インフラ建設や未完成マンションの工事再開を促す。通貨・人民元の下落を警戒して利下げカードを切りにくいなか、政策金融を活用して特定分野に資金を流し、景気を下支えする狙いだ。
中国人民銀行(中央銀行)は20日、事実上の政策金利と位置づける最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)の1年物を年3.65%で据え置いた。住宅ローン金利の目安となる期間5年超のLPRも年4.30%と横ばい。いずれも2カ月連続で据え置いた。

元安が追加利下げを難しくする。元は中国本土外のオフショア市場で20日、一時1ドル=7.27元台まで下げた。データを遡れる2010年以降で最安値を記録した。海外投資家主導の元売り・ドル買いが続いている。

一方、9月は銀行の企業向けの新規融資が大幅に伸びた。設備投資などに充てる中長期資金は前年同月を94%上回った。21年2月以来の高い伸びとなった。

中国国家開発銀行、中国輸出入銀行、中国農業発展銀行の政策金融機関が貸し出しを増やしているからだ。3行は7月以降、インフラ投資基金を設立し、計6700億元(約13兆8000億円)超を投じた。政府は地方のインフラ投資を景気回復の柱に位置づける。

不動産向けでは計2000億元の融資枠を設けた。不動産開発企業の資金不足で工事が中断したマンションの完成を促す。これらの物件では今夏、購入者が抗議のため住宅ローンの返済拒否を表明する動きが広がった。政府は金融不安への発展を警戒する。

政策金融を通じて政府が重視する分野への融資は増えた。ただ、新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策などで景気の先行きは不透明で、経済全体でみた資金調達の需要はなお低調だ。

人民銀行が約3200の銀行を対象にしたアンケート調査をみると、企業や家計の借り入れ需要を示す指数は4~6月、過去最大の悪化幅だった。水準も5年9カ月ぶりの低さとなった。最新の7~9月も戻りは鈍い。

なかでも個人向けの融資はマイナスが続く。住宅ローンが大半を占める中長期資金の新規融資は9月、前年同月を26%下回った。21年5月から減少傾向が続いている。

人民銀行は9月末、マンションの販売不振が続く一部都市で住宅ローン金利の下限撤廃も容認した。公的住宅ローンの金利も下げた。それでも住宅販売の書き入れ時である、10月の国慶節(建国記念日)休暇の新築マンションの販売面積は前年同期比で4割減った。

多くの国は設備資金など企業向け融資が伸びているときは景気が良いが、中国では一般的に企業向け融資が増えるときは景気が良くない。国有企業向け融資が多く、政府が国有銀行を動員して景気をてこ入れしていることを示すからだ。景気が本格回復するかどうかは個人向け融資の伸びに注目する必要がある。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Economy/China-spurs-condo-infrastructure-building-with-state-backed-lending?n_cid=DSBNNAR 』

プーチン大統領、部隊訓練を視察 動員兵を激励

プーチン大統領、部隊訓練を視察 動員兵を激励
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2100M0R21C22A0000000/

『ロシアのプーチン大統領は20日、モスクワ南東のリャザニ州の軍演習場で、ウクライナでの軍事作戦に参加する部隊を視察した。ロシア主要メディアが伝えた。併合を宣言したウクライナ東部・南部4州での戒厳令導入を受け、自身が作戦の先頭に立つ姿を国民にアピールした。

プーチン氏は同行したショイグ国防相らから、動員された兵士の訓練状況について報告を受けた。9月に開始した部分的動員に関する国民の不満沈静化とともに、戦況の悪化を理由に保守派から出ているショイグ氏更迭論を払拭する狙いがあるとみられる。

ロシアの三大テレビ局は、プーチン氏が訓練中の兵士らと言葉を交わし、ライフルを手にして自ら標的を射撃する映像を放映した。

部分的動員については招集手続きの誤りや訓練日数、装備の不足などが伝えられて国民の不満が高まっている。動員回避のため数十万人が近隣諸国に出国したとされる。

プーチン氏は今月14日、動員が「あと約2週間で終わる」と発言。首都モスクワ市とモスク

ワ州は17日に動員完了を宣言した。(共同)』

仏スペイン新パイプライン 首脳合意、エネ網強化で

仏スペイン新パイプライン 首脳合意、エネ網強化で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2100O0R21C22A0000000/

