政府・日銀、24年ぶり円買い介入 円一時140円台に上昇

政府・日銀、24年ぶり円買い介入 円一時140円台に上昇
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA12A5H0S2A410C2000000/

『【この記事のポイント】
・輸入物価の高騰で家計の負担増につながる円安を阻止
・一時1ドル=145円台まで進んだ円安、介入後5円程度上昇した
・大規模な介入繰り返すのは難しく、効果は限定的との見方も

政府・日銀は22日、1998年6月以来、約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入に踏み切った。日銀が金融政策決定会合で大規模な金融緩和を維持することを決め、利上げを進める米国との金融政策の違いから円安・ドル高に拍車がかかっていた。輸入物価の高騰で家計の負担増につながる円安を阻止する姿勢を示した。

円安の原因である日米の金利差はさらに広がるとみられる。円買い介入の効果が持続するかは見通せない状況にある。

鈴木俊一財務相は介入後の22日夜に財務省内で記者会見した。為替は原則として市場で決まるものだと前置きしつつ、「投機による過度な変動が繰り返されることは決して見過ごすことができない」と理由を述べた。関係者によると介入規模は「兆円単位」という。

今回は他国と足並みをそろえる協調介入ではなく、日本の単独介入だった。米財務省の広報担当者は22日、日本経済新聞の取材に対して「米財務省は為替介入には参加していない。日本の当局は為替介入は最近の円のボラティリティー(変動)の高まりを抑えるのが目的だと述べており、我々は日本の行動を理解している」とコメントした。欧州中央銀行(ECB)の広報担当者は22日、取材に対し「為替市場で介入はしていない」とした。

会見に同席した神田真人財務官は判断の決め手は円相場の水準そのものではなく、値動きの荒さだと強調した。「あまりにもおかしなボラティリティーの場合はマーケットを正常化する営みが求められる」と述べた。

訪米中の岸田文雄首相は22日のニューヨークでの内外記者会見で為替介入に言及し、「過度な変動に対しては断固として必要な対応をとりたい」と強調した。

夕方の介入を受け、円相場は一時1ドル=140円台と、直前から5円程度上昇した。

米連邦準備理事会(FRB)は21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅な利上げを続ける方針を示した。日銀は22日まで開いた金融政策決定会合で金融緩和の維持を決めた。

今後も日米の金利差が開くとの見方から金利の高いドルを買う動きが強まり、22日正午ごろには一時1ドル=145円台まで円安が進んだ。午後1時30分過ぎには神田財務官が記者団に対し、為替介入の可能性について「スタンバイの状態と考えていい。いつでもやる用意がある」と語っていた。

3月初めまで1ドル=115円程度で安定していた円相場は同月の途中から円安に振れた。半年あまりで30円も円安に進んだことになる。

ロシアによるウクライナ侵攻で原油や天然ガスの国際価格が上がった。円安は輸入する資源や原材料の値上がりにつながり、日本の企業や家計を圧迫している。

ただ、介入の効果は限定的との見方がある。金利差を背景に円安・ドル高になりやすい構造は変わらない。円買い・ドル売り介入は手持ちのドルを売る必要があり、原資となる外貨準備の範囲内でしか実施できない。大規模な介入を繰り返すのは難しい。

不良債権問題などで日本経済が低迷していた1998年6月も1ドル=140円を超えて円安が進んだ。歯止めをかけようと日米で協調介入に踏み切った。円安に誘導する円売り・ドル買い介入は日本が単独で実施した11年11月が最後だった。米国の景気不安や欧州の信用不安などを背景に直前の10月末に1ドル=75円32銭の史上最高値をつけた。

【関連記事】

・財務相「投機的な動き見過ごせず」 24年ぶり円買い介入
・日銀は緩和維持・FRBは0.75%利上げ 金利差で円安加速

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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Business/Markets/Currencies/Japan-intervenes-in-forex-market-to-stem-yen-s-slide?n_cid=DSBNNAR 

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

日本の通貨当局は言行一致を貫いた形である。日銀が異次元緩和続行を決めた前後の急激な相場変動に対して、G7・G20合意で認められている「スムージングオペ」、相場の過度の変動を落ち着かせる目的だという体裁で、今回為替介入に踏み切ったのだろう。だが本音では、大きな問題にもなっている円安ドル高に、そろそろ歯止めをかけたいはずである。介入は、タイミングと効率が重要。勝ちを収めたいのなら、円を売り持ちにしている海外などのプレーヤーを、損失確定の円買い戻しに追い込む必要がある。チャート上の節目は近いところでは142.40円、141.50円など。これらの水準に到達することで、介入の効果はより大きくなる。
2022年9月22日 17:51

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尾河真樹
ソニーフィナンシャルグループ執行役員兼金融市場調査部長
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ひとこと解説

145円を超える円安は日本政府として容認できないというメッセージを市場に明確に示した点で、意味のある介入だ。したがって、当面ドル円の145円付近は重くなるのではないか。ただ、今の円安は日本の経常黒字の急速な減少や、諸外国の利上げに対し、日本だけが緩和維持姿勢であることが際立っていることなどが背景にあり、こうしたファンダメンタルズに変化がなければ、介入でドル円を「上昇トレンド」から「下落トレンド」へと向きを変えることは難しいとみている。今後米国経済が悪化し、インフレが抑制されれば自然とドル円は反落しよう。それまでの時間稼ぎという趣旨であれば、今後複数回の介入が必要になるかもしれない。
2022年9月22日 18:49

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菅野幹雄
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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分析・考察

焦るFRBの大幅利上げ、動けぬ日銀の現状維持で円安が進む展開は見えていたのですが、このまま何ら反応しない「ゼロ回答」では為替市場ににらみが利かず、日本の当局として「やってる感」を出さねばならなかったというところでしょう。円安による値上がりで国民の不満が蓄積するなか、岸田政権としても「円安無策」の批判は避けたいはずで、思惑が一致したということでしょうか。過度の為替変動には断固対処するという筋道は通したわけですが、構造的な円安要因は全く消えません。介入の足元をみてくる市場と日本政府の我慢比べが始まったということかと思います。
2022年9月22日 18:40

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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
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ひとこと解説

円安阻止のための利上げの可能性を否定した黒田総裁の会見終了後に円安傾向が加速、146円が目前に迫っていたが、足もとは142円台まで押し戻されている。
日本時間16時30分には、スイス中銀が0.75%の大幅利上げを決め、マイナス金利政策採用国が日本のみという構図になったことも、円安に拍車をかけた可能性がある。
今夜は日本時間20時にイングランド銀行の金融政策委員会が少なくとも0.5%の利上げと量的縮小の開始を公表する見込み。
「動かない日銀」がクローズアップされやすい環境で、介入がどこまで効果を発揮するのか見極めたい。
2022年9月22日 17:33』