現代のミダス王、イーロン・マスク氏

現代のミダス王、イーロン・マスク氏
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/29884506.html

『ギリシャ神話の中にミダス王という、触ったもの全てを黄金に変える能力(ミダス タッチ)で知られる人物がいます。もちろん、神話上の登場人物です。この能力により、彼の周りは黄金だらけになりましたが、食事や飲み物も、一瞬で黄金に変化してしまう為、富に囲まれながら、彼自身は飢えに苦しむ事になります。この話には、続きがあって、この呪いとも言える能力を無効化した後で、彼の心のあり方をアポロン神に試されて、「王様の耳はロバの耳」の物語の元になった試しを受ける事になります。

私が「触ったモノを黄金に変える能力」という意味で、現代のミダス王と考えているのが、テスラ・モータースのCEOであるイーロン・マスク氏です。経歴については、過去の記事で詳しく書いてありますので、ここでは省略します。彼の現在の位置づけは、単に成功した実業家、世界一の資産を持つ金持ちというだけではなく、オタクの大将でもあるという事です。

彼は、複数の事業を推進する多忙な経営者であるにも関わらず、ゲームフリークがブログで語るような重量級の大作ゲームを自力でクリアーするゲーマーでもあります。実際に彼がプレイしているかどうかは、彼のTwitterの呟きを追えば、ガチでプレイしている事が判断できるので、マジモノのヘビーゲーマーです。私が3ヶ月かかってクリアーした「エルデンリング」も、彼はクリアーしています。その時に、最終的に到達した、ゲーム内のキャラクターのステータスや装備、戦闘スタイルは、それ自体がゲーマー間で話題になる程で、彼がいわゆるオタクと言われる連中にいかに愛されているか判ります。

彼のTwitterの影響力というのは、ある意味アメリカ大統領並に経済に影響を与えます。去年の2月頃に、「今度、ビットコインを買う事にした。資産形成のポートフォリオに組み入れるつもりだ」として、15億ドル分のビットコインを購入し、テスラ車の購入にビットコインを使えると発表しました。その瞬間に、ビットコインは、急騰を始め、最高値をつけた同年11月の777万円/1BTCの口火を切ったと言えます。その後、テスラ車購入に使える通貨からビットコインを外し、今年の4-6月に売却をしています。そして、これが、ビットコイン暴落の口火を切る事にもなります。ある意味、彼の挙動で、ビットコインの価格が翻弄されたとも言えます。

実際、彼がTwitterで呟いた一言で、テスラ・モータースの株価は、数百億円単位で動きますし、以前に上げた記事「イート・ザ・リッチ~ゲームストップを救え!~ Part1」のドキュメンタリー上でも、ゲームストップ株の最後のブースターとして、株価を200ドル近く押し上げるキッカケになったのは、彼のTwitterでの一言の呟きでした。つまり、イーロン・マスク氏が興味を示したという事が、株価を押し上げる理由になるのです。それとは、対照的に、ちょっと差別的な表現を使った呟きでも、まったく業績と関係の無いテスラ株の暴落を招いたりします。

つまり、女性が人気の美女の使っている化粧品に群がるように、イーロン・マスク氏が興味を示したり手にかけたモノが、飛ぶように売れるわけです。その為、彼は経営するテスラ・モータースや、ハイパーループの事業を手掛けるザ・ボーリング・カンパニーのサイト上で、自身がプロデュースした、テキーラや香水を販売して、数百万ドルの利益を挙げています。

この事で判るのは、購買者が買っているのは、単なるテキーラ・香水ではなく、「成功者の香り」ともいうべきイーロン・マスク・ブランドの価値なのです。例えば、彼のプロデュースした香水は、「燃える髪」という名前なのですが、ようは悋気に燃える若き挑戦者・成功者のイメージを、香水に被せただけです。それを、イーロン・マスクが売る事で、恐らく原価の何十倍の価値を生むわけです。このあたりの、信者の心の掴み方が、単なる敏腕経営者に留まらない彼の真骨頂です。彼は、今という時代に、自分に興味を持つ人間の傾向を把握していて、彼らが喜びそうなものをメインの事業と無関係に販売し、いい利益を稼いでいます。経営者像としての自分を、ブランド化して商売に変えているのです。単に業績や収入を誇る普通の大企業の経営者には、真似できない独自のスタイルがイローン・マスク氏にはあります。私が、ミダス王と呼ぶ能力です。何でも黄金に変えてしまう。

そして、そのブランドを支えているのが、時価総額で世界一の金持ちであり、最も成功した経営者と評される経営手腕です。単なるイメージや幻が後ろ盾になっているわけではなく、決算で数字で出てくる業績で、信用を構築しているのが特別なのです。その上、常に未知の事業に挑戦する事業スタイル自体が価値を生んでいます。最初は、Paypalという国際決済システム、次はテスラ・モータースによる電気自動車、次はスペースXによる民間宇宙事業、次はザ・ボーリング・カンパニーによる、ハイパールーブ高速列車の事業化と、手につけた時点では、事業見通しすら怪しい挑戦的な事業を、次々とモノにしています。

「単に高収益を挙げている」のではなく、「形にもなっていない事業を推進してモノにする」そのチャレンジャー精神が、ブランドになる程の価値を生み出しているのです。今のところ、彼が手を着けた事業は、全てモノになっています。

こうなると、心配になるのは、その後の「王様の耳はロバの耳」のトラップに、晩年の彼の思考が囚われないかという事ですね。彼のようなタイプの経営者は、自らの言葉を自己暗示のように信じる傾向があるので、結果として事業が成功しているうちは良いのですが、何らかの理由で頓挫した時に、ちゃんと経営者として合理的な判断ができるかどうかが問題です。 』