『【ブリュッセル=共同】フランスのマクロン大統領は20日、スペインのサンチェス首相、ポルトガルのコスタ首相とブリュッセルで会談し、スペイン北東部バルセロナとフランス南部マルセイユを結ぶ海底パイプラインの新設などのエネルギー網強化で合意した。パイプラインは水素の輸送を主目的とし、天然ガスの輸送は限定的とする方針。

ロシアのウクライナ侵攻後、欧州のガス輸送拠点を目指すスペインは中止していたピレネー山脈を通じてフランスと結ぶパイプライン計画の再開を訴えた。ロシア産ガスへの依存脱却を図るドイツも支持したが、フランスは採算性や環境負荷の観点から反対を貫いた。
フランスとスペイン、ポルトガルの共同声明はこの計画の放棄を確認し、3カ国を欧州連合(EU)のエネルギー網と結ぶ新たな「グリーンエネルギー回廊」をつくると表明。サンチェス氏は記者団に「3カ国だけでなくEUにとっても良いニュースだ」と強調した。

新設するパイプラインの建設では、EUからの資金調達を狙う。具体的な検討を直ちに始め、12月上旬にスペインで開催する次の3カ国首脳会談で建設スケジュールなどの決定を目指す。』

米、台湾武器提供「安保に不可欠」 中国は核戦力増強へ

米、台湾武器提供「安保に不可欠」 中国は核戦力増強へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM189HC0Y2A011C2000000/

『【ワシントン=中村亮、北京=羽田野主】バイデン米政権が台湾への武器提供を加速する。米国務省のパテル副報道官は19日の記者会見で迅速な提供が「台湾の安全保障に不可欠だ」と語った。中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は台湾統一をにらみ核戦力の強化に乗り出す構えで、対立が深まっている。

日本経済新聞(電子版)は19日、関係者3人の話としてバイデン政権が台湾への武器提供を前倒しするために米国製の武器を台湾と共同生産する案を検討していると報じた。

パテル氏は「報道について具体的なコメントをしない」と断ったが、「防衛戦力の引き渡しを可能な限り早く実行するために全ての選択肢を検討している」と強調した。米国家安全保障会議(NSC)の報道担当者は「台湾が十分な自衛力を維持するために必要な武器やサービスを提供していく」とコメントした。

中国では共産党幹部の人事を決める5年に1度の党大会が開催中だ。習近平総書記(国家主席)は16日の活動報告で、中台統一について「必ず実現しなければならないし、実現できる」と言明した。「武力行使の放棄も決して約束しない」と威嚇した。

バイデン政権は「中国が以前に比べてかなり早い時間軸で(統一を)目指すと決意している」(ブリンケン国務長官)と警戒する。

習氏は今後5年間で「強力な戦略的抑止力体系を構築する」との方針を示した。核の抑止力で米軍の介入を阻む狙いがある。

10月中旬に報道陣らに公開した指導部の実績をアピールする北京市内での展覧会でも、核戦力の強化ぶりを誇示した。小型の核弾頭を搭載できる極超音速ミサイル「DF17」を筆頭に、米本土を射程に収め10個の核弾頭を搭載できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)「DF41」を展示した。

習指導部は2012年に発足後、核弾頭を搭載できる弾道ミサイルの量産にカジを切った。防衛白書などによると、核弾頭を搭載できる弾道ミサイルの保有数は12年は196基だったが、22年に456基まで増やした。

そのうち力を入れているのが中距離・準中距離弾道ミサイルの配備で、22年は合計278基と12年の128基の2倍以上に増やした。米空母を標的にする空母キラー「DF21」と米グアムを狙える「DF26」で大半を占める。

中距離・準中距離弾道ミサイルは米原子力空母ロナルド・レーガンが拠点とする米海軍横須賀基地や米軍嘉手納基地を抱える沖縄県も射程に収めている。台湾侵攻時に救援に駆けつける米空母やその基地への攻撃を想定しているとみられている。

