インドネシアの憂鬱 G20、大国対立で機能不全

インドネシアの憂鬱 G20、大国対立で機能不全
きしむ世界、揺らぐ新興国(4)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM074MU0X01C22A0000000/

『「20カ国・地域(G20)には橋をかけなければならない大きな溝がある」。12~13日に米ワシントンで開いたG20財務相・中央銀行総裁会議の閉幕記者会見。議長のインドネシア財務相、スリ・ムルヤニは共同声明を採択できなかったことに無念さをにじませた。

G20財務相会議で共同声明の採択を見送ったのは、4月、7月に続いて3回連続。G20はロシアのウクライナ侵攻をめぐって分断が進む世界の縮図となり、日米欧とロシアが非難の応酬をする光景がお決まりだ。世界の国内総生産(GDP)の約8割を占める「国際経済協調の第一のフォーラム」としての役割はもはや期待できない。

対立に追い打ちをかけるのが、急ピッチの米利上げを背景に加速するドル高だ。スリは世界経済について「危険な状態」と強い危機感を示したが、ドル高に端を発する市場の波乱を防ぐ政策協調は見えない。

米大統領のジョー・バイデンは「ドルの強さを懸念していない」と発言。「問題は他国の経済成長や健全な政策の欠如だ」と突き放し、自国のインフレ退治を優先する姿勢を鮮明にした。金利上昇とドル高で外貨建て債務が膨らみ、デフォルト(債務不履行)の危機に直面する新興国との溝は広がる。

G20首脳会議(サミット)は2008年のリーマン・ショック後の金融危機時に、新興国を含む主要国の首脳が集まったことを契機に定期開催されるようになった。各国が足並みをそろえて危機を回避した成功体験を持つ。だが世界が分断される今回の危機で利害はぶつかり、肝心な時に機能不全に陥る。

議長国インドネシアの大統領、ジョコ・ウィドドは11月に開くG20サミットに向け、空中分解を食い止めようと奔走する。「喜んで対話のかけ橋になる」。6日には、G20の関連会議でこう強調した。インドネシアは世界最大のイスラム教徒人口を持ち、G20の構成国として世界での発言力を高める外交戦略を掲げる。

6月下旬にはロシアのウクライナ侵攻後、アジアのリーダーとして初めてロシアとウクライナを訪問。両国の大統領、プーチン、ゼレンスキーと会談し、橋渡し役を買ってでた。大国に翻弄されながらも、国際枠組みを維持しようとするジョコの憂鬱が続く。(敬称略)
清水孝輔、木寺もも子、久門武史、地曳航也、志賀優一、宮本英威が担当しました。

【ルポ迫真「きしむ世界、揺れる新興国」記事一覧】

・「我々は米国の裏庭ではない」 中南米に左派政権相次ぐ
・トルコは曲芸師か 綱渡りの利下げ強行、通貨安打撃も
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高橋徹
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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ひとこと解説

東南アジアでは11月半ばに米中や日本、ロシアなど域外大国も参加する重要な首脳会議が「惑星直列」のように連なります。

カンボジアでの東アジアサミット、インドネシアのG20、そしてタイでのAPECです。

中でも重みがあるのはG20。ジョコ大統領は6月にアジアの首脳として初めてロシアとウクライナを訪問しましたが、その後にシャトル外交などの動きは伝えられていません。

単にG20への出席を呼びかけただけに終わっており、「橋渡し役」とはとても呼べない状況です。ジョコ氏は2014年の就任時から「外交は苦手」と漏らしてきましたが、残り任期があと2年に迫るなか、議長国としての手綱さばきが注目されます。

2022年10月20日 7:25 』