[FT]米国とEU、トルコに対ロシア制裁同調を念押しへ

[FT]米国とEU、トルコに対ロシア制裁同調を念押しへ
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『トルコへの働きかけに関わっている米欧の政府高官2人によると、米国がロシア独自の決済システム「MIR(ミール)」に統合されたトルコの銀行を精査している。EUはトルコ側に懸念を直接伝えるため、使節団を送る準備を始めた。

既存の制裁を厳格に適用

トルコへの圧力を高める背景には、ロシアに対して新たな制裁を科すよりも既存の制裁の運用を厳格化しようとする米欧の姿勢がある。こうした方針の変化は、プーチン大統領が主導した2月のウクライナ侵攻後、ロシアに発動された経済制裁の効果が期待したほど大きくはない事実を米欧が認めたということでもある。それでも米欧はなお、現行の制裁の抜け穴をふさげば、ロシア政府の財源を次第に細らせることができると考えている。

取材に応じた2人の米欧高官のうちの1人は「私たちが、金融業界における制裁逃れに焦点を絞る様子がわかるはずだ」と語った。「例えば、第三国の金融機関はミールの決済ネットワークと相互接続すべきではないというメッセージを明確に送ることになる。なぜなら、(接続には)制裁逃れのリスクが伴うからだ」

米国とEUが9月に開いた協議に関わったもう一人の高官は「抜け穴を防ぐ必要がある」と述べ、トルコが重要なターゲットだと明らかにした。

米財務省は15日のガイダンス(指針)で、米国外の金融機関には「ロシア国外でのミールの利用拡大を通じ、米国の制裁を回避したいロシアを支援する」リスクを抱えると指摘した。

ミールと関係した案件を含め、ロシアの制裁逃れを支援した場合、米財務省の外国資産管理局(OFAC)が「ターゲティング権限」(米国の金融制裁では最も厳しいブロッキング制裁の導入など)を行使するかもしれないと付け加えた。

トルコは1952年から北大西洋条約機構(NATO)のメンバーだ。同国のエルドアン大統領は、ロシアのウクライナ侵攻に対して「バランスのとれた」アプローチだと主張する対応を続けてきた。エルドアン氏が対ロシア制裁に参加せず、最近ではロシアとの経済協力を深めると公言した。これで西側の同盟国が警戒を強めた。エルドアン氏は8月、トルコにおけるミールの拡大で「重大な進展」があると明らかにしていた。

トルコの5銀行がロシアの決済システムを利用

トルコの銀行大手ではバキフ銀行、ジラート銀行、イシュバンク、デニズ銀行、ハルク銀行の5行が国内では、米国のビザやマスターカードでなく、ロシア中央銀行が開発したミールを決済システムに採用している。

このうちアラブ首長国連邦(UAE)が所有するプライベートバンキング大手のデニズ銀行とトルコ国営のハルク銀行は、ロシアのウクライナ侵攻後、ミールに参加した。デニズ銀行は2010年、米国の制裁を逃れるイランの試みに協力したことがある。

イシュバンクは「適用される米国の制裁すべての厳密な順守」が同行の方針だと主張。そのうえで「私たちは制裁の内容を吟味しており、当行の方針から外れない形でミールの決済システムを利用するために必要な対策を実行している」と説明した。

デニズ銀行は「制裁対象の銀行とは取引しない。ロシアに対する国際社会の制裁を完全に順守している」と言い切った。ハルク銀行、バキフ銀行、ジラート銀行にもコメントを求めたが、回答は得られなかった。

トルコ外務省「制裁逃れルートを提供せず」

トルコ外務省は、国連が支持する制裁を順守するのが同国政府の方針だとの前提を示したうえで「これと同様に、トルコが(今回の対ロシア)制裁逃れのルートを提供しないという方針も厳格に守っている」と表明した。

複数の関係者によると、制裁を厳格に運用する取り組みの一環として、EUのマクギネス欧州委員(金融サービス担当)が10月、トルコ訪問を計画している。EU高官の一人は「マクギネス氏は最近、金融サービスに関係する様々な課題を協議するため多くの国々を訪問した。特にロシアのウクライナ侵攻を踏まえた制裁の実行が重要なテーマになった」と明かした。

アデエモ米財務副長官は8月、複数のトルコ企業あての書簡で「制裁を逃れるためトルコ利用するロシアの企て」と「ロシアが拠点の制裁対象と取引する」リスクを警告した。

ウクライナ侵攻後の数週間でロシアを対象に西側が相次ぎ打ち出した制裁の目的は、同国のトップクラスの銀行、エネルギー企業、防衛産業、数百人の政府高官、裕福な実業家を国際市場から締め出すことだった。

取材を受けた米欧高官の一人は、制裁逃れを大がかりに取り締まるため、ロシア人のための決済を扱う個人、ロシア政府のために並行決済ネットワークの立ち上げを支援した企業も標的にすると話した。

3人の高官によると、米国とEUは輸出収入の対応でロシア政府を支援し、西側の制裁で禁止された工業製品や防衛関連製品の輸入を助ける組織も摘発する。

2人の高官は、ロシアのソフトウエア、電子商取引、サイバーセキュリティー産業にそれぞれ関わる個人について、制裁対象を広げることも検討されていると証言した。

複数の高官によると、制裁逃れにつながりかねない「抜け道」の取り締まりの対象になるのはトルコだけではない。カフカス地方、中央アジア、中東湾岸の諸国も視野に入る。米国務省のジム・オブライエン制裁調整室長は「ロシアは(制裁を回避するため)すべての可能性を試すはずだ。その動きを私たちが追い、協議に向かうことをすべての国に理解してほしい」と語った。

By Henry Foy, Sam Fleming, James Politi & Laura Pitel

(2022年9月16日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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