米国はロシアと19年まで中距離核戦力(INF)廃棄条約を結んでいた影響で、保有はゼロ。台湾情勢に直結するだけに習指導部はさらに保有数を上積みするとみられる。

潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)も22年で72基と12年の6倍に増えた。最大射程8000キロメートルの「JL2」にグレードアップし、弾道ミサイルを搭載できる6隻の原子力潜水艦で運用する。原潜は水深の深い南シナ海などで隠密行動する。有事に米本土を奇襲できる体制を整え抑止力とする戦略だ。

中国が保有する核弾頭は現時点で約350発。米国防総省は中国は27年までに最大700発に増やし、30年までに少なくとも1000発の核弾頭を保有すると分析している。
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

川島真のアバター
川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
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分析・考察

習近平政権は元来2049年の「中華民族の偉大なる復興の夢」の実現の時に、台湾統一することを目標とし、中間地点として2035年を設定していた。

アメリカは、この目標より早く中国が台湾統一を行おうとすると見ているのだろう。

ただ、核弾頭増加や弾道ミサイルなどの増強は単に台湾統一だけを目指してのことではない。

中国は、軍事、安全保障面も含めて2049年にアメリカを追い越すことを目標としている。
世界的な核兵器のバランスを見れば、依然として米露が突出しているが、それを打破すべく中国が名乗りをあげ、米中が中心となるよう舵を切ったということだ。それに伴って「先制不使用」政策も調整することが予想される。

2022年10月21日 6:43 』

不名誉な退陣、後継者争いに火

不名誉な退陣、後継者争いに火 ライオネル・バーバー氏
英フィナンシャル・タイムズ前編集長
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN20DX40Q2A021C2000000/

『リズ・トラス氏が、英国史上最も短い44日という在任期間で首相の座を辞した。彼女の不名誉な退陣は、内閣の反乱、政府の予算計画に対する市場の信頼の危機、与党・保守党内の規律の完全な崩壊が引き金となった。
英フィナンシャル・タイムズ前編集長 ライオネル・バーバー氏

トラス氏のやむを得ぬ辞任は、英国がこの6年間で5人目の首相を迎えることを意味する。このような政治的交代は英国では戦後前例がなく、英エコノミスト誌は1945年以来59人の首相を擁したイタリアになぞらえて「ブリタリー(訳注:英国とイタリアを組み合わせた造語)」と皮肉った。

保守党の国会議員らは来週末までに後継者を決めたいと考えているが、その結果は不透明だ。 派閥だらけの党内がさらに混沌に陥れば、早期の総選挙の可能性も高まるが、ほとんどの世論調査で野党・労働党が25~30ポイントリードしていることを考えると、保守党は大敗を喫する可能性がある。

トラス氏の後任には、インド系の移民2世で前財務相のリシ・スナク氏(42)が最有力候補となっている。白人以外の英国人として初めてダウニング街(英首相官邸)入りを果たせば(米国で初めてアフリカ系のオバマ大統領が就任した時のような)「オバマ・モーメント」を演出するだろう。

ただ、スナク氏の持つチャンスはイーブンにすぎない。今年初め、スナク氏が人気者のボリス・ジョンソン氏を追い出す動きを主導したことに、多くの国会議員は憤慨している。しかも、内部関係者によれば今回は、彼は自ら立候補するというよりも、指名を待っている状態だ。

スナク氏の裕福さに疑問を投げかける議員らもいる(妻のアクシャタさんは、インド人大富豪でインドのソフトウエア大手インフォシスの共同創業者であるナラヤナ・ムルティー氏の娘だ)。彼らはあからさまに「金持ちのリシ」に次の総選挙で勝つだけの人気はあるのか、と問いかける。

一方で、現在休暇中ではあるものの、事態を注視しているボリス・ジョンソン氏の復帰も否定できない。 彼は倫理的な問題で辞任に追い込まれたことに深く憤っており、戦後のフランス大統領で、政治亡命ののちに1958年に第5共和制下で就任したシャルル・ド・ゴール氏を引き合いに出している。

