バイデン米大統領、「台湾独立」で発言ぶれ

バイデン米大統領、「台湾独立」で発言ぶれ 中国と対立
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『【ニューヨーク=中村亮】バイデン米大統領が台湾の独立を巡り「台湾が決めることだ」との見解を示し、波紋が広がっている。台湾が一方的に独立を決めても米国が容認すると受け取られかねない発言で、その場合、米国の歴代政権の方針を逸脱する。台湾が中国の侵攻を受けた場合、米国が台湾を防衛する構えだとの認識も改めて示した。中国との対立に拍車がかかる。

バイデン氏は18日放送の米CBSテレビのインタビューで「米軍は台湾を守るのか」と問われて「はい、もし実際に前例のない攻撃があれば」と答えた。中国が台湾へ侵攻した場合、米国がどのような対応をするかを事前に示さない長年の政策から逸脱したとの見方が相次いだ。バイデン氏が類似の発言をするのは2021年1月の大統領就任後で4回目だ。

バイデン氏の発言について米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるカート・キャンベル氏は19日、シンクタンクのイベントにオンラインで参加し「私たちの政策は一貫しており、変更はなく維持する」と釈明した。一方、台湾防衛に関する発言をホワイトハウスが取り下げたとの見方については「適切ではない」と断じた。

専門家が注目するのは台湾の将来に関するバイデン氏のコメントだ。同氏はCBSのインタビューで「(米国には)一つの中国政策があり、台湾は自らの独立について自身で判断する。我々は独立を促していない。台湾が決めることだ」と語った。

米国は中国本土と台湾が不可分だという中国の立場に異を唱えないが、台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を掲げる。中国が武力行使で中台統一を図る事態を強く懸念するが、台湾が一方的に独立を宣言することにも反対してきた。バイデン氏の発言は中国の意向とは無関係に台湾が独立を決められると解釈できる。

米ジャーマン・マーシャル財団のボニー・グレイザー氏はツイッターで「台湾が攻撃された場合に米国が守るという発言よりも中国にとって気がかりだろう」と指摘した。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は台湾を核心的利益と位置づける。バイデン氏が意図しなくても米国が台湾の独立を後押ししたと受け取る可能性がある。

バイデン政権は「台湾独立」を巡り、これまでも混乱してきた。米国務省は5月上旬ごろ、ホームページに掲載している米台関係の概要から「台湾の独立を支持しない」との文言を削除した。一部で米国の政策変更を意味するとの観測が出て、中国が激しく反発した。削除から1カ月程度が経過した後、国務省は文言を復活させた。

国務省の内情を知る関係者によると、文言の削除は「国務省の中位レベル」で決まった。ブリンケン国務長官は5月下旬、対中国政策について演説し「台湾の独立を支持しない」と話した。演説と米台関係の概要を一致させるべきだとして、文言を一転して戻したという。

関係者は「一つの中国政策に対する中国の信頼を低下させる可能性があり、潜在的に危険だ」と指摘した。バイデン政権は中国と激しく競争しつつも、意思疎通を目指して軍事衝突を避けると唱えるが、政権内での混乱が中国の疑心暗鬼を生んでいる面はある。

米議会上院の外交委員会が14日に可決した台湾政策法案も火種だ。台湾を国として扱う方針に近づくとみなされかねない条項を含むからだ。台湾について「主要な非北大西洋条約機構(NATO)の同盟国に指定したかのように扱う」と明記。台湾の事実上の在米大使館である「台北経済文化代表処」を「台湾代表処」に改称する交渉を始めるとした。

バイデン政権内にはいずれの条項も米台接近をアピールする「象徴的な措置」で、中国に対する抑止力を引き上げる効果が薄いとの見方がある。中国はあらゆる米台協力に反発する公算が大きいが、米政権は米中関係を悪化させてでも実施すべき軍事支援や経済協力を優先すべきだとの立場だ。

法案は民主党のロバート・メネンデス上院外交委員長が主導した。バイデン政権と上院民主党のやり取りを知る関係者は「メネンデス氏がこれらの条項をとても積極的に支持したことにかなり驚いた」と語る。6月の法案提出直後から、政権は民主党に法案を巡る懸念を何度も伝えたが、メネンデス氏は大幅な法案修正に慎重だったという。

米ハドソン研究所のパトリック・クローニン氏は「象徴的な措置」についてアジアの同盟国や友好国の理解を得られないリスクを指摘する。米国が米中対立を不必要に高めているとの見方が広がれば各国は米国と協力しにくくなる。台湾を巡る結束が緩めば、中国が台湾に軍事や経済面で圧力を強める隙を生み出しかねない。

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