アルメニア対アゼルバイジャンとイランの国境情勢…。

アルメニア対アゼルバイジャンとイランの国境情勢…。
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『複数のニュースを編合して、アルメニア対アゼルバイジャンとイランの国境情勢を整理しておく。誰も気にしてなさそうなので。

 イランはコーカサス山地において、アゼルバイジャンならびにアルメニアと国境を接している。1991年から94年にかけての「第一次ナゴルノカラバフ戦争」の直後、「アルメニア軍占領区」とイランの国境線は138kmあった。しかし2020年の「第二次ナゴルノカラバフ戦争」でアゼルバイジャン軍が係争領土を奪い返した結果、イランとアルメニアの国境はわずか40kmにまで縮小した。

 陸封国であるアルメニアにとって、イランとの接壌国境がまったくゼロになることは、経済的な悪夢だ。というのは宿敵アゼルバイジャンはトルコの兄弟国のようなものなので。

 イランも、第二次カラバフ戦争より後は、アルメニア国境を気にかけざるをえない。石油を密輸出したいイランにとっては、アルメニア→ジョージアというルートで黒海の港までアクセスができるオプションは、捨てられない(トルコ領経由は問題外)。

 アルメニアは人口たったの300万。面積でもアゼルの三分の一でしかない。トルコとの国境には、アララト山がある。しかしアルメニア人はその山を通ってトルコに入ることは許されない。

 2020の停戦いらい、ロシア軍が平和維持軍として「ラチン回廊」に駐留してきた。
 アルメニア本国と、飛び地のナゴルノカラバフを連絡する道路である。

 2020の第二次ナゴルノカラバフ戦争では、ロシアはイラン領空を経由してアルメニアに武器弾薬を援助した。

 しかし第二次カラバフ戦争の結果、アゼルは「ザンゲズル回廊」を設定しようと欲するようになっている。すなわち40kmの国境帯を支配して、東西打通してしまおうというのだ。露軍が抽出されて手薄になったので、これが実現しそうだった。

 2020年のカラバフ停戦協定の第9条で、アゼルバイジャンにはナヒチュヴァン(アルメニア領内にある飛び地の自治区)への連絡通交が許容された。イランはそれに文句を言ってない。

 過去30年、バクーを首都とするアゼル本国と、ナヒチュヴァンのあいだの、人や商品の行き来は、国境南側のイラン領を経由するしか、なかった。

 アゼルは、トルコの支持を受けて、この回廊を直結させたい。しかしそれは、アルメニアからイラン接壌帯を奪うということになる。

 イランは、それを許容するつもりはない。ハメネイはエルドアンに7月に面談してそれを伝えてある。

 回廊がアゼルのものになると、トルコが直接にコーカサスにアクセスできることになる。トルコはNATOメンバーである。これはイランやロシアにとって、とんでもないことだ。

 ザンゲズール回廊はトルコとアゼルバイジャンを最短で結ぶ交通路。従来、トルコが中央アジアにアクセスするためには、トラックは、イラン領を通る必要があった。イランはそのトラックから通行税を徴収していた。

 2022-9に、またアゼルとアルメニアは戦闘再開した。双方で300人近く死んだらしい。イランはこのときアルメニア国境にイラン軍およびIRGC(イラン革命防衛隊)を5万人展開した。露軍の不在を、イラン軍が補った形だ。イランはロシアに恩を売った。

 さらにイラン軍の参謀総長は9月22日、「イラン対イラク戦争」記念日の軍事式典に臨んで演説し、もしアゼルが回廊打通に乗り出せばイランは参戦すると宣言して、交渉による解決を促した。

 イランは、アゼル経由ロシアというルートも持っている。どちらの交易路も保持するのがイランの国益だ。ただしアゼルは、イランの宿敵のイスラエルと結託している。

 もうひとつ。「アラス川水資源問題」がある。この川はアゼルとイランの国境線を成しているが、源頭がトルコにある。アゼルが回廊を支配すると、上流と中流でアゼルが水を消費してしまえるようになる。

 イランの農民は近年、水不足で苦しめられている。それが改善されずに悪化するなら、どんどん反政府的になってしまうだろう。

 10月6日に、プラハで会談がセットされた。フランス、トルコが立会い、アルメニアとアゼルバイジャンの再燃戦争を沈静化させることになった。マクロンとEUが主導している。

 ロシアが面倒みてくれなくなった小国のアルメニアが、ロシア抜きの多国間合意に入った。イランは会議には出ていないが、アゼルとトルコを軍事力で牽制した。ロシアの影響力だけが縮小している。』