[FT]アフリカの数百万人、貧困層に 世界規模の物価高で

[FT]アフリカの数百万人、貧困層に 世界規模の物価高で
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『アフリカ南部マラウイ最大の都市ブランタイアに住むジャドソン・マンクワラさん(39)は、価格高騰でビニール袋入りの木炭を買えなくなり、薪にする小枝を拾い集めるようになった。
ナイジェリア最大の都市ラゴスの生鮮食品市場。物価バスケットに占める食料品の割合が大きいアフリカ各国は、世界的なインフレにより深刻な打撃を受けている=ロイター

失業中のマンクワラさんは小枝の束を脇に抱えながら、「炊事用の燃料を買えないので薪を拾っている」と話した。

ウクライナ戦争や米国の利上げによる通貨下落、長年の経済失政が重なり、マラウイのインフレ率は25%に達した。同国では消費者物価バスケット(物価指数の基準品目)に占めるトウモロコシなど主要食料品の割合が50%近くに上るため、食品価格が急騰すれば、1袋30セント(約43円)程度の木炭さえ買えなくなるのだ。

ロシアのウクライナ侵攻によって食料品や燃料、肥料といった生活必需品が世界的に値上がりし、マラウイなど経済が脆弱なアフリカ各国はとりわけ大きな犠牲を強いられている。
「もはや限界に近い状況」

「もはや限界に近い状況だ」。マラウイのチャクウェラ大統領はフィナンシャル・タイムズ(FT)にこう語った。

国際エネルギー機関(IEA)によると、アフリカでは年末までに3000万人が炊事用の液化石油(LP)ガスを買えなくなる恐れがある。経済の後退リスクも高まり、世界銀行の推計では極度の貧困状態とされるアフリカの人口が新型コロナウイルス感染拡大前だった2019年の4億2400万人から、年内には4億6300万人に膨らむ見込みだ。

調査会社オックスフォード・エコノミクス・アフリカのマクロ経済担当責任者ジャック・ネル氏は、「貧困の判定が難しいケースも多いが、急増しているのは間違いない」と話す。

物価バスケットに占める食料品の割合が先進国より大きいアフリカ経済は、世界的な物価高による打撃を特に大きく受けているという。

例えば、ナイジェリアでは食料品が物価バスケットの約半分を占める。「収入の50%以上を費やす食料品がさらに値上がりすれば、他の物品に余計手を出しづらくなり、経済全体に悪影響が広がっていく」と同氏は懸念する。

LPガス価格が1年で2倍に

マラウイと同様の状況がアフリカの経済大国でも起きている。

ナイジェリアでは通貨ナイラの対ドル相場が実勢レートで年初来25%下落した。5キログラム入りLPガスボンベの価格はこの1年で2倍に跳ね上がり、安価だが環境への悪影響が大きい灯油や木炭を使わざるを得ない人が増えている。食料品も22%値上がりし、消費者は肉や魚を買い控えるようになった。

長年のインフラ投資不足や多額の石油補助金、原油泥棒の横行により、アフリカの大手石油会社は原油価格高騰の恩恵にあずかっていない。外貨が不足する中、多くの企業が輸入価格の上昇を製品価格に転嫁している。

ナイジェリアの自動車ローン会社ムーブの共同創業者、ラディ・デラノ氏は現状を「最悪の事態」と表現する。

「生活費が不足し、ますます貯蓄しにくくなっている」ため、自動車を購入する際の頭金を不要にしたという。

苦境に陥っているのはエチオピアも同様だ。インフレ圧力に深刻な外貨不足、北部ティグレでの内戦も加わり、経済担当の政府高官に言わせると「複合的危機」の状態だという。さらに医薬品や粉ミルクなどの輸入品も不足している。

インフレ率は32%に達し、通貨ブルは非公式為替レートで6月初旬の1ドル=60ブルから約82ブルへと下落した。

首都アディスアベバに住むシングルマザーのラヘル・アトナフさん(46)は、アパートや美容室の清掃員として生計を立てている。月収5000ブル(約1万3400円)のうち、1500ブルを家賃に充てている。「雇い主がいつもお総菜やインジェラ(エチオピアの主食)を持たせてくれるけど、それでも生きていくので精いっぱい」と肩を落とした。タマネギだけみてもこの2カ月間で2倍に値上がりした。「私のような貧しい人々は物価上昇をどう切り抜ければいいのか」

サブサハラ(サハラ砂漠以南)の国々では政府に適切な経済運営能力がないため、中央銀行が経済安定の重責を担わざるを得なくなっている。

ハイペースの利上げも追いつかず

ガーナの首都アクラでは6月、経済的苦境に抗議するデモが繰り広げられた=ロイター

「各国の金融政策当局は問題解決に向けて打てる手は全て打っている」と英経済調査会社キャピタル・エコノミクスのアフリカ担当エコノミスト、ビラーグ・フォリス氏は言う。
インフレ率が31%に上り通貨が急落したガーナはこの数カ月、20年ぶりのハイペースで利上げしている。ナイジェリア中銀も5月以降、金利を2.5%引き上げた。

だが、市場が米連邦準備理事会(FRB)のさらなる利上げを見越す中でドルの上昇は続き、食料品価格も高止まりしているため、エコノミストは早期のインフレ終息に懐疑的だ。

「南アフリカは別にして、例えばガーナやナイジェリアでインフレがピークを迎えたとは思えない」とフォリス氏は話す。「両国とも物価バスケットに占める食料品の割合が非常に大きいので、食料インフレはすぐに収まらないだろう」

内陸国で輸入依存型のマラウイを見れば、危機に陥った多くのアフリカ諸国の構造的な弱点が分かる。21年には輸入額が30億ドルと輸出額の2倍になり、輸入の大部分を燃料と肥料が占めた。チャクウェラ大統領は小規模農家への現金給付や低利融資によって苦境を「乗り切れる」とみているが、国際通貨基金(IMF)による7億5000万ドルの融資など国際援助に頼っているのが現状だ。

食費が国民の支出の大部分を占める中で、多くの人が生活に行き詰まっている。「気付いたらこんなありさまになっていたという人たちばかりだ」と薪を拾い集めていたマンクワラさんはぼやいた。

By Joseph Cotterill, Andres Schipani & Aanu Adeoye

(2022年9月13日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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