ビクター・チャ氏「拉致問題、ミサイルと一体協議を」

ビクター・チャ氏「拉致問題、ミサイルと一体協議を」
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『小泉純一郎元首相が北朝鮮を電撃訪問してから17日で20年となる。日朝交渉は米政権の対北政策に左右された歴史といえる。米戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長を務めるビクター・チャ氏に話を聞いた。

小泉氏訪朝は歴史的、最高レベルの合意事実は重要

2002年の小泉氏の訪朝は歴史的な訪問だった。北朝鮮が日本との対話に戻る機会があれば、日朝平壌宣言はそのひな型になるからだ。日朝国交正常化のための原則的な工程表を提示したものであり、いまでも十分通用する。最高レベルで合意された事実は重要だ。
Victor Cha 米コロンビア大で政治学の博士号取得。ブッシュ(第43代)政権時代に国家安全保障会議(NSC)のアジア部長。北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議の米次席代表を務めた。現在、CSISのアジア・韓国担当の上級副所長で、米ジョージタウン大教授も兼務。

安倍晋三元首相は日ロ関係を変えようと努力したが、ウクライナ紛争で水泡に帰した。北朝鮮の場合は対話に興味を示せば、20年前に確立された基盤がまだ有効だ。

小泉氏と当時のブッシュ米大統領(第43代)は良好な関係で、同じ考えを持っていた。当時、米政府に日本と北朝鮮の直接対話に懸念はなかった。対北朝鮮の日本の優先課題は一貫している。北朝鮮による日本人拉致問題や弾道ミサイルの脅威などだ。それは米国の利益とも一致し、不安はない。

北朝鮮の短距離弾道ミサイルの脅威は高まっている。安倍氏はそのことをトランプ前大統領に認識させなければならなかった。日本政府はトランプ氏が日本の安全保障を米国から切り離すのではないかと心配した時期があっただろう。

米政府が08年に決めた北朝鮮へのテロ支援国家指定の解除は、日本にとって受け入れがたい決定だったのは理解できる。米国務省の法的定義によれば、リストから削除される資格があった。

非核化のステップとして北朝鮮の核計画申告の進展が目的のひとつだった。結局はうまくいかなかった。17年のミサイル実験を受け、再び北朝鮮をテロ支援国家リストに戻した。

北朝鮮の核プログラムは大きくなりすぎた。すぐに非核化するのは非現実的だ。しかし、核実験を中止し、寧辺(ニョンビョン)での核関連物質の運用を停止する必要があり、改めて北朝鮮に関与しなければならない。

ミサイルにより焦点を当てるべきだ。クリントン政権以来、北朝鮮とのミサイル交渉をやっていない。復活すれば、北朝鮮と武器に関する交渉ができる。拉致や人権問題、軍事バランス、経済援助などの議論も欠かせない。日本はいずれも重要なパートナーになる。

(日米韓と中ロ、北朝鮮による)6カ国協議を拡大し、国連常任理事国の英国、フランスを加える案もある。ウクライナ紛争や昨今の米中関係を考慮すれば、協力は難しい。米国が直接北朝鮮と関わり、日本と韓国が側面支援するのが現実的だ。

日本にとっては北朝鮮のミサイル能力の近代化が真の脅威だ。拉致問題は2国間での解決が困難であり、ミサイル問題も同時に話し合うのが唯一の方法かもしれない。

(聞き手はワシントン=坂口幸裕)

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