英トラス首相、法人減税を撤回 財務相を解任

英トラス首相、法人減税を撤回 財務相を解任
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR14BJ60U2A011C2000000/

『【この記事のポイント】
・トラス英首相、市場混乱受け法人減税の撤回表明
・クワーテング財務相を解任、自らの辞任は否定
・短期間で目玉公約を大幅修正、政権への打撃必至

【ロンドン=大西康平】トラス英首相は14日、クワーテング財務相を解任し、後任にジェレミー・ハント元外相が就任すると発表した。9月の政権発足直後に打ち出した経済対策を巡って混乱が広がった責任を明確化した。同日に開いた記者会見で法人減税を撤回するなど、目玉とした大規模減税策の大幅な修正を明らかにした。

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トラス首相が14日に開いた記者会見では、「経済の安定性が重要だ。我々は財政規律を保ち市場を安心させるために今すぐ行動する必要がある」と述べた。自身の辞任は否定した。
新たに英国の財務相に任命されたハント元外相=ロイター

法人税については前政権が計画した増税の凍結撤回を表明した。2023年4月に法人税率を19%から25%へ引き上げ、会見では180億ポンドの国民負担につながることを示した。トラス首相が党首選の序盤で国民保険料の引き下げとともに訴えた目玉政策だった。エネルギー価格の急騰による家計負担の軽減策が必要との考えは改めて強調した。

大規模減税を巡っては、財源確保の具体策が示されなかったことで英国債金利が急騰。ポンド安も加速するなど金融市場が動揺した。英年金基金で損失が膨らんで世界に動揺が波及し、修正を求める声が高まっていた。英イングランド銀行(中央銀行)は緊急措置として国債を買い入れたが、この措置も14日で期限を迎えた。

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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
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クワーテング財務相は、トラス首相の盟友。解任は、大規模減税策で最も国民の反発を招いた所得税最高税率の引き下げ撤回(20億ポンド相当)に続く、トラス首相の生き残り戦略と思われます。法人税率引き上げ撤回返上の効果は180億ポンドで、まだ250億ポンド相当の減税の財源が不透明なまま。
8分という異例の短さの首相の記者会見後、英国債利回りは上昇しました。
減税による成長シナリオの柱の1つは不動産取得に関わる印紙税の免税範囲拡大による住宅市場の活性化にありましたが、国債利回りの急騰に連動した住宅ローン金利上昇で、すでに説得力を失っています。
与党内でのトラスおろしの動きは強まりそうです。
2022年10月14日 21:58 (2022年10月14日 23:35更新)

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菅野幹雄
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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減税撤回はトラス首相の大失態です。それを、党首選の功労者である財務相解任という「トカゲのしっぽ切り」で収めようとするなら、信任は間違いなく地に落ちます。
記者会見を見ましたが、わずかな質問にしか答えず、逃げるように会場を去りました。ハント財務相の起用で局面を打開したいのでしょうが、自らの過ちを認め、深く反省して出直す覚悟は全く見えません。これでは世論の支持はもちろん、党勢も衰えていくでしょう。イバラの道が待ち構えています。
インフレ下のバラマキという似たような政策を採ろうとする国には貴重な教訓になるはず。中央銀行が強引に長期金利を押さえつける異例の政策を続けるアジアの経済国にも……。
2022年10月14日 22:13 (2022年10月14日 23:33更新)
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滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
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①ご無体な。伊藤さんもご指摘のように、大型減税はトラス公約。詰め腹を盟友の財務相に切らせるとは、「ドクターX」の世界です。いっそ、スナク前財務相の復職を図ったほうが良いのでは。
②石油ショックのさなか、積極財政の田中角栄首相は、ライバルで緊縮派の福田赳夫氏に蔵相就任を願い出ました。その位のことをしないと、トラス丸は沈没でしょう。
③欧州といえば、スイス中銀がFRBの通貨スワップ枠を大量行使して、ドル資金をかき集めています。大手スイス銀を支援するためでしょうが、欧州金融市場が決壊すれば、とばっちりには要注意です。
④対外純資産国の日本と米国に次ぐ純債務国の英国。むろん、ポジションは別ですが…。
2022年10月14日 22:22 (2022年10月14日 22:35更新)』