インフレは終わらない ペンス演説が変えた世界
経済部長 高橋哲史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1332Z0T10C22A9000000/
※ そういや、ペンス演説が「転換点」だったな…。
※ オレも、投稿上げたっけ…。
※ ただ、当時、これに注目した人が、何割いたのか…。
『ペンス副大統領の演説、一読しといたほうが良さそうだな…。
https://wordpress.com/posts/http476386114.com?s=%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%B9%E5%89%AF%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98 』
『さわりを紹介しておこう。
『演説内容には注目すべき7つのポイントがある。
1.中国と中国共産党を区別する
2.米国中間選挙に介入、米政府の転覆を図る
3.中国当局による浸透工作の全貌を暴く
4.貿易戦で中国共産党への包囲網を強める
5.中国当局による軍事挑発に備える
6.米国民の結束を高める
7.中国共産党の邪悪本質を暴く』
『ペンス副大統領は最後に中国のことわざ「人見目前 天見久遠」(人間は目の前を見ているが、天は遠い将来を見ている)を引用し、「神は未来を見ていると信じている。神のご加護で、米中両国はともに未来を迎えられるように」と演説を締めくくった。』ってことだ。』
『あれからまもなく4年がたつ。
「中国での自由が経済だけでなく、政治にも拡大すると期待してきた。しかし、それは満たされなかった」。2018年10月4日、当時のペンス米副大統領が中国共産党の一党支配を批判した演説である。
米国をはじめとする西側諸国は、01年に中国の世界貿易機関(WTO)への加盟を認めた。中国をグローバル経済に組み込めば、いずれは自由や民主主義を大切にする国に変わると信じたからだ。
しかし、そうはならなかった。習近平(シー・ジンピン)国家主席の下で、むしろ自由への締めつけを厳しくし、党による支配を強めている。ペンス演説は、民主主義に背を向けた中国との決別宣言だった。
当時、中国でさかんに語られた仮説がある。「60%現象」だ。ある国の国内総生産(GDP)が米国の60%に届くと、米国はあらゆる手を尽くしてその国の力をそごうとする。ソ連に対してしかり、日本に対してしかり。中国が第2次大戦後の歴史から学んだ教訓である。
国際通貨基金(IMF)によると、中国のGDPは15年に初めて米国の60%を超え、18年には7割近くに達した。
米国はいよいよ中国をつぶしにかかるにちがいない。そんな警戒感が高まっていたときに、ペンス演説は「民主主義VS独裁」の構図をつくり出した。米国とうまくやっていこうとしていた中国に与えた衝撃は計り知れない。
中国のWTO加盟で加速したグローバル化が逆回転を始めたのだ。米国は華為技術(ファーウェイ)など中国のハイテク企業の排除に動き、最先端の半導体が中国の手に渡らないようにした。中国とのデカップリング(分断)すら辞さない。そんなメッセージだった。
中国も黙っていなかった。「国際的なサプライチェーン(供給網)の我が国に対する依存度を高め、供給を断とうとする外国への強力な反撃と威嚇の能力を形成しなければならない」。習主席は20年4月に開いた党の会議でこう指示した。
米国がデカップリングを仕掛けるなら、中国は世界への製品や部品、資源の供給を止める。14億人の巨大市場とともに、中国から世界に張りめぐらした供給網を武器にした脅しだった。
グローバル化の後退は数字に表れ始めている。世界銀行によると、世界のGDPに対する貿易額の割合は、01年の5割弱から08年には6割超と一気に高まった。しかし、20年には再び中国のWTO加盟時に近い水準まで落ち込んだ。
グローバル化は、企業に世界で最も効率的な場所を選び、最も安い部品や原材料を使ってモノやサービスを生み出せる環境をもたらした。「グレートモデレーション」と呼ばれる緩やかな成長と低インフレの時代は、グローバル化の深化が前提だ。
それが終わりつつある。米国が主導する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に参加する14カ国は9日、正式な交渉開始で合意した。最大の目的は中国に対抗する供給網づくりだ。
習氏は15~16日にウズベキスタンで開かれる上海協力機構(SCO)の首脳会議に出席し、ロシアのプーチン大統領と会談する。中ロの結束は固い。世界経済の分断とブロック化が進み、インフレが加速する懸念が強まる。
新型コロナウイルス禍から抜け出す過程で始まったインフレは「一時的」でなかった。ペンス演説を起点とする世界秩序の構造変化に目をこらさなければ、物価の先行きを見誤る。
経済部長(経済・社会保障グループ長) 高橋哲史
大蔵省(現・財務省)を振り出しに霞が関の経済官庁や首相官邸、自民党、日銀などを取材。中国に返還される前の香港での2年間を含め、計10年以上に及ぶ中華圏での駐在経験をもつ。2017年4月からは中国総局長として北京を拠点に中国の変化を報じ、21年4月に帰国した。
日本経済新聞 経済・社会保障Twitter https://twitter.com/nikkei_keizai
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蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー
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別の視点
ペンス氏がハドソン研究所で行ったこの演説は書き起こしを読むと改めて「怒りの演説」と称すべき激烈な言葉が並んでいる。しかし米国が一方的に仕掛けたという事ではなく、中国側も特に「強制技術移転」と呼ばれる外国の製造業やIT企業の技術やIPを恫喝や国家権力による実力行使により奪取するなど目に余る行為が続いていた事も要因であった。これにより関税戦争やファーウェイ創業家上層部逮捕拘束などへと続く、米中新冷戦への狼煙と言える演説となった。
2022年9月15日 8:06
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高橋徹
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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分析・考察
かつて盛んに言われた「政冷経熱」の時代は終わったということなのでしょう。もっとも2013年に始動した広域経済圏構想「一帯一路」を通じ、経済と安全保障を渾然一体として沿線国への影響力を高めてきたのは中国も同じです。その意味では、ペンス演説より5年早かった、訪問先のインドネシアでの習近平国家主席の「海と陸のシルクロード」演説もまた、米国という虎の尾を踏み、世界を変えた嚆矢ともいえるかもしれません。
2022年9月15日 10:21 (2022年9月15日 10:22更新)
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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
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ひとこと解説
「世界構造に起因したインフレ」は鋭い指摘だ。IPEFや中ロの経済ブロック化がどこまで現実味が帯びてくるかは不明だが、「中国の経済がくしゃみをすれば世界が風邪をひく」という状況だったので、そこからの離脱に伴う痛みは今回のインフレで顕著に現れているのではないか。
2022年9月15日 7:54 』