米国、台湾と武器共同生産へ協議 中国抑止へ提供前倒し

米国、台湾と武器共同生産へ協議 中国抑止へ提供前倒し
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1600L0W2A011C2000000/

『【この記事のポイント】
・携行型の防空システムや弾薬を念頭に
・ウクライナへの武器供与で在庫乏しく
・関係国にも武器支援を働きかけへ

【ワシントン=中村亮】バイデン米政権が米国製の武器を台湾と共同生産する案を検討していることが分かった。関係者3人が日本経済新聞の取材で明らかにした。携行型の防空システムや弾薬を念頭に置く。台湾有事に備えて協力して生産能力を高める。武器提供を早めて中国抑止を急ぐ。

ブリンケン米国務長官は17日、西部カリフォルニア州で開いたイベントで「中国は以前に比べてかなり早い時間軸で(台湾との)再統一を目指すと決意した」と指摘した。22日まで開く第20回共産党大会で中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は異例の3期目を決めるとみられ、台湾への軍事的圧力をさらに強める可能性がある。

【関連記事】台湾に武器提供加速へ 米国務省「全ての選択肢を検討」

米台の共同生産をめぐって、関係者の一人は初期段階の協議が始まったと認めた。米国の防衛企業が技術供与をして台湾で武器を製造したり、台湾でつくった部品を使って米国で生産したりする案がある。別の関係者は「2023年を通して詳細を詰めることになるだろう」と語った。

米大手防衛企業が加盟する米国・台湾ビジネス評議会は「米国の弾薬や(戦闘機や艦船などの)プラットフォームについて米国と台湾が共同生産したことはない」とコメントした。米国の歴代政権は機密情報が漏れるリスクを懸念し、米国製武器の共同生産に慎重だったとみられる。

バイデン政権が共同生産を検討するのは、引き渡しを早めるためだ。一般的に米政府が武器売却を承認してから引き渡しが完了するまで数年から10年程度を要するケースが多い。一方で米軍は中国が27年までに台湾侵攻能力を取得すると分析しており、台湾の自衛力向上に残された時間は限られる。

ウクライナ向けの武器供与が急増し、米国だけで世界の武器需要を満たすのが難しくなった事情もある。米戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンシアン上級顧問は9月中旬のリポートで、携行型の防空システム「スティンガー」や高機動ロケット砲システム「ハイマース」の米国の在庫について「乏しい」と指摘した。

スティンガーは米防衛大手レイセオン・テクノロジーズ、ハイマースは同ロッキード・マーチンがそれぞれ製造している。

台湾の国防部(国防省)は5月、スティンガーについて26年3月までに順次受け取る計画だったが納入ペースが遅れる可能性があると明らかにした。自走りゅう弾砲は納入の遅れを理由に別の兵器に調達を切り替える構えだ。ハイマースの受け取り完了は27年、対艦ミサイルシステム「ハープーン」は28年ごろとみられている。

日経が入手した22年春の米議会の資料によると、米政府が19年7月以降に売却を承認した案件では少なくとも10件の武器の引き渡しが完了しておらず、規模は米政府の見積もりで130億㌦(約1兆9000億円)を超える。

台湾の国防部は日経の取材に「米国に台湾への武器納入を急ぐよう要請していく」と述べた。

バイデン政権は台湾の自衛力強化を加速させるため関係国にも台湾への武器支援を働きかける構えだ。台湾向けの武器や関連部品の提供について意向調査に着手した。

主要7カ国(G7)は台湾海峡の平和と安定を維持する立場で一致し、武器支援に前向きな意見が出てきた。英国のトラス首相は9月、CNNテレビのインタビューで「台湾が自らを防衛できるように同盟国と協力する決意だ」と強調した。フランスはフリゲート艦や戦闘機について台湾との取引実績がある。

英国の国際戦略研究所(IISS)によると、台湾の武器輸入元は16~20年に全て米国だった。台湾と国交を持たない欧州やアジア諸国による武器支援に中国が激しく反発する公算が大きく、各国は難しい判断を迫られる。

ウクライナをめぐっては米国が武器支援に関する会合を主催し、50カ国程度が参加している。月1回程度の会合を通じ、ウクライナの要望を聞き取って効率的な支援に役立てる。最近は10月12日に開き、ロシアによる大規模なミサイル攻撃を踏まえて防空システムの供与を加速させる方針を確認した。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/Taiwan-tensions/U.S.-in-talks-with-Taiwan-to-co-produce-American-weapons-sources?n_cid=DSBNNAR 

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益尾知佐子
九州大学大学院比較社会文化研究院 教授
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分析・考察

かなりインパクトのある記事です。現状を踏まえればさもありなんですが。

現在、どの国も相手の腹の探り合いです。習近平氏は台湾の武力統一の可能性を捨てていませんが、逆に必ずやると言っているわけでもありません。ただ、こういうニュースが大きく出ると、習氏の性格上、必ず強く対抗措置を打ち出します。

問題は、米国の台湾へのコミットメントがどの程度、断固たるものかではないでしょうか。

先日の米国家安全保障戦略は、中国とはそんなに対抗したくないんだけどと言っているように私には読めました。米国が中国と緊張を高めたあとに梯子を外すなら、台湾も・そして隣の日本もたまりません。米国の内政の不安定さが大きな懸念要因です。

2022年10月19日 20:35 (2022年10月19日 20:37更新) 』