中国家電、在庫膨張2兆円 消費低迷で製販関係ひずみも

中国家電、在庫膨張2兆円 消費低迷で製販関係ひずみも
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM272CG0X20C22A6000000/

『【広州=比奈田悠佑】中国の家電在庫が膨張している。主要メーカー5社系列の完成品在庫総額(6月末時点)は、前年同期比15%増の980億元(約2兆円)と3年間で2倍に上った。長年放置してきた過剰生産問題に、新型コロナウイルス禍に伴う消費低迷が重なった。メーカーと、販売を支えてきた小売り側との関係にきしみもみられ、業界の構造改革は先行きが見通せない。

中国家電業界を代表する総合メーカーの美的集団、冷蔵庫に強みを持つ海爾集団(ハイアール)、エアコンの珠海格力電器、テレビ大手のTCL電子、白物・黒物を手掛けるハイセンス系2社がそれぞれ提出した財務諸表をもとに、日本経済新聞が集計した。

在庫総額の伸び率は、総売上高の伸び率(2割)をはるかに上回る異常なペースとなっている。なかでも、格力は2022年1~6月期の売上高が前年同期比で5%増に対し、在庫額の伸び率は28%にふくらんでいる。

在庫のダブつきは小売り側も同じだ。家電量販2強の国美零售では、22年1~6月の在庫回転日数が約81日と3年前よりも50%拡大。蘇寧易購集団も21年時点で約50日と、20年から25%増えた。

中国の家電市場は10年ごろまで、旺盛な消費を背景に年2桁ペースの拡大が続いてきた。各社はシェア争いにしのぎを削るなかで過剰な生産能力を抱えるようになり、業界の問題となっていた。

それでも景気のいい時代は、値引きさえすれば在庫を一掃することができた。小売り側による値引きなどの努力に対し、メーカーは次に投入する新製品を割安で卸すといった手法で報いてきた。

だが、ここに来て家電業界の成長モデルが崩れてきた。

調査会社の北京奥維雲網大数据科技によると、22年1~6月の中国家電小売総額は3389億元と前年同期比9%減った。家電の売れ行きは不動産市況と連動性が高い。その不動産業界は当局による締め付けを受けて低迷する。

コロナの感染再拡大で上海などで都市封鎖(ロックダウン)が起き、消費全体が停滞していることも大きい。奥維雲網の郭梅徳・総裁は「中国の家電市場はあらゆるボーナスを使い果たした」と説明する。少子高齢化も重なり、業界は今後、縮小に進む可能性が高まる。

市場の変調は、業界の成長を二人三脚で支えてきた製販の関係も揺るがしつつある。

格力のビジネスはもうやらない――。8月下旬、河北省のホテルで徐自発氏がこう宣言したと、中国メディアが一斉に報じた。

徐氏とは、地元で「家電流通界のドン」とされる人物だ。過去には格力の幹部でもあり、現在は格力の重要な代理商(販売代理店)グループと間接的な資本関係にある。

直前の6月には、格力がこの代理商グループから保有している格力株の一部を売却する意向を受け取ったと公表していた。市場関係者には、格力と徐氏ら代理商側との間に溝が深まっているように映った。

格力だけではない。有力紙の新京報(電子版)は5月、美的従業員による情報として、同社が契約する代理商の3割を削減する計画だと報じた。美的はかねて投資家に対し「販路は転換期を迎えている。ネット以外のルートを削減する」と説明していた。

美的を巡っては、国美が4月、両社の担当者が販売方法などで意見の不一致があり、「身体的な衝突」に発展したと暴露した。その国美も中堅家電メーカーとの資金トラブルが明らかになった。足元では、家電業界の各所で隙間風が吹く。

ある家電アナリストは「家電メーカーは近年、ネット通販への販売強化を進めている。その分、代理商はパイを奪われている」と説明する。在庫リスクなどを押しつけられる一方で客を奪われ、代理商側の我慢が限界を迎えた、との分析だ。

中国の家電業界は、普及期の00年代にメーカー直営を中心とした販路の拡大が進められていた。量販店もその補完的役割を担った。10年代に成長に一服感が出始めると、リスク分散を目的に代理商などを経由するようになった。

そこに、京東集団(JDドットコム)などネット通販サービスが台頭。メーカーはネット大手との直接取引に力を入れるようになった。メーカー側の思惑で販路が複雑になるなか、代理商や量販店の不信が増幅。そこに急速な市場の冷え込みが決定打を放った格好だ。

市場が縮小期へと突入するなか、美的や格力は蓄電関連など再生可能エネルギー事業を強化。TCLやハイアールは海外市場の開拓で成長維持を模索する。

ただ市場の縮小ペースによっては、事業や人員、販路などのリストラが必要になる。積み上がった在庫も減損処理や廃棄を迫られれば、業績へのさらなる悪影響は避けられない。家電メーカーの構造改革は、社内外で大きな痛みを伴いそうだ。』