[FT]攻めに転じたバイデン氏 米国の分断認め共和党批判

[FT]攻めに転じたバイデン氏 米国の分断認め共和党批判
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB140LT0U2A910C2000000/

 ※ 米国の「分断」なるものは、一体、いかなる「構造」から生じているものなのか…。

 ※ それ自体が、「壮大なテーマ」で、一素人のジジイが、軽々に判断できるようなものでは無い…。

 ※ それでも、とっかかり、斬り口を考えることくらいはできるぞ…。

『年を重ねれば体は弱るが、口は達者になる。バイデン米大統領はこの両方を証明している。11月に80歳を迎えるにふさわしくみえる彼は、高齢者にありがちな歯に衣(きぬ)着せぬ物言いをするようになった。
バイデン大統領が米国が分断していると認めたのはいいことだと筆者は指摘する=ロイター

バイデン氏は、トランプ前大統領の主張は「ファシズムと呼べるようなものだ」と非難し、共和党の大半は今や「米国の根幹」への脅威だと糾弾した。かつては党派を超えた友好を重視し、意見が激しく二分するような事態を招くことは避けてきたが、今回は「あなた方はどちら側につくのか」と聴衆に問うた。一部のリベラル派を含めこうしたバイデン氏の演説を批判する人々は「大統領は対立をあおっている」と非難する。

しかし、バイデン氏は現実を直視しただけだ。確かに9月1日の東部ペンシルベニア州フィラデルフィアでの演説は、米海兵隊員2人が脇に立つという少し異様な演出ではあった。「反民主党」と「反民主主義」をごちゃ混ぜにする発言が目立った。だが、彼の演説が分断を招いたわけではない。既に分断している事実を認めただけだ。国民に結束を求めるというもう一つの選択肢は何度も試されてきたが、まったく機能していない。
1990年代から民主党の大統領認めてこなかった米国

後に大統領になったオバマ氏は2004年に「リベラルな米国と保守的な米国が存在するわけではない」と述べた。だが、そんなことはない。バイデン氏は大統領就任演説でまるで誰もそんなことをそれまで思いつかなかったかのように「互いの声に耳を傾けよう」と呼びかけた。だが、そんなことを言ってももはや何も変わらない。

米国には1990年代以降、民主党候補が大統領選で勝っても多くの共和党支持者はその正当性を認めようとしてこなかった事実がある。分断しているのに米国が結束しているかのごとくアピールしても意味がない。

民主党にも共和党と同じように過激な左派が存在するが、その規模は限られる。そのため共和党も民主党も同じだと考えるのは間違っている。この点もフィラデルフィアでの演説のもう一つの批判の対象となったが、的を射ていない指摘だ。

確かに民主党もトランプ氏が米国の制度にもたらしたような危機をいつかもたらすかもしれない。確かに文化的要素に関する左派強硬派の考え方を全面的に受け入れるのには問題がある。米国(あるいはドイツやフランス)の歴史をひもといても政治的暴力は右派の専売特許ではない。今の民主党には一部の過激な活動家と、警察に予算を与える必要はないといったとんでもない発想をする人がいるが、共和党のように政治のルールそのものに反対する指導者がいるような党ではない。

というわけで、今の民主党と共和党が似ているところがあるとの主張は、筋が通っていないとすぐにわかる。異なるものを同じに扱うのが公平でないように、バイデン氏の演説を批判する人々が、民主党にも共和党と同様に過激な人がいるとするのは問題が違う。
保守派は民主党の政策が不満なのではない

フィラデルフィアでの演説以降、米国の専門家らはバイデン氏に人々を叱りつけても納得させることはできないと指摘してきた。その通りだ。だが何をもってすれば共和党支持者を説得できるのか。一部の人が考えているように、バイデン氏がもっと保守派寄りの政策を打ち出したり、自分がカトリック教徒であることを話したりすれば共和党の強烈な支持者らも”文化戦争”(編集注、米国では黒人が制度的に不利益を被ってきたという歴史を学校で教えるべきか否かといった論争などを指す)を一時、休戦するかもしれないと思うかもしれないが甘い。

バイデン氏は左派的な政策を取りすぎてきたため浮動票の有権者を説得し、その支持を得るのは難しそうだ。武装した右派の説得も難しいだろう。彼らがバイデン政権を嫌うのは、その政策の中身に不満があるからではない。そもそも議会占拠事件発生は同氏の大統領就任前だし、いかなる決定も下していない段階から大統領としての正当性を問われたのだ。

しかも、右派の怒りの爆発を最初に受けた民主党大統領はクリントン氏だ。彼は右派が求めるような小さな政府を目指し、共和党の支持基盤である福音派が多い同じ南部の出身であり、共和党が主張していた犯罪への対応も厳しくした、のにだ。
いまだにわからないポピュリズム台頭の理由

ポピュリズム(大衆迎合主義)がなぜ台頭したのか原因の特定に必死な人々がいる。解決策を見いだすためだが、これは野生のガチョウを追いかけるほど難しい知的作業だ。当初、有力視されたのは白人労働者層が経済的打撃を受けたからだとの説だ。ラストベルト(さびた工場地帯)の人々がいかに大変な思いをしているか、その声がメディアで伝えられた17年ごろのことだ。だがなぜ富裕層が住む地域がトランプ氏を支持したのか、同氏が富裕層の減税に多大な力を投じても貧しい白人層の支持がなぜ離れなかったのかはいまだ明らかではない。

考えられるのは有権者の3人に1人かそれ以上に政治家の声は届かないということではないか。そうならば政治でこれだけ過激さが増す中で大統領が率直なのは価値があるのではないか。攻撃的になったバイデン氏は、政治家とは仲良くやっていこうとしていた以前より物事をずっと明確に捉えている。かつての彼はワシントンにいる人は皆よい人だと語り、人の悩みを聞いては同情し、国としての結束をナイーブなまでに訴えていた。フィラデルフィアでの演説がショックだとすれば、それはバイデン氏がこれまであまりにソフトだったからだ。
分断していないふりをしても解決しない

それでも十分に率直であるとはいえない。共和党支持者の「大多数」は反民主主義ではないとしたからだ。だが2020年の大統領選で共和党に投票した有権者の「大多数」は選挙に不正があったと思っているし、大統領選の投票結果を承認する下院の審議でバイデン氏勝利に異議を唱えた共和党議員は決して少数ではなかった。

バイデン氏の演説への批判で際立つのは、その激しさではなく批判の内容のなさだ。まるでその姿勢や口調を変えれば事態を改善できると考えているようだ。もっと温厚な大統領ならば分断している国をもう一度結束させられると思っている。

しかし、それが本当だとすれば米国は現在のような事態には至っていないはずだ。何十年にもわたり善意ある米国の指導者らは、国民の結束を訴えてきた。だが、それでも米国の分断は深まっていった。バイデン氏が罪を犯したとしたら、それは米国が分断しているのに分断していないかのようなふりをすることをやめたことだ。

By Janan Ganesh

(2022年9月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

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