大規模ミサイル攻撃で墓穴を掘ったプーチン

大規模ミサイル攻撃で墓穴を掘ったプーチン、敗戦の足音
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『<ウクライナの戦勝ムードに「待った」をかけるはずの無差別ミサイル攻撃で逆に弱さをさらけ出し、最も避けたかったウクライナをNATOの集団防衛に加える案まで浮上させてしまったロシアに退路はあるか>

ミサイル攻撃を受けたキーウの発電所。高層ビルはサムスン電子の社屋。Maxar Technologies/Handout/REUTERS

ウクライナ軍の反転攻勢やロシアにとって重要なクリミア大橋の爆発などでウクライナの戦勝ムードが色濃く漂い始めた10月10日、ロシアはウクライナ全土に大規模なミサイル攻撃を行った。だが見境のないこの報復攻撃で、ロシアは墓穴を掘る結果になった、との見方もある。

【動画】ドイツが送ったIRIS-T対空ミサイル

多数の民間人を殺し、都市インフラを次々に破壊する無差別攻撃に、国際社会は一斉に非難の声を上げた。ロシアの暴挙に怒った西側はウクライナ支援を強化、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はさらに崖っぷちに追い込まれている。

報復攻撃は「ロシアの弱さの現れ」だと、ウクライナ議会のオレクサンドル・メレシュコ外交委員長は本誌に語った。「地上戦で勝てないから、ミサイルで民間人を殺し、われわれを恐怖に陥れようとしている」

これまで支援を渋っていたヨーロッパの一部の国々も「ロシアの残虐行為にこれ以上目をつぶれないはずだ」と、メレシュコは言う。

形勢立て直しを目指したが

ミサイル攻撃を受けた都市の1つ、ウクライナ西部リビウのセルヒイ・キラル副市長は「プーチンはバカだ」と言い切る。「追い詰められて攻撃をエスカレートさせているが、これではウクライナ人の祖国を守る決意はますます強固になり、西側もウクライナ支援に向けて結束する」

ミサイル攻撃でもウクライナがひるまず、西側が結束を固めれば、ロシアはウクライナ軍の進撃を止めるために、さらに強引な手段に頼らざるを得ない。

プーチンは、ミサイル攻撃でウクライナ軍の攻勢に「待った」をかけて、形勢を立て直そうとしたと、国際危機グループのロシア担当上級アナリスト、オレグ・イグナトフはみている。「攻撃をエスカレートさせて、停戦交渉を有利に持ち込もうとした」

だが今の状況では、「同時に、あるいはごく短期間に、次から次へと荒技を繰り出すしか手がない」というのだ。

予備役を動員したのもそのためだと、イグナトフは言う。ロシアは否定しているが、西側の重要インフラに対するサイバー攻撃など、プーチンが密かに仕掛けているハイブリッド戦の激化もその一環とみられる。』

『ウクライナを「血の海」にしても

動員されたロシア兵(その多くは正規の訓練を受けず、十分な装備も与えられていない)がどっと戦場に送り込まれれば、ウクライナは第二次大戦中にドイツと旧ソ連の激戦地となった時のように、「血の海」と化すだろうとイグナトフは言う。

「プーチンはそうなっても構わないと考えているのだろう。でなければこれほど多くの動員をするはずがない」

最も懸念されるのは、ロシアの攻撃が核使用にエスカレートする事態だが、「その可能性は低い」と、イグナトフはみる。「地上戦での劣勢を一気に巻き返すには大規模攻撃が必要だが、小型核を使用しても戦況は変えられない」からだ。

10日から始まったロシアのミサイル攻撃は、エネルギー施設などの生活インフラと民間人を標的にしたもので、首都キーウ(キエフ)をはじめ、各地の都市で多数の死傷者が出たほか、停電や断水、ネットがつながりにくくなるなど市民生活に犠牲を強いた。

