焦るプーチン氏、中国傾斜 習近平氏と侵攻後初会談

焦るプーチン氏、中国傾斜 習近平氏と侵攻後初会談
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『【北京=羽田野主】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席とロシアのプーチン大統領は15日、訪問先のウズベキスタンのサマルカンドで会談した。両首脳の対面会談は2月のロシアによるウクライナ侵攻後初めて。台湾情勢とウクライナ危機を巡り米国と対立する中ロが結束を誇示した。

15~16日にサマルカンドで開く中ロ主導の地域協力組織「上海協力機構(SCO)」首脳会議に合わせて会談した。プーチン氏が北京冬季五輪の開会式に出席した2月4日以来、7カ月ぶりの直接対話となった。

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会談の冒頭、プーチン氏は「ロシアは『一つの中国』の原則を断固として守っている」と台湾問題で中国への支持を表明した。ロシア通信によると、プーチン氏は「中ロの外交的なタンデム(2人1組)は世界と地域の安定の保障でカギとなる役割を果たしている」と述べた。

中国国営の新華社によると、習氏は「ロシアと双方の核心的利益に関わる問題で互いに力強く支持する」と強調した。「いかなる国も台湾問題の裁判官になる権利はない」とも訴えた。

プーチン氏は会談で「ロシアはウクライナ危機に関する中国のバランスのとれた立場を高く評価する」としたうえで「ウクライナ危機に関する中国の懸念を理解しており、すべての問題を説明する用意がある」と述べた。中国側が長期化するウクライナ侵攻に懸念を伝えていたようだ。

ロシア国防省は15日、ロシアと中国の海軍が太平洋で合同パトロールを開始したと発表した。首脳会談に合わせて結束をアピールした。

台湾情勢に危機感を強める習氏と、ウクライナの戦況悪化に焦るプーチン氏。両者の接近は、ロシアが経済で中国に従属し、中国がロシアの「反米」路線に引き込まれる危うさをはらむ。

今回の中ロ首脳会談には、ウクライナでのロシア軍の苦戦が影を落とした。

9月6日、極東訪問中のプーチン大統領はショイグ国防相、ゲラシモフ参謀総長と非公開で会っていた。ウクライナ軍が南部と東部で攻勢に転じた時期に当たる。困難に陥ったロシア軍の対応を緊急協議したとみられ、10日にはハリコフ州からの事実上の撤退が発表された。

ロシアはこれまで重視していた欧州との政治、経済関係が断たれつつあり、軍事的にも苦境が深まった。米国に次ぐ第2の経済大国となり、国際舞台で政治的影響力も増す中国への傾斜を強めざるをえなくなった。

中ロ首脳会談の日程はロシア大統領府がいち早く公表したものの、中国外務省は最後まで明かさず、温度差をみせた。

欧米がロシア産の石油やガスの輸入を急減させるなか、ロシアの資源輸出は中国依存が深まるばかりだ。15日には中国・ロシア・モンゴルの3カ国首脳会談も開き、ロシア産天然ガスをモンゴル経由で中国に輸出するガスパイプラインの建設を協議した。

仮に年500億立方メートルとされるモンゴル経由のパイプラインが実現すれば、中国へのガス供給量はいずれ年1000億立方メートル近くに達する可能性がある。それでも、2015~20年まで年1500億立方メートルを超えたパイプラインでの欧州向け輸出量をとても補えない。

中ロの貿易額は22年、前年比増加率が約15%となり、1700億ドル(約24兆円)に達する見通しだ。24年に2000億ドルとする目標だが、ロシアの対中輸出の8割を資源輸出が占め、その急増ばかりが目立つ。

ロシアは経済的な対中依存が深まれば、政治関係も対等を維持することが難しくなる。ロシア国際問題評議会会長のアンドレイ・コルトゥノフ氏は「過度の対中依存を避けることが極めて重要だが、今後は難しくなる」と指摘した。

中国も台湾情勢を巡り米国との対立を強める。ペロシ米下院議長が8月に台湾を訪問した。中国は台湾周辺で四半世紀ぶりの大規模な軍事演習に踏みきったが、米欧の議員団の訪問は続く。

米議会では台湾を北大西洋条約機構(NATO)非加盟の主要な同盟地域に指定する「2022年台湾政策法案」の審議が始まった。台湾への巨額の軍事支援や正式に同盟扱いする案も盛り込まれ、成立すれば習指導部にとって痛手となる。

習氏は中ロの中長期的な連携を確認し、軍事的に米国ににらみを利かせる狙いがある。習氏の続投を決める10月の共産党大会に向けて対米路線の継続をアピールする思惑もちらつく。

だがロシアとの関係強化には異論もくすぶる。「プーチン大統領と早く手を切るべきだ」。国務院(政府)に政策を提言する国務院参事室公共政策研究センターの副理事長などを歴任した胡偉氏はロシアのウクライナ侵攻を受け3月にこう提言して注目を集めた。

中国当局のネット検閲でたちまち閲覧できなくなったが、党内では「プーチン氏によって中国が対米ではなく反米陣営に引き込まれるのでは」との懸念が広がる。

中国と欧州の間でバランスを失ったロシアと、「反米」に舵を切ったロシアへの懸念を消せない中国。両国の「蜜月」は不安要因を抱えている。』