見えてきたプーチンと習近平の友情の限界

見えてきたプーチンと習近平の友情の限界
岡崎研究所
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28151

『英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)のギデオン・ラックマンが「プーチンと習近平の友情の限界」と題する論説を9月19日付のFTに寄せ、上海協力機構(SCO) サミットの際の中露首脳会談の結果等に基づき、習近平が弱体化するプーチンとの近すぎる関係を後悔しているのではないか、と論じている。
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 2月4日の北京での中露首脳会談後の共同声明は両国の友情に限界が無いと表明したが、今や習は後悔しているかもしれない。9月16日の中露首脳会談でプーチンはウクライナ戦争に関する中国の「疑問や懸念」に対応することを約した。

 戦争はロシアを弱体化し、ユーラシアを不安定化させ、西側同盟を強化した。中国から見れば、これは全て良くない。

 SCOサミットで、インドのモディ首相は「今は戦争の時ではない」と公開の場でプーチンを窘めた。プーチンは、出来る限り早急な紛争終結に全力を尽くすと約束した。

 ロシアの弱体化には中国の利益もある。現在ロシアは経済的に一層中国に依存している。

 プーチンと習は明らかに相手のスタイルを気に入っており、自分たちを国家の化身と見ている。しかし、習は、プーチンをここまで全面的に支持してきたことを後悔しているに違いない。


 SCOサミットの際の中露、印露の首脳会談を受け各種分析がなされているが、この論説も概ね主流の見方を反映したものだ。要は、ウクライナ戦争の現状は中国の想定外であり、中露関係に隙間風が吹き始めているということである。これについては、過度な楽観視は戒めるべきで、状況を冷静に見続けるべきだ。

 第一に、確かに2月の中露首脳会談に比べ、今回の中国側の対応が後退しているのは明白だ。2月の共同声明で限界の無い友情を表明したのに、今回は共同声明も無い。

 プーチンが公の場でウクライナ問題への「中国の懸念を理解」と発言せざるを得なかったのは異例だ。習は、ロシアと「核心的利益に関わる問題」で互いに支持したと述べた。これは台湾・ウクライナを念頭に置いているが、「限界の無い」友情からは後退したと言わざるを得ない。

 この冷遇は会談内容以外にも見て取れる。例えば、人民日報では中・ウズベク会談がトップニュースで、中露はその次、かつ、握手をしていない写真が掲載された。

 一方、第二に、米国と対峙する上で、中露共に他に意味のある協力相手はおらず、今後も協力し合わざるを得ないので、今回の動きを過度に重視すべきではない。また、天然ガスの欧州市場を失ったロシアは資源貿易で益々中国に依存し、中国にとっても安価なエネルギー供給先としてロシアは有用だ。実際、中露貿易は拡大し、2022年には約15%増の予測がある。』

『ウクライナ戦争後の急増は顕著で、8月の中国の対露輸入は前月比6割増で過去最大である。特にロシアからの原油輸入は5月以降サウジアラビアを超え、中国の輸入先トップになっている。一方、ロシアの対中輸出の約8割は資源で、増えているのはその部分のみであり、これはロシアの対中従属性を示している。
国力弱まるロシアへの外交戦略

 第三に、今回一層明白になった注目点は、中央アジアを巡る中露の力関係の行方だ。習はSCOサミット出席前に、ロシアと隙間風があるカザフスタンを訪問した。その際のトカエフ大統領との首脳会談で、心の底ではロシアの侵攻を警戒する同国と共に「領土の一体性尊重」を強調したのは、ロシアとの関係では相当の事である。

 なおトカエフは、6月のサンクト国際経済会議で、ウクライナ東部の親露派地域を正式な国家とは認めないと明言している。今回、習はカザフとウズベクスタンから勲章を授与され、ベラルーシと全面的パートナーシップを締結したのに対し、プーチン大統領はウズベク大統領に勲章を授与した。ロシア・キルギス首脳会談に遅刻したのは、常習犯のプーチンではなくキルギス大統領の方だった。

 中央アジア諸国では、ロシアがウクライナに集中する中、各国間の紛争が表面化した。タジク・キルギス国境紛争は、両国駐在のロシア兵のウクライナ投入による影響もあろうし、アルメニア・アゼルバイジャン国境紛争は、トルコの支援を受けるアゼルの仕掛けという見方もある。ペロシ米下院議長がアルメニアを訪問し、米国務長官による仲介をアルメニアが発表したのは、アルメニアの同盟国であるロシアにとっては屈辱的だろう。

 最後に、国力が低下し孤立を深めるロシアが中国を必要とする度合いは増加する一方、台頭する中国にとってのロシアの意味は相対的に低下する。その中で、ロシアが持つ数少ない優位性の一つである中央アジアとの関係に中国が手を突っ込みすぎると、ロシアの第三国との関係が相対的に緊密化する可能性もある。

 過去の歴史から見ても、その相手は、インドではなかろうか。これは日米や西側諸国にとって悪い話ばかりではない。』