西側は即座にロシアを非難した。米政府はこれまでに提供したシステムよりも「高度な」防空システムをウクライナに供与すると宣言。ドイツは最新鋭の防空システム「IRIS-T」の供与を開始、11日に最初の1基がウクライナに到着したと発表した。IRIS-Tの供与は以前から決まっていたが、ロシアのミサイル攻撃を受け、年内に輸送する計画を前倒しした。アメリカも地対空ミサイルシステム「ナサムス(NASAMS)」2基の供与を急ぐことを決めた。

ロシアの孤立に拍車がかかる

ウクライナ政府はロシア軍の侵攻が始まった当初から、新型の防空システムの供与を求めていたが、これまで西側の反応は鈍く、ウクライナ当局を嘆かせていた。

本誌が入手したメモによると、ウクライナ外務省は、ロシアのミサイル攻撃をきっかけに西側が「ロシアを政治的、経済的に完全に孤立させる」方針を固め、「前例のない」措置を取るものと期待している。防空システムやより射程距離の長いミサイルシステムの供与に加え、「ロシアをテロ国家に認定」するというウクライナ政府の要請も受け入れられる可能性があるという。

ロシアの暴挙に対し、「世界は今こそ、民主主義は専制主義よりも強固であり、国際秩序は守らなければならないことを断固たる姿勢で示すべきだ」と、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の元報道官でジャーナリストのユーリヤ・メンデルは本誌にそう語った。

リビウのキラル副市長も西側の支援を期待している。「ロシアの侵攻開始から8カ月近く、言い続けてきたことだが、最新の防空システムと兵器、訓練された兵士があれば、ウクライナは前進できる。ロシアの攻撃がジェノサイド(集団虐殺)の様相を呈しているのは明らかだ。プーチンがウクライナ人を皆殺しにするのを、世界も座して待ちはしないだろう」』

『「NATOとの防衛協力も

ゼレンスキー政権はNATOの後ろ盾を得てロシアの威嚇に対抗しようとしている。ウクライナをすぐにもNATOに加盟させること。それがロシアのミサイル攻撃に対する西側の最も望ましい対応だと、メレシュコは主張する。ゼレンスキーも9月末にNATOに正式に加盟申請し、迅速に承認手続きを進めるよう求める方針を発表した。

メンデルは、ウクライナ大統領府長官のアンドリー・イェルマークとNATO元事務総長のアナス・フォー・ラスムセンが共同議長を務める作業グループが策定した「キーウ安全保障盟約」に期待する。ウクライナのNATO加盟が正式に承認されるまでの間、NATOの集団防衛にウクライナを暫定的に含める内容だ。

ロシアはウクライナの人々を極寒地獄に陥れるため、冬を迎える前にさらにエネルギー施設を破壊すると脅しをかけている。

だがウクライナ当局が誇らしげにネット投稿している画像や動画でもわかるように、ミサイル攻撃で被害を受けたライフラインの復旧は急ピッチで進んでいる。

新型ミサイルはすぐ底を突く
「新たな攻撃があるたびに、新たな作業に追われる」と、キラルは言う。「市内の公共サービスはその日のうちにおおむね復旧できた。停電や断水にはすぐに対応でき、数日ではなく、数時間単位で解消できるが、インフラ施設の修復には時間がかかり、市民に節電や節水を求めなければならない」

ウクライナ外務省も、「インフラを再建し、学校、幼稚園、病院などに電気を送り、暖房ができるようにするために、追加的な技術・財政支援を歓迎する」と、西側に訴えている。

一方で、ロシア軍には長期にわたってピンポイントの空爆を続ける余力はなさそうだ。先端の精密誘導兵器に必要な部品が西側の制裁で入手できなくなっているからだ。

「イスカンデルやクラブなど、ロシアが保有する精密誘導兵器は数が限られている」と、国際危機グループのイグナトフは指摘する。「大量にあるのはソ連型の旧式ミサイルだけ。これでは目標を正確に狙えないため、重要な都市インフラを破壊できる確率は減っていき、犠牲者だけが増えていく」

デービッド・ブレナン 』