ウクライナ軍支える「宇宙資産」 通信・情報収集、砲撃に活用―スターリンク支援めぐり波紋

ウクライナ軍支える「宇宙資産」 通信・情報収集、砲撃に活用―スターリンク支援めぐり波紋
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022101800696&g=int

『【ワルシャワ時事】米実業家イーロン・マスク氏がウクライナに提供する衛星インターネット通信サービス「スターリンク」の支援中止を示唆し、波紋を呼んだ。ロシアに戦力で劣るウクライナ軍にとって、抵抗と反転攻勢を支える基盤がスターリンクだったからだ。その後、マスク氏が無償提供の継続を表明したことで、事態は沈静化。軍事専門家は「人工衛星などの宇宙アセット(資産)を活用できるかどうかが戦争の行方を左右する」と指摘する。

対応一転、無償提供を継続 ウクライナ支援の衛星通信―マスク氏

 ◇端末2万台供与

 世界中から集めた寄付で50台以上のスターリンク端末を購入し、ウクライナ軍に提供してきた西部リビウ在住のディムコ・ズルクテンコ氏は、スターリンクが戦いの在り方を一変させた「真のゲームチェンジャーだ」とツイッターに投稿した。

 ロシアは2月24日の軍事侵攻開始の約1時間前、米通信衛星サービス企業の地上施設などにサイバー攻撃を仕掛けた。大規模な接続障害が発生し、標的企業の通信サービスを利用していたウクライナ軍だけでなく、欧州諸国にも影響が及んだ。

 ウクライナのフェドロフ副首相兼デジタル化担当相はその2日後、ツイッターを通じてマスク氏にスターリンク提供を呼び掛けた。マスク氏は素早く反応。翌日にウクライナでのサービスを始め、これまでに端末2万台を供与した。

 「状況が急速に変わる前線では携帯電話が使えず、無線の電波も届かない」とズルクテンコ氏。スターリンクは部隊同士をつなぐ「命綱」だっただけでなく、インフラを破壊された地域の通信手段として復興の土台となった。

 ◇技術からデータに

 ウクライナ軍の反攻を支えるのは、スターリンクだけではない。米国は開戦以降、民間企業からの衛星画像調達を2倍以上に拡大。各地に展開するロシア軍部隊の構成や位置情報を「丸裸」にし、ウクライナへ提供した。

 偵察部隊やドローンが収集した情報は、スターリンクを通じてクラウドに送信される。その上で、人工知能(AI)が最適な攻撃手段を判断し、前線の部隊に標的情報を提供。宇宙システムやデータを活用してロシア軍の戦線の弱点をあぶり出し、米軍が提供した高機動ロケット砲システム(HIMARS)などの全地球測位システム(GPS)誘導弾で、的確な打撃を与えることが可能になった。

 片岡晴彦元航空幕僚長は「ロシアのウクライナ侵攻では、通信や偵察・監視に限らず作戦運用から情報戦に至るまで、あらゆる局面で宇宙システムが重要であることが実証された」と指摘。「戦力の優位性を決めるのは『技術』から『データ』に変わりつつある」として、日本も宇宙安全保障の能力向上が不可欠だと訴えている。 』