プーチンに核兵器使用を阻止する4つの方法

プーチンに核兵器使用を阻止する4つの方法
岡崎研究所
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28190

『9月26日付 の英フィナンシャル・タイムズ紙は、「プーチンの核の脅しは無視できない」とのラックマンの論説を掲げ、ウクライナが成功しロシアが追い詰められる中で、情勢はより危険になり、出口が一層見えなくなっている、と論じている。
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 今やウクライナ戦争において、幾つかの敗北の後、プーチンはより多くの兵士を招集し、再度核兵器使用の脅しをかけた。サリバン米国大統領補佐官は、ロシアの核の警告は真剣に捉えるべきだと発言した。

 核戦争の可能性は米国に重くのしかかる。もし、ロシアがウクライナで核を使用すれば、ウクライナは汚染され、北大西洋条約機構(NATO)の報復も招くだろう。

 核兵器使用は最初の選択肢ではないが、それ以外が屈辱と敗北なら、プーチンは最後の賭けに出るかもしれない。プーチンは、核兵器使用が西側に甚大な衝撃を与え譲歩を迫れると思うかもしれない。

 米国はプーチンに、核兵器使用はロシアに甚大な結果をもたらすと警告した。西側は、ウクライナ支援を止めるためにロシアが核の脅しを使うことを許すべきではないとしている。

 難しいのは、戦争終結の道筋が見えないことだ。西側ではロシア敗北の必要性が喧伝されるが、プーチンか後任者との交渉による和平で終わらせるしかない。

 プーチンの戦争目的は既に縮小している。最初はゼレンスキー政権転覆だったが、今やドンバス解放だ。

 西側は、ロシアは今次侵攻前の状況まで下がるべきだとし、ウクライナは、クリミアを含む全占領地から撤退すべきと主張する。プーチンは西側の主張さえ受け入れないだろう。なぜなら、何も得ずに数千の命を犠牲にしたことを意味するからだ。

 ウクライナ軍が前進する中、ウクライナも交渉を急いでいない。現在のゼレンスキーの対ロシア嫌悪感から、西側がウクライナに交渉を強いるのは難しい。


 ウクライナ戦争でプーチンが追い詰められる中、ロシア側の対応は紛争解決を一層困難にし、ウクライナ戦争の出口が予測困難になっているというラックマンの論説は、現状を的確に表している。ロシアによるドンバスの「住民投票」の強行とロシアへの併合は、プーチンに対しては停戦に持ち込むだけの口実を与えるだろう。しかし、現在押し返しているウクライナはこの段階で停戦交渉には応じないだろうということだ。結局、暫くは東部・南部における戦況と、ロシアによる追加的兵員動員の行方を見守るしかないだろう。

 しかし、停戦云々を論じる前に考えるべきことがある。それはロシアが核兵器を使うことを抑止できるか、言い変えれば、ロシアは核兵器を使うつもりかと言うことである。これは重い質問だが、それなりの考え方を述べておきたい。』

『ロシアに核使用を思いとどまらせるには

 まず、ラックマンが指摘するように、ロシアによる核使用の恫喝により、西側のウクライナ支援は強まることこそあれ、弱まることは無いし、実際そうあるべきである。核の恫喝が成功したとロシアに思わせる訳にはいかないからだ。この対応如何のウクライナ以外の紛争への影響が大きいことも忘れてはならない。

 第二に、ロシアに対しては、核兵器の使用を思いとどまらせるべく、最大限明確で効果的なメッセージを送る必要がある。米国がロシアに対して「核兵器使用はロシアに甚大な影響を与える」といメッセージを、それも、静かな形で伝えたのは評価されるべきだ。率直に言えば、米国がロシアのウクライナ侵攻前の相当早い段階で「直接軍事関与しない」と対外的に表明したのは、相当の愚策であり、今回のような行動をこそ取るべきだったと思う。
 
 第三に、論理的に考えれば、ロシアが核兵器使用により得るものは無いはずであり、また、西側としては、不幸にして核兵器が使われたとしても、実際にロシアが得るものが無く失うものの方が大きいように対応しなければならない。そうでなければ、正に、核兵器使用の敷居が将来にわたって下がってしまうことになる。

 ロシアの核兵器使用による同国にとってのマイナスを念頭に使用を思いとどまることを望みたい。しかし、万一不幸にもロシアが暴挙に出た場合には、それが戦況をロシアにとって有利に導くことが無いこと、より言えば、戦況をウクライナ・西側にとって有利に導くように対応する必要がある。

 第四に、問題は、それではそのために何をすべきかである。核兵器使用に対して臆することなく核兵器で応じるのか。そうでは無くてはならない、ということではないのではないかと思う。

 核兵器使用で応じれば、「核抑止」の論理の上では辻褄は合うかもしれないが、やはり同じ「核使用」という暴挙に出ることで「モラル的優位性」を失うことになる。核兵器使用により結局戦況は不利になったと言うことが示せれば将来も抑止は成り立つのであり、それを示すための手段は核兵器だけである必要は無い。ただ、西側の対応は戦況を大きく変えるような「懲罰的」なものである必要はあるだろう。』