習近平氏「毛沢東超え」を示唆 党大会報告に潜む狙い

習近平氏「毛沢東超え」を示唆 党大会報告に潜む狙い
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM163VD0W2A011C2000000/

 ※ 『「プロレタリア階級は全人類を解放して初めて自己を解放できる」』…。

 ※ すこぶる、メーワクな、話しだ…。

『中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)は16日に開いた第20回党大会で3期目政権をにらんだ活動報告を読み上げた。内容からは自らを毛沢東を超える「革命指導者」に位置づける思惑がにじむ。

5年前の党大会時と比べると、報告の構成には2つの変化があった。1つは13だった項目が15になったこと。集権強化のために確立した「国家安全」と「法による統治」という2制度に関する項目が追加された。

もう1点、中身ががらりと変わったのが「思想」に関する項目だ。

5年前は「新時代における中国の特色ある社会主義思想」、いわゆる「習思想」に関する項目があったが、姿を消した。

代わりに「マルクス主義の中国化の新境地を切り開く」との項目が登場した。読み上げる順番も「党の使命」という重要項目を飛び越えて2番目に躍り出た。報告の冒頭は「過去5年と今後10年」に関する全体報告なので、個別項目としては最優先されたといえる。

これが何を意味するのか――。読み解くには、習政権下で党がじわりと広めてきた習氏の”決まり文句”に注目する必要がある。「習近平総書記はマルクス主義の政治家、思想家、戦略家」というものだ。習氏を「マルクス主義を現代に実現する直系の後継者」と位置づける狙いがある。

中国共産党はイデオロギーを重視する。だからこそ、こうした認識は鄧小平が敷いた集団指導体制を覆し個人を崇拝し終身指導者となる道を正当化する根拠になり得る。

加えて習氏の年齢の問題もある。習氏は今年すでに69歳に達した。

「2期10年」という国家主席の任期は2018年の憲法改正で撤廃されたものの、党内には党大会時に68歳以上なら指導部から引退する「七上八下」という慣例もある。もし習氏が「マルクスの後継者」ならば、慣例を破って続投する理由としては十分に成立する。

今回の報告における「新境地を切り開く」の主語は言及こそないものの習氏にほかならない。

習氏は5年前の党大会で自身の「新時代における中国の特色ある社会主義思想」を説明した際、こう表現した。「マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、『三つの代表』重要思想、科学的発展観の継承であり発展だ」。三つの代表は江沢民(ジアン・ズォーミン)元国家主席、科学的発展観は胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席が提唱した概念だ。

今回の活動報告からは習氏が思想面で引き継いだという「先人の積み上げ」への言及は毛沢東思想も含めて消えてしまった。すべてを飛ばしてマルクスと習氏が直接つながっているかのようだ。
中国共産党建党100年の記念式典に際し天安門の上に立つ習近平国家主席(北京市、21年7月1日)=ロイター

マルクス主義の中国化は、そもそも毛沢東が提唱したものだ。その意味では毛と習氏は同列といえる。だが、習氏は活動報告で「新たな境地を切り開く」と打ち出し、毛が示した先をめざす意思をにじませた。

それだけではない。習氏は活動報告で「中国式現代化」という社会経済モデルを「人類の現代化実現に向けた新たな選択肢」と位置づけ世界に広めていく可能性を示唆した。「武力行使の放棄を約束しない」と台湾統一への強い意思も示した。

この2つは、毛が達成できなかった悲願への再挑戦といえる。

「プロレタリア階級は全人類を解放して初めて自己を解放できる」。毛はマルクス、エンゲルスの「共産党宣言」を基とするこの言葉を好んで使った。全人類の解放とは世界各国での社会主義革命を意味する。多くの人にとっては単なる”レトリック”だが、毛は実際に東南アジアなどで様々な工作を仕掛けた。

台湾統一はいうまでもなく中国共産党にとっての「使命」だ。毛の時代には中国の国力はまだ弱く、具体的な手を打つことはできなかった。

党内では「習近平思想」を毛沢東思想のように党規約に明記し、習氏を毛と同じ「党主席」とする議論が進む。習氏を毛と並ぶ地位に据えることが目的だ。だが、習氏がめざすものが「毛沢東並み」ではなく「毛沢東超え」ならば、世界の混乱はさらに大きなものとなる。

(中国総局長 桃井裕理)

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

思想?思想とは世界観、人生観と同次元の形而上学的なもの。その活動報告のなかでいわれているのはせいぜい考え方に過ぎない。概念や言葉のインフレをいくら膨らませても、人々を引き付ける力が生まれてこない。とくに、毛時代と違って、今はネット時代であり、情報の非対称性がかなり解消されており、中国にいる中国人でもある程度の自由を味わった。毛時代の中国人は腹いっぱい食べることができなかったため、洗脳しやすい。今の中国人はユートピアを以て洗脳しようとしても、完全に洗脳されない。厳しい時代を生き延びた我々はかなり「ずる賢く」なっている。毛の踏み絵を以て中国社会を統治しようとしても、うまくいかない
2022年10月18日 7:21』