対立か混迷か、迫るイタリア危機 欧州が身構える三重苦

対立か混迷か、迫るイタリア危機 欧州が身構える三重苦
欧州総局長 赤川省吾
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1405M0U2A910C2000000/

『25日に迫るイタリア議会選で、排外主義を掲げる極右政党「イタリアの同胞(FDI)」が第1党となる勢いをみせている。与党入りすれば現実路線に転じるとの見方もあるものの、楽観はできそうにない。欧州は戦争、スタグフレーション(物価上昇と景気後退の併存)、イタリアの信用不安という「三重苦」に見舞われる恐れがある。

極右政党が支持率25%

ドラギ政権が連立与党の内輪もめによって崩壊し、前倒しとなった総選挙。ネオファシズムの流れをくむ野党の極右政党FDIが支持率25%でトップを走る。

新型コロナウイルス対策の行動制限で不満が膨らんでいたところに物価高が重なり、ドラギ政権への批判票の受け皿となった構図だ。共闘する右派政党を含めた右派連合で過半数を得る可能性がある。

ミラノで無料のバナナを配るボランティア。新型コロナウイルスの感染拡大もイタリアの家庭を直撃した(20年12月)=ロイター

物価高で痛んだ家計を減税などで支えるべきだと右派連合は訴える。イタリアの公債残高は国内総生産(GDP)の150%に達し、ユーロ圏ではギリシャに次いで高い。財政健全化を先送りしてきたツケで余力がない。

ばらまきを実現しようとすれば財政規律を守らせたい欧州連合(EU)との対立が激化する。ユーロ圏3位の経済規模があるイタリアで危機に火がつけば、小国ギリシャの債務危機より震度は大きくなる。

過激派色を薄める戦略次々と

ローマの政界関係者を取材すると「極右政権→放漫財政→EUとの対立」との単純な展開にはならない、との見方もある。既に舞台裏では様々な駆け引きが始まっているという。

11日、ミラノで演説するFDIのメローニ党首。最近はドラギ路線の踏襲を訴えている=ロイター

「ドラギ路線を踏襲する」。FDIを率いるメローニ党首は最近、企業関係者にこんな公約をした。ファシズム指導者ムッソリーニに近い過激派との印象を薄め、支持を広げる戦略だとみられている。親ロシアで欧州懐疑派とみられるのも避けるため、対ロシア制裁の継続も口にした。

「あえてテクノクラート(専門家)を首相に据える」との噂もある。穏健派のマッタレッラ大統領が極右の首相を任命することを拒否する可能性もある。穏健政権にみせるため、極右シンパのエコノミストらを首相に起用する構想もささやかれる。

EUもイタリア情勢警戒

イタリアの政治情勢にEUも身構える。「ハンガリーのようになるかもしれない」(EU高官)。EUにとどまりながら欧州統合を深めることに抵抗する国、になる事態を警戒する。

上院で議論に参加したイタリアのドラギ首相=AP共同

右派政権が誕生しても結局は、民意が離れて短命に終わるとの見方もあるが、短期政権に終われば政治の混迷が待ち受ける。迷走の末、再びドラギ氏に「お鉢」が回ってくるとの観測まで出回る。

対立か混迷か――。ロシアに対峙する局面で政治というリスクが舞い戻り、欧州は内憂外患の時を迎えることになりそうだ。

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