お騒がせ大将イーロン・マスク氏

お騒がせ大将イーロン・マスク氏 : 机上空間
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/29907878.html

『愛すべき、きまぐれ人、オタク・キングでもある世界一の資産家、テスラ・モータースのCEOであるイーロン・マスク氏が、一度無償での提供を止めると発表したウクライナへの通信衛星ネットワーク・スターリンクの提供を再開するようです。うーん、いかにも大将らしいブレぐあいで安心感さえ覚えます。

そして、この時の物言いが、いかにもシブシブという感じで、「いゃ、少しはオブラードに包んだほうが、会社の印象も良くなるし、どのみち費用負担を肩代わりするなら、宣伝効果を考えたほうが良いのでは?」と、部外者の私が心配してしまうほど、ぶっきらぼうにツィートしています。以下が和訳です。

「もういいや……スターリンクはいまも赤字で、ほかの企業は納税者から何十億ドルももらっているけど、うちはただでウクライナ政府に資金を提供し続けるよ」by イーロン・マスク

いかにも、不満があるけど、仕方ないから続ける感が丸出しです。しかし、こういう時に出る企業コメントの、いかにも社会的使命に燃える感のあるテンプレ表明よりは、私は好きですけどね。現在、インフラがベコベコに破壊されているウクライナで、軍事に重要なネットワーク通信が維持できているのは、イーロン・マスク氏がスターリンク・システムを無償で提供しているからです。既に、彼の傘下の会社であるスペースX社が打ち上げた軌道衛星による世界中をカバーしつつある地球規模の通信ネットワークを利用する事で、どんな僻地からでも200Mbps程度のスピードでネットワーク通信が可能です。

そして、これも、もちろんタダじゃありません。2000万ドル(30億円)/月の費用をイーロン・マスク氏の企業体が負担しています。それを私企業が無制限に提供できないから、戦争が長引くようなら、アメリカ政府なりが負担を引き受けるなり、公的援助をしてくれという、極めて真っ当な話をしているだけなのですが、彼のキャラクターもあって、なぜか今まで8000万ドルも負担を引き受けているのに、批判されるというハメになっています。どうやら、一度提供された善意は、無制限に発揮しないと、人で無し呼ばわりされるようです。

マスク氏は、今月の3日に、和平案もツィートしていて、内容は次の通りです。
・(ロシアに)編入された州で、国連の監視下で住民投票を再び行う。立ち去ってほしいと言うのが人々の意志なら、ロシアはそうする。
・(2014年にロシアが併合した)クリミアを、世界が正式にロシアの一部として承認する。

まぁ、ぶっちゃけちゃうと、「いいかげんウクライナで揉めるのは止めろ。色々とやりづらいんだよ。企業を経営して、従業員を食わせなきゃいけない、こっちの身にもなってくれ。この辺が妥協点だろ?」という感じの、極めて彼らしい大雑把な内容で、ツィッターの機能でフォローワーからアンケートを取ったりしたのですね。

これには、当然ながら西側諸国の援助を受けて、千載一遇のチャンスで領土奪還に邁進しているウクライナからしたら、その芽を潰す発言だったので、カンカンになって批判をしています。まぁ、ウクライナの立場も判りますが、一部のウクライナ官僚は、絶大な援助を受けている相手に対して、かなり不適切な強い言葉を使いました。これに対してマスク氏は、大して心を動かされた風も無く「去れというなら、去るさ」と言い残して、この記事の冒頭のスターリンク・システムの無償供与停止の話になるわけです。

イーロン・マスク氏は、良い意味でも悪い意味でもアスペルガーな特徴があります。ある意味、彼は自分の夢を叶える事以外に、余り関心がありません。彼の夢は、テクノロジーで社会を変革していく事。彼自身が持っている資産も、全部それにぶっこむつもりです。社会に革命を起こす事で、世の中が変化し、その中心で自分が活動している事以外には、余り関心がありません。それが生きがいであり、存在意義だと堅く信じています。それ以外の事には無頓着なので、お騒がせ男として、ツィッターで、普通の人間から見たら失言レベルの言葉をツィートします。

例えば、2018年4月1日(エイプリールフール)には、「やべぇ。破産しちゃった」というツィートを、テスラのモデル3に、寄っかかるダイイング・メッセージのような画像と共に投稿して、実際にテスラ株が8%も下落しました。

2018年の8月には、420ドル/株でテスラ株を非公開化するというジョーク・ツィートをして、米証券取引委員会から訴訟を起こされました。その結果、21億円の罰金を支払い、さらにテスラ社の取締役会の会長職を3年間、辞任させられる事になりました。

2020年1月には、テスラ株が高すぎない?と突然ツィートしました。(ちなみに、去年までのテスラ株の暴騰は、私も実体の無い過剰評価だと思います)その結果、テスラ株の時価評価額は、1兆5000億円も下がり、マスク氏自身の持ち株の評価も3200億円が消失しました。

2021年には、ツィッターのトップページに「ビットコイン」と一言だけ記載しましたが、これだけで数分の間に、ビットコインの価値が約15%も高騰しました。また、このタイミングで、テスラ車の購入にビットコインを使えるようにする事と、15億ドル相当のビットコインの購入を決めた事を発表しています。

しかし、その2月後・・・。ビットコインがシステムの維持に、物凄く電力を食うのは、過去記事で説明した事がありますが、それを環境問題として持ち出して、決済にビットコインを使えるのを止める発言をします。その決算期の3ヶ月で、ビットコインを売り抜けていて、結果として、その年の最初のビットコインの大暴落に繋がります。市場全体では、数十兆円の価値が消失しました。

「常識」のある経営者なら、こんな暴挙は控えるのですが、彼は思った通りの事を言うし、実行しちゃうのですね。精神を病んでいるのかと心配になるくらいですが、本人は自分が損失を出すような事でも、言いたいタイミングで言う事を優先させるようです。その基準は、計算よりも彼の関心を惹いたかどうかです。ビットコインで騒動を起こした後には、ネタの仮想通貨として知られているDOGEコインに対して、自ら「詐欺コインだね」とツィートしながら、繰り返しツィートする事で、値段を吊り上げています。彼自身は、捨てる程の金を持っているので、恐らく煽り自体を楽しむ為に、これだけの手間をかけているのでしょう。そして、実際にDOGEコインは、50%も値上がりしたのです。

言ってしまえば、責任ある大人とも言えないくらい、彼の行動は破天荒で、予想がつきません。しかし、それまで誰も可能だと思わなかった事業に手を出して、実績を出しているんですよね。この辺りのアンバランスさが、魅力であり、恐らくは身近にはいて欲しくない人物の筆頭なのだと思います。』