米韓、北朝鮮核使用に危機感 「あらゆる手段で抑止」

米韓、北朝鮮核使用に危機感 「あらゆる手段で抑止」
次官級4年8カ月ぶり協議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM162EK0W2A910C2000000/

『【ソウル=甲原潤之介】米韓の外務・国防当局が16日、米国の核戦力による韓国防衛を巡って次官級協議を4年8カ月ぶりに開いた。北朝鮮の核使用を抑止するため軍事力と外交、情報戦など「あらゆる可能な手段」を使うと確認した。

北朝鮮が核開発を継続し、近く7回目の核実験に踏み切るとの観測が米韓の連携を促している。

会談は「拡大抑止戦略協議体」の名称でワシントンで開かれた。朴槿恵(パク・クネ)政権期の2016年に初めて開き、今回が3回目となる。

北朝鮮が核実験に踏み切れば「強力で断固たる対応をとる」と確認し、シナリオに基づく具体的な方策を調整した。協議を毎年開催することでも合意した。

米国は他国からの攻撃に核戦力で反撃できる能力を持つ。そのため他国は簡単には米国を攻撃できない。「拡大抑止」とは米国が持つこの抑止力を同盟国に広げる考え方を指す。日本も米国と拡大抑止について協議する枠組みを持つ。

今回の協議の共同声明で米国は「北朝鮮への対応で戦略兵器を効果的に展開し運用できるよう韓国と協力を強化する」と約束した。現時点の対処として戦闘機や空母の展開を挙げた。

7月には米軍の最新鋭ステルス戦闘機F35Aが朝鮮半島周辺に入り、韓国空軍と飛行訓練した。韓国メディアによると近い時期に米原子力空母「ロナルド・レーガン」が韓国南部の釜山に入港し、海軍同士の訓練を予定する。

緊張が高まった際には核弾頭を積める戦略爆撃機の投入も念頭に置く。韓国の申範澈(シン・ボムチョル)国防次官は15日にワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地を訪れ、戦略爆撃機B52を視察した。核弾頭を搭載する部分を実際に見て米国の核戦力を間近で確かめた。

米韓が強い対応を取る背景に北朝鮮の最近の動きがある。8日の最高人民会議では核使用の条件などを定めた法令を採択した。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は演説で「絶対に核を放棄できない」と強調した。

北朝鮮は米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発し、能力の改善を進めている。同時に韓国や日本の基地を狙う短距離ミサイルや小型核弾頭をつくり、低出力の核で軍事拠点を狙う戦術核の実用化をめざしているとされる。

戦術核は使用ハードルが下がる。小規模の核攻撃に米軍が核で反撃すれば、次は北朝鮮側が米本土を核で狙う可能性が高まる。米国がそのリスクを負ってまで、小規模の核攻撃に対処できるのか、という疑念が韓国側にかねてある。北朝鮮は核によって米韓のかく乱を試みる。

米韓の協議にはこうした疑念を払拭し、北朝鮮に対する抑止力を立て直す目的があった。米国が核による反撃を辞さないとの揺るぎない姿勢を示せば、北朝鮮は核使用に踏み切りにくくなる。

拡大抑止は「核の傘」とも呼ばれる。米国がいざというときに核も使って同盟国を確実に守るという信頼が重要になる。文在寅(ムン・ジェイン)前政権は北朝鮮との融和を優先し、米国との拡大抑止協議を1回しか開かなかった。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は立て直しを急ぐ。』