トラス氏の辞任は、英国にとってこれ以上ないほど危険の多い時期に行われた。政府は二桁のインフレ、生活費の危機、70年代をほうふつとさせる公共部門のストライキの波と闘っている。英国は、ロシアの侵攻に対抗して防衛戦を展開しているウクライナの武装化で主導的な役割を担っている。

リズ・トラス氏は(英国初の女性首相だった)サッチャー氏を手本としたが、「鉄の女」のコミック版であることを証明した。コミュニケーションに不器用な彼女は、能力ではなく忠誠心に基づいて内閣のメンバーを選んだ。

彼女の最初の主立った政治的な行動、すなわち400億ポンド(約6兆7400億円)以上の恒久的な財源不足の減税を約束する小型補正予算は、金融市場をおびえさせた。生き残りをかけ、盟友だったクワシ・クワーテング財務相を更迭したことも、彼女の立場を弱めただけだった。

政治評論家のアンドリュー・ニール氏は「財務相が首相と意見が合わないことは何度もあったが、完全に意見が一致していたにもかかわらず、財務相を解任したのはトラス氏が初めてに違いない」と書いている。

先週末までには、トラス氏は名ばかりの首相になっていた。ジェレミー・ハント新財務相が減税計画をずたずたに引き裂き、ひどく不人気な歳出削減を発表するのを見守らざるを得なかったのだ。あるコメンテーターは言った。「イデオロギーに対する正統派の勝利だ」

トラス氏の辞任に先立つ今週の議会での光景は、どう考えても異常だった。 事実上の不信任投票を前にした乱闘と怒号、後に撤回された党のトップレベルの辞任、移民問題で対立したスエラ・ブレーバーマン内相の強制的な辞任。

今回の政府再編は、英国が欧州連合(EU)を離脱し、約50年にわたる深い貿易関係を断絶させ、保守党内の政治的分裂をもたらしたブレグジットによる経済的ダメージの再評価と時を同じくして行われた。

失われた成長のコストは国内総生産(GDP)の最大4%ともいわれており、新型コロナウイルスの大流行やウクライナ戦争によるエネルギー価格の高騰で財政が逼迫するなかで英国が切望していた税収が奪われたことになる。

しかし、コメンテーターたちは、2008~09年にかけて世界で起きた金融危機にさかのぼり、英国の生産性の低さを指摘する。 トラス氏とクワーテング氏の小型補正予算は、供給サイドの改革、人材育成への投資拡大、大胆な減税でこの問題に取り組もうとしたものだ。

皮肉なことに、低金利の時代が終わった今、英国の経済的な病に対する部分的な診断ではトラス氏とクワーテング氏は間違っていなかったのだ。だが、その不器用なコミュニケーションと、選挙での信任がない中での傲慢な権力の主張は、二人の破滅を確実なものにした。

次の保守党の首相は、スナク氏であれ(辞退した)ハント氏であれ、ペニー・モーダント元国防相であれ、ダークホースのグラント・シャップス前運輸相であれ、同様に厄介な問題に直面することになる。総選挙なしに、断固とした行動をとる権限があるのだろうか?

とはいえ、13年の政権の後、多くの有権者は、疲弊した保守党はしばらく野党として過ごすのがふさわしいと結論づけるだろう。

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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
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ひとこと解説

2010年から続く保守党政権(第1期は自由民主党との連立)は、世界金融危機と国内の住宅バブル崩壊で悪化した財政健全化のための厳しい歳出削減からスタートした。

16年の国民投票でEU離脱を選んだ背景には実質所得の伸び悩みがあった。

その原因としては、EUやEU市民の流入より、厳しい歳出削減の影響の方が大きかった。

EU離脱の経済への悪影響を離脱を推進した保守党の政権は認めることができない。

EU離脱を巡る混乱は保守党内の亀裂も深めた。

政権の座を降りるべき時が来たとの見立てに賛成だ。

一連の混乱で、英国は日本の先行事例なのか問われる機会も増えているが、代替的な選択肢があるという点は日英で異なる。

2022年10月21日 6:56 (2022年10月21日 7:00更新) 』