イタリアが右派政権になってもEUは恐れていない

イタリアが右派政権になってもEUは恐れていない
岡崎研究所
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28198

『9月25日のイタリアの議会選挙の結果、ジョルジャ・メローニが率いる右派の連立政権が成立する見込みとなった。選挙前に書かれたものだが、エコノミスト誌9月24日号の社説は、欧州はどの程度メローニを怖れるべきかを論じている。主要点は次の通り。
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・リベラル派は、メローニが不法移民と「ウォークのイデオロギー」(注:差別、偏見、不公平への敏感な認識や反応)を叩いていることを恐れている。

・銀行家は、メローニが欧州連合(EU)と事を構え、改革に甘く、イタリアの山のような債務(2兆7000億ドル、国内総生産(GDP)比150%)のコントロールを失うことを心配している。 

・彼女の連立政権にはシルヴィオ・ベルルスコーニ(フォルツァ・イタリア)とマッテオ・サルヴィーニ(同盟)を含むが、両名は信頼性に欠けブリュッセルとは微妙な関係にある。 

・メローニのリスクは明白だが、冷静であるべき理由はある。

・妊娠中絶やゲイの権利などの社会政策を見直す動きはないし、不法移民の弾圧は予想されるものの、これは国際法とEUのルールによって制約される。 

・イタリアには多くの方法で制約が課されており、間接選挙で選ばれる大統領と憲法裁判所長官という完璧な中道派の両名が演ずる役割もその一つである。

・メローニは、EUの加盟国であることがイタリアで受けが良いことは理解している(国民の71%がユーロを支持)。メローニはEU復興基金による2000億ユーロの支援に必要な改革に従うことを既にコミットしている。彼女はその改定を求めてはいるが、「欧州委員会と合意の上で」と言っている。破談になると資金を失う。欧州中央銀行(ECB)の新たな国債買い入れファシリティによる支援の適格性を失うことも意味しよう。そうなると市場で危機を招くことはメローニも知っている。

・メローニのもう一つの疑う余地のないプラスは、サルヴィーニとベルルスコーニと違ってプーチンのファンではないことだ。ウクライナ侵攻以来、彼女はウクライナおよび北大西洋条約機構(NATO)に対して不動かつ強固な支持を表明している。

・メローニはEUを必要としている。イタリアはEUの助力なくしてその債務を背負うことは出来ないからだ。欧州は、仲違いがイタリアとEUの双方にとって如何に損害が大きいかを内々警告する一方、メローニを選んだイタリアの民主的決定を平静に受け入れ、彼女が成功するよう助けなければならない。

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 9月25日の選挙でジョルジャ・メローニと彼女のFdI(イタリアの同胞)は決定的な勝利を収めた。彼女が率いる右派連合は上下両院でそれぞれ決定的な多数を獲得したのみならず、FdIが右派連合においてLega(同盟)とFI(フォルツァ・イタリア)を圧倒した。

 FdIの得票率は2018年の4%が26%に急伸した。民主党が中道左派の連合を組織することに失敗し、分裂した選挙戦を戦ったことも右派連合の圧勝の要因として指摘されている。中道左派がまとまっても右派連合の勝利は動かなかったであろうが、小選挙区の選挙(小選挙区比例代表混合制であり、いずれの院でも議席の37%が小選挙区制に配分されている)でより強力に右派連合に対抗し得たはずである。』

『これにより、極右政党が率いる右派連合が政権を獲得し、メローニが首相に就くことが確実視されている――政権発足は10月後半になるらしい。しかし、そのことはイタリアが過激な政策に傾斜することを意味しない。

焦点は経済政策

 メローニがネオ・ファシストのイタリア社会運動にルーツを有することをもってファシズムを語ることは全くの誤りである。彼女はFdIを伝統的な保守の政党に脱皮させることを目指し、保守のナショナリストのアジェンダで選挙戦を戦い、その政治的立場に対する国際的な懸念を払拭することに努力したと認められる。西側陣営における揺るぎない立場とEUの統合プロセスに対する支持を表明したのはそれである。

 焦点は経済である。エネルギー価格の高騰とインフレの進行でこの冬は困難に遭遇する。年内に来年度の予算編成を行う必要もあるが、減税や歳出拡大(エネルギー料金負担軽減、年金、子育て支援)の右派連合の公約もあり、野放図な財政運営となれば金融市場に跳ね返る――右派連合の勝利に反応して9月26日、国債利回りは一時4.5%近辺(2013年10月以来の高水準)まで上昇した。

 EU復興基金からの支援の継続を確保するためにはドラギの改革を推進する必要があるが、メローニが主張する復興計画の改定に関するEUとの交渉が焦点となる。メローニは財務相にテクノクラートを起用することを模索しているとの報道があるが、右派連合内部での紛争を極力避けるためにも有効な策と言うべきであろう。

 イタリアの安定性および西側におけるイタリアの地位の安定性に対する最大の脅威はメローニではなく、むしろサルヴィーニだとする見解がある。サルヴィーニもベルルスコーニもEUに対する立場は気紛れで信頼性を欠く。両名ともプーチンに近く、懸念を抱かせる。

 メローニが両名と妥協を強いられる状況となれば有害である。その意味で、メローニが選挙で両名の党を圧倒し得たことは、彼女が少なくとも短期的には政権運営の主導権を握ることを可能とし、イタリアと西側にとって少々の朗報と言い得るのではないかと思